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米海軍が新型フリゲート艦にフィンカンティエリ案を採択

米海軍が注力していた沿海域戦闘艦LCSが使えないと判断し、再びフリゲートが復活するわけです。フリゲートと言っても今回の原型FREMMは7000トン近くですので、米海軍向け装備を搭載すればそれ以上になることは容易に想像できます。バーク級駆逐艦がローエンド任務もこなさぜるを得ない現状を打破したいと米海軍は考えているのでしょう。そうなると20隻超の建造規模になりそうですね。


フィンカンティエリのFFG(X)設計構想図。FREMMを原型とする。

海軍は新型誘導ミサイルフリゲート艦契約をフィンカンティエリに交付し、7.95億ドルで建造させる。ここ10年で初の大規模建艦事業になると発表した。
フィンカンティエリは競合4社を制した。建造はウィスコンシンのマリネットマリン造船所で行い、フランス、イタリア海軍が供用中のFREMM多任務フリゲート艦を原型にする。
2020年度予算で詳細設計建造契約による一隻を建造し、オプションで最大9隻を建造する。オプションも含めると55.8億ドルとなる。
「海軍が目指す誘導ミサイルフリゲート艦 (FFG(X))は将来の海軍戦力の重要な存在だ」と海軍作戦部長マイク・ギルデイ大将が声明を発表している。「FFG(X)は小型水上戦闘艦構想より威力、残存性を増しつつ、国家防衛戦略構想を実現していく。今後の分散海洋作戦の実施効率が高まるのは間違いなく、外洋でも沿海部でも戦闘を展開できる」
「要求内容の統括部門、調達部門、建造部門の各チームが尽力し重要な海軍の決断が本日まとまったことを誇らしく思う」と研究開発調達部門の副長官ジェイムズ・ギューが声明文を発表した。「政府部門が産業界と緊急性と規律性をもって作業し、今回の契約交付も予定の3ヶ月前に実現した。チームがコスト、調達、技術に集中し高性能次世代フリゲート艦として納税者に最大効果を実現した」
米海軍は今回のフリゲート艦案件を将来の艦艇調達のモデルととらえた。FFG要求性能評価チーム(RET) に調達、資源提供部門、予算部門さらに運用部門代表、技術陣、建造部門等の業界代表が参加し性能と建造費をバランスさせた。従来方式より6年節約できたと海軍は説明。
海軍上層部は新型フリゲートの必要を2017年に痛感し、沿海域戦闘艦(LCS)では将来ニーズに対し小さすぎると判断した。RETの作業をもとに海軍は性能要求を2017年10月にまとめ、5社が構想設計を16ヶ月にわたり展開した。要求水準の実現が可能と確信できた2019年2月に海軍は性能開発要求書類を承認し、詳細設計及び建造契約の提案を同年6月に求めた。
同時に政府支給装備(GFE)でリスク低減を進め、供用中の水上艦装備を流用する。エンタープライズ対空警戒レーダー(EASR)、イージス戦闘システムベイスライン10、Mk 41垂直発射装備、通信装備、防御装備が例で、生産中かつ性能が実証されている。艦艇の設計・建造を加速するだけでなくコスト効果も生まれ、整備・訓練で共通性が発揮される。
海軍無人小型戦闘艦の計画主管ケイシー・モートン少将は「積極対応とともにリスク低減に過去の教訓を採用した。建造開始時には困難がつきものだが、今回はうまくできたと思う」と記者団に述べている。
ギュー副長官は「コスト、調達、技術面に焦点を当てつづけ、第一線部隊、納税者双方に最良の価値を提供することに専念した」と述べている。建造工程の改善で建造単価を下げる可能性も選定基準の一部とし、「大幅なコスト削減効果が期待できる」と述べた。
またGFEのコスト低減効果が期待できるとし、EASRはSPY-6対空対ミサイル防衛レーダーとしてレイセオンが開発したフライトIIIアーレイ・バーク級駆逐艦向け装備を原型とする。ギュー副長官はレイセオンの生産ラインにも両形式の製造で知見を深める効果が生まれると述べた。
「目標は戦闘装備用のソフトウェア、ハードウェアの共用化だ。これでコスト面以外に、訓練、整備、維持面で効果が生まれる」(ギュー)とし、将来の能力向上が期待する。
詳細設計段階がまもなく始まり、建造は2022年4月以降からとなる。初号艦は艦名がないが、2026年までに納入され、初期作戦能力を2030年までに獲得する。初号艦の建造費は12.81億ドルでうち7.95億ドルが詳細設計および建造費用で残額はGFEにあてられる。
以後の建造で支出額は低くなる。2号艦から20号艦までは2018年価格で単価8億ドル、同じく2018年価格で9.5億ドル以下を保つのが目標だ。
ギュー副長官は10隻建造後の調達は未確定と説明した。20隻建造が前提だが、海軍はこのフリゲート艦があれば駆逐艦部隊はハイエンドに専念できると考えている。第一期10隻の建造が決まるのは2025年度予定で、海軍は残る10隻もフィンカンティエリに発注するか、別企業に建造させ建造規模を拡大する選択肢もある。
今回の競合ではフィンカンティエリ以外に、オストラルUSA(インディペンデンス級LCSの建造元)、ジェネラル・ダイナミクスのバスアイアンワークス=ナバンティア(スペイン海軍向けF100級フリゲートの建造元)、ハンティントン・インガルス工業があり、海軍はコストとコスト以外の要素をバランスした最大効果を求めた。設計原案と設計の完成度を均等評価し、性能・能力面で国家防衛戦略ほかの要求に合致させた。ロッキード・マーティンはフリーダム級LCSをフィンカンティエリのウィスコンシン施設で建造したが、今回は途中で辞退した。
海軍が年間3ないし4隻建造に向かえば、別の造船所が加わる可能性が増える。
バスアイアンワークスはズムワルト級駆逐艦の建造が終了段階にあるが、アーレイ・バーク級駆逐艦も建造中で発注量は十分確保している。インガルスもDDG建造の残りを担当しており、揚陸艦艇も建造している。そこでオーストラルUSAだが、LCS建造が末期にあり、スピアヘッド級遠征高速輸送艦(EPF)も同様だ。同社はEPFを病院船として売り込んでいるが、海軍は共用補助艦艇CHAMPの設計を決めかねている。
バスアイアンワークスは「当社のFFG(X)チームにはレイセオン、ナバンティアほかがあり、群を抜く内容の構想設計をまとめ、最良の内容で入札した。海軍から然るべき説明を待っている。米海軍の期待にはリンドン・B・ジョンソン(DDG 1002)ほか11隻のアーレイ・バーク級駆逐艦の建造で答えていきたい。DDG-51の設計は実証済みで進化をつづけ、一層強力な戦力を提供していく。当社はじめとする企業チームが各艦を納期通りに引きわたすとともに各艦の整備、性能向上を担当していきたい」との声明文を出している。
水上艦隊でのフリゲート艦の役割がはっきりした。海軍作戦副部長ジム・キルビー中将(海軍作戦能力担当のOPNAV N9)はFEMMが原型の設計には脅威内容の変化に呼応する性能改修の余地が十分あり、技術成熟化を待ってから装備品を搭載すると報道陣に語った。
フリゲート艦は有人ヘリコプター一機、無人機を各一機の格納が求めらていると同中将は説明。今後登場する有人無人の垂直離着陸機の運用にも必要な余裕があるという。現行艦艇は垂直ミサイル発射管を装備するが、フリゲート艦ではレーザー兵器用の電源ならびに搭載余裕があり、VLS発射管を攻撃に転用できるとも述べた。
「このフリゲート艦は小型水上戦闘艦艇の分類だが、小型艦と大型水上戦闘艦の中間におさまり、多用な任務をこなせる」(キルビー)とし、「米海軍で一番の働き手となり、分散海上作戦を支援するだろう。同艦に大きく期待しているし、打撃群やその司令官にここまでの柔軟な選択肢を提供する艦は他にない」という。■
この記事は以下を再構成したものです

April 30, 2020 5:09 PM • Updated: April 30, 2020 7:21 PM

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