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金正恩死亡で中国はどう動くのかを予測!



「金正恩が急死すれば、中国政府にも青天の霹靂であり、先の展望が見えにくくなる点で他国と変わりがない」
 編集部注:金正恩の死亡後の予想を模索したシンポジウムから以下をまとめた。
正恩が突然死亡すれば、中国政府にとっても晴天の霹靂であり、その後の予測に困難を感じる点で他国と変わらない。
中国は北朝鮮との関係が他国より緊密とはいえ、他国の観測に反し実は親密な関係ではない。実際に平壌と北京の関係は非連続ながら退潮の一途だった。▶毛沢東と金日成は親密な同志とはいえ、関係は良好とは言えなかった。毛や鄧小平以後の中国指導部が金正日に温かい態度を示したことはなく、金正日も中国が南朝鮮と1992年に国交樹立したのをうらんでいた。▶習近平はこの路線を踏襲して金正恩に接し、難しい局面が何度もあった。金一族三代目が叔父の張成沢を処刑し異父兄の金正男を中国の親密な関係を疑い暗殺した。これで中国は対北朝鮮に冷たくなり、北朝鮮内部の動向をつかめなくなった。▶さらに金正日の時代から核とミサイル開発を加速化させ国連決議に違反した北朝鮮に中国も外交圧力を強め、前例のない規模の経済制裁を課した
トランプ大統領の対北朝鮮外交を受け習が金正恩と接触を増やし、中朝両国の緊張は緩和しているが、金は対中関係を強化するよりも米中両国を対決させる意向を秘めているようだ。
中国はこのバランスの上に金との関係は「唇と歯のように密接」と繰り返し教条的説明をしているが、実は両国の不信は強い。▶金は単独で状況打破を狙い、中国と通じる疑いのある上層部の孤立化を狙っている。▶中国も北朝鮮内部の動向をつかみきれていないのだろう。金正恩が死亡しても状況は直ぐに改善されない。▶中国指導部はあらゆる手段をつかい状況把握に努め、北朝鮮国内の中国権益の保全に走るはずだ。▶中国は後継者選びに影響力を及ぼせないだろうし、後継者との良好な実務的関係樹立にやっきとなるはずだ。▶朝鮮労働党と軍部が指名する後継者候補に妹の金与日が浮上しているが、中国指導部は北朝鮮国内の混乱に神経をすり減らされないとは思わないはずで、権力継承が混乱なく進展するためなら手段を選ばないだろう。
金正恩の後継者との関係強化で中国は米国よりも緊密な関係をめざすのはまちがいないが、だからといって米国が不利な立場になるわけではない。▶中国指導部も北朝鮮の非核化という目標を共有しており、北朝鮮の経済改革も支持する点で変わりない。このため、中国は金正恩の継承者との関係ではこの双方での進展を模索するはずだ。■
この記事は以下を再構成しました。
May 1, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaKim Jong-unKim Jong-un DeadKim Yo-jong
Paul Heer is a Distinguished Fellow at the Center for the National Interest dealing with Chinese and East Asian issues. He served as National Intelligence Officer for East Asia from 2007 to 2015.  He has since served as Robert E. Wilhelm Research Fellow at the Massachusetts Institute of Technology’s Center for International Studies and as Adjunct Professor at George Washington University’s Elliott School of International Affairs.  He is the author of Mr. X and the Pacific:  George F. Kennan and American Policy in East Asia (Cornell University Press, 2018).

コメント

  1. ぼたんのちから2020年5月3日 14:25

    5月2日に金が姿を現したとの報道があり、フェイクニュースの可能性もあるが、ここではある程度健康を取り戻した場合を想定してコメントしたい。
    金は、外国から医師団を要請するほど状態が悪く、今後も健康面での不安は付きまとうだろう。健康面の不安は以前からであり、記事のように中国が「晴天の霹靂」と感じることは無いだろう。欧州の医師団のみならず、中国の医師団が訪朝したことは、もしかすると心臓などの疾患ばかりでなく、武漢肺炎にも罹っていたのかもしれない。5月2日の報道で金やその周辺者がマスクを付けずに談笑しているのは、金が免疫を獲得しているからかもしれない。
    中国の対応は早く、中国東北部のPLA第78軍を国境に配置した。これは北朝鮮占領よりも、北朝鮮での内乱抑止や難民の中国侵入を阻止するためではなかろうか。
    北朝鮮の社会は、食糧不足と武漢肺炎流行で少なくても部分的には崩壊しているだろう。この危機は北朝鮮全土に及ぶだろう。この状態を立て直すのは容易でない。これに加えて金の健康不安は、一層の社会不安を招くことになる。
    金がこのまま権力を維持したとしても、また、金が権力を維持できず政治体制が変わったとしても、外国からの援助なしには立ち行かないだろう。その場合、北朝鮮は中国を優先する。また、中国も北朝鮮の現状維持を望むだろう。中国は、最小限の援助で、北朝鮮を手なずけることができる。北朝鮮の非核化は、長い道のりが必要になると言うことである。

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