2017年9月20日水曜日

米空軍は今週創立70周年、しかし組織に相当のストレスが溜まっている様子


さすがビジネス誌なので機材装備ではなく一番大切な人材についてメスを入れています。詳しくは記事を見てもらいたいのですが、巨大組織でもあり毎日作戦を実施していることもあり、拙速の変更は避けようとしているようですね。しかし効果が出るのもそれだけ遅くなりますのでそれまでの運用が大変です。皆さんならどんなアドバイスをしますか。

'We are a service that is too small': The Air Force is under strain and looking at some major shakeups

「組織が小さすぎる」米空軍は厳しい緊張にさらされ抜本的組織改革を検討中
us air force night第36空輸飛行隊のトーマス・バーナード大尉がC-130ハーキュリーズパイロットとして暗視装置付きゴーグルで関東平野上空で訓練中。October 14, 2015. US Air Force/Osakabe Yasuo
  1. 米空軍が各地で組織の限界を試される状況にここ数年直面している。
  2. 中東の武力衝突、ヨーロッパ・アジアでの緊張の高まりに加え予算問題は空軍をさらにやせ細らせる課題の一部に過ぎない。
  3. 米空軍は9月18日に創立70周年を迎えたばかりだが、新規隊員募集、訓練、配備と人員面管理面での合理化に迫られている。
  4. 「これだけの仕事があるのに組織が小さすぎる」と空軍長官ヘザー・ウィルソンHeather Wilsonが8月末にAir Froce Timesに語っている。「即応体制の問題が国内で深刻になっているし、来年も予算抑制の継続決議が続けば予算は昨年と同額、あるいは強制削減措置でもっと悪い事態になるかも...そうなれば破滅的だ。回復に何年もかかる」
  5. 政府会計検査院によれば空軍部隊で十分な即応体制を維持できているのは半数以下しかない。組織ではなんといってもパイロット不足が一番深刻な問題だ。
  6. 空軍は2016年度にパイロットの門戸を広げたが、2017年度でも必要とされる20,300名のパイロットが1,555名不足し、うち950名が戦闘機パイロットと見られる。また整備要員も3,400名不足している。
  7. 空軍参謀早朝デイヴィッド・ゴールドフェイン大将Air Force Chief of Staff Gen. David Goldfeinおよびウィルソンの前任者デボラ・リー・ジェイムズDeborah Lee Jamesは人員不足を「静かなる危機状況」と2016年7月に評していた。
Air Force ドイツで降下訓練をする上等空兵ジャスティン・ゴードン、2013年7月U.S. Air Force
  1. そこで状況を解決すべくパイロットを退役させないため、空軍が考えているのは俸給とボーナス支給額の増額、いったん退役したパイロットに現役復帰を求め、支援要員を増やしてパイロットに事務作業をさせなくてもよくすること、年間のパイロット養成規模をふやすこと、さらに現役パイロットに異動に際して意見を言わせることだ。
  2. すでに「レッド・エア」訓練部隊の一部を外部委託しており、民間会社パイロットが敵機の役をしている。またモスボール保管中のF-16を訓練機材として有人・無人運用すべく改装中だ。
  3. ただ空軍で厳しい勤務状況を強いられるのはパイロットだけではない。
  4. 空軍特殊作戦軍団AFSOCは16年間に及ぶ苦闘に耐えている。どの時点でもおよそ1,200名のAFSOC要員が約40カ国に展開中とAFSOC司令官ブラッド・ウェッブ中将 Lt. Gen. Brad WebbがAir Force Timesに語っている。同軍団の総人員は将校下士官14,461名に過ぎず、任務展開は「隊員と家族の明らかに負担となっている」とウェッブ中将は語っている。
  5. 「15年間で10数回も海外展開した隊員が多数いる。この国でここまでの勤務は今まで一回もなかった」とウェッブ中将は述べ、同軍団が海外配備の頻度がこれ以上増えないよう国防長官から猶予を求めているという。
Air Force special operations第320特殊戦術部隊の隊員が射撃訓練前に状況説明を受けている。 November 19, 2015, at Camp Hansen, Japan. US Air Force photo/Senior Airman John Linzmeier
  1. 一般空軍隊員でも需要は高いままだ。2017年はとくに任務展開のテンポが高く、今後もこの状態が続くとの予想がある。
  2. 「2017年度の訓練や演習の頻度は2018年度も続く見込みで頻度は適正と言える」とトッド・ウォルターズ大将Gen. Tod Wolters(米空軍ヨーロッパ・アフリカ司令官)が9月8日に語っている。
  3. ヨーロッパ駐留中の空軍人員30千名以上は十分な規模とウォルターズ大将は見ている。パイロット不足と故障時間が増える中、「現時点でこの方面の人員規模は適正で、短期展開で当地にくる人員もここに含む」と大将は語っている。
Air Force B-1Bランサーの排気口カバーを外すケヴィン・コロン上級軍曹、ネヴァダ州ネリス空軍基地にて。May 21, 2013. U.S. Air Force
  1. また空軍は下士官も昇進で将校にさせることで人員不足に対応しようとしている。
  2. 今月だけで下士官2,001名が補充昇進の対象になり、主に臨時任務が延長された、あるいは緊急作戦に動員された下士官が対象だ。
  3. 12月には空軍は全将校に大尉までの昇進の機会を提供する。資格が満足でき、昇進の推薦があり、欠点なしの勤務実績があれば昇進は確実となる。
  4. ここまで大盤振る舞いになっているのは現場将校がもっと必要になっているからで、少佐、中佐、大佐と言えども例外ではない。空軍の現状の第一線将校の充足率は92%でその他支援にあたる将校の充足率は74%にとどまっている。
  5. 「将校評価制度はここ30年間大きな課題はなかったが、今や軍の構造、任務、要求内容、実績で貴重な将校に反映されつつある」とジーナ・グロッソ中将Lt. Gen. Gina Grosso(空軍参謀次長、人員・組織・各種支援担当)が昇進制度変更の公告で述べている。
  6. 新昇進制度は空軍が事務作業の負担を隊員から減らそうとする中で実現した。また各隊員の私生活にも負担が増えている。
  7. 「各隊員にはワークライフバランスの実現を奨励しています」とウェッブ大将も言う。「空軍特殊部隊は各軍の特殊部隊と共に成果を上げていることを誇りに思うが、大変な任務の裏で回復力が必要だとも認識している」
  8. 空軍隊員は「すごいことを実現している」と最上級空軍曹長カレス・ライトChief Master Sgt. Kaleth WrightもAir Force Timesに語っている。だが隊員は同時に人員不足、予算・資材不足、任務実施の高い負担、追加業務が高止まりなっていることへの対処を迫られており、欲求不満とストレスが高まる一方だ。
  9. 「こちらから世界に静かにしてほしい、不安定な状況をやめてほしいと言えませんよね」とライトは語り、「これができないので一番いいのは空軍をもっと効率の良い組織にして威力を増大させ、徐々に厳しい状況から脱することではないでしょうか」
  10. ライトによれば空軍は業務評価の廃止も検討しており、一部部隊でメンタルヘルスと回復力の改善に向けた試みが進んでいるという。今年に入り自殺した空軍隊員は62名に上り、このままならここ数年の年間100名のままになりそうだ。
air force cockpitB-1Bランサーのパイロット、ジェイムズ・シルバ少佐とスティーブン・マイヤース中佐が最新改修を終えたばかりのB-1Bのフライトを終了してテキサス州ダイエス空軍基地に帰投してきた。January 21, 2014. US Air Force/Staff Sgt. Richard Ebensberger
  1. メンタルヘルスに加え業務能力向上の取り組みでも空軍は広範囲に人事情報技術制度の見直しも開始したとグロッソは語る。
  2. 空軍の人事業務では申請が200種類あり、111種類ものばらばらの制度が古いものは1990年代から生きている。これを合理化し普通の隊員でも人事関連業務をこなせるようにできないか。たとえば給与小切手の処理だけで毎月5千人が従事している。
  3. グロッソは空軍が二年から三年かけて人事評価制度を大幅刷新する検討に入っているとも述べている。「これは拙速は避けたい内容です」とAir Force Timesに語っている。「正しい作業が求められている」
  4. 空軍への作戦要望が近い将来に減少する見込みはない。イラク、シリアではISISに対して数々の勝利をおさめたが、現地の友邦国部隊から求められる支援は増えるばかりだ。ここにアフガニスタンでの空軍任務の拡大の可能性が生まれる中で東欧と北西アジアでの緊張が高まる状況に米軍は直面している。
  5. 「今後も空軍の重要性が減ることはない」とゴールドフェイン参謀総長はDefense Newsに以下語っている。「航空優勢はアメリカが生まれついて獲得した権利ではない。何らかの計画を立て、訓練し、実際に戦って初めて実現できるものだ。地上部隊の隊員でも空軍隊員でもジェットの音が頭上に聞こえれば空を見上げるものはない。こちらの機体だとわかっているからでこの維持は空軍の道義的責任と言ってよい」■

2017年9月18日月曜日

★拡大する日印共同演習、2018年よりマラバール演習にP-1参加が決まる



インドは今後も日本との関係が深くなりますが、一般社会ではインドの実態、重要性はほとんど認識されていません。メディアはやはり都合の悪いことには報道しない自由を行使するのでしょうか。日印の接近を快く思わないのはあの国ですからね

Maiden Indo-Japan joint exercise in 2018

印日共同演習が2018年から拡大へ
DH News Service, New Delhi, Sep 15 2017, 2:15 IST


  1. インド、日本両国の防衛部隊が2018年から合同演習を充実させることがわかった。
  2. インド陸軍と陸上自衛隊は対テロ作戦を主眼とする演習を初開催し、インド陸軍の経験値を活用する。両国の空軍も機材を相互派遣する。

  1. 三ヵ国海軍演習のマラバールでは2018年に海上自衛隊がP-1哨戒機を初参加させる。

  1. 演習の詳細内容は今年両国部隊が開催する企画会議で決まるという。

  1. その他の演習題目に国連平和維持活動、人道援助、災害救難も加わりそうだ。

  1. 両国海軍部隊にはすでに協力関係の実績があるが、ナレンドラ・モディ首相と安倍晋三首相のトップ会談後の共同声明ではインド洋から太平洋にかけての海洋認識探知力の重要性を重視している。今年7月にベンガル湾で展開された同演習の規模拡大と内容の深化を両首相は評価している。

  1. 2017年から日本はマラバール演習に常時参加国になり、米印二か国海軍演習の性格が変更されている。

  1. 友好親善関係の増大を受けて日本も対潜戦、機雷処理でインド海軍に訓練参加の門戸を開くことになり、2018年スタートしそうだ。■

2017年9月15日金曜日

☆謎の機体好きにはたまらないノースロップ・グラマン重役の執務室模型の正体は?


すっかり先端機、高度技術機というとノースロップの名前が先に立つようになりましたね、それだけ今まで同社がブラックの事業に従事してきた実績があるためでしょうか。


This Northrop Grumman Exec Has Some Very Interesting Airplane Models On His Desk

ノースロップ・グラマン重役の執務室で謎の機体を発見

For a guy that has likely seen it all when it comes to classified aircraft projects, the planes that adorn his desk are well worth checking out.

極秘機材の開発に従事した当の本人だけに、垣間見える機材はチェックの価値がある



US-POLITICS-DEFENSE-ANNIVERSARY-B2FREDERIC J. BROWN—AFP/GETTY IMAGES
 BY TYLER ROGOWAYSEPTEMBER 3, 2017
クリス・ヘルナンデスChris Hernandezはノースロップ・グラマンの研究技術エンジニアリング部門担当副社長として驚異の成果を目のあたりにしてしてきた。LAタイムズがうまくまとめた記事を先週発表しており、本人の写真では模型飛行機多数のが写っている中に興味をそそるモデルがあった。
ヘルナンデスが携わった事業そのものが航空宇宙産業の過去三十年間の進展そのものだ。ノースロップ・グラマンのウェブサイトでは本人の経歴を以下まとめている。
「クリス・ヘルナンデスは研究技術エンジニアリング部門担当の副社長をノースロップ・グラマン・エアロスペースシステムズで務めている。軍用機、自律運用や宇宙システム、さらに次世代ソリューションで世界各国に分布する顧客を支援することで自由を守り、人類の好奇心をさらに進めるrうている。
ヘルナンデスは航空宇宙システムズ内の技術部門をまとめ、同部門の広範囲な製品群や事業の設計開発に必要な作業やツールを統括している。同時にNG Nextと呼ぶ同部門の基礎研究ならびに応用技術研究部門を統括している。これは将来の技術開発とともに成長し競争力をつけることで差別化を目指す航空宇宙システムズ部門にとって重要な組織である。
本人はNG Next副社長も務めた。その前には先端システムズ部門副社長で将来装備の高性能システムソリューションの実現に尽力した。例として次世代制空戦闘機、低視認性および低視認機対応システムズ、長距離攻撃ISRシステムズ、高性能兵器および次世代貨物輸送システムズがある。本人は最高技術責任者として航空宇宙システムズ内の旧高度技術プログラムおよび技術事業領域の技術開発担当副社長も務めた。
そのほか旧統合システムズ領域で技術開発事業統括担当副社長、地上監視戦闘管理航空システムズ領域で副社長兼次長、B-2爆撃機事業で副社長兼技術主幹、多機材搭載レーダー技術導入事業で副社長兼事業主幹を務めている。ノースロップ・グラマン入社(1987年)の前はロックウェル・インターナショナルコーポレーションでNASAのスペースシャトル他高性能宇宙打ち上げ機コンセプト実現に従事した。

すごい人物だ。そんな本人が自分の机の上に飾ざっている模型に注目だ。そこでFlightglobal.comのアメリカ支局長スティーブン・トリンブルStephen Trimbleがこんな指摘をしている。
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Hey, @northropgrumman. Cool story about SVP for R&T Chris Hernandez, but how about you ID the model in upper-right? http://www.latimes.com/business/la-fi-himi-hernandez-20170903-htmlstory.html …
右上のモデルがわかるかな?

LAタイムズ記事の写真の高解像度版もあり、記事は読む価値がある。

写真で見える機体は以下のようだ
  • 無尾翼ティルトローター機のようなもの
  • E-10 MC2A
  • E-7ウェッジテイルとMQ-4Cトライトン、多分オーストラリア向け
  • RQ-4グローバルホーク
  • MQ-8B ファイヤースカウト
  • バット
  • プロテウス
  • 不明機
  • F-117か
  • ノースロップ・グラマンの第六世代戦闘機コンセプト
  • B-2 スピリット
ノースロップ・グラマンの特徴の全翼機形状の「不明機」が興味を引く。RQ-180といわれるエリア51で2010年代に代わるこ炉開発された機体で米空軍が極秘のうちに飛行させている機体なのか。高高度飛行可能で敵地奥深く侵入可能な無人機は米情報収集用機材とネットワーク機能のエコシステムをつなぐミッシングリンクなのか。機体形状は広い周波数帯で低視認性(ステルス)であり、これがノースロップ・グラマンがB-21レイダーの受注で決め手となった。また次世代爆撃機の実証機が2000年代後半に実際に飛行していたとする有力な兆候がある。本当に存在するのであればこれがその実機なのか。
一番左のティルトローター機も謎だ。有人機のようにも見える。垂直尾翼が見当たらずステルス機の特徴もあるようだ。
スティーブン・トリンブルによればヘルナンデス本人から数年前にこの模型を直接見せてもらったという。当時はノースロップ・グラマンが無人TERN設計案をDARPAに提示しており初期段階だった。ただ機体は想像図の度に異なっており、下に示したものはよく似ているが機体形状がより曲線的になっており、逆V字型尾翼が特徴的だ。
NORTHROP GRUMMAN

ただし模型があっても実機が飛行している証拠にはならないし、謎の機体は現行機に進化する途中の存在なのかもしれないし、開発の袋小路に入った機体なのかもしれない。FB-23模型の写真は今でも軍事航空愛好家の中で流通しており、「もしもの世界」としてこんな機体が実際に飛んでいたらと興味を引き付けている。今回もそのような例にすぎないのかもしれない。
Contact the author: Tyler@thedrive.com

2017年9月14日木曜日

次期コンパスコール機にG550採用、特殊任務機材の流れが変わりそう


流れが変わったと思います。大きければよいという発想ではなく、目的と経費を考えると当然の流れかもしれません。さらに電子装備での技術革新が加わるのでしょう。ボーイングには痛手となりました。737でも大きすぎるということでしょうか。コンパスコールとは搭載装備の名称だったのですね。


It's Official, the USAF's Next Jamming Plane Will Be a Gulfstream BizJet

米空軍次期ジャミング機はガルフストリームのビズジェトが選定された

The US military is finding this type of aircraft increasingly attractive for various specialized missions. 米軍の各種特殊任務機にビジネスジェット機が進出する予感

BY JOSEPH TREVITHICKSEPTEMBER 8, 2017
OWEN65 VIA WIKIMEDIA

  1. 議会・業界の反発を押しのけ米空軍が次期ジャミング機材にガルフストリームG550ビジネスジェットを選定した。老朽化進みながら依然重要な現行機材EC-130Hコンパスコールの後継機へ道が開けたが米各軍で同様の機材を特殊任務に採用する動きにつながる可能性が出てきた。
  2. 2017年9月7日に空軍がL3と契約成立させコンパスコール搭載機材を新型機に移し替えることになったと発表。契約内容には機材の最終選定権が契約企業に認められ、G550となった。
  3. 「L3が社内検討と空軍事業推進室との協議を経てガルフストリーム550を空中早期警戒機(AEW)として選定しました」と空軍報道官アン・ステファネックAnn Stefanekが述べている。「次期コンパスコール機はEC-Xと呼称されます」
  4. 事業経費総額が不明のままなのは、契約はいわゆる「非明確化」方式でL3は直ちに事業に取り掛かりつつ最終価格を空軍と交渉する形のためだ。現時点でコンパスコール機能の抜本的変更は想定されず、機材に焦点が集まっている。
GULFSTREAM
  1. G550空中早期警戒機には一体型空中早期警戒Conformal Airborne Early Warning機の名称もついている。
  2. 米空軍がEC-130H初号機を受領したのは1982年のことでC-130Hハーキュリーズを改装した。以来14機体制を維持し、二回にわたる大規模近代改装のほか小改良を受けている。
  3. 実際の性能や改修内容は極秘扱いだがコンパスコールのミッションは敵の通信、レーダー、他電子送信を妨害して空と地上双方の作戦を支援することだ。直近ではEC-130H部隊はイラク上空を飛行しISISの無線交信や携帯電話利用を妨害し、即席爆発装置の作動を食い止め小型無人機を墜落させているはずだ。
  4. コンパスコールの機内装備では妨害のため各種発信源を把握追跡する機能があるため限定的ながら敵の配置や進行方法の情報収集能力も実現している。米軍がISIS作戦を開始した前からEC-130Hはイラク、アフガニスタンで60千飛行時間にわたる活動を展開していた。.
  5. 残念なことに機体老朽化が進み保守管理が一層困難になっている。空軍も一時はコンパスコール機材半数を廃棄する検討をしたが後継機検討はしていなかった。
  6. ガルフストリームに単独調達契約を交付することには議会が反対した。2016年にはEC-37Bの名称をついていた。米空軍、海軍、沿岸警備隊は初期型のガルフストリームVやG550をVIP搬送用にC-37AならびにC-37Bとして運航中だ。
  7. 議員にはとくに選挙区に航空機メーカーがある議員から手続きを競争方式にせよとの圧力がかけられた。空軍はこれに対してL3に委託して近代化改修を行わせ同社に機材を選択させる奇策に出た。空軍は同社に既存EC-130Hの保守管理経費を支払っている。
USAF
EC-130H コンパスコール機
  1. さらに抗議の声を上げたのはボーイングとカナダのボンバルディアでそれぞれ737とグローバル6000の採用を期待していた。だが空軍は事業を先に進め、2017年8月25日に米会計検査院が両社の抗議を却下している。両社はL3は長年ガルフストリームで仕事しており最初からG550ありきの姿勢で偏向していると非難していた。
  2. もちろんガルフストリーム550やほかのビジネスジェット機で早期警戒管制や情報収集といった各種ミッションを行わせる構想は前からある。ガルフストリームも独自に特殊ミッション部がありイスラエル航空宇宙工業(IAI)と共同でこうした用途用の機材をイスラエル軍に提供しており、一体型空中早期警戒Conformal Airborne Early Warning (CAEW) 機と呼んでいる。これが空軍のEC-Xの原型になるはずだ。イタリア、シンガポールも独自にCAEW機を運用しており、オーストラリアもG550原型の電子戦機材の調達に向かっている。
  3. 手順が適正かは別にして今回の決定内容で今後の特殊任務機材に大きな意味が生まれた。G550のような比較的小型機材でコスト効果が大きくなっているのはジェットエンジン技術の改善効果が大きい。
  4. コンパスコールの次期機材更新は米海軍のNP-3D「ビルボード」機の更新案に続くものだ。ここでもガルフストリームG550を特殊用途に改装し、NC-37Bと呼称している。この機材はミサイルテストの監視の他各種研究調査にも投入し、あわせてテスト現場に望ましくない訪問者が来ないか監視の任務にも就く。
GULFSTREAM
米海軍のNC-37B想像図 
  1. 同時にL3とガルフストリームはノースロップ・グラマンと合同で空軍の求めるE-8C共用監視標的攻撃レーダーシステム(JSTARS)レーダー機の後継機事業にも提案している。共同事業体はここでもG550を提案しているが機体上部に「カヌー」と呼ぶ強力なレーダーを搭載しCAEWがレドームを付けているのと対照的だ。二機種で共通性があることからノースロップ・グラマン案には大きな訴求力がある。
  2. EC-Xと合わせてオーストラリアが前述のようにG550を電子攻撃装備で調達するのも大きな要素だ。ペンタゴンは海外軍事販売制度で進めようとしており、米軍が機材調達すればコストを下げる要因になる。空軍他も機材運営のシステム共通化に関心を示す中で有事対応を簡素かつ安全に合同実施したいとしている。
  3. 今後もビジネスジェット機を原型にした機材が空軍のE-11A戦場空中通信中継 Battlefield Airborne Communications Node (BACN)通信機材といsてボンバルディアのグローバル6000を原型に搭乗するはずだ。さらにVIP用機材は各軍で広がっており、先述したC-37以外にC-20Cを大統領も使っている。
  4. ビジネスジェット機がもっと多くの任務をこなすことになりそうだ。機体サイズからコスト面で現存の情報収集監視機材より有利となる。大型爆撃機を簡単な偵察任務に投入しているが、はるかに合理的な活用方法となる。
USAF
米空軍の E-11A BACN機
  1. 現時点で米陸軍は中古のボンバルディアダッシュ-8双発ターボプロップ機を低機能偵察機に転用する余地絵でRO-6Aとして2023年に稼働開始する。だが陸軍の使用機材ではすでに生産終了しているものがあり、G550のような機材に必要な装備を移したいと考えているのは米空軍のコンパスコール事例同様だ。
  2. 米特殊作戦司令部SOCOMも新型有人情報収集機材を調達して現状のU-28Aおよびビーチクラフト・キングエア原型のスパイ機の補助に充てる検討中だ。空軍の第645航空システムズ集団(特殊プロジェクト担当部門でビッグサファリの名称の方が知られている)と共同でSOCOMはドルニエDo-328ターボプロプ双発機をクーガーの名称で新型センサー他の装備試験用に飛ばしている。そのほかにも機密性の高い有人機装備があり、早晩後継機の検討に迫られるだろう。.
  3. G550をCAEWとして運用すればSOCOMにも情報集機材の選択肢が生まれそうだ。空軍特殊作戦軍団が供用中の機材は民間機原型でありビジネスジェットの投入はさらに訴求力を増すはずだ。
  4. 新型EC-Xは今後の米軍機材のトレンドの一部でビジネスジェットの大きさの機材がこれから特殊任務をより多くこなすことになりそうだ。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2017年9月12日火曜日

世界最後のT-33が退役

T-33は原型P-80が第二次大戦中の機体なので長寿命機になりましたね。しかしこれで現役機体は見納めです。航空自衛隊は2000年まで供用していたのですか、大事に使いましたね。

Bolivia retires last T-33s trainer/attack aircraft, announces replacement

ボリビアが最後に残ったT-33練習攻撃機をついに退役させ、後継機調達を発表

Daniel Wasserbly and Jonathan R Olguin - IHS Jane's Defence Weekly
01 August 2017

ボリヴィア空軍(FAB)がロッキード/カナデアT-33で最後に残っていた4機を7月31日に退役させた。同機はFABの主力ジェット練習機兼軽攻撃機として44年間供用された。

ボリヴィアのT-33Mk3機材はカナダから1973年に購入しその後フランスからも導入した。2000年代初頭にカナダ企業が完全修理の上装備を近代化し供用期間を15年延長していた。同機種で最後まで運用された。
18機がデジタル式エイビオニクスなど近代化を受け、9機が2015年末まで運用されていた。重要部品が調達不可能となり早期に退役している。
7月31日の退役式典でボリヴィア大統領エヴォ・モラレスは「T-33でパイロット多数が養成され」て同国は「腕をこまねいたままでいられず引き続き装備品を軍に調達していく」と語った

2017年9月11日月曜日

☆中国が開発中の長距離精密巡航ミサイルに要注意



Images indicate possible precision-guided version of China's KD-20 LACM 中国が精密誘導型KD-20LACMを開発した模様

 Neil Gibson and Richard D Fisher Jr - IHS Jane's Defence Weekly
10 August 2017

PLAAF関連「青空」ウェブサイトで西安H-6KにKD-20LACM二発が搭載されており、先頭部のカバーは光学シーカーがついている証拠だ。 Source: Blue Sky web page

要約

  • 中国が新型光学誘導型のKD-20対地攻撃巡航ミサイルを開発した模様
  • H-6K爆撃機に搭載し長距離スタンドオフ攻撃に使われそうだ
人民解放軍空軍(PLAAF)関連ウェブサイト上の写真から中国が新型光学精密誘導版のCJ-10K/KD-20対地攻撃巡航ミサイル(LACM)を開発したようだ。 
7月にPLAAF協会の「青空」ウェブサイトに掲載された写真で西安航空機製H-6K爆撃機にKD-20、YJ-63/KD-63(LACM)が二発ずつ搭載される様子が見られ、このうちKD-20には先頭部に保護カバーがついている。これはミサイルの光学あるいは赤外線(IR)シーカーの保護措置だ。
PLAAFが新型誘導ミサイルのKD-20をどう使うのか、おそらくKD-20Aの制式名だろうがPLAAF専門家のHui Tongが自身のブログで解説している。同人は2013年にもPLAAFがKD-63テレビ式最終誘導ミサイル(射程180-200キロ)を画像IR(IIR)シーカー搭載に改良すると報じていた。
KD-20は射程1,500キロといわれ、慣性航法方式(INS)に地形追随レーダー高度計をつけた上に汎地球航法衛星方式(GNSS)も使うと報道されていた。IIRシーカー付きKD-20によりH-6Kは対空防衛のほとんどの有効射程外から攻撃を加えられる。■


2017年9月10日日曜日

MQ-25無人空中給油機に期待する米海軍航空部隊


すったもんだのあげく「給油機」で落ち着いた同機の構想ですが、果たして完全新型機なのか、それとも...というのは供用開始を最短で2019年と設定しているからですが、それにしてもMQという名称で給油機とするのにも違和感がありますね。ふつうはKでしょう。ここにはUCLASS事業以来米海軍が構想してペンタゴンとやりあった作戦構想でのごたごたがあるのでしょうか。また空母での無人機運用もX-47で実証したきりですからこれから運用体制(遠隔操縦パイロットの引き抜き、艦内の運用施設構築)さらに空中給油実施テストも行う必要があります。そうなると相当の加速度で事業を進めることになりますね。ま、それはともかくスーパーホーネット多数を空中給油用に酷使する現状が改善されるのはよいことではないでしょうか。

Boeing image of the company’s MQ-25A Stingray bid. USNI News Photo

MQ-25 Stingray Unmanned Aerial Tanker Could Almost Double Strike Range of U.S. Carrier Air Wing

MQ-25スティングレイ無人空中給油機により米空母航空隊の作戦半径はほぼ倍増する

 By: Sam LaGrone

August 31, 2017 7:09 PM • Updated: September 1, 2017 6:55 AM




  1. MQ-25スティングレイ無人空中給油機が空母航空隊に加われば打撃戦闘機部隊の有効打撃半径が最大で400カイリ増える効果が見込まれると海軍航空部隊トップが米海軍協会機関誌Proceedingsで以下述べている。
  2. 航空部隊を率いるエアボスのマイク・シューメイカー中将Vice Admiral Mike Shoemakerは初の無人艦載給油機は空母から500マイル地点で15千ポンドの燃料を打撃戦闘機部隊に補給し、各機の運用半径をほぼ倍増できる。
  3. 「MQ-25により航空隊は400マイル以上も先に展開可能となり、必要な機数を展開できるはず」とシューメイカー中将はProceedings9月号の独占インタビューで語っている。
  4. 空母航空隊の現状の作戦半径は450カイリ程度で、ボーイングF7A-18E/Fスーパーホーネットは空中給油なしでこの距離で運用可能だ。ここに300ないし400マイル上乗せすれば戦闘機部隊は700カイリ程度まで進出可能となる。
  5. これが実現すれば海軍航空隊として最大の行動半径が手に入る。退役済みのグラマンF-14Dトムキャットの650カイリがこれまで最長だった。
太平洋艦隊航空部長時代のマイク・シューメイカー中将。厚木基地にて。on March 23, 2016. US Navy Photo

  1. 行動半径が伸びる以外にシューメイカー中将はスティングレイの投入で現在空中給油任務にあたるスーパーホーネットの負担が減る効果が大きいと述べる。現在、スーパーホーネットの23割が僚機への給油にあたっている。「MQ-25はライノ(スーパーホーネット)より効率よく給油でき、相当先の地点で4機から6機に給油可能です」
  2. 「またサイクル運用時にはリカバリー給油機の機能も期待できる。少なくともサイクル三回分の実施が可能だろう。一機発進させ、上空を飛び攻撃後、リカバリー地点に戻り、ふたたび高高度で待機し次のリカバリーを待つ。スーパーホーネットを給油任務につけて機体の消耗を防げるのはいいことだ。飛行距離を延長しつつ給油任務機材の消耗をふせぐことをめざしている。今はライノしか給油機がないからね」
  3. これに加えて精密着艦モードを可能とするマジックカーペットの導入が期待される。予備給油機の必要が減る効果があるからだ。「スーパーホーネットとグラウラーに精密着艦モードが使えるようになると着艦操作が大幅に簡略化できます。飛行に使える燃料が増えて精密着艦が可能となると給油機数も減らせる」
  4. シューメイカー中将はさらにスティングレイの運用方針に触れ、海軍のヘリコプター部門がMQ-8B/CファイヤースカウトUAVと並行運用すると述べている。「MQ-25スティングレイも同様の形で運用し、小規模分遣隊で運用するでしょう」「パイロットはホーネット、E-2、グラウラー、F-35部隊から集めます」
  5. シューメイカー中将の発言はこれまでのところ最も詳細にMQ-25Aを使う空中給油内容に触れたものである。海軍航空システムズ本部NAVAIRはあいまいな発言しかしていない。
  6. USNI Newsとの7月のインタビューでマーク・ダラー少将Rear Adm. Mark Darrah(無人航空機攻撃兵器体系開発主幹)ならびにボー・デュアルテ大佐Capt. Beau Duarte(MQ-25A事業主任)は飛行距離など詳細のかわりに代表的性能指標二つを発表すると述べていた。
  7. 「空母運用への適合性があります。空母から運用し空母搭載のあらゆるサブシステムと統合します。カタパルトや回収装置などですね」(デュアルテ大佐)「次がミッション用給油能力です。洋上で十分な給油を提供する必要があります」
  8. ダラー少将はNAVAIRは価格面を公表しないと述べた。「数値目標を出すとその数字に近づくのは本当に不思議な現象ですが、開発がどんどん遅らせてその数字にしていくのです。今回は今までとは違く方法を取ります」
  9. 「今の段階では価格を決めませんが、各社にはインプット数字の提示を求め、適正かつ正確に事業が進められるかを判断させてもらいます」
  10. NAVAIRはMQ-25Aの機体関連部分の提案要求原案をく評しており、今年秋と見られる完成版RFPをノースロップ・グラマン、ジェネラルアトミックス、ボーイング、ロッキード・マ―ティンの各社に提示する。海軍はデータリンクおよび地上制御装備を開発する。
  11. USNI Newsは海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将が求めるスティングレイの空母運用開始は最短で2019年と理解している。■

2017年9月9日土曜日

★★朝鮮戦争2.0になればこうなる 元米軍関係者の見立て



9月は緊張が高まる月になりそうです。そこで自然災害が多発しているのも気になりますし、民間航空機の死亡事故が過去平均を今のところ大幅に下回っているのも気になります。9月は変動の月になりそうです。韓国は大変なことになります。自分が許可しなければ開戦はあり得ないと言っている大統領が韓国にいるそうですが、事態はもっと先にいきなり進展しそうですね。日本には戦後初めて攻撃を受けるリスクが現実のものなっているのは読者の皆さんも感じているでしょう。

North Korea missile test

What War With North Korea Would Look Like: 20K NK Dead A Day

北朝鮮との戦闘はこうなる:北朝鮮は毎日2万名が戦死する
By ROB GIVENSon September 06, 2017 at 4:01 AM


北朝鮮と米国・韓国及び国連軍が開戦となった場合どうなるのか詳細が分かる米国人はごく少ない。その一人がロブ・ギヴンスRob Givensで在韓米軍で参謀長次長、統合参謀本部議長の補佐官も務めた。そこで本人の考える開戦時の状況説明に目を通してもらいたい。両陣営で毎日数万名が死亡負傷する惨憺たる構図になり、核兵器投入の可能性さえある。以下はジム・マティス国防長官やレックス・ティラーソン国務長官に議会にて話してもらいたい内容そのものだ。編集部
  1. よく北朝鮮との戦争は「想像できない」と言う人がいるが、北朝鮮が核兵器・ミサイルのテストを急いでいる中で想定外の事態が発生する可能性が増えている。統合参謀本部議長ジョー・ダンフォード大将は開戦の可能性について「恐ろしい」とまで言っている。もはや想定内に入った戦争はどんな様相になるのか。
  2. 武力衝突の兆候は十分予測できる。
  3. 数千機もの航空機が朝鮮半島全土で飛び回るだろう。米空軍の戦闘航空団二個に100機を超える戦闘機が韓国に常駐しており、ここに韓国軍が加わり開戦数分間で北朝鮮の数だけは豊富だが旧式な航空戦力を圧倒し、同時にミサイル陣地、砲兵陣地を粉砕するはずだ。
  4. 北朝鮮が主導権を握ればこちら側が航空優勢を確保する前に高いリスクが生まれる。つまり相当の損害を覚悟しなければならない。短期的には在韓米空軍に米海軍、海兵隊、沖縄の空軍部隊、さらに日本からの増派部隊が加わる。米爆撃機が各地から召集されるだろう。北朝鮮全土が攻撃範囲に入る。
  5. 北朝鮮の死傷者は驚くほどの規模になる。試算では一日20千名にのぼる。.
  6. 連合国側の海軍戦力は70隻以上ある北朝鮮潜水艦を狩り防御する困難な任務に直面するはずだ。各艦は小型だが威力は対艦ミサイル同様にあなどれない。戦力では優勢だが連合軍にも喪失艦が発生し、残念だが乗組員も死亡する。北朝鮮は機雷、魚雷、対艦ミサイルで民間商船も狙い韓国から海路で脱出する外国人にはリスクとなる。
  7. 非武装地帯に沿って配置された地上部隊では肉弾戦となるだろう。地形が険しく、狭いため動き回る余地がない。イラクで1991年、2003年に見たような機動戦は水田や山地の多い朝鮮では不可能だ。圧倒的な火力で両陣営に多数の死者が出るだろう。地形の成約とともに北朝鮮が前線を突破して侵入するはずで両軍がつかみ合う戦闘も発生しそうだ。地上戦が北に進展すれば兵員数がもっと必要だ。北朝鮮住民からすればこちら側は占領軍の立場になり、解放者とは見られないはずだ。そのため投入兵員数を増やす必要が生まれる。
  8. 「恐怖」は数千名単位が死傷して現実となる。開戦の場合、北朝鮮は初めの数日で毎日20千名をソウルで失うとの試算がある。付随被害を抑える努力が中東の各戦闘で見られるが、ここでは不可能だ。軍事作戦の陰で一般市民多数の犠牲も回避できなくなる。これは北朝鮮がどこに軍備を配置するあるいは隠すかによって変わってくる。
  9. わが方はクラスター兵器で小型爆発弾を散布するだろう。敵の発砲があれば反撃する。軍事条件がそろえば都市部の標的を攻撃するので民間人の犠牲は避けられない。ミサイルは移動車台ごと破壊する。たとえ微妙な場所に停車していても躊躇しない。地上部隊は敵撃破のため全力を投入し、損害にかまっている暇はない。いかなる近年の事例より大規模な範囲で目標を爆撃する。
  10. 第二次大戦の無差別都市破壊の再来にはならないが、北朝鮮軍の集結移動地点の攻撃に全力を投入する。北朝鮮軍が移動、発砲あるいはこちらに被害を与えれば、こちらは相手を全滅させるだけだ。北がどんな戦い方をするかは想定ずみだ。
  11. ソウルは人口10百万人が暮らすが、北朝鮮砲兵隊の火砲ロケット砲11千門の射程内に入っている。北の潜水艦は黄海、日本海に潜むだろう。すきあれば連合軍艦船を沈めようとするはずだ。また特殊部隊を南に侵入させるだろう。その場合、米軍にも被害が生まれるはずだ。弾道ミサイルを無差別に発射すれば米軍基地も標的になり、各国大使館も被害を免れない。生物化学兵器投入に踏み切れば軍部隊に大きな損害にならなくても民間人に大損害が発生する。
  12. 自暴自棄になれば核兵器を韓国のみならず日本にも投入する可能性もある。その場合のこちら側の反撃を想像してもらいたい。
  13. 戦場経験を積んだつもりだが、筆者にいわせれば戦争とはすべて「恐ろしい」ものであるとはいえ、次に朝鮮戦争が発生すれば全く新しい水準の破壊絵図となるだけでなく過去16年におよぶ中東で今も続く先頭など比較にならなくなるだろう。■
Rob Givens is a national security expert at Defense Priorities, a Washington think tank. A former Air Force brigadier general, he served as special assistant to the Chairman of the Joint Chiefs of Staff, as well as the deputy assistant chief of staff for operations of U.S. Forces Korea.