スキップしてメイン コンテンツに移動

主張 少ないF-22「最重要航空機材」をフル活用すべき米空軍

    

デプチュラ退役中将とバーキー両名が「最重要軍事装備」と呼ぶF-22 (Air Force)




5月15日に訓練中のF-22ラプター1機の喪失事故が発生し、同機の配備規模で警鐘となった。

アフガニスタン、イラクでの対戦闘員作戦を重視しすぎたあまりF-22調達は187機と小規模で終了した。空軍の要求は381機だった。今や、両国での戦闘は過去となり、新しく国防戦略構想が出た中で、F-22の性能がさらに重要度を増している。

第5世代機の同機こそ最重要軍事装備であり、今回の事故喪失でF-22の性能向上改修には予算を全額計上し実施の必要を痛感している。これからもF-22に匹敵する性能を有する機材は米国でも他国でも生まれない。同機に関する予算管理、機材管理には現実を反映させねばならない。

F-22の主要任務は航空優勢の確保にある。これが軍事作戦の成功に不可欠なことは言うまでもない。同機は地上目標も精密攻撃可能な性能を有し、敵が優勢の環境でも情報収集監視偵察任務もこなせるが、なんといっても空対空戦の王者だ。各種の性能を実施でき、その全貌は公開されていないが、F-22はわが国の通常抑止力で最大効果を発揮する。他機種より小規模な部隊編成だが、他機種と比べようのない戦闘効果がF-22から生まれる。

ステルス、センサー技術、処理能力、卓越した飛行性能でF-22は他機種の追随を許さない。一部の機能だけ有する機体はあるが、F-22のように全て包括した機体は存在しない。ステルスにより敵機は接近攻撃がきわめてむずかしい。センサーと処理能力で戦闘空間の把握は驚くほど精密になる。速力と操縦性で同水準の機体はない。F-22の真価に疑問を呈する向きには同機の水準に近づこうと必死な各国の姿を見てもらいたい。いかにF-22が画期的かがわかる。

わが国にF-22がもっと多く必要な事実は実に単純明快だ。だがF-22生産ラインは閉鎖され数年が経過し、生産再開は容易ではない。F-35はもともとF-22の補完用であり、対地攻撃能力を充実させ、同機も今後の航空戦力整備で不可欠な機体だ。F-22配備数が小規模のため、F-35の年間調達規模が一層重要になっている。今後登場する制空戦闘機構想はなんとしても進める必要がある。

ただし、COVID-19関連の予算制約により新型機開発の遅れは必至だ。パワーポイント上ならいくらでも展開できるが、そんな理論面での作戦構想で具縦的な作戦能力に混乱を来してはならず、現在将来の課題に答えねばならない。F-16やF-15といった旧設計機へ資金投入しても、最新の要求水準に対応できない。こうした機体も重要な存在とはいえ、運用上の有益度で今後低下が止まらない。安全保障面の課題に答えられなくなるからだ。

このため制空権確保でF-22が重要手段となる。敵と武力衝突となればF-22が最前方に投入されるのは明らかだ。だからこそラプターの性能改修で予算確保が必要で、今後も同機の性能を維持する必要がある。F-22部隊の戦力維持で費用対効果が最大になるのは訓練や試験に投入されている最古参のF-22ブロック20の33機を実戦対応機材にすることだ。これで最小の予算投入で一個飛行隊の新設効果が生まれる。費用面を重視する向きには、F-22全機がフルに性能を発揮できない場合に代償を払う覚悟があるのか問いたい。代償とは戦略目標の放棄であり、深刻な戦力低下であり、国民多数の生命の喪失だ。

F-22生産の打ち切りは悲劇であり、その影響を今後も痛感していくことになるだろう。ただし、今の時点で重要なのは現在あるF-22の活用だ。旧型ブロック20各機の性能改修で完全な戦闘可能機体にすれば敵に大きなメッセージとなる。すべてはF-22の性能に行きつく。数字を最適化しよう。今日明日の安全保障面の課題から現状を下回る機数では許されない。■

この記事は以下を再構成したものです。

The F-22 imperative

Commentary

By: David A. Deptula and Douglas Birkey, Mitchell Institute 

David Deptula is a retired U.S. Air Force lieutenant general with more than 3,000 flying hours. He planned the Desert Storm air campaign, orchestrated air operations over Iraq and Afghanistan, and is now dean of the Mitchell Institute for Aerospace Power Studies. Douglas Birkey is the executive director of the Mitchell Institute, where he researches issues relating to the future of aerospace and national security.

コメント

  1. >これからもF-22に匹敵する性能を有する機材は米国でも他国でも生まれない。
    なんでやねん(苦笑)

    >F-16やF-15といった旧設計機へ資金投入しても、最新の要求水準に対応できない。
    >こうした機体も重要な存在とはいえ、運用上の有益度で今後低下が止まらない。
    >安全保障面の課題に答えられなくなるからだ。
    それはF-22も同じで、単に時間の問題でしょう。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...