スキップしてメイン コンテンツに移動

超音速飛行に制限がついたF-35C....問題の山はいつ解決される?


ひとつひとつ問題を解決しているようですが、それだけF-35では各種の問題が発生しているのでしょう。しかし、同機はこうして実戦で本来の性能を発揮できるようになればいいのですが....
 

攻撃戦闘飛行隊VFA101所属のF-35CライトニングIIの初号機がエグリン空軍基地を離陸している。設計上の問題のため海軍、海兵隊のF-35で超音速飛行に制限がついている。 (Samuel King Jr./U.S. Air Force)


F-35で超音速飛行を続けると機体後部に破損が発生するリスクがあるが、運用面の条件変更で対応可能だとF-35共同事業室(JPO)がDefense Newsに伝えてきた。
この欠陥はDefense Newsが2019年に初めて報じ、米海軍・海兵隊仕様のF-35が高高度で超音速飛行すると機体構造の損傷あるいはステルス性の喪失につながるというものだ。
この問題のため海軍のF-35Cは超音速迎撃が実施できなくなる。
「この問題は2019年12月17日時点で特に対応不要かつ米軍での供用で発生していないと判明」とF-35JPOの回答文書にある。「欠陥報告は『修正作業不要』と分類され、複雑な作業による費用増加を正当化するだけの内容ではないと判断した」「解決しようとすると素材表面の塗装が長時間の飛行に耐えられるのか、同時に制御面の重量増ほか要求水準に合致するかの長期にわたる開発、飛行テストが必要となる」
空母運用仕様のC型、短距離離陸垂直着陸のB型で修正せずミッションは実施可能とJPOは述べた。
高速飛行を継続した場合に発生する可能性がある損傷のためF-35の機体以外に低視認性用の塗装に影響が出るだけでなく、機体背面の各種アンテナも損傷に弱いとDefense Newsが独自入手した文書に記述がある。
JPOではB型、C型の問題をそれぞれカテゴリー1の欠陥と分類し、重要ミッションの実施で障害になりうるとしている。カテゴリー1とは深刻度が最大の欠陥を意味する。
配備済みの機体で超音速飛行を続けて障害が発生すれば深刻だが、実はF-35では超音速飛行の頻度は低い。
F-22で超音速飛行は普通だが、F-35の超音速飛行は「緊急時対策」と、ハドソン研究所のブライアン・クラーク(退役海軍士官)は述べている。「超音速飛行はF-35では重要機能ではない」「実施はできるが、F-35パイロットからは超音速飛行は限られた場合のみで、その性能はなにかから高速で退避する場合に必要となるが、通常の戦術では必須ではないと聞いている」
実際に超音速飛行ではF-35の優位性が犠牲になるとクラークは解説する。「F-35の長所を捨てるようなものだ。ステルス性が下がり、燃料は急速に減り、アフターバーナーまで使えば、機体周囲の温度を上げるだけだ」存在を知らせる特徴を敵に発見させるだけとクラークは言う。
だがある退役海軍航空士官はアフターバーナー使用を制限すれば近接戦闘の場合に不利だとDefense Newsに話してくれた。
F-35運用のコンセプトは相手に探知される前に敵機を撃破することだが、長距離での攻撃には海軍航空部隊は歴史的にも文化的にも不信の目を向けている。ベトナム戦争では航空部隊はミサイルを過信し機関砲を廃止したことで空中戦での損失を急増させた。
海軍航空部隊が得た教訓は最新技術に依存し基本条件を犠牲にしないことで、このためトップガンが50年前に結成され、海軍攻撃戦闘機の戦術開発訓練教程が生まれた。
「解決策は『アフターバーナー使用は一分未満に』すること」と別の退役海軍航空士官は語っている。「機体が高性能でも深刻な制約になる」
機体がミサイル攻撃を回避する場合やドッグファイトで生き残るために高速飛行を迫られると深刻な問題になる。
この問題は海軍にとって複雑で、前方配備で機体を数ヶ月も連続稼働させると塗装や機体構造に重整備対応が必要となる。また損傷を受けた機体が発生しても運用艦が母港に戻るまでは修理できず、航空戦力の低下になりかねない。
「8ヶ月の海上運用で第一週に損傷機材が発生したら、以後損傷機材のまま残るんです。そうなると該当機材は完全修理が終わるまで戦力外ですよ」(上記退役海軍航空士官)
その他の欠陥
カテゴリー1の欠陥はその他3点あるがJPOはすべて公式に「解決済み」としており、改良されたか、現状のまま受容しているという。
緑色の発光問題といわれるものは昨年7月に解決済みとなった。ヘルメット搭載ディスプレイのLEDからの発光を指す。空母甲板の照明の視認を妨げる問題が夜間で発生していた。
この問題については「改良型有機発光ダイオード(OLED)のヘルメット搭載ディプレイ(HMD)で解決した」とJPOはDefense Newsに説明している。
「第三世代のF-35用OLEDヘルメットディスプレイユニット(HDU)では夜間の緑色発光を大幅に減らしている。米海軍、海兵隊向けのOLED式HDU第一次分をJPOは受領ずみで、第二次発注も行っている」(JPO)
F-35A、F-35Bでタイヤ破裂が発生した問題は油圧線の切断につながり、まだ解決に至っていないとJPOは記述しているが、タイヤ品種を変更してからは再発していない。
「DR(不良報告)は『修正予定なし』の分類で解決済みとされており、降着装置の設計はF-35の安全要求をすべて満たすもの」と文書にある。「初期に発生したタイヤ破裂問題は初期開発段階での設計変更で解決し、二重油圧系統の低下がタイヤ破裂で発生した問題は以後見つかっていない」
A U.S. Air Force F-35A sits on the flight line before testing and evaluation on Jan. 23, 2018, at Eielson Air Force Base, Alaska. All three variants of the F-35 were brought to Eielson to test their ability to operate in an extreme cold-weather environment. (Airman 1st Class Isaac Johnson/U.S. Air Force)
米空軍向けF-35Aがイールソン空軍基地(アラスカ州)のフライトラインで待機中。2018年1月23日。F-35の3型式はすべてイールソンで超低温環境での機能を試している。(Airman 1st Class Isaac Johnson/U.S. Air Force)

寒冷気候でバッテリー不調のまま着陸を迫られた事例が発生したがこれも解決済みとJPOは説明。この問題は超低温で機首の降着装置扉を開放した際に警告ベルが鳴って発生したとDefense Newsが独自に入手した「内部資料」に記載がある。
冷気が機内に入り、バッテリーを包むヒーターブランケットを圧倒した。28ボルトバッテリーを最適条件に保つためにヒーターブランケットがついている。バッテリーは停止しなかったが、冷気のため想定どおりの暖房ができず、警告ライトが点灯し、バッテリーが停止寸前と伝えてきた。
この問題ではソフトウェアを改良したとJPOは説明。
「この問題は2019年7月22日に解決した。バッテリー充電器のファームウェアを改良した」とある。「ファームウェア改良はバッテリーチャージャーのメーカーが担当し、ロッキード・マーティンが統合の上、JPOとともに実証した」■
この記事は以下を再構成したものです。

The Hidden Troubles of the F-35


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ