日本国内では緊急事態宣言の解除、営業自粛の撤廃など身近な問題に議論の焦点があるようですが、全く異なる地図になった世界情勢には関心を払う余裕がないようです。こういう事態だからこそ余裕ある向きには未来を設計する能力を発揮してもらいたいものです。
半世紀にわたり驚異的成長を達成してきた中国は超大国へあと一歩に近づいていたが、コロナウィルスの犠牲になったようだ。パンデミックは中国に責任ある超大国の姿を示す絶好の機会のはずだったが、目論見は未達成に終わった。
世界がコロナウィルス危機発生前より強い敵意を示すのに中国は気づいている。▶原因の多くは中国自身にあり、対策の誤りや初期段階で情報を抑制し、他国に責任転嫁し、影響力を誇示するような稚拙な対応も一因だ。▶昨年12月初旬にウィルスは把握されていたようだが、中国官憲は新型ウィルスを話題にした医師団を処分し、標本は破棄させた。▶発症の中心地武漢に厳しい移動制限を課した時点で百万単位の住民がすでに移動していた。
中国は全面的プロパガンダ工作を開始し、自らの過ちを隠し無責任対応から目をそらせるべく、米国が発信元だと世界に告げてしまった。▶世界は中国が無実と信じず、逆に米国は対応を硬化し中国は敵対勢力だとの確信を深めた。▶中国の大失態やその後のプロパガンダ工作は米国でもまれな超党派合意を生んだ。▶共和民主両党は中国には強硬な態度で臨むしかないと理解し、中国当局は信頼できず、パンデミックは中国に責任があると共通認識に至った。▶ハード、ソフト両面で大幅な余力がある米国は独裁的な敵勢力に極めて危険な存在だ。
米国外に目を転じると、中国は自国イメージ改善を試みたものの失敗している。▶ヨーロッパでは中国提供の医療物資で不良品が多数見つかった。▶オランダはマスク数十万点を受取り拒否した。▶スペインも検査キットで不良品が相次ぎ返品している。
中国人主人公が米国傭兵を撃破する人気映画にあやかり中国の積極的外交姿勢は「戦狼」と呼ばれるが、対外関係で裏目に出ている。▶オーストラリアがウィルスの発生原因を尋ねたところ、中国国営メディアはオーストラリアは「中国という靴の底に張り付いたガム」と表現した。▶オーストラリアが中国との通商関係を悪化させようとしており、「オーストラリア産ワインやビーフはもういらない」とまで駐オーストラリア中国大使に発言させた。▶これでは戦狼というよりマフィア流の外交ではないか。
中国は米国と親密な協力国の怒りを買ってしまった。▶ドイツ紙ビルドが中国に賠償金数百億ドルを求め、ベルリンの中国大使館はドイツ国民から白い目で見られる存在になっている。▶フランスでは中国外交官が同国では介護施設で高齢者を意図的に死亡させていると批判しフランス当局が譴責処分を与えた。
中国国内で外国排斥の動きが高まりアフリカ諸国との関係で悪影響が出ている。▶広州でパンデミック最中にアフリカ国民排除の声が高まった。▶アフリカ各国の関係者が警戒の声を上げている。
外交面では中国は世界の大勢と反する動きで悪い結果を生んできた▶。中国最大の情報機関で習近平の直轄機関といわれる国家保安省とつながる中国シンクタンクの報告書では反中国感情は1989年の天安門事件並のまで高まっていると指摘している。
トラブルは外交面にとどまらない。経済は50年で初の縮小となり、2020年第1四半期は6.8%減少に終わった。▶小売販売と工業出荷はともに大きく前年比で縮小し、失業率が上昇中だ。▶経済刺激策があっても今年の経済成長はよくて低調といったところだろう。
低成長が政治安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。▶中国共産党の統治モデルは経済拡大と生活水準の安定的向上で正当性を維持することにある。▶経済悪化で国内不満が高まれば、兵力投射も成約を受けかねない。
パンデミックが数ヶ月経過する中で、中国は自国のソフトパワーが減退し、経済が悪化しながら世界が非友好的になってきたのを自覚している。▶端的に言えば、中国は指導的立場につく試験に不合格となり、超大国の地位を目指す動きも頓挫したのである。
外交では不合格となったが次の課題は中国経済の回復が米国・米国の同盟国より先行し、世界経済を牽引できる強さを示せるかだ。▶だが世界経済の回復を牽引するため海外で指導力の発揮が必要だが、中国は準備不足を露呈している。■
この記事は以下を再構成したものです。
May 23, 2020 Topic: Security Region: Asia Blog Brand: The Buzz Tags: CoronavirusChinaEconomic GrowthPandemic
Jeffrey Cimmino is a program assistant in the Global Strategy Initiative in the Scowcroft Center for Strategy and Security at the Atlantic Council. His writing has appeared in the National Interest, National Review, the Washington Free Beacon, the Washington Examiner, Spectator USA, and other publications.
Image: Reuters.
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