Aviation Weekに注目の記事がありましたのでお伝えします。次期空軍参謀総長にPACAF司令官が横滑りするのはいよいよ対中国戦略の実施が現実になってきた証拠でしょうか。
嘉手納基地のZZ記号を付けたF-15の2機が第909給油飛行隊のKC-135からウェストパック・ラムランナー演習で給油を受けている。
Credit: Sr. Airman Matthew Seefeldt/U.S. Air Force
米空軍はこれからの航空戦に向け新しい対応策を検討中だが、その片鱗が嘉手納航空基地で見られたので紹介したい。
- 基地防衛の試行
- 攻撃下の補給活動とは
沖縄で1月に実施された演習はウェストパック・ラムランナー WestPac Rumrunner の名称で制空任務を想定した。ボーイングF-15Cの24機は嘉手納ABから100マイル東に進出し、「侵攻軍」の米海軍F/A-18E/F(岩国MCASより発進)を迎撃した。同時に特殊作戦部隊(SOF)所属の機材が沖縄へ侵入を試みた。
この設定から将来戦の片鱗が見える。嘉手納基地のF-15C4機は燃料と装備を普天間海兵隊基地で補給した。日本配備中のE-2Dが嘉手納のF-15C部隊を支援し、侵入を試みるF/A-18E/FおよびSOFに対応させた。空軍が進めるアジャイル戦闘展開 Agile Combat Employment(ACE)戦略構想を試す機会になった。さらに海軍のノースロップ・グラマンE-2D部隊と現地のMIM-104ペイトリオット部隊(陸軍)で防御側の戦闘統制を試した。
ウェストパック・ラムランナーではACEや統合全ドメイン指揮統制Joint All-Domain Command and Control (JADC2)のすべてを試していないが、中国東方に位置する第一列島線の各基地に大きな意味がある。
「アジャイル戦闘展開や基地防御の知見を演習から得たい」と太平洋空軍(PACAF)司令チャールズ・ブラウン大将がAviation Weekに2月に述べていた。PACAF隷下の航空部隊は新構想を試し、技術以外に考え方の変化も求められている。
「答えを全て得たわけではないが、フィードバックし実効性を試せる」「そのあとで『これを戦闘教義にどう反映し対応策を変えるべきか』を考える」(ブラウン)
PACAF内の各基地と補給線の防衛が課題だ。空軍首脳部が今年2月公表した予算要求では補給網が攻撃下にある想定で対応案を盛り込んだ。目標は補給再装填で重要拠点となる基地の破壊、弱体化を狙う敵の協調攻撃に対し十分な回復力を基地で実現することだ。
「ACEのカギは軽く、無駄を削り、敏捷さの実現」「補給活動に足を引っ張られては困る」(ブラウン)
新構想の細部は非公開だが、空軍上層部は遠隔地の飛行場に部隊を分散させること、基地防御体制の強化の模索を認めている。
ブラウンは指向性エナジー兵器含む新技術に加え、高性能運動性エナジー兵器たるTHAADやペイトリオットでも分散配備を狙う。ブラウンは次期参謀総長に内定しており、開発中の小型モジュラー核融合反応炉で高出力装備の電源を確保したいとする。
PACAFは貨物コンテナーに装備品を入れ、各地で事前配備したいとするが、受入国の承認を事前に取る必要がある。そこで人道援助用の補給物資の事前配備から始めたいとする。
演習では嘉手納基地のF-15Cが普天間海兵隊航空基地で燃料補給を受けた。 Credit: Staff Sgt. Benjamin Raughton/U.S. Air Force
「人道援助災害救難から始めて各地に展開したい」「この地域では台風、火山、地震が多く発生しており、ここから始めたい」
軽く、敏捷にとの要求からも変化が生まれる。補給活動への脅威を減らすため必要な補給物資の量を減らし、空輸回数を減らす。ここから兵装装備品の軽量化や効率のよい運用につながるが、現時点の焦点は補給活動を必要最小限に絞り、ソフトウェアで効率良い決定を下すことにあてられている。
輸送機の防御も重要だ。航空機動軍団は無防備だったボーイングKC-135、ロッキードC-130Hの防御能力に予算を計上し、警告装置や赤外線/無線誘導式ミサイル対抗装備を搭載する。別の防御策は輸送機がどこを離着陸しているか敵にわかりにくくすることだ。
「各機材に防御装備を搭載するのは重要だが、同時に運用地にも注目している」「ここからアジャイル戦闘展開構想が生まれた。一地点で機材を分散させるのではなく、各地の飛行場に分散させる。防御策も各地で必要となる」
高額装備のTHAADやペイトリオットも各地に移動させる必要がある。「軽量で贅肉のない装備がほしい。銃弾数に制限がなく、今までと異なる費用曲線の装備があれば、高額装備は弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイル迎撃に専念させられる。高出力マイクロ波や指向性エナジーで各地での柔軟対応へ道をひらく。この考えで意味のある検討が進んでいる。まだ先は長い」(ブラウン)
その第一歩が各地での演習で、ウェストパック・ラムランナーもその一環だ。嘉手納基地の第18航空団が防空効果を発揮した。第5空母航空団のF/A-18E/F「侵攻部隊」は沖縄周辺100マイルの防空圏内に一機も侵入できなかった。SOFチームは着陸地点に到達したが、第44戦闘飛行隊のF-15Cが即座に侵攻部隊の機材を「撃破」したと、同隊司令のライアン・キャリガン中佐が述べている。
沖縄のF-15C部隊にとり分散展開は新発想ではない。10年も前だが、嘉手納の飛行隊がアジャイルイーグル構想のさきがけ作成に関与し、輸送機・給油機を伴いF-15Cを迅速に各地に展開した。ここからラピッドラプター構想へ発展し、ハワイのヒッカムAFBのF-22に応用した。今回さらにACEに発展したわけだが、PACAF各部隊の考えはハブ中心の運用が色濃いため、実施は課題となっている。高エナジーレーザーで各地の飛行基地を飽和ミサイル攻撃から守る体制が実現するまで数年かかるが、無人機への対抗装備でレイセオンが空軍実験本部と共同で実験を開始した。
「標的にならないよう訓練で配慮している」「甘受できるリスクの上でし適正規模の支援パッケージを配備部隊に届ける方法を模索している。兵装搭載要員と給油要員の両方は連れて行かない。兵装搭載要員に給油方法を訓練している」(コリガン)■
この記事は以下を再構成したものです。
Okinawan Exercise Offers Glimpse Into Future USAF Air War Strategy
Steve Trimble May 08, 2020
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