2020年5月24日日曜日

中国を制圧する海軍力のカギは各国が運用するF-35B空母だ


 この記事は日本含む「連合国」の視点ですが、見方を変えると包囲され封鎖される中国にとっては不安で仕方ないでしょうね。F-35Bを各国が供用すれば大きな効果が生まれそうですね。日本についてはいずも級で知見を積んで更に大型艦の建造に進むのか、注目です。

F-35Bは短距離離陸垂直着陸(STOVL) 性能を有する第5世代共用打撃戦闘機(JSF)だ。B型はF-35AやC型と異なり、リフトファンと推力偏向エンジンで短い滑走路で離陸し、垂直着陸できる。このため小型空母や強襲揚陸艦でも運用できる。

JSFは大量配備の第5世代戦闘機として世界唯一の存在だ。第5世代機は敵機を先に探知しながら敵に探知されない点で従来型機材と一線を画し、大幅な戦力増強が期待できる。敵を目隠しして戦うようなものだ。

第5世代機の戦力と柔軟性を組み合わせ連合国側の航空戦力運用艦船数は三倍となる。ここから中国への海軍戦力の優位性が生まれる。F-35Bは当初AV-8Bハリヤー後継機として近接航空支援用と見られていたが、同機の性能は底にとどまらず、航空、海洋両面で優勢確保に投入してこそ真価を発揮できる。

ステルス性能、長距離センサー性能に加えレイセオンのAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを機内搭載し世界最高の制空戦闘機となる。ただし、F-22には劣る。共用打撃ミサイル(JSM)、ロッキードの長距離対艦ミサイル(LRASM)がF-35Bに長距離対水上艦、対地攻撃能力を付与する。JSMは機内兵装庫に搭載可能でステルスを犠牲にしない。

AN/APG 81は戦闘機搭載レーダーとして最高性能で、電子スキャンアレイで海上捜索から空中での敵機捜索まで各種用途に使える。ソフトウェアの継続改良で能力拡張する。高高度でF-35のセンサーは水平線超え探知が可能で、水上艦を上回る探知距離が実現する。長距離攻撃手段と長距離を見通す目が組み合わされF-35Bは敵より先に探知し撃破できる。

米国の原子力空母ニミッツ級10隻はカタパルト発進と拘束ワイヤー着艦対応のF-35Cを運用する。各艦は圧倒的戦力を有する。ただし原子力空母部隊の整備には巨額予算が必要で、米国以外の各国では実現が困難だ。この敷居をF-35Bが下げ第5世代機の艦艇搭載を実現できる。

米海軍にも通常型の強襲揚陸艦9隻があり、STOVL戦闘機運用が可能だ。原子力空母の半分の大きさしかなく、航空戦に特化していないが、各艦で米海軍戦力を大幅増強できる。F-35Bは2015年に初期作戦能力を獲得し、米海軍は第5世代機運用空母が10隻から19隻へ倍増できることを理解できた。

各国の合計11隻の海軍艦艇で第5世代戦闘機運用が可能となる。下にSTOVL運用艦のリストを示す。

  • 日本* 2
  • イタリア* 1 (さらに建造中1)
  • スペイン 1
  • オーストラリア** 2
  • 韓国 1(さらに海上公試中1)

* F-35B引き渡しが始まっている、あるいは発注中
** F-35B運用に艦艇改修が必要

F-35B運用艦の実現は困難でなく、シンガポールでさえ導入を検討中だ。同国はF-35B十数機の導入を発表し、STOVL空母の国内建造もしたいとする。人口五百万の都市国家でも実施可能ということは同機導入で戦力整備の様相が一変することを意味する。

ここには中国が発足させたばかりの空母部隊が影響を与えている。中国は中型空母二隻を運用するが、発艦方式、機関ともに最低水準だ。

米国の大型空母と違い、中国空母にはカタパルトがない。第4世代のJ-15艦載戦闘機は短距離離陸性能がなく、アフターバーナーをフル稼働させランプから離陸する。このためペイロードと航続距離が制約され、F-35Bの戦闘半径より相当短い距離しか対応できない。中国空母は複雑かつ面倒で低効率の石油燃焼ボイラーを使うため航続距離に制限がつきながら、人員多数を投入する非効率な運用となっている。こうして中国艦は低性能なのに高価格の空母になっている。これでは連合国側の第5世代機運用艦隊に対抗すべくもない。中国が連合国側の空母搭載機に対峙すれば、機体の作戦距離、速力、センサー性能で一方的な戦いになるだろう。

また連合国側のSTOVL運用艦の新鋭推進方式は長期間稼働しながら整備や大修理は最小で収まる。中国艦は連合国側の3割4割の稼働しかできない。この差により米国や同盟国側は中国経済の存続を否定する戦力を今後も維持できる。

中国経済にはペルシア湾からのエナジー、アフリカの資源、欧州米国の輸出市場が不可欠だ。とくにペルシア湾のエナジーがなければ中国経済は数週間で崩壊する。有事の海上輸送を確保するため、中国海軍は西太平洋、インド洋双方で支配権の確立が必要だ。この任務達成はかなり困難で、連合国艦艇の一部が出動するだけで不可能になりかねない。

ヨーロッパ艦艇5隻がインド洋にローテーション配備され、ディエゴ・ガルシアやペルシア湾の基地が支援すれば、創設から日が浅い中国外洋部隊に手に余る存在となる。ヨーロッパ各国が艦艇派遣しなくてもニミッツ級空母打撃群単独で同じ効果を生む。他方で東アジア4カ国のF-35B運用艦が東シナ海への侵入経路を封鎖すれば中国で最重要の海上交通路が打撃を受ける。さらにオーストラリアの二艦でマラッカ海峡の海上交通を遮断する。こうした作戦は南シナ海や中国の沿海部に進入せず中国の戦術機の挑戦を受けずに達成できる。

各国SVOTL艦艇の2割だけ出動しても中国海軍へ対応は可能で、太平洋から紅海に至る中国海運を寸断すれば同国経済は崩壊する。

F-35開発テストの進捗がなかなか完了しないことで複雑な機構のSTOVL型機にこれだけの時間と費用をかける価値があるのか疑う向きもある。ただし、同機でしか得られない効果を考えると連合国側のSTOVL運用艦で10機といわず30機あるいはそれ以上を搭載すれば真価を実証するはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 23, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaJetsF-35Xi JinpingNavy


Merrick "Mac" Carey is a former senior Capitol Hill aide who is now CEO of the Lexington Institute, a public policy think tank in Arlington, Virginia.

パンデミック後のPRC⑤ 中国は超大国の座につく試験に不合格

日本国内では緊急事態宣言の解除、営業自粛の撤廃など身近な問題に議論の焦点があるようですが、全く異なる地図になった世界情勢には関心を払う余裕がないようです。こういう事態だからこそ余裕ある向きには未来を設計する能力を発揮してもらいたいものです。

世紀にわたり驚異的成長を達成してきた中国は超大国へあと一歩に近づいていたが、コロナウィルスの犠牲になったようだ。パンデミックは中国に責任ある超大国の姿を示す絶好の機会のはずだったが、目論見は未達成に終わった。
世界がコロナウィルス危機発生前より強い敵意を示すのに中国は気づいている。原因の多くは中国自身にあり、対策の誤りや初期段階で情報を抑制し、他国に責任転嫁し、影響力を誇示するような稚拙な対応も一因だ。▶昨年12月初旬にウィルスは把握されていたようだが、中国官憲は新型ウィルスを話題にした医師団を処分し、標本は破棄させた。▶発症の中心地武漢に厳しい移動制限を課した時点で百万単位の住民がすでに移動していた。

中国は全面的プロパガンダ工作を開始し、自らの過ちを隠し無責任対応から目をそらせるべく、米国が発信元だと世界に告げてしまった。▶世界は中国が無実と信じず、逆に米国は対応を硬化し中国は敵対勢力だとの確信を深めた。中国の大失態やその後のプロパガンダ工作は米国でもまれな超党派合意を生んだ。▶共和民主両党は中国には強硬な態度で臨むしかないと理解し、中国当局は信頼できず、パンデミックは中国に責任があると共通認識に至った。ハード、ソフト両面で大幅な余力がある米国は独裁的な敵勢力に極めて危険な存在だ。


米国外に目を転じると、中国は自国イメージ改善を試みたものの失敗している。ヨーロッパでは中国提供の医療物資で不良品が多数見つかった。オランダはマスク数十万点を受取り拒否した。スペインも検査キットで不良品が相次ぎ返品している。

中国人主人公が米国傭兵を撃破する人気映画にあやかり中国の積極的外交姿勢は「戦狼」と呼ばれるが、対外関係で裏目に出ている。オーストラリアがウィルスの発生原因を尋ねたところ、中国国営メディアはオーストラリアは「中国という靴の底に張り付いたガム」と表現した。オーストラリアが中国との通商関係を悪化させようとしており、「オーストラリア産ワインやビーフはもういらない」とまで駐オーストラリア中国大使に発言させた。これでは戦狼というよりマフィア流の外交ではないか。

中国は米国と親密な協力国の怒りを買ってしまった。ドイツ紙ビルドが中国に賠償金数百億ドルを求め、ベルリンの中国大使館はドイツ国民から白い目で見られる存在になっている。フランスでは中国外交官が同国では介護施設で高齢者を意図的に死亡させていると批判しフランス当局が譴責処分を与えた。

中国国内で外国排斥の動きが高まりアフリカ諸国との関係で悪影響が出ている。広州でパンデミック最中にアフリカ国民排除の声が高まった。アフリカ各国の関係者が警戒の声を上げている。

外交面では中国は世界の大勢と反する動きで悪い結果を生んできた。中国最大の情報機関で習近平の直轄機関といわれる国家保安省とつながる中国シンクタンクの報告書では反中国感情は1989年の天安門事件並のまで高まっていると指摘している。

トラブルは外交面にとどまらない。経済は50年で初の縮小となり、2020年第1四半期は6.8%減少に終わった。小売販売と工業出荷はともに大きく前年比で縮小し、失業率が上昇中だ。経済刺激策があっても今年の経済成長はよくて低調といったところだろう。

低成長が政治安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。中国共産党の統治モデルは経済拡大と生活水準の安定的向上で正当性を維持することにある。経済悪化で国内不満が高まれば、兵力投射も成約を受けかねない。

パンデミックが数ヶ月経過する中で、中国は自国のソフトパワーが減退し、経済が悪化しながら世界が非友好的になってきたのを自覚している。端的に言えば、中国は指導的立場につく試験に不合格となり、超大国の地位を目指す動きも頓挫したのである。

外交では不合格となったが次の課題は中国経済の回復が米国・米国の同盟国より先行し、世界経済を牽引できる強さを示せるかだ。だが世界経済の回復を牽引するため海外で指導力の発揮が必要だが、中国は準備不足を露呈している。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 23, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: CoronavirusChinaEconomic GrowthPandemic

Jeffrey Cimmino is a program assistant in the Global Strategy Initiative in the Scowcroft Center for Strategy and Security at the Atlantic Council. His writing has appeared in the National Interest, National Review, the Washington Free Beacon, the Washington Examiner, Spectator USA, and other publications.
Image: Reuters.

2020年5月23日土曜日

米海軍が水上艦レーザーでUAV撃墜に成功

USN CAPTURE
ンアントニオ級揚陸艦USSポートランドが新型指向性エナジー兵器で小型無人機の撃墜に成功した。
米太平洋艦隊がレーザー兵器システム実証装置(LWSD) Mk2MoD0のテスト結果を5月22日に発表した。テストは5月16日に太平洋上の非公表地点で実施された。海軍は「システムレベルでの高出力半導体レーザー試射として初」としているが、同艦からレーザー発射が以前あったかは明らかにしていない。
「ポートランドでテスト運用した半導体レーザー兵器システム実証装置は今後の兵装システムに新しい道を開いた」とポートランド艦長キャリー・サンダース大佐が声明文を発表。「UAVを対象に半導体レーザー兵器システム実証装置を海上で作動させ貴重な情報が得られた」
SUNDIEGOLIVE.COM CAPTURE
USSポートランドに搭載されたレーザー兵器


LWSD Mk 2 Modはノースロップ・グラマンが開発し、半導体レーザー技術成熟化(SSL-TM)の一環で2019年末にサンディゴでポートランドに搭載された。
USN
USSポートランドがLWSD Mk 2 Mod 0を作動させた。2020年5月16日


LWSD Mk 2 Modの出力は150キロワットで無人機や小型舟艇多数の襲撃への防御手段となる。レーザーは同時に光学センサーやシーカーを無効にできる。フルモーションビデオカメラも搭載すれば標的の追尾と照準合わせ以外に監視にも使える。
海軍が開発中のレーザー装備にはSSL-TMも含み4種類の装備があり、今後高性能レーザー兵器の実現への踏石となる。アーレイ・バーク級駆逐艦USSデューイも海軍用光学眩惑攻撃装置(ODIN)と思われる装備が搭載している。
USN

米海軍は以前から作戦級レーザー兵器を艦艇に搭載している。USSポンスがAN/SEQ-3レーザー兵器システム(LaWS) を搭載し、2014年から2017年まで中東に展開した。ノースロップ・グラマンがLaWSおよび海上レーザー実証装置(MLD)を開発した。ともにLWSD Mk 2 Mod0(150キロワット)の開発に有益な情報を提供した。MLDは15キロワット級、AN/SEQ-3が30キロワット級だったので今回は大幅に出力増となった。
「新しい装備の性能向上により水上戦の様相が一変する」とポートランド艦長サンダース大佐が述べている。今回の成功で海軍のめざす指向性エナジー兵器開発の大胆な目標に一歩近づいた。■
この記事は以下を再構成したものです。

The Amphibious Warship USS Portland Has Shot Down A Drone With Its New High-Power Laser


2020年5月20日水曜日

中国の新型ステルス爆撃機H-20はいつ公表になるのか




テルス爆撃機の目標はレーダーに姿を見られないことだが、中国軍は次世代爆撃機の公表時期を念入りに検討しているといわれる。同機の登場を心待ちにしてきた軍事筋も今年11月まで待たされそうだ。

西安H-20の実機公開は今年の珠海航空ショーになりそうだ。ただしそれまでにコロナウィルスが制圧されるのが条件だ。今年秋に再度ウィルスが猛威をふるっていれば、公開は延期されるだろう。

「珠海航空ショーは中国の大国ぶりと疾病制御を顕示する場になる。外部世界に中国の防衛産業の健在ぶりを示すはずだ」と匿名筋がサウスチャイナ・モーニング・ポストに述べていた。

ハリウッド映画そっくりの手法で同機の一部が2019年の人民解放軍空軍の創立70周年パレードにあらわれていた。

今年の航空ショーで実機が登場すれば、その攻撃範囲に収まる各国、つまり日本、南朝鮮、オーストラリア、さらにグアムで緊張が高まるはずだ。

米国防総省(DoD)の予想は同機の航続距離は5,300マイル、亜音速飛行で極超音速ミサイル4発を搭載とある。
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ICBM、潜水艦発射ミサイルとならび中国に「核三本柱」の一部となる。米国は常時抑止効果を実現しているが、中国もこのレベルに到達すれば域内の構図が変化するのは確実だろう。

毎年恒例の議会向け報告書でDoDは中国が三本柱の実現に近づいていると指摘していた。

「中国指導部は同機の公表で域内バランスが変化するか慎重に検討中で、特にCovid-19パンデミックで緊張が高まっている域内情勢を考慮している」と別の匿名筋がサウスチャイナ・モーニング・ポストに語っている。

ただし、上記議会向け報告書は機材や兵装があるだけでは核の三本柱は成立しないと指摘している。

「正しく機能させるためには訓練ほか多数の作業が必要だ」とインド太平洋地区の安全保障担当国防次官補ランドール・シュライバーが述べている。中国軍は「その方向に進んでおり、実用に耐える装備を三分野で整備中だ」という。

西安H-20が三本柱の一つになるのは確実としても、期待される性能の実現まで時間がかかりそうだ。エンジン問題のため速力は設計想定を達成できない。とはいえ、H-20が米F-35共用打撃戦闘機への対応手段となる可能性がある。米国と同盟国が次世代戦闘機多数を域内に配備すれば、中国としてもH-20の配備を急ぐ必要を感じるはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 5, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: H-20 BomberH-20Xian H-20MilitaryDefenseTechnology


2020年5月19日火曜日

米次期フリゲート艦FFG(X)で注目すべき5項目

海軍が次世代フリゲート艦にフィンカンティエリのFREMM設計案を採用したが、ほぼ新型艦のため初号艦就役は時間がかかそうだ。
4月30日付で交付された契約では10隻までフィンカンティエリのマリネットマリーン造船所(ウィスコンシン)で建造する。海軍は少なくとも20隻を調達する。以下の5点は予め知っておく価値がある。
1) 価格 
研究開発調達担当の海軍次官補ジェイムズ・グーツによれば初号艦は12.81億ドルで、設計費用と造船所の対応作業費用を含む。レイセオンのAN/SPY-6派生型レーダーやロッキード・マーティンのイージス戦闘システム等の装備品は政府調達で搭載する。12.81億ドルのうち造船所に流れるのは7.95億ドルとなる。
費用は2号艦から大幅に下がる。海軍の目標は2018年価格で8億ドル、高くても9.5億ドル止まりとする。グーツ次官補はさらに下がると見ており、20隻建造の場合で7.81億ドルの試算がある。
2) 工期 
次世代フリゲート艦FFG(X)の詳細設計作業がまもなく始まるとグーツ次官補は述べ、建造は2022年4月以降になる。一号艦は2026年引き渡し予定で2030年までに就役するが、初期作戦能力獲得は2032年となる。
10隻建造の契約は2035年に完了する。20隻建造の場合、マリネット造船所以外でも建造になるかは不明だ。
Sailors stand watch on the bridge of the Italian FREMM Alpino, the parent design for the U.S. Navy's new FFG(X), underway off the Eastern Seaboard in May 2018. (David B. Larter/Staff)
米海軍向けFFG(X)の原型となるFREMMのイタリア海軍アルピノのブリッジ。 May 2018. (David B. Larter/Staff)
3) 計画遅延の可能性
海軍は今回の建造計画をしっかり立てたとするが、最近の建造案件には芳しくない結果が多い。
フォード級空母の事例もあったため上院軍事委員会委員長のジム・インホフェ議員(共、オクラホマ)が初号艦の実績達成に注意を示した。海軍がFFG(X)のリスク低減策で採択したのはアーレイ・バーク級フライトIII建造で証明済みの装備品を採用したことで、イージス戦闘システムの最新版やAN/SPY-6レーダーの小型版が例だ。
「SPY-6など技術が成熟しているので安心している」とケイシー・モートン少将(無人艦艇・小戦闘艦担当事業主幹)が述べている。
初期段階から産業界を参画させて初号艦のリスクが低くなったとモートンは説明。「各企業が要求内容に詳しくなり、性能諸元を理解してもらえればいっしょにコスト削減できる。初号艦で問題が多数見つかることが多いので先手を打って行く」
4) 拡張性 
FREMM案の採択では新装備とくに大量に電気を消費する装備の後日搭載を重視したと海軍は説明している。
競合中にフィンカンティエリは発電容量の拡張はすぐ実施できると強調し、艦体に穴を開けずコンピュータやエンジン装置が交換できるとも説明した。
The Italian FREMM Alpino, the parent design for the U.S. Navy's new FFG(X), is shown pierside in Baltimore, Md. (David B. Larter/Staff)
イタリア海軍のFREMM艦アルピノ。ボルチモア寄港の際に撮影。 (David B. Larter/Staff)

フィンカンティエリの上席役員リック・ハント退役海軍中将で、同社は性能改修の余地を残しながらコスト面の要求水準も満足させる内容で入札したと報道陣に説明。「柔軟度を残し、装備品が利用可能になればすぐ搭載する余地を残し、将来ニーズに対応可能とする要求がありました」(ハント)
ジム・キルビー中将からは海軍がミサイル対ミサイル戦闘から移行する中で将来の発展余地が重要な要素との発言があった。「相手の脅威が急速に進展する状況を把握することが重要」といい、「将来の姿を今決めたくない。指向性エナジーほかの装備の搭載余地を確保するのが重要だ」「海軍のレーザー開発は広範囲に進展中で、一部艦艇にレーザーを搭載している。今後の装備品として必須となり、ミサイル発射装備は攻撃用にとっておき、局地防衛には長期間供用可能な装備品をあてる。
5) 他艦種への応用
海軍の調達トップはFFG(X)選定手順に満足し、他の艦種のモデルになると見ている
「FFG(X)は海軍の調達業務の進化形で、調達計画、要求内容、技術部門と造船部門が共同開発を詳細設計・建造要求提案前に行えた」(グーツ)「要求内容、調達計画、設計作業を統合して従来から6年程度を短縮できた。コスト、調達、技術の各面に焦点をあわせ最高の結果を得られるようにしたためだ。チーム統合でここまでの成果は海軍にこれまでなかったと思う。これからの建造でもモデルになる」
ただし、FFG(X)には開発済み技術や原設計があり、全くの新型艦の場合にも応用できるか不明だ。
「全員を早い段階でまとめたのが時間短縮になった」と語るのがブライアン・マグラスで、駆逐艦艦長を経てフェリーブリッジグループのコンサルタントだ。「新型艦で同じ作業を採用し革命的な技術や未実証技術さらに開発中の技術を取りまとめられるか疑問だ。全く事情が異なる」
FFG(X)は戦力性能面で海軍に大きな前進だが、革命的な艦でなく従来と違う方法が必要な艦ではないというのがマグラスの意見だ。■
この記事は以下を再構成したものです。

5 things you should know about the US Navy's new frigate


By: David B. Larter    May 5

2020年5月17日日曜日

歴史に残る機体(25)サンダーボルトP-47とA-10の意外な共通点




ともに被弾しても飛行可能で、近接航空支援で不可欠な機材だ。

サンダーボルトが嫌いな人はいない。
今日のA-10サンダーボルトIIはウォートホッグとも呼ばれ、米軍機材でおそらく最も人気の機体だろう。少なくとも米地上部隊に。逆に空軍上層部にサンダーボルトは頭痛の種だ。75年前にもサンダーボルトの名称の機体があり、これも人気の戦闘機だった。

両機種の類似点は皆無に近い。P-47サンダーボルトは第二次大戦機で欧州上空でルフトバフェと戦う高速高高度戦闘機として開発された。A-10サンダーボルトIIは低空飛行の対地攻撃機としてソ連戦車を葬るのが狙いだった。

共通面もある。ともに空力学的に洗練されていない。P-47には愛情込めて「ジャグ」(ジャガーノートの短縮形)がついたが、太い胴体を見ればこの名称に異論がないだろう。P-51マスタングが5トン、スピットファイヤが3トンに対し、ジャグは機体重量が7トンと空を飛ぶトラックだった。A-10はエンジン双発を尾翼上に配置し、巨大な機関砲を機首に搭載したのはニキビを想起させる。

さらに双方のサンダーボルトは出自が共通する。P-47はリパブリックエアクラフトが製造した。リパブリックは1965年にフェアチャイルドが買収し、フェアチャイルド・リパブリックになり、A-10を製造した。

サンダーボルト兄弟は大火力で知られる。.50口径機関銃8門を搭載したP-47は圧倒的効果を上げた。A-10の30ミリ機関砲では劣化ウラン弾でイラク戦車を第一次湾岸戦争で破砕した。

両機種とも多少の被弾なら平気だ。P-47の頑丈で大型かつ装甲付きのコックピットで「機体と星型エンジンが相当の被弾を吸収したままで帰還できた」とコーネリアス・ライアンが「遠すぎた橋」で記述している。「炎上するサンダーボルトで機外脱出より安全と胴体着陸させたパイロットもいる。胴体着陸で樹木を倒し、衝撃を吸収させ怪我なく脱出したパイロットもいた」

P-47は敵弾が命中しても平気だったが、A-10では楽しむ余裕さえある。対空ミサイルや火砲の集中を生き残る設計で西ヨーロッパへ侵攻するソ連戦車隊を狩るウォートホッグはF-15やF-16なら墜落する命中弾を浴びても平気だ。コックピットはチタンで囲まれ機関砲弾に耐えるし、飛行制御の油圧系統は冗長性があり、油圧系統が使用不能となれば機械的予備系統を使う。エンジンは上部に搭載し赤外線や熱追尾ミサイルの捕捉の可能性を下げる。主翼を片方失っても帰還できる設計には恐ろしさを感じるほどだ。

サンダーボルト2型式は対地攻撃機としての威力が共通評価だ。A-10は1日で戦車23両を破壊したことがある。P-47は枢軸軍の3千機を撃墜しているが上昇率は見劣りがしたし、低空操縦性も劣ったものの、大重量のジャグは急降下に入ればドイツ機をことごとく追尾できた。

だがジャグの真価は戦闘爆撃機としてヨーロッパで上げた戦果だった。爆弾や5インチ空対地ロケット弾を機関銃8門と併用したP-47はドイツ地上部隊を恐怖に陥れた。1944年6月のDデイから翌年5月のドイツ降伏までジャグは鉄道車両86千、機関車9千両、装甲戦闘車両6千両、トラック68千台を破壊した。

双方のサンダーボルトは地上では冴えない機体だ。P-47には航続距離、敏捷さでP-51の水準に至らなかった。米空軍は第二次大戦後にP-47を廃棄し、P-51を温存した。そこに朝鮮戦争が勃発し、F-86はじめとするジェット戦闘機が制空任務にあたり、マスタングは対地攻撃に投入された。だがP-51は頑丈な機体でなく水冷エンジンのため被弾すると墜落につながり、P-47なら生存可能な状況で多数を喪失した。

A-10の後継機はF-35ライトニングIIになりそうだ。だが機関砲弾一発の命中で主翼半分が損傷を受けるライトニングのパイロットになりたいですか。格好良く見える機体が優れているとは限らない。だが、サンダーボルトを雑に扱う者はいない。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 16, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: P-47Air PowerA-10DefenseTechnologyMilitaryHistoryUSAFAir Force

Flying Tanks: How the P-47 Gave Birth to the Fearsome A-10

Now that's a legacy.

写真 Wikipedia



パンデミック後のPRC④ 中国はパンデミックを機会に世界トップの座をねらっているのか。(このままでは実現は無理だろう)

 中国はパンデミックを機会に米国を世界トップから駆逐するのか。

In this April 13, 2020, photo, a woman wearing a face mask drives her car by a Chinese flag placed on a street prior a curfew set up to help prevent the spread of the new coronavirus in Belgrade, Serbia.


中国への不信は拡大の一方だが、米国の無能ぶりも世界に露呈した。

ロナウィルスのパンデミックで中国の影響力が世界で強まり、逆に米国の存在感は減ると見る専門家が多い。
理由は明白だ。COVID-19感染者が米国に120万人超あり、4月18日現在で260万人超が失業中で失業率が20パーセント近くまで増える中、国際通貨基金予測で米経済は今年6パーセント縮小する。米国のパンデミック対応は無関心から不理屈なものへ変遷し、連邦・州双方の行政府は公衆衛生と経済活性化のバランスを取るのに苦労している。病院の医療従事者向け防護策提供に苦しむ現況には驚くばかりで国内の機能不全は悪化の一途だ。「グローバル規模の危機が発生しても、米国の指導力に各国が期待を示さないのは100年超の歴史で初めて」(ニューヨークタイムズ)との見方もある。
とはいえパンデミック後の米中間の戦略バランスでは次の二点を考察する必要がある。まず、中国が世界で米国に代わる主導的立場につこうとすると仮定しても、中国にその実力があるのだろうか。
中国では国内課題がコロナウィルス第一例の発生前から深刻になっていた。昨年の中国経済成長率は30年で最低だった。中国政府は国営企業支援を強化するが、各企業は民間企業より生産性が劣る。また経済活性化策で期待された「クレジットバズーカ」が2008年と違い今回は使えない。国の債務がGDP300%と大幅増のためだ。さらに、人口構成の暗い予測がある。昨年の出生率は歴史上最低で、労働力人口は2018年から2030年にかけ73百万人減る。またパンデミックで企業多数が生産拠点を国外に移しそうだ。
中国国内の政治地図も多難だ。台湾、香港の反抗的態度が収まらない。中国、台湾の経済統合があっても台湾の独立志向は強いままだ。台湾は中国の影から脱し新南方政策を希求している。さらにパンデミック対応から台湾に世界保健機関への正式加盟の資格があるとの意見が増えている。香港では犯罪者引き渡し法案への抗議、人民解放軍治安維持部隊による制圧、民主活動家で著名な15名の逮捕から「一国二制度」のもろさが露呈している。
対外面では中国を取り巻く民主国家インド、オーストラリア、日本、南朝鮮へ対抗が必要だ。中国は経済、軍事両面で各国より強大とはいうものの、各国が協調協力を強める中で、中国が各国から信頼を勝ち取るのは簡単ではない。さらに今の信頼水準では世界的な指導力が実現できない。ウィグル族の大量拘束、南シナ海の軍事化継続、フアーウェイ5G製品締め出し国への脅かしでパンデミック発生前から中国への信頼度は相当低下していた。国内パンデミックの制圧成功で自信を感じたのか、一ヶ月前から医療品や専門家チームを各国に派遣しはじめた。ただし、受入国から感謝の意思表示を強要したり、他国によるパンデミック対応を批判したりと逆効果も招いており、これは中国に伝統的に有効な各国向けでも例外ではない。
二番目に、中国が上述の困難を全て克服しても、そもそも米国に代わる座を希求するだろうか。答えはすぐに出ない。そのつもりなら国益上重要な対象に資源を振り向ける必要がある。The Economist は「中国には世界各地の危機に対応を迫られる第二次大戦後の米国と同じ立場に自らを据え付ける意図を示す兆候がない」とし、あくまでも経済力や技術力を既存秩序内で自国の影響力拡大に使う意図を中国は示している。トランプ大統領が資金供出を一時停止したWHOへの支援表明のように、中国は国連機関で影響力を増やしている。とくに一帯一路政策の実現を希求している。だが中国は新秩序で一貫したビジョンを示しておらず、現行秩序から恩恵を受けていることに加え、自身でも次の姿を明確にしていない。
パンデミックで中国が一気に世界のトップの座につく時代が来るわけではないとしても、米国との戦略バランスを中国が変えようとしないわけではない。とくに米国が政策転換しない場合これがあてはまる。中国への不信が強まっているが、米国の無能ぶりも露呈した。米国としては急ぎ同盟関係を補修し、WHO含む国際機関の改革で具体策を提示し、各国を取りまとめてきた定評を復活させるべきだ。同時に「超大国間競合」へ焦点をあわせるあまり、中国との協力の可能性を減らす、あるいは最悪の場合道を閉ざさないよう注意すべきだ。パンデミックでわかったのは脅威は国境を超え、戦略的ライバルでも協調対応しない限り単独で国益を守れないことだ。■
この記事は以下を再構成したものです。


MAY 5, 2020