ともに被弾しても飛行可能で、近接航空支援で不可欠な機材だ。
サンダーボルトが嫌いな人はいない。
今日のA-10サンダーボルトIIはウォートホッグとも呼ばれ、米軍機材でおそらく最も人気の機体だろう。少なくとも米地上部隊に。逆に空軍上層部にサンダーボルトは頭痛の種だ。75年前にもサンダーボルトの名称の機体があり、これも人気の戦闘機だった。
両機種の類似点は皆無に近い。P-47サンダーボルトは第二次大戦機で欧州上空でルフトバフェと戦う高速高高度戦闘機として開発された。A-10サンダーボルトIIは低空飛行の対地攻撃機としてソ連戦車を葬るのが狙いだった。
共通面もある。ともに空力学的に洗練されていない。P-47には愛情込めて「ジャグ」(ジャガーノートの短縮形)がついたが、太い胴体を見ればこの名称に異論がないだろう。P-51マスタングが5トン、スピットファイヤが3トンに対し、ジャグは機体重量が7トンと空を飛ぶトラックだった。A-10はエンジン双発を尾翼上に配置し、巨大な機関砲を機首に搭載したのはニキビを想起させる。
さらに双方のサンダーボルトは出自が共通する。P-47はリパブリックエアクラフトが製造した。リパブリックは1965年にフェアチャイルドが買収し、フェアチャイルド・リパブリックになり、A-10を製造した。
サンダーボルト兄弟は大火力で知られる。.50口径機関銃8門を搭載したP-47は圧倒的効果を上げた。A-10の30ミリ機関砲では劣化ウラン弾でイラク戦車を第一次湾岸戦争で破砕した。
両機種とも多少の被弾なら平気だ。P-47の頑丈で大型かつ装甲付きのコックピットで「機体と星型エンジンが相当の被弾を吸収したままで帰還できた」とコーネリアス・ライアンが「遠すぎた橋」で記述している。「炎上するサンダーボルトで機外脱出より安全と胴体着陸させたパイロットもいる。胴体着陸で樹木を倒し、衝撃を吸収させ怪我なく脱出したパイロットもいた」
P-47は敵弾が命中しても平気だったが、A-10では楽しむ余裕さえある。対空ミサイルや火砲の集中を生き残る設計で西ヨーロッパへ侵攻するソ連戦車隊を狩るウォートホッグはF-15やF-16なら墜落する命中弾を浴びても平気だ。コックピットはチタンで囲まれ機関砲弾に耐えるし、飛行制御の油圧系統は冗長性があり、油圧系統が使用不能となれば機械的予備系統を使う。エンジンは上部に搭載し赤外線や熱追尾ミサイルの捕捉の可能性を下げる。主翼を片方失っても帰還できる設計には恐ろしさを感じるほどだ。
サンダーボルト2型式は対地攻撃機としての威力が共通評価だ。A-10は1日で戦車23両を破壊したことがある。P-47は枢軸軍の3千機を撃墜しているが上昇率は見劣りがしたし、低空操縦性も劣ったものの、大重量のジャグは急降下に入ればドイツ機をことごとく追尾できた。
だがジャグの真価は戦闘爆撃機としてヨーロッパで上げた戦果だった。爆弾や5インチ空対地ロケット弾を機関銃8門と併用したP-47はドイツ地上部隊を恐怖に陥れた。1944年6月のDデイから翌年5月のドイツ降伏までジャグは鉄道車両86千、機関車9千両、装甲戦闘車両6千両、トラック68千台を破壊した。
双方のサンダーボルトは地上では冴えない機体だ。P-47には航続距離、敏捷さでP-51の水準に至らなかった。米空軍は第二次大戦後にP-47を廃棄し、P-51を温存した。そこに朝鮮戦争が勃発し、F-86はじめとするジェット戦闘機が制空任務にあたり、マスタングは対地攻撃に投入された。だがP-51は頑丈な機体でなく水冷エンジンのため被弾すると墜落につながり、P-47なら生存可能な状況で多数を喪失した。
A-10の後継機はF-35ライトニングIIになりそうだ。だが機関砲弾一発の命中で主翼半分が損傷を受けるライトニングのパイロットになりたいですか。格好良く見える機体が優れているとは限らない。だが、サンダーボルトを雑に扱う者はいない。■
この記事は以下を再構成したものです。
May 16, 2020 Topic: History Region: Americas Blog Brand: The Reboot Tags: P-47Air PowerA-10DefenseTechnologyMilitaryHistoryUSAFAir Force
Flying Tanks: How the P-47 Gave Birth to the Fearsome A-10
Now that's a legacy.
by Michael Peck
写真 Wikipedia
A-10を防衛に陸上自衛隊に持たせてあげたい。
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