2021年7月14日水曜日

日本の防衛産業が存在感を増している。注目される防衛装備品事業と輸出の動向に海外も注目。

 

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日本が実現をめざす新型戦闘機の想像図。(Illustration: Jacki Belker/Staff; Photos: Japanese Defense Ministry and Mike_Pellinni/Getty Images)


 

本の防衛産業基盤の拡充が続いている。日本は防衛力をゆっくりと整備し中国軍事力の成長に対抗する。

 

今年の防衛ニューストップ100リストには、日本からは三社がランク入りしている。SUBARU(85位、防衛部門収益8.05億ドル)は昨年は圏外だった。その他日本企業には三菱重工業(MHI)(32位、37.88億ドル)、川崎重工業(KIHI)(51位、20.3億ドル)がある。このうちKHIは昨年は圏外になったが今年リスト入りが復活した。

 

MHIが日本最大の防衛産業の位置を守っている。ただし、防衛部門収益は42パーセント減り、65.7億ドルを昨年計上した。

 

同社は極超音速技術分野の研究で極超音速巡航ミサイル、超高速滑空体の実現を目指し、防衛装備庁に協力している。

 

新型戦闘機、忠実なるウィングマン

 

防衛装備整備で最大規模になるのがステルスF-X戦闘機開発で、90機強供用中の三菱F-2戦闘機の後継機とする。F-X開発契約は2020年にMHIが交付を受け、開発予算は着実に増額されている。

 

F-X開発全体6.86億ドルのうち、5.2億ドルが概念設計、エンジン初期設計用に確保されている。またレーダー技術やミッションシステム統合でも予算は確保済みだ。

 

日本はF-X試作機の製造を2024年に開始し、飛行テストを2028年に実施すべく設計、製造準備を完了させる。航空自衛隊での供用開始は2035年ごろとなる。

 

新型戦闘機は自律型無人機「忠実なるウィングマン」とともに供用される。産経新聞は昨年10月に日本が小規模テスト機を今年から開発開始し、2024年に飛行テストを行い、2025年に実寸大機の開発を開始すると報じていた。

 

日本版の「忠実なるウィングマン」にはF-Xとの同時運用でセンサーペイロードを搭載し、F-Xの前方を偵察する機能、空対空ミサイルを搭載しての航空戦闘が想定されていると同記事にあった。

 

日経も12月に開発は三段階となると報じた。まず無人機を地上から操作する。次に有人無人機のチームとしF-Xから数機の無人機を操作する。そして最終的に完全自律運用を実現するとある。

 

SUBARUが遠隔飛行制御機能の開発を担当し、MHIは有人機無人機間のデータリンクを開発する。

 

イージス専用艦

 

日本はイージスアショア弾道ミサイル防衛装備の導入を断念し、北朝鮮や中国の弾道ミサイル脅威への対抗手段の模索が改めて必要となっている。取り消しの理由としてSM-3ブロックIIA迎撃ミサイルのブースターを安全に分離し、破片が住民の頭上に落下しないと保証できないためとされた。

 

ただ政府はイージスアショア導入候補地近くの住民の反対には触れていない。反対意見が他装備の導入地にも現れることが予想される。

 

そこで日本は弾道ミサイル防衛を専用艦に搭載する案を割く託した。最終設計案は未発表だが、J7.Bイージスシステムを搭載するとの報道がある。J7.BはSPY-7半導体レーダーと日本向けJ7ベイスライン(米ベイスライン9イージスシステムと同等)を組み合わせるものだ。

 

艦艇にSM-6を搭載し、極聴音速兵器や巡航ミサイルに対応させるのは中国が両型式の兵器を続々と配備しているためだ。

 

弾道ミサイル防衛用に専門艦を整備すると、日本近海に配備しつつ、現行のイージス艦と同じ性能、兵装は必要なくなる。イージス艦は艦隊防空任務を想定し、同時にその他戦闘機能を盛り込んでいる。

 

もがみ級の輸出は?

 

日本はゆっくりとだが防衛装備品の輸出も進めており、安部前首相が2014年に輸出規制を解除してから初の輸出案件も成約している。


The Japanese warship Kumano is part of the Mogami class. (Japanese Defense Ministry)

もがみ級のくまの (Japanese Defense Ministry)

 

2020年8月にフィリピン向け固定式移動式防空レーダー装備が初の制約案件となった。日本はインドネシアのフリゲート艦整備への売り込みを狙い、もがみ級多任務フリゲートを提案している。インドネシア向けに8隻を建造し、うち4隻をインドネシア国内で建造する案だ

 

もがみ級は全長130メートル排水量3,900トンで海上自衛隊向けに三隻が進水ずみで、5隻をさらに建造する。機雷敷設、水上水中戦にも対応し、無人水上水中機も運用する。

 

ただしインドネシアはイタリアのFREMMフリゲート艦をフィンカンティエリから調達すると発表済みで、艦容も性能も大きく異なるもがみ級を別途導入するかは不明だ。■


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Japanese defense firms prosper amid futuristic tech orders, export drives

By: Mike Yeo

 

2021年7月13日火曜日

どちらが嘘をついている?7月12日の米海軍FONOP実行に関し、米中が平行線の主張を展開。

 今回のFONOPは中国の主張を否定した国際仲裁判定5周年を意識して実行されたのでしょう。実は中国も米国も原則論が大好きな点で共通性があり、こうした事例の後ではお互いに主張は平行線となりやすいのです。そもそも米国はじめ各国は中国の領有主張を認めていないので領海侵入にはあたらないという理屈でしょう。しかし、SCS問題の解決のためには中国の既成事実をことごとく崩していくしか解決はないと思います。読者の皆さんはどう思いますか。

USS Benfold (DDG-65) in the South China Sea US Navy Photo

 

 

海軍は南シナ海で米艦艇が中国軍により排除された事実はないと中国の主張を否定している。

 

南シナ海で誘導ミサイル駆逐艦隊が航行の自由作戦(FONOP)を7月12日実行した直後に海軍が声明発表した。人民解放軍はUSSベンフォールド(DDG-65)を「追い払った」と主張したとのロイター記事が出ていた。

 

「(PLANの)声明にある内容は事実に反する。USSベンフォールドは国際法に則りFONOPを実行し、公海上で通常の行動を続けた」と米第七艦隊は報道発表している。「今回の運用はわが国が掲げる航行の自由と海洋面の合法的な利用原則の固持の一環だ。米国は今後も国際法の許す範囲で飛行、航海、運用を続ける。USSベンフォールドはその一例にすぎない。PRCがなんと言おうがわが方の動きを止めることはできない」

 

中国の主張ではベンフォールドはパラセル諸島近くを航行したとある。中国、ベトナム、台湾が同諸島の領有を主張している。中国はパラセル諸島周辺に領海基本線があるとし、同諸島周囲の海域を中国領海とする。米国はこの主張に対抗し、基本線への航行を実行してきた。

 

「米国による合法的な海洋活動を再度曲解しながら、中国は過剰かつ正当性のない海洋権益主張を南シナ海周辺の東南アジア諸国の犠牲の上に展開している」「PRCによる行動は国際法遵守を続ける米国と対照的であり、米国は自由で開かれたインド太平洋の実現に努力している。大小を問わず各国の主権を尊重するべきであり、力の脅かしに屈することなく、経済繁栄を国際法規範に基づき追求すべきだ」

 

中国外務省は7月12日の報道会見でFONOPを非難した。

 

「中国は主権、権益、安全保障を法に従い今後も堅持し、域内各国との友好協調の関係を固く守り、南シナ海の平和と安定をしっかりと守っていく」(張立堅報道官)

 

米海軍は5月にも同様の中国発表を否定した。中国軍がパラセル諸島でFONOPを実行中のUSSカーティス・ウィルバー(DDG-54)を南シナ海から追いだしたと中国は公表していた。

 

「今回のPLA発表は事実に反している。USSカーティス・ウィルバーがいかなる国の領海から『退去』された事実はない。同艦はFONOPを国際法に則り実施しており、公海上で通常の行動をおこなっていただけだ」と第七艦隊は当時反論していた。■

 

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Navy Denies Chinese Forces Chased Away Destroyer During FONOP - USNI News

By: Mallory Shelbourne

July 12, 2021 1:43 PM

 


2021年7月12日月曜日

戦略輸送機Y-20はグローバル規模での拡大を目指すPLAの野望を実現する手段だ。その他空中給油機、電子戦機などへの応用も要注意。

 

A Chinese People's Liberation Army Air Force Y-20 transport aircraft

2018年珠海航空ショーで飛行展示されたY-20。

November 7, 2018. AP Photo/Kin Cheung



国の軍事力の拡張として新型艦船、航空機が次々と加わっているが成長ぶりが最も著しいのが輸送機で、とくに大型輸送機の拡張ぶりが目立つ。


中国が運用する戦略級輸送機数は現時点で世界の11パーセント相当だが2020年代末に18%に増え、世界最速で機材規模が成長している。


その他中国の軍事装備品と同じく輸送機部隊もソ連時代の原設計が中心だ。1990年代以降、少数ながらIl-76やその派生型を輸送他のミッションに投入している。


中国の輸送機部門は「極めて低い水準から」拡大しているとRANDコーポレーション(シンクタンク)の国際防衛部門上級研究員ティモシー・ヒースが評している。


グローバルな活動へ


中国初の国産大型輸送機が西安Y-20で開発は2000年代中ごろ始まった。2013年に初飛行し、2016年より供用を開始した。実機数は不明だが、少なくとも20機が稼働中とみられる。


Y-20は全長約150フィート、全高50フィート、翼幅160フィートの機体で航続距離は5千マイルほどだ。公式正式名称はKunpengとされ、神話で何千マイルを一気に飛んだ鳥とされるが、ふっくらした機体から「丸ぽちゃ娘」の愛称もついている。


Y-20は空中指揮統制機、空中投下、空中給油、戦略偵察、人道援助災害救難用途への利用も想定しているとペンタゴンは分析している。


だが、ヒースは中国輸送機の基本任務は兵員を長距離迅速移動させることにあるという。


A Chinese Y-20 airlifter

A Y-20 at the Zhuhai air show, October 31, 2016. Dickson Lee/South China Morning Post via Getty Images



中国の海外基地はジブチが唯一だが、世界各地で新たな基地確保を目指している。大型輸送力が実現すれば人民解放軍は「危機状況が遠隔地で発生しても迅速対応できる」選択肢を確保でき、兵員輸送から非戦闘員の国外退避まで実施可能とヒースは見ている。


「こうしたミッションで影響力を強められる」とヒースは付け加え、「PLAはグローバルな軍事プレゼンスを確実に実現する」


Y-20は中国西部を飛行しており、「地理慣熟効果」を目指すとし、インド国境近くまで飛行することもあり、極寒地、山地の環境や高高度での運行を試しているほか、南シナ海でも海上飛行を行っているとヒースは指摘した。


Y-20の一機がフィアリークロス礁の滑走路に昨年12月に見つかっているが、同機のスプラトリー諸島方面への初めての飛行だった。


今年5月にマレーシアが南シナ海上空で同国領空侵犯があったと抗議し、Il-76とY-20の編隊だったと述べた。中国軍事筋はチャイナモーニングポストで「南シナ海の天候状況等に」慣熟するための飛行と認めた。


野望はさらに拡大する



A Chinese People's Liberation Army Air Force Y-20 transport aircraft

A Y-20 at Airshow China 2018 in Zhuhai city, November 7, 2018. AP Photo/Kin Cheung



Y-20のミッション内容はさらに拡大する。中国は落下傘兵降下を重視しており、旧式Y-8やY-9に代わり投入され、情報収集任務も想定されているとヒースは指摘した。また、同機で空中給油機能が実現すれば大きな意味があり、中国の戦闘作戦範囲が広がる。


中国には空中給油機として爆撃機の改装型やIl-78が計25機あるが、Y-20Uが今後こうした機材に交代していく。


Y-20Uは2018年12月に初の空中給油に成功したといわれ、量産に入ったようだ。

Chinese Y-20 cargo planes delivering medical supplies to Wuhan

Y-20の11機が医療従事者・補給品を武漢へ搬送した。February 13, 2020. TPG/Getty Images


中国国内アナリストにはY-20Uは西側給油機より性能が劣るとの見方があるが、「わが軍の長距離戦闘能力実現という喫緊の課題にこたえる装備だ」との意見もある。


だがその他中国製機材と共通し、エンジンがY-20の欠点だ。これまでソ連時代のエンジンが搭載されてきたが、新型国産エンジンのテストが始まったとの報道があり、推力、航続距離ともに伸び、ペイロードが150千ポンドに拡大するとの見方がある。


報道内容から最新の西側及びロシア製エンジンと比較してソ連時代のエンジンは「信頼性が著しく劣り、相対的に性能不足」とヒースは述べている。「そのため機体は中国にとって一歩前進だが、まだ高性能機材にはなっていない」


中国が輸送機の航続距離を伸ばそうとするのは軍事面での野望の反映であり、補給品やノウハウ提供を頼ってきたロシアを追い越す勢いだ。


「中国はロシアでさえ達成できなかった方面へ向かおうとしている。航空機による長距離兵員展開がその例だ。ロシアにはない資源が中国にはあり、ロシアの後を追ってきたが、今や指導役だったロシアを追い越そうとしている」■


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China's Fast-Growing Airlift Fleet Reflects Beijing's Military Goals

Christopher Woody Jul 8, 2021, 2:35 AM


2021年7月11日日曜日

第二次大戦でのB-17の成功は英空軍が緒戦で経験した惨めな戦果を教訓に改良を実現したためだった....システムの継続改善が必要だとわかる好例ですね

 

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Boeing_B-17_Royal_Air_Force_Bomber_Command,_1939-1941._CH3086

AIR MINISTRY

 

 

 

二次大戦で活躍したボーイングB-17フライングフォートレスは米陸軍航空軍が昼間爆撃に多用したことで有名だが、初の戦闘投入から本日80年目となった。英軍によるデビュー戦は芳しくない戦果に終わった。にもかかわらず、英空軍が得た初期の不具合から機体や戦術が改良されたことで米陸軍での成功につながった。

 

B-17の初飛行は1935年だったが、1941年12月の真珠湾攻撃まで生産は限定規模となっていた。1940年春に英国はナチドイツとの戦闘能力拡張を迫られ、英空軍にはドイツ本土爆撃が可能な重爆撃機がない状態だった。

 

その時点でボーイングはB-17Cを生産しており、防御用に機関銃7門を.30口径.50口径取り混ぜて搭載し、機体下には「バスタブ」型機関銃砲塔があった。これに対し決定版となったB-17Gは.50口径機関銃13門を搭載したが、当時のC型はそれでも防御力が整っていると見られていた。C型で自己修復型の燃料タンクや装甲版が採用された。

 

爆撃機不足の解消のため英国は米政府とB-17C型20機の調達で1940年3月に合意した。代償として英国は同機の戦闘時の詳しい情報を提供することになった。英国はフォートレスMk Iの制式名称を与え、1941年初頭から英国に到着し、イングランド東部のウェストレインハムに第90爆撃飛行隊が生まれた。

 

B-17の初の戦闘投入は1941年7月9日のことで、それまでに第90爆撃飛行隊はポールブルックに移動していた。初の爆撃目標はドイツ沿岸のウィルヘルムスハーヴェンでドイツ海軍の基地があった。当時の英報道は同機の飛行高度から「成層圏爆撃」と呼称していた。

 

昼間爆撃に3機が投入され、各機はC、G、Hと呼称された。午後3時に離陸し、ウィルヘルムスハーヴェンを高高度から狙う計画だった。

 

同飛行隊の公式記録がミッションで何があったかを伝えている。

G機C機は1650時から1700時の間で第一目標を高度28千、30千フィートからそれぞれこぐ駅下。G機は1,100ポンド爆弾4発を投下し、C機は1,100ポンド爆弾2発が切り離せず、投下したの2発だけだった。

 

爆弾が「切り離せない」とは爆弾倉から投下できず残ったままの状態で基地に帰投したことを意味する。

 

AIR MINISTRY

RAFのフォートレス Mk I に乗員が乗り込んでいる。同機はノーザンプトンシャアのポールブルックを出撃した。

 

爆弾破裂が視認されたが、爆弾4発はバウハーフェン港の西250ヤードに命中し、その他は150ヤードの間隔で南東に落下した。電気系統の故障で両機のカメラが使えず写真撮影はできなかった。

 

だがトラブルはさらに続き、航法用の「アストラドーム」のプレキシグラスが18千フィートを飛ぶG機で凍結した。公式記録では「火器管制」が「不可能」になったとあり、アストロドーム機能の不調がどこまで影響したかは不明だ。

 

NATIONAL ARCHIVES

第90飛行隊の作戦記録簿にB-17二機の初の戦闘記録が残る。

 

 

だが脱出に成功したのは同機に運があったことを意味する。メッサーシュミットBf 109戦闘機と思われる2機がフォートレスの2千フィート下に見つかったためだ。

(敵戦闘機は)上昇しいったん右舷600-800ヤードまで接近したが、一機は制御不能なスピンに入りそのまま600フィート下でスピンを続けた。二機目も攻撃を断念しスピン降下した。発砲はなかった。

MINISTRY OF AIRCRAFT PRODUCTION 

フォートレスMk I, AN529, が米国から到着した直後の姿。同機が1941年7月8日出撃の際のC機である。

 

三番目のH機もトラブルに見舞われた。高度28千フィートで潤滑油がなくなり、第一目標の爆撃を断念、北海の島ノルダーナイに1,100ポンド爆弾4発を4:45 PMに同じ高度から投下した。「街から500ヤードほど離れた砂州上に炸裂の様子が見られた」が、撮影写真上ではなんらの攻撃効果は見られなかった。ただし、H機のトラブルはこれで終わらず、戦闘記録に以下記載がある。

 

側方フラッターが発生したのは水平安定板で潤滑油が凍結し、厚さ7インチにもなったため、爆弾投下後に発生した。この対応のため高度15千フィートに降下したところ潤滑油が解凍し水平安定板が機能回復した。エアスクリュー(プロペラ)4基を逐次フェザリングしたが振動の解消につながらなかった。

 

戦闘デビューは不運に終わったが、同飛行隊は再度出撃しており、今度は別の三機がベルリンを7月23日に爆撃した。高高度爆撃を目指したが雲にさえぎられ、雷雲もあったため各機は爆弾投下できず帰投したのだった。

 

WAR OFFICE

ウィンストン・チャーチル首相がフォートレスMk. Iの飛行ぶりを視察した。

 

1941年9月までにRAFフォートレスは26回出撃し、延べ51機が動員された。だがうち半数が爆撃を中止し、一発も投下されずに終わった。初回出撃の際の問題以外に搭乗員はスペリー照準器のトラブル、機関銃の凍結にも苦しみ、7機を喪失した。

 

RAFが経験したフォートレス運用結果は芳しくなかったが、ドイツ首都まで収める航続距離が証明されたのは重要だ。英国はその後B-17は昼間爆撃に不適と判断した。ただし、理由は機体の欠陥というより自軍の戦術の不備によるものが大きい。

 

英空軍の戦術では爆撃機は個別に飛行する、あるいは小編隊で運用するものとされ、大編隊で相互に防御射撃を行う米陸軍航空軍(USAAF)の戦術と異なっていた。

 

BUNDESARCHIV

ドイツ空軍の訓練教材はUSAAFのB-17の防御兵器の範囲を示した。

 

RAFの爆撃飛行では高高度を取ることで生存性を高めようとしtが、結果としてルフトヴァフェ戦闘機の追撃を逃れることはできなかった。また精度が低下したのはスペリー照準器が米軍が使用したノーデン照準器より劣っていたためだ。高高度飛行により機体、搭乗員が過酷な低温にさらされた。

 

その後英軍はフォートレスを北アフリカで短期間使用したが、結局長距離対潜警戒任務に投入した。それはそれでよい成果をあげたといえる。その他にも当時の用語で無線対抗任務に投入し、航空電子戦のさきがけとしてドイツ防空体制の無線交信を妨害したものの、爆撃機としてはヨーロッパ戦線では使われなくなった。

 

この一方でボーイングは同機の基本設計を見直し、敵戦闘機の攻撃を受けても生存できるようにした。動力付き砲塔が追加され、.50口径機関銃2門をそれぞれコックピット後方、機首下に装着したほか、機後方にも.50機関銃に問の砲塔をつけた。

 

この改良型がB-17Eで、フライングフォートレスはUSAAFが運用しヨーロッパ戦線に1942年8月17日から再投入された。その日、12機変態でフランス北方ルーエンの鉄道操車場を襲撃した。機体損失は皆無だった。イングランドのポールブルックから出撃しており、英軍が一年前に使ったのと同じ基地だった。

 

その後B-17は第八空軍が昼間精密爆撃作戦で多用したことは著名な事実だが、同年中にUSAAFのB-17は300機超がイングランドに展開していた。1944年春に第八空軍のフライングフォートレス部隊は戦闘機援護を伴いベルリンへ爆撃行を展開し、消耗を続けるルフトヴァフェに対し爆撃効果の上昇を見せつけた。

 

ということでB-17は後期になり戦果を見せつたが、初期機体が実戦で示した不運な戦果を覚えている向きは皆無に近い。■

 

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The B-17 Bomber's Combat Debut 80 Years Ago Today Was A Fiasco Poor tactics and

Poor tactics and a lack of defensive armament saw the Flying Fortress withdrawn from European bomber operations in 1941.

BY THOMAS NEWDICK JULY 8, 2021

 

Contact the author: thomas@thedrive.com



2021年7月10日土曜日

米特殊作戦部隊でいまだ多用されるH-6系リトルバードの将来が危うくなってきた

 


Army AH-6 Little Bird helicopter


米陸軍のAH-6リトルバード。2016年4月5日の攻撃航空支援演習にて。

US Marine Corps/Staff Sgt. Artur Shvartsberg

 

  • 40年近く供用中のAH-6、MH-6リトルバードは特殊作戦畑で伝説の機体となった小型ヘリコプターだ。

  • 攻撃に、隊員輸送にとあらゆるミッションをこなす 

  • だが、米陸軍と特殊作戦軍団はリトルバード全廃にむかいそうだ。


特殊作戦司令部(SOCOM)がリトルバードの処遇を決断に向かう。同機は特殊作戦で最も長く供用されている伝説の機体だ。


第160特殊作戦航空連隊「ナイトストーカーズ」は二型式のリトルバードを運用する。攻撃強襲用のAH-6と強襲輸送用のMH-6はともに卵型の機体だ。


AH-6は精密な近接航空支援や強襲攻撃を行う。MH-6は非武装型で隊員の搬送にあたる。


主要なユーザーは共同特殊作戦司令部の特殊作戦部隊を構成する陸軍デルタフォース、海軍のSEALチーム6、さらに陸軍のレインジャー連隊だ。


侮れない卵



AH-6の兵装にはM134ミニガンがあり、毎分6千発の発射が可能だ。またGAU-19.50口径ガトリングガン、2.75インチのハイドラ70ロケット弾、ヘルファイヤ空対地ミサイル、スティンガーミサイルも運用可能だ。


リトルバードの価値を高めているのが機体寸法と機動性で、熟練パイロットの手にかかれば、リトルバードはほぼあらゆる場所に着陸でき、ほぼあらゆる標的を狙える。


強襲輸送型は正確な地点に部隊を送り込み、撤収でき狙撃手には重要な機材となり、二輪車輸送も可能だ。


ナイトストーカーズではリトルバード各型を50機ほど運用している。


MH-6M Little Bird helicopter Army Rangers

MH-6M リトルバードが陸軍レインジャー部隊を運ぶ。迅速展開演習にて。November 14, 2018. US Army


「驚くべきヘリコプターで高度の操縦性でアクロバット飛行も可能だ。AH-6を操縦するのはフェラーリに乗るようなもので、他に比較対象がない」と退役一等准尉グレッグ・コーカーがInsiderに語ってくれた。


コーカーはナイトストーカーでパイロットを30年つとめ、11回の戦役参加を有する。


「両型とも小型で簡単に輸送でき、様々な仕事をこなす。こんなヘリコプターはほかにない。AH-6は、アパッチ、コブラ、ハインドでは得られない操縦性が特徴だ」


リトルバードにはデジタルクラスコックピットがつき、ナイトヴィジョンにも対応するので、パイロットは視線を落とさず、ディスプレイを見ていればよい。


今後がはっきりしない

Army 160th SOAR AH-6 Little Bird helicopter

米陸軍のAH-6 リトルバードが特殊作戦軍団のMC-130H輸送機から搬出された。迅速展開演習にて。 August 29, 2017. US Army


これだけ使い勝手の良いリトルバードだが廃止の話題は以前からあった。2019年にSOCOMの調達トップがリトルバードの性能改修あるいは退役を2020年代半ばに決めると発言していた。


2000年代初頭にリトルバード機材は近代化改修を受け、ローターを替え、ドア面積を拡大し、降着装置を強化した。


今年後半にナイトストーカーズはブロックIII仕様のリトルバード受領を開始する。機体構造を一新し、燃料効率を向上し、ローターを強力にしたものだ。改修でリトルバードの供用期間が延長可能となる。


だがSOCOMでは次のブロックIV改修に進むのか、陸軍が開発を急ぐ将来型垂直機FVLに変更すべきかの議論が続いている。


陸軍は次期ヘリコプター機を2024年末の契約交付で実現する予定だ。SOCOMはその後一年かかけてリトルバード改修案あるいは新型機への切り替えを検討する余裕がある。


「MD-530シリーズの後釜となる機材はないと思う」とコーカーはAH-6/MH-6の原型機に言及した。


「2003年改修でAH-6JはAH-6Mになり、グラスコックピット、テイルローターを4枚構成にし、メインローターは6枚と、猛獣の威力になった」(コーカー)


特殊作戦の古参兵MH-6M Little Bird helicopter Army Rangers

MH-6Mは高速ロープ降下回収装置で陸軍レインジャー部隊を送り込む。US Army/Pfc. Gabriel Segura


リトルバード各機は供用中の高性能機材と比べると設計の古さは否めないが、米特殊作戦の先鋒を40年近く果たしてきた。


AH-6が援護する中、MH-6がデルタフォースやレインジャー部隊を1983年のグレナダ侵攻で運んだ。


パナマ侵攻作戦(1989年)でナイトストーカーズがリトルバードでCIA工作員カート・ミューズおよびデルタフォース救難部隊をパナマシティのモデロ監獄から救出した。


モガデシュの戦いはブラックホークダウン事件として記憶に新しいが、リトルバードが活躍し、デルタフォース、レインジャーを支援した。


アフガニスタン戦の初期でナイトストーカーズはAH-6でアルカイダやタリバン戦闘員を狩り、各機の弾薬をうちつくし、携帯した銃器まで使い、あるいはコックピットから手りゅう弾を落として対応した。


イラクではリトルバードが柔軟性と機動性を生かし多用され、ナイトストーカーズは事実上あらゆる地点に投入した。ディタダムの戦い(2003年)でAH-6支援を受けたデルタフォース及びレインジャー部隊の任務部隊は数で優勢なイラク軍に立ち向かい、ローターブレイドに命中弾を受けてもそのまま飛び続ける機体もあった。


MH-6が米国内の演習でビル上空を飛ぶ姿がよくみられ民間人からは懸念の声もあがることがある。だが、訓練こそがパイロットの技量維持に不可欠であり、訓練では人質救出作戦に焦点を合わせる。


第五世代ステルス戦闘機や無人機が飛び回る中でリトルバードの旧式化が目立つ。実際にリトルバードからUAVとして飛ぶ機体も生まれている。だが有効性に何ら陰りが見られないし、パイロット、整備員、さらに特殊部隊員がおしなべて愛着を感じる機体である。■


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US Special-Operations AH-6 MH-6 Helicopters May Soon Go Out of Service

The 'Ferrari' of US special-operations helicopters may soon be headed out of service

Stavros Atlamazoglou Jul 7, 2021, 9:28 PM


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.



コメント リトルバードの活躍する作品としてミニガンを打ちまくるブラックホークダウン以外に Birds of Prey という映画があり、YouTubeで全編鑑賞可能です。