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パンデミック後のPRC④ 中国はパンデミックを機会に世界トップの座をねらっているのか。(このままでは実現は無理だろう)

 中国はパンデミックを機会に米国を世界トップから駆逐するのか。

In this April 13, 2020, photo, a woman wearing a face mask drives her car by a Chinese flag placed on a street prior a curfew set up to help prevent the spread of the new coronavirus in Belgrade, Serbia.


中国への不信は拡大の一方だが、米国の無能ぶりも世界に露呈した。

ロナウィルスのパンデミックで中国の影響力が世界で強まり、逆に米国の存在感は減ると見る専門家が多い。
理由は明白だ。COVID-19感染者が米国に120万人超あり、4月18日現在で260万人超が失業中で失業率が20パーセント近くまで増える中、国際通貨基金予測で米経済は今年6パーセント縮小する。米国のパンデミック対応は無関心から不理屈なものへ変遷し、連邦・州双方の行政府は公衆衛生と経済活性化のバランスを取るのに苦労している。病院の医療従事者向け防護策提供に苦しむ現況には驚くばかりで国内の機能不全は悪化の一途だ。「グローバル規模の危機が発生しても、米国の指導力に各国が期待を示さないのは100年超の歴史で初めて」(ニューヨークタイムズ)との見方もある。
とはいえパンデミック後の米中間の戦略バランスでは次の二点を考察する必要がある。まず、中国が世界で米国に代わる主導的立場につこうとすると仮定しても、中国にその実力があるのだろうか。
中国では国内課題がコロナウィルス第一例の発生前から深刻になっていた。昨年の中国経済成長率は30年で最低だった。中国政府は国営企業支援を強化するが、各企業は民間企業より生産性が劣る。また経済活性化策で期待された「クレジットバズーカ」が2008年と違い今回は使えない。国の債務がGDP300%と大幅増のためだ。さらに、人口構成の暗い予測がある。昨年の出生率は歴史上最低で、労働力人口は2018年から2030年にかけ73百万人減る。またパンデミックで企業多数が生産拠点を国外に移しそうだ。
中国国内の政治地図も多難だ。台湾、香港の反抗的態度が収まらない。中国、台湾の経済統合があっても台湾の独立志向は強いままだ。台湾は中国の影から脱し新南方政策を希求している。さらにパンデミック対応から台湾に世界保健機関への正式加盟の資格があるとの意見が増えている。香港では犯罪者引き渡し法案への抗議、人民解放軍治安維持部隊による制圧、民主活動家で著名な15名の逮捕から「一国二制度」のもろさが露呈している。
対外面では中国を取り巻く民主国家インド、オーストラリア、日本、南朝鮮へ対抗が必要だ。中国は経済、軍事両面で各国より強大とはいうものの、各国が協調協力を強める中で、中国が各国から信頼を勝ち取るのは簡単ではない。さらに今の信頼水準では世界的な指導力が実現できない。ウィグル族の大量拘束、南シナ海の軍事化継続、フアーウェイ5G製品締め出し国への脅かしでパンデミック発生前から中国への信頼度は相当低下していた。国内パンデミックの制圧成功で自信を感じたのか、一ヶ月前から医療品や専門家チームを各国に派遣しはじめた。ただし、受入国から感謝の意思表示を強要したり、他国によるパンデミック対応を批判したりと逆効果も招いており、これは中国に伝統的に有効な各国向けでも例外ではない。
二番目に、中国が上述の困難を全て克服しても、そもそも米国に代わる座を希求するだろうか。答えはすぐに出ない。そのつもりなら国益上重要な対象に資源を振り向ける必要がある。The Economist は「中国には世界各地の危機に対応を迫られる第二次大戦後の米国と同じ立場に自らを据え付ける意図を示す兆候がない」とし、あくまでも経済力や技術力を既存秩序内で自国の影響力拡大に使う意図を中国は示している。トランプ大統領が資金供出を一時停止したWHOへの支援表明のように、中国は国連機関で影響力を増やしている。とくに一帯一路政策の実現を希求している。だが中国は新秩序で一貫したビジョンを示しておらず、現行秩序から恩恵を受けていることに加え、自身でも次の姿を明確にしていない。
パンデミックで中国が一気に世界のトップの座につく時代が来るわけではないとしても、米国との戦略バランスを中国が変えようとしないわけではない。とくに米国が政策転換しない場合これがあてはまる。中国への不信が強まっているが、米国の無能ぶりも露呈した。米国としては急ぎ同盟関係を補修し、WHO含む国際機関の改革で具体策を提示し、各国を取りまとめてきた定評を復活させるべきだ。同時に「超大国間競合」へ焦点をあわせるあまり、中国との協力の可能性を減らす、あるいは最悪の場合道を閉ざさないよう注意すべきだ。パンデミックでわかったのは脅威は国境を超え、戦略的ライバルでも協調対応しない限り単独で国益を守れないことだ。■
この記事は以下を再構成したものです。


MAY 5, 2020

コメント

  1. ぼたんのちから2020年5月18日 16:01

    習は、覇権を求めている。習が叫ぶ「中華の復興」は、過去の中華帝国の覇権の復活を目指すものである。中国が結びたい他国との関係は、奇妙なことに古代からの「朝貢」制度であり、「宗主国」中国として扱ってもらいたいようだ。習が他国の指導者を迎える時の尊大な演出がそれを表している。たとえ他国が面従腹背であったとしても、習を敬う姿勢を示して欲しいようだ。
    記事で中国の覇権獲得は、実力が無く、ビジョンもなく、経済も停滞し、かつ大きな問題を抱えていて困難と言うが、問題は、現実の中国の危険性がそのようなものでないことである。中国は、目的が完遂するならばあらゆる手段を正当化し、実行する。その範囲は、政治、経済、軍事のみならず、情報、人権、宗教などあらゆる方面に及び、しかも違法・犯罪行為も厭わない。
    武漢肺炎の流行は、中国に対する風向きを大きく変える可能性がある。習は、大きなミスを犯し、武漢肺炎を世界的流行へとしてしまった。多くの死者と感染者を出した国は、その原因を作った習を非難することになる。責任追及と賠償請求の動きは、その一端であり、今後、中国は、ある程度、孤立するのは避けられないだろう。
    また、経済面ではグローバリゼーションの後退と世界経済の縮小が予測されているが、この動きは中国に進出した企業の撤退と、世界からの中国企業・製品の排除を一層進めることになる。中国国内では、経済の減退と大量の失業者による人民の不満と社会不安の増大が避けられない。習の取り得る選択肢は限定的であり、習派の権力掌握は盤石でないから、中国政治はかなり流動的になるだろう。
    結果として、中国は、勝手にズッコケたということであり、それは身から出た錆であり、覇権獲得は、まさしく「中華の夢」であり、幻想で終わることになるだろう。

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