2016年11月4日金曜日

US-2のインドネシア向け輸出が成約に近づく


インドより先にインドネシアが成約しそうということですか。3機というと少ないようですが、平成17年度から今まで納入されたのがわずか4機ですからメーカーの新明和工業にとっては大きな数字です。さらにインド他からの受注を期待する同社は忍耐強く成約を期待しているのでしょうね。戦前からの技術も入れれば数世代にわたる蓄積が鼻を開こうとしているというと大げさでしょうか。

Indo Defence 2016: ShinMaywa inches towards US-2 sale to Indonesia

Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly
03 November 2016
ShinMaywa Industries is looking to progress a sale of the US-2 to Indonesia in 2017. Source: Japanese Maritime Self-Defence Force

新明和工業がUS-2水陸両用捜索救難機(SAR)をインドネシアに販売しようとしている。同社関係者からジャカルタで開催中のインドディフェンス2016展示会でIHS Jane'sに明らかにされた。
まず3機を販売する計画だが、2014年4月の武器輸出三原則の改定した日本には初の大型国際防衛装備輸出案件となる。
新明和工業の輸出部門関係者は11月3日、US-2は非武装機材だが自衛隊が運用するため日本政府は防衛装備と認定していると述べた。
新明和工業はインドネシア国軍向け契約の締結は間もなと見ている。「政府レベルではUS-2輸出協議を続けており、2017年に成約すると見ている」(同上関係者)
後押しするのが2015年3月に両国政府間の防衛協力合意で防衛装備、技術の共同作業に道を開いたことだ。新明和はインドネシア企業PTディルガンタラDirgantaraと協議中だ。
同社によればUS-2取得に関心を示すインドネシア以外にアジア圏「数か国」がある。IHS Jane'sはタイが検討中と把握しており、もう一カ国はインドだ。
インド海軍はUS-2を合計12機16億ドルで調達する要求を提出している。日印両国は同機販売をめぐり協議を重ねているが、日本防衛省はIHS Jane'sに交渉は一旦中断中と10月に述べ、理由は日本政府がインドのUS-2i調達方針に不明瞭な点があり説明を求めているためという。■


2016年11月3日木曜日

巨大海上移動式レーダーが北朝鮮沖合でミサイル発射を監視していた


Report: SBX-1 Radar Operated Near North Korea

November 1, 2016 8:00 PM

The heavy lift vessel MV Blue Marlin sits moored in Pearl Harbor, Hawaii, with the Sea Based X-Band Radar (SBX) in 2016, US Navy Photo
大型貨物船MVブルー・マーリンが海上配備X-バンドレーダー(SBX)を架設してハワイ真珠湾に停泊している。2016年撮影。US Navy Photo

米国は超高性能レーダーで北朝鮮の弾道ミサイル追跡を沖合から監視していたことが判明した。

  1. 海上配備Xバンドレーダー(SBX-1)は海上石油やぐらほどの大きさのフェイズドアレイレーダーで朝鮮半島沖で約一ヶ月監視活動をおこなう、と韓国の聯合通信が伝えている。
  2. 「朝鮮半島沖の非公表地点に派遣されており、約一ヶ月に渡り監視活動をしている。9月末にハワイを出港した」と韓国軍関係者が同通信に語ったのを Start and Stripes が紹介している「10月に母港へ戻った」
  3. 監視期間は北朝鮮による一連の中距離弾道ミサイル発射と重なり、発射時の重要情報を記録していたのだろう。
  4. SBX-1は米弾道ミサイル防衛装備の重要要素であり、2,500マイル先から野球ボール大の探知が可能とミサイル防衛庁(MDA)による公表資料にある。
  5. 聯合通信報道内容を米関係者は認めていない。SBX-1の配備は2013年に続くもので前回も北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返していた。
  6. SBX-1の朝鮮半島沖監視活動は11月1日にFox Newsが記事にしており、米関係者談として北朝鮮がムスダン中距離弾道ミサイル発射を今後24時間から72時間以内に行う報道の一部で判明した。
  7. 「大統領選挙当日の前にムスダンを発射すれば今年9発目となり、2回の核実験と合わせて国連制裁措置に違反するもの」と記事は伝えている。
  8. 今週後半に米、英、韓国は合同演習を烏山空軍基地で行う。「今回の演習『透明盾』は同盟各国の北朝鮮軍事中枢、指導部中枢を攻撃する能力を引き上げるのが目的で、北朝鮮から飛来する戦闘機の迎撃の練度向上も狙う」と韓国空軍報道官が聯合通信に述べている。
  9. これに対し北朝鮮は英国に対し演習参加しないよう警告していた。「これは敵対行為であり、公然と米韓側部隊に加われば我が国への戦闘行為となる」と北朝鮮外相pak Yun Sikが語ったとAP電が伝えている。
  10. 「英国は軍事演習は我が国を標的にしたものではないと言うだろうが、米韓両国からは公然と軍事演習は我が軍事施設ならびに指揮命令系統を攻撃する想定と述べている」■

★J-20があるのになぜSu-35をロシアから導入するのか 中国の弱点技術分野はエンジン等多い。




The National Interest


If the J-20 Stealth Fighter Is So Amazing Why Is China Buying Russia's Su-35?

November 2, 2016


  1. 中国は成都J-20ステルス戦闘機を珠海航空ショーで初公開したが、一方で高性能ロシア製戦闘機の取得を目指している。
  2. J-20の二機編隊が世界の報道陣の関心を集めたが、同時にロシア政府がスホイSu-35フランカーEを中国人民解放軍空軍(PLAAF)向け24機生産開始したとこっそりと発表しいてる。中国は同機導入の契約を2015年11月に締結し総額20億ドルといわれる。
  3. 「中国向け納入は契約通り進める」とロシア連邦軍用技術協力企業の副局長ウラジミール・ドロツツォフがTASS通信に語っている。「契約に基づく第一段階を実施中」
  4. ロシアはSu-35をまず4機PLAAFへ今年末に引き渡し、残りは今後三年以内に納入する。だがクレムリンは中国に高度技術を売却した経験からSu-35に盛り込まれたロシアの知的財産を保全する。中国がフランカー旧型機をリバースエンジニアリングして瀋陽J-11、J-15、J-16と立て続けに機体を開発された苦い経験があるためだ。
  5. 中国がSu-35の技術を入手することに意欲的であるのは確実だ。J-20現行仕様は第五世代戦闘機の想定とはいえ、中国のエンジン技術やミッションシステムのエイビオニクス技術は相当劣っている。Su-35が搭載するサトゥルンAL-41F1Sアフターバーナー付きターボファン、ティコミロフNIIPイルビス-Eフェイズドアレイレーダーや電子戦装備に中国が高い関心を示しそうだ。
  6. 中国国産のWS-10エンジンがフランカー派生のクローン機に搭載されているが、完成度は低く、J-20用の次世代WS-15が完成間近になっているのが現状だ。WS-15は地上テスト段階にあり、その後イリューシンIl-76に搭載した飛行テストがはじまるはずだ。
  7. 事実、中国製エンジンで信頼性が十分あるものは皆無で、ロシアから設計を盗んだエンジンでも同様だ。J-20は現在はロシア製サトゥルンAL-31F双発のようで、同エンジンはスホイSu-27他に搭載されているものと同じだ。ロシア製AL-41F1Sエンジンが手に入れば中国の悩みは解消する。
  8. J-20にはアクティブ電子スキャンアレイレーダー(AESA)搭載の可能性がある。搭載されているのは1475型(KLJ-5とも呼ばれる)レーダーのようだ。ただしこの情報は未確認である。なぜならPLAAFからの情報開示あないためだ。だがロシアのレーダー技術は中国より優れているといわれるので中国がイルビス-Eから有益な技術情報を得るのは確実だろう。
  9. 中国がロシアに勝っている分野がある。電子光学赤外線目標捕捉装置でロシアはソ連解体後の経済崩壊の影響を受けたままだ。J-20には電子光学式目標捕捉装置(EOTS)が機首に搭載されている。Beijing A-Star Science and Technology製EOTS-89の可能性がある。だが同センサーの性能水準では公表データがない。米製あるいはイスラエル製の同様装備と同程度の性能であるとは思われない。
  10. J-20は中国の軍用航空宇宙産業にとって大きな飛躍である。中国が注ぎ込んでいる投資規模を考えれば国産エンジン実用化に成功する日が来るかもしれない。ただし、その日はまだ到来しておらず、もしJ-20が言われるような高性能機ならばわざわざSu-35を導入する必要はないはずだ。
Dave Majumdar is the Defense Editor for The National Interest. You can follow him You on Twitter: @DaveMajumdar.
Image Credit: WikiCommons Image.



2016年11月2日水曜日

★珠海航空ショーに登場したJ-20をどう評価すべきか

空軍参謀総長の言うようにJ-20をF-22と比較するのはナンセンス、とはいえ、日本の近隣に長距離性能を誇る同機が登場するのは気持ちのよいものではありません。「もし戦わば」のような扇状的な記事がこれから出てくるでしょうね。(笑) 米側支援機材を長距離から排除するのか、日本の基地を攻撃するのか、どちらにせよ中国の「長い槍」になりそうな機材です。



China Shows Off J-20 Stealth Jet for First Time

A pair of J-20 stealth fighter jets fly at the China's International Aviation and Aerospace Exhibition in Zhuhai, China's Guangdong province, Tuesday, Nov. 1, 2016. (Chinatopix Via AP)編隊飛行をするJ-20ステルス戦闘機。広東省珠海での中国国際航空宇宙展示会にて。Tuesday, Nov. 1, 2016. (Chinatopix Via AP)

POSTED BY: ORIANA PAWLYK NOVEMBER 1, 2016


中国軍が成都J-20ステルスジェット戦闘機を11月1日珠海で初めて公表した。
  1. 同機は米F-22ラプターならびにF-35共用打撃戦闘機に相当する性能があると言われる。
  2. J-20は初飛行が2011年で短距離、長距離ミサイルをともに装備し、最大速度は推測の幅が広いが1,300マイルといわれる。
  3. F-22同様のレーダー探知回避能力があると当局は豪語するが、西側第五世代戦闘機との比較ではステルス性が劣っている可能性がある。
  4. 「J-20のステルス性能は明らかに低い」とジャスティン・ブロンク(王立各軍研究所、ロンドン、戦闘航空機技術の主任研究員)は語っている。
  5. ブロンクはCNN.comで「前方配備のカナードや、エンジン周りのシールドの弱さ、機体下部の安定板のためレーダー断面積が小さくできない。同機のレーダー探知は容易なはずだ」と述べた。
  6. ただしJ-20により中国軍の戦法が大きく変わる。太平洋諸国には頭痛の種となるが、同機が第一線配備となるのは2018年以降だろう。
  7. ロシアも第五世代戦闘機のテスト、調達を急いでいる。
  8. スホイT-50の性能は「F-22とF-35の中間」とダグ・バリー(国際戦略研究所主任アナリスト)は述べている。
  9. バリーはAir Force Timesに今年7月にT-50は次世代戦闘機として優れた機動性を誇るが、F-22に代表される米最新鋭機材より性能は劣ると述べている。ロシアは新型機の受領を2017年に期待している。
  10. 8月に米空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドファイン大将はJ-20に代表される新型外国機材は米技術を持ち出してそのまま比較できないと述べている。
  11. 「問題はシステムのファミリー構成であり、ネットワークであり、我が方にない優位性が実現するかだ」「そのためF-35対J-20という話を耳にするが、比較するのは意味がない。ネットワーク対ネットワークと言う観点で考えるべきだ」■


2016年10月31日月曜日

歴史に残らなかった機体④ ボーイングX-32


本当にダサい外観の機体ですが、評価基準が違っていれば採用になっていたかもしれない機体です。F-35だってどっこいどっこいですが、採用されていればもう少しはスムーズに配備されていたでしょうか。それともやはり技術開発で手こずり同盟各国への販売で開発費のもとをとる商戦が繰り広げられていたのでしょうか。誰にもわかりません。ボーイングには黒歴史というところでしょうか。

We go to war so you don’t have to

A Boeing X-32 demonstrator. JSF Program Office photo

A Goofy-Looking Plane Could Have Replaced the F-35 Stealth Fighter

Boeing’s X-32 was … hideous

by ROBERT FARLEY
国防総省にはF-35以外の選択肢もあった。1990年代にボーイング、ロッキード・マーティンが戦闘機の大型商談をめぐり争い、空軍、海軍、海兵隊、その他同盟諸国での採用を競った。ボーイング案がX-32、ロッキード案がX-35で、ペンタゴンはF-35を採択した。
別の結果になっていたどうなっていただろうか。ボーイング案のみ、あるいは両機種を採用していたら。
開発の経緯
冷戦終結でペンタゴンは共用戦闘機構想で運用部隊の維持費用含み事業経費切り詰めを図った。
三軍は運用中の第四世代機の後継機種を求めており、F-15、F-16が空軍で、F/A-18およびAV-8Bが海軍、海兵隊で供用中だった。
そのため新型戦闘機には通常離着陸型、STOVL型の双方が必要となった。
DoDの歴史を見ても各軍共通仕様の機体開発にはろくな成果があがっていないが、今回は各軍横断での「共用性」に高度生産技術を組み合わせて慎重に調達活動を展開すれば意味のある機体を各軍に供給できるはずとの期待が高まった。
関係者全員が競作の勝者が各国空軍向けの需要も取り込めることを理解していた。端的に言えば、冷戦後の国防産業で最大規模の商談となるはずだった。
ボーイング、ロッキード・マーテインが実証機の製造契約を受けた。
A Boeing X-32A demonstrator. JSF Program Office photo

性能

同じ諸元から生まれたX-32とF-35は性能面で類似していた。コストを予定通りとするべくボーイングはX-32をデルタ翼を中心に設計し三仕様を実現しようとした。
X-32にはF-35のシャフト式ターボファン揚力はなく、かわりにAV-8ハリヤーと同様に推力方向変更方式を採用した。X-32よりF-35は高度な技術内容だったが、X-32の方が簡易な構造だった。
X-32は最高速度マッハ1.6を想定し、AMRAAM6発あるいはミサイル二発と爆弾二個を機内兵装庫で運ぶ設計だった。
航続距離とステルス性能はF-35と大差なく、F-35同様に高性能電子装備を機内に搭載できた。
A Boeing X-32 demonstrator. JSF Program Office photo

選定

X-32が実に優雅さを欠く外観であったのは確かだ。A-7コルセアを太らせた奇形マナティーのようだった。

F-35とて美観では決してほめられたものでなく、F-22の危険なほどスッキリした外観とは対照的だ。だがX-32と比較すればF-35の方がよほどマシに見える。でもこの点は問題ではない。
ボーイングの戦略方針が商機を逃す結果になったといえる。三軍の仕様を満足させられるところを一機で見せる実証機を製造する代わりに二機を製造し、内一機は通常型超音速機として、もう一機を垂直離着陸機としたのだ。ロッキードの実証機は単一機で両方の機能を示した。
またペンタゴンはF-35のターボリフトの先進性を好んだ。ロッキードはF-22で経験値を積んでおり、別のステルス戦闘機大型案件でも真価を発揮すると期待させるものがあった。
A Boeing X-32 demonstrator during flight tests alongside an F/A-18 Hornet. JSF Program Office photo

結論

2001年にF-35が正式にペンタゴン史上最大規模の調達事業の対象となった。だが同時に最大規模のトラブルにも遭遇する。
X-32はF-35に殆どの分野で劣る評価だったがX-32は十年以上にわたるテストや再設計工程は発生させていない。コストの大幅超過も発生させていない。F-16Aにドッグファイトで勝てなかったと各紙に書き立てられることもなかった。
あの場面で別の結果になっていたら、と言うのは機体競作の結果を回想する際の常であり、X-32がF-35同様に困難な課題に直面していてなかったか断言できない。現代の戦闘機の高度な内容を考えると、「やはり直面してただろう」と言わざるをえない。
だが後知恵といわれようと海兵隊にはVSTOL機の方が理にかなっていたのではないか。これが実現していれば、「共用」事業の一番困難な部分が解決していたはずだ。つまり重要部分を三軍の相当異なる仕様で共通化することが不要になっていたはずだ。
また防衛大手企業各社で経済恩恵がより広く享受できていたはずだ。今ペンタゴンはこの点を上位の優先事項と捕らえている。
もちろんF-35のSTOVLの実績とX-32は当時はまだ提案段階であったことを考えると、この決断は2001年ではなく、1993年にしておくべきだったのだ。■


★建造中の中国新型空母を推理する



なるほど中国の目指す空母戦闘力の整備はまだ道途中ということですね。しかし中国の構想は米国のように世界各地を対象に空母戦闘群を送ることではなく、中国が中核的権益と認識する西太平洋の防護にあるはずですから米国並みの巨大空母を整備する必要はないのです。カタパルト方式をものにするのかが注目ですが、何れにせよ建造中の新型艦は技術の国産化のための習作ということでしょうか。

The National Interest

Everything We Know About China's New Aircraft Carrier

October 28, 2016

ゆっくりだが着実に中国初の国産空母が姿を表しつつある。2015年に建造開始した中国二番目の空母は2017年ないし2018年に供用開始するといわれてきたが、2020年近くになる可能性も出てきた。情報の欠如で観測が先行しており、改めて基本的な疑問が表出している。遼寧(CV-16)の例と同様にアナリスト陣を悩ます論点は多い。まず艦名が不詳だ。遼寧では中国ウォッチャーは結局艦名を推定できなかった。今回も同様で「山東」との説、施琅 Shi Lang、鄭和 Zheng Heとの説もあるがとりあえず「CV-17」としておく。

CV-17でわかっている事項をまとめてみた。

外観はどうか

  1. 大連造船所で建造中のCV-17写真を見ると中国最初の空母と外観が類似しているようだ。艦体の大きさも遼寧都ほぼ同一で、スキージャンプ甲板をもち、動力は通常型だろう。アンドリュー・エリクソンはCV-17はガスあるいはディーゼル/ガス混合タービン方式だと見ている。
  2. ひとことでいえばCV-17はロシアのアドミラル・クズネツォフの従兄弟といったところだ。中国が一部で設計を変更している可能性があるが中核部分では極めて類似している。基本設計が確立できれば建造を長期間続けることはよくあり、米海軍もニミッツ級空母の建造を40年近く継続している。

建造面

  1. CV-17は中国の軍艦建造では最大規模で、空母建造が可能な造船所は世界広しといえどもごく少数で、建艦に必要な技能もほっておけば消滅する。その意味でCV-17は中国軍にとって重要な技術発展の手段となり、建造中の知見が次代空母に反映され、設計内容が向上する可能性がある。
  2. 中国造船業には克服すべき課題が多い。水上艦艇用の原子力推進もそのひとつで、既存推進装備の拡大化もある。(中国のエンジンは信頼性に問題がある) 蒸気カタパルト方式とするのかスキージャンプなのか電磁推進方式を採用するかの選択もある。一部報道ではCV-17がカタパルトも同時に搭載するとしているが、産業力整備の観点から納得できる。

運用想定

  1. CV-17でも瀋陽J-15戦闘機(Su-27フランカーの派生型J-11が原型)を搭載するだろう。さらにJ-31ステルス戦闘機の搭載も将来的にはあるだろうが、将来の航空戦力の構造は不明だ。姉妹艦同様にCV-17にも大型機発艦の能力はなく、陸上運用機やセンサーの助けを借りて戦闘空域の全体像が把握できるはずだ。
  2. ということはCV-17を遼寧よりも遠距離に派遣した場合に同艦は戦闘群の中心にはならないことになる。搭載機は航続距離が短く、ペイロードや指揮統制装備が独立行動する派遣部隊のニーズには不足する。アドミラル・クズネツォフと同様に同艦も米海軍ではアメリカ級軽空母の実力に相当し、ニミッツやフォード級の超大型空母と比較にならない。
  3. 中国ウォッチャーの大半は中国海軍がより大型高性能空母の建造をCV-17のあとに企画していると見る。米海軍空母同様の高性能装備も搭載され、カタパルト(蒸気方式あるいは電磁)、原子力推進も導入されるだろう。そうなるとCV-17は過渡期的存在で、中国造船業が大型艦建造の知見を得るための題材となるのだろう。これはCV-16で航空機運用の知見を得たのの同様である。
  4. では中国海軍が大型艦建造に向かうとCV-17はどうなるのか。PLANがインドと同じ道筋をたどるとすれば、次代空母が中国の空母戦力の中核となるだろう。CV-17はCV-16とペアを組み、第二陣戦力を構成する。最終的に遼寧の方が老朽化を先に示せば、CV-17には練習艦の任務が与えられるかもしれない。
  5. その点を念頭に置くとCV-17建造は中国の海洋進出の大きな転機となる。同艦がより大型高性能空母への道を開き、遼寧とともに中国海軍航空戦力の整備を加速するだろう。その意味で同艦の命名が注目される。■

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat.
Image: Liaoning aircraft carrier. Wikimedia Commons/Creative Commons/Simon Yang



中国海警局の新型艦はフリゲート艦へ転換可能。日本も注意すべき存在


中国の海警局の存在はさんざん知れ渡っているでしょう。今回海軍仕様の艦艇が加わることで大きく存在意義が変わることを記事は指摘しているわけですが、尖閣でさんざん騒いでも海上自衛隊が出てこない=エスカレートさせる名目が立たない中国として同艦を尖閣に動員すれば線引が一気に難しくなりますね。


The National Interest


China's New Coast Guard Vessels Are Designed for Rapid Conversion into Navy Frigates

October 29, 2016


  1. 中国海警局China Coast Guard (CCG) はアジア太平洋地区の戦略を論じる際に真っ先に注目を集める組織で特に複雑な様相を示す南シナ海でその傾向が強い。米海軍情報部は同組織のカッターで編成する艦艇規模を世界最大と認定し、フィリピンと係争中のスカボロー環礁、ヴィエトナムとの間で発生したパラセル諸島沖の石油掘削施設案件でも姿を現した。大型化を続ける「白い船体」の同局所属カッターは中国の新海洋戦略の先兵と解釈されている。

  1. これまでの西側の解釈ではCCGは艦船の大きさ、行動範囲、通信能力、組織のいずれでも中国の国力を誇示し、近隣国の漁民を排除し、海上法執行(MLE) に当たる各国艦船を怖じ気つかせることが目的とされてきた。今回はさらに槍先を尖らせようとしている。新型カッター818型が艦番号46301をつけまもなくCCGへ配備される。注目されるのは同艦が人民解放軍海軍(PLAN)の054型フリゲートをMLE仕様にした点だ。054型は各種兵装・センサーを搭載し海軍アナリストが高く評価し、PLANは同型艦をアデン湾の海賊対策で多用している。

  1. 米側や西側アナリストが気づいていないのは同艦によりCCGが新しい水準の任務実施能力を獲得することで、特に武装面で注意が必要だ。もっと警戒すべきは新型艦が海軍予備兵力となり、比較的簡単に軍艦に転用できることだ。中国の海軍雑誌 Naval & Merchant Ships [舰船知识]の2016年8月号ではこの818型を詳細に解説しており、説明文では「有事には各艦に秘められた能力から迅速にフリゲート艦に転用できる」とある。解説によれば性能諸元は全長134メートル、全幅15メートル、排水量3,900トン、最高速度27ノットとある。武装は76ミリ主砲一門、30ミリ重機関砲2丁、高圧水発射砲4門、Z-9ヘリコプター一機だ。

  1. 同誌では第二次大戦中の米沿岸警備隊のカッターが同活躍した弧を解説しているのは偶然ではない。なお、同誌の発行元は中国船舶工業集団(CSSC)で今回登場した新型カッター818型の建造元でもある。

  1. もう一方の大手造船企業である中国船舶重工集団(CSIC)が刊行する雑誌Modern Ships [现代舰船で新型カッターの詳細がよくわかる。818型建造契約の交付が2013年12月で、主砲の火器管制システムは054A型と同一である。また同記事では退役提督尹卓 Yin Zhuoがフリゲート艦と共通仕様にする構想を提起したとある。2010年のことでミサイル、防空レーダー、電子対抗装置まで搭載した艦を海賊相手に派遣するのはコスト面で逆効果と主張したのだ。ここから軽武装で治安維持に派遣しつつ、フリゲート艦と船体を共有化する発想が生まれた。ただし艦前部に相当の空間が予備となっており「垂直発射システム(VLS)の搭載も可能」とある。艦内の配電系統は拡充可能で、対空監視レーダーを追加し、曳航ソナーを有事に追加すればよい。同様に30ミリ銃を撤去し、代わりに近接武装システムCIWSをつければよい。

  1. 五年以上前だが、筆者は別の出版物を目にしている。「最新の漁業法執行用カッターでは戦時に備えASWヘリコプター、ASW魚雷、曳航ソナーの搭載が想定されている」(CHINA BRIEF, Jamesetown Foundation) 。また筆者は中国MLE部隊の「忍び寄る軍事戦力化」を指摘してきた。いまやその過程は完成した感があり、非武装で組織化未成熟というこれまでの中国の沿岸警備部隊像はもはや過去のものだ。CCGは数ヶ月あれば真の海軍戦力に変身し、中国の海軍戦略の実現手段となるのだ。つまるところ、海上護衛艦対潜水艦の戦いの中で数量に物を言わせれば中国に有利な状況を生む。
  2. 一方で沿岸警備隊を海軍予備兵力として整備するのは中国が初めてではない。日米両国とも同じ発想を採用している。中国との海上緊張を紛争にエスカレートさせないため、米国や同盟国は「海上法秩序」を世界各地の海域に広げる際にCCGも巻き込もうとしており、重要な捜索救難演習に、また海洋環境保護措置に中国を参画させている。

著者ライル・J・ゴールドステインは米海軍大学校(ロードアイランド州ニューポート)で中国海事研究所(CMSI)所属の准教授をつとめている。本稿中に見られる評見あるいは分析は著者個人のものであり、米海軍あるいはその他米政府機関の見解ではない。
Image: People’s Liberation Army Navy type 054A frigate. Wikimedia Commons/Creative Commons/Simon Yang


2016年10月30日日曜日

POTUSポルカ 米大統領の移動で動員される機材各種と発生経費をGAOが分析


大統領が一回訪問するだけでこれだけの支援体制が動員されるわけですね。文中にはありませんが、国家最高司令官としてE-4Bも緊急時に備え運用されていたはずです。ま、一種の移動サーカスのようなものでしょう。それだけに電子メール問題で煙が出てきたヒラリー・クリントンには軍は一様に否定的な反応を示しており、仮に同人が当選しても軍関係者は微妙な感情を持ったまま対応するのでしょうね。


POTUS Polka In the Sky

Oct 28, 2016by John Croft in Things With Wings

ボルカは軽快なフットワークが必要だ。今回公表された米政府会計検査院(GAO)のまとめでは同様に合衆国大統領(POTUS)が公務あるいは私用で足を伸ばすと軍や国土安全保障庁の機材、人員が動き回っていることが改めて証明されている。
監査ではオバマ大統領による2013年2月15日から18日を対象に公務私用双方の出張を精査している。米国東部ほとんどを旅程に組んだ大統領はまずシカゴへ飛びハイドパークアカデミーで演説し、一般教書演説で述べた経済提案について意見を交換している。シカゴからパームビーチ(フロリダ)へ飛び、タイガー・ウッズ他とゴルフを楽しんだ。
報道ではこの週末旅行の経費を報じている。総額3.6百万ドルで国防総省が2.8百万ドル、残りを国土安全保障庁と分担している。興味をそそられるのは大型機他装備が準備されていることで、今回の監査はジョン・バラッソ上院議員(共、ワイオミング)の請求で行われた。
出張にC-17が3機、C-130は2機、さらにC-5が一機動員され、26回の移動で15空港を移動している。ここにさらに大統領専用機のVC-25A(ボーイング747-200B)「エアフォースワン」が加わるが、海兵隊第一ヘリコプター飛行隊のVH-3D、VH-60N、MV-22Bは空輸されPOTUSのゆくところあらゆる場所あらゆる機会に随行している。
GAOが以下まとめている。
「第89空輸飛行隊を隷下におく航空機動軍団が機材を準備し、大統領移動に伴う貨物を輸送する。旅行の内容により使用機材はC-17グローブマスター、C-5スーパーギャラクシー、C-130ハーキュリーズより適宜選択する。各機はヘリコプター、大統領専用車両他車両に加え各種必要機材を空輸する。航空機動軍団はKC-10エクステンダーはKC-135ストラトタンカーも必要に応じ投入する」

「空軍に加え海兵隊も海兵第一ヘリコプター飛行隊により支援をする。同飛行隊はヘリコプター輸送と緊急時の支援を大統領に旅行の行き先、日時を問わず提供するのが目的でVH-3D、VH-60N、MV-22Bを運用する。下の写真のうちCH-46Eは供用を終了している。

大統領の移動のためGAOによれば「航空機各機は米空軍の各地基地を離陸後、各軍共用基地アンドリュースおよび海兵隊基地クアンティコに到着し、シークレットサービス要員および各種車両、海兵隊員、ヘリコプターを搭載し支援を提供した後、所属基地に帰投している」

だがこれだけではない。
沿岸警備隊(国土安全保障庁所属)はRB-S舟艇やHH-65ドルフィンヘリコプター隊を待機させていた。費用586千ドルで「水路での支援を提供」していた。■


DARPAの進めるコックピット自動化の現状 ALIASシステムで操縦士一人体制が生まれるか


いつも一歩先を狙う技術開発を進めるDARPAからの新しい成果報告です。すべてが人間が行うよりも信頼でき学習できるAIがあれば積極的にこれを使えばよいという発送のようですね。頑固一徹にチェックリストを読み上げるのは良いのですが、本当にチェックになっていない形骸化があるとすれば問題なのでこの技術は有望と見て良いのではないでしょうか。(ターミナル1共通記事)

The National Interest


DARPA Flies Plane with Robot Co-Pilot

October 27, 2016


各種チェックリスト項目や安全手順はコンピュータがずっと早く、安全かつもれなく実施できるはずだ。
  1. ペンタゴンの研究開発部門が実証をめざすのは航空機自動化の全く新しい段階で人間の持つ問題解決能力にコンピュータ化したロボット機能を組み合わせることだ。
  2. これを国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)は航空機乗員コックピット作業自動化システムALIASと呼ぶ。
  3. ALIASの中核は認識能力で人間の頭脳は状況が急速に変化しても問題解決できる能力を有するが、一定の手順はコンピュータが実施したほうが実効性が高いと研究者は見る。
  4. ALIASのソフトウェアはオープンインターフェースでパイロットが操作するタッチパッドや音声認識に対応し機体操作が自律的に行えるようになる。
  5. 例としてチェックリスト手順や安全手順のチェックがあり、エンジン状況、高度計、照明、スイッチレバー類は今までより迅速かつ、安全で効率よく確認をコンピュータが自動的に行なってくれる。
  6. 「乗員が通常行う仕事ですが当たり前すぎて退屈になることがあります。ALIASがチェックリストや点検を代わりに行い結果だけをパイロットに教えます。パイロットはもっと大事な飛行任務に専念できるわけです」とオーロラ・フライト・サイエンシズ社長兼CEOのマーク・チェリーが語っている。
  7. 航空機運用には多様な作業があり、緊急時の手順、ピッチ、ロール、エンジン状況の点検ライト、自動操縦等は乗員の手を煩わせず実施できる。
  8. LIASはDARPAの実証を業界大手のロッキード・マーティンおよびオーロラ・フライト・サイエンシズが行っており、今後B-52や大型民間機など各種機材に導入する。
  9. ALIASの初期仕様には小型機も対象で、セスナ208キャラバン、ダイアモンドDA42、ベルUH-1でも実証しているとチェリーは説明。ALIASは学習機能があり単発、双発両方に対応できる。
  10. ロッキード、オーロラ・フライト・サイエンシズ両社による実証を受けて、DARPAは第三段階の選定作業に入ろうとしており開発をさらに続ける。
  11. アルゴリズムがさらに改良され「人工知能」の域に入ると、各種機能、コンピュータがネットワークで高度に結ばれ情報を自動的に統合、分類、表示する機能が実現する。これができればヒューマン-マシンインターフェースが向上し、パイロットの「認知負担」が軽減される。
  12. 既存のセンサー、航法装置に加え「フライバイヤー」技術により機体の自動操縦がすでに実施可能だがALIASでは自律航行とヒューマン-マシンインターフェースの水準が大幅に引き上げられコンピュータの独自運用レベルが進む。
  13. ヒューマン-マシンインターフェースは米陸軍がすすめる次世代垂直離着陸機FVL構想の中核でもあり、2030年代に実用化しようとする高性能飛行機能を実現する
  14. ALIASのような技術が新型機開発で効力を発揮する可能性は十分ある。供用多用途技術実証機として米陸軍が未来のヘリコプターの開発段階を一歩進めようとしている。FVLの要求仕様としてALIASが組み込まれれば生身のパイロットの認知負担を減らし、その分もっと重要なミッションに専念できるようになる。
  15. パイロットの頭脳は指揮統制に重きを置いて、自動システムへの指示に専念できるればあとは機能を自動的に果たすようになる、とチェリーは述べている。
  16. 「パイロットの負担を減らした分、将来の機材の安全性は高まります」
  17. スロットルや作動系の装置、ヨークはすべてALIASで自動化が可能だ。
  18. 「見通し線外の通信を高度に自律化しており、プレデターやリーパーがこの技術で現時点でも運用されています」(オーロラ・フライト・サイエンシズのCEOジョン・ラングフォード)
  19. ALIASは技術的な可能性と実証成果を理由にGCN Dig IT賞を最近受賞している。■
Kris Osborn became the Managing Editor of Scout Warrior in August of 2015. His role with Scout.com includes managing content on the Scout Warrior site and generating independently sourced original material. Scout Warrior is aimed at providing engaging, substantial military-specific content covering a range of key areas such as weapons, emerging or next-generation technologies and issues of relevance to the military. Just prior to coming to Scout Warrior, Osborn served as an Associate Editor at the Military.com. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at CNN and CNN Headline News. This story originally appeared in Scout Warrior.