2013年12月3日火曜日

Darpaが目指す再利用可能打ち上げ機で低コスト衛星打ち上げが実現する可能性


ターミナル1(宇宙の商用利用)、ターミナル2(ISRなど軍事航空)共通記事です

Darpa Targets Spaceplane Technology At Launch Industry

By Graham Warwick graham.warwick@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com November 21, 2013
Credit: Darpa

国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が試験宇宙機Experimental Spaceplane (XS-1) で目指すのは再利用可能として低コストで軍用、民生の衛星打ち上げを実現することおよび極超音速技術の実証だ。
  1. 同庁は開発に成功した場合は技術を米各軍に移管する通例があるが、「XS-1のパートナーは民間産業」と同機開発の主査ジェス・スポーナブル Jess Sponable は言い切る。
  2. 米国政府向けの低コスト・柔軟対応型の打ち上げ手段として、Darpaは再利用可能な第一段ロケット技術をXS-1で実証し、海外に奪われている商用衛星打ち上げ需要の再獲得も狙う。
  3. 計画ではXプレーンを再利用可能な第一段で発進させ、3,000-5,000-lb.級のペイロードを5百万ドル以下で低地球周回軌道に乗せる技術を実証する。さらに年間10回以上の打ち上げを目指す。
  4. .これに対しオービタルサイエンシズ Orbital Sciences のミノタウロスIV Minotaur IV 使い捨て式ブースターで同等のペイロードを打ち上げると費用は55百万ドルで、しかも年間一回の打ち上げしか想定していないとDarpaの資料は説明している。
  5. Darpaは2014年第一四半期中にフェイズ1初期設計契約業者を3ないし4社選定し4百万ドル程度を交付する。その後、140百万ドルで単一契約社を選定し、実証機の製作、飛行を実施させる。
  6. フェイズ2から3に移行し初飛行は2017年第三四半期となり、軌道飛行実証はその一年後になる予定。
  7. 技術上の課題はXS-1を10日間隔で10回飛行させ、うち最低一回はマッハ10以上の飛行とし、実証用のペイロードを軌道に運ぶことだ。
  8. 10日以内の再打ち上げを10回実施することで再利用の性能を実証し、運航限界を引き上げることをめざす。各フライトで離着陸を行う。
  9. マッハ10以上の速度を実現することでXS-1は使い捨てとなる上段部分の寸法を小型化すること、1ないし2百万ドルを節約することが目標だ。
  10. 動圧 dynamic-pressureや負荷率での要求はないがマッハ10超機となると大気熱制御aero-thermal capability の技術が必要となり、これの技術獲得で宇宙空間への移動や極超音速試験が可能となる。
  11. 同様に試験機でペイロード質量の性能要求は設定されていないが、将来の実用型機体による軌道飛行の可能性を実証するのがそもそもの目的とDarpaは説明している。
  12. Darpaが想定しているXプレーンのサイズはF-15程度で垂直離陸、水平着陸が可能な主翼つきスペースプレーンで動力はスペースXのマーリン1Dロケットモーター2基だ。
  13. 打ち上げ総重量は224,000 lbでこれに対しミノタウロスIVは総重量190,000 lbでペイロードは4,000-lb.だ。今後はNK-33/AJ26エンジンの採用で機体サイズを拡大できる、とDarpaは見る。
  14. XS-1開発の目標は「上昇する宇宙システム費用のサイクルを断ち切る」こととし、その例としてGPS IIIでは衛星単価500百万ドル、打ち上げ費用が300百万ドルであるの対し、1978年のGPS第一号では単価43百万ドル、打ち上げ55百万ドルだったという。
  15. 以前も再利用可能な打ち上げ機を作る試みがあったがすべて失敗しており、1990年代初頭のX-30、90年代後半のX-33はともに必要な技術が追いつかず実現せず、開発は打ち切りとなっている。
  16. 今回は技術で進展があるとし、軽量低コスト複合材での機体構造、燃料タンク形成、耐久性のある熱防護手段や再利用可能な推進機構で航空機に近い運用が可能となるとしている。■

F-35 韓国の導入決定で喜ぶのは誰か


South Korea Order Would Drive F-35 Per-plane Cost Lower

By Andrea Shalal-Esa/Reuters
November 27, 2013
Credit: Lockheed Martin
韓国が40機のロッキード・マーティン製F-35 を予定通り調達すると機体製造単価が低くなることで総額20億ドルの効果が米軍にもたらされるほか、最大1万人の雇用創出につながる期待が出てきた。
  1. .韓国が同機導入を決めれば強制予算削減の下にある米空軍と海軍は今後5年間で最大54機の発注を先送りにできるようになるとアナリスト陣は見る。実際には韓国の正式決定には国防相を座長とする内部委員会の承認が必要だ。
  2. レキシントン研究所 Lexington Institute の最高業務責任者であるローレン・トンプソンLoren Thompson によれば韓国の同機導入でF-35全体に弾みがつくという。「日本および韓国向けのF-35売却が成立すれば、米国にとって北東アジアでの2大工業国家の同盟国が導入することでF-35が西太平洋の戦術航空機材として標準となることになります。」
  3. .シンガポールがこの後に続きそうで、さらにマレーシア、ニュージーランドも導入の可能性があるという。
  4. 米軍は3,920億ドルと最優先課題のF-35開発配備計画を守り抜くとしつつ、議会が国防予算削減の流れを覆せなければ一部の米国向け発注を先送りする必要が出てくると認めている。
  5. 最悪のシナリオでは空軍は今後5年間で24機、海軍は34機をそれぞれ発注先送りにする可能性があるという。
  6. .米国の予算状況に不確かなところがある中で最終決定は下りていないとしているが米軍は予定していたF-35増産が勢いをそがれることを想定している。現在の年産30機を第9生産ロットで90機にする予定となっていた。
  7. 今やペンタゴン史上最大の調達計画規模となっているF-35は遅延の繰り返しに加え当初の見積もりから70%の上昇になったいる。海外から同機を求める動きにより同機への信頼も高まるとの期待がある。
  8. .ロッキードが開発中なのは米空軍、海軍、海兵隊向けの三型式であり、開発資金を拠出した8カ国(英国、オーストラリア、カナダ、デンマーク、トルコ、イタリア、オランダ、ノルウェー)向けの機体だ。
  9. 9月にはオランダが同機導入を確約する7番目の国になったところで、先行する英国、イタリア、オーストラリア、ノルウェー、イスラエル、日本に加わる。
  10. 英国からは来月にも追加発注の発表があるものと期待され、1月にはトルコが8番目の購入国になりそうで100機の確定発注をするだろう。
  11. .日本とイスラエルからは追加発注があると期待されており、シンガポールとベルギーも導入を検討中だ。
  12. 米軍および業界筋は湾岸諸国がF-35に強い関心を有していると見ており、同機をどの時点で該当各国に提供できるか時期を見計らっている。イスラエルが一号機を受領する2016年から5年先になると見られる。
  13. .そこでソウルが正式に同機導入をペンタゴンに通知してくると、購入する機数が米軍および同盟各国の予定購入機数に加わり、機体単価の試算の根拠となる。
  14. ペンタゴンでは2019年までに機体単価が85百万ドルになり、既存機種の単価とそん色ない範囲になると予測している。
  15. 韓国の発注でロッキード社内と協力企業に1万人分の雇用が生まれるという。
  16. 業界筋によると今回発表のコスト節減効果と雇用創出効果は2011年12月に日本から42機導入が発表された際の試算結果とほぼ同じだという。■

2013年12月2日月曜日

中国のADIZ設定への米国対応を見る 


Chinese 'Air Defense Identification Zone' Prompts Pentagon Response

By Michael Fabey mike.fabey@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com November 24, 2013


中国による東シナ海上空に「防空識別圏」設定
でアジア太平洋の緊張が高まりつつある。

  1. 設定は11月23日に発表され、東シナ海のほぼ全域をカバーし、帰属を巡り日中の意見が対立する無人島嶼部分も含む。中国国防省は圏内に侵入する未確認機には「緊急防衛措置」を取りうると発表した。
  2. これに対しペンタゴンは即座に反応を示している。「合衆国は中華人民共和国による本日の発表に深い憂慮を示す」と同日に声明を発表し、「今回の事態は地域内の現状体制を崩そうとする試みと理解している。同国による一方的な措置により相互間の誤解、誤算の事態が発生するリスクが高まっている」
  3. 米国は太平洋重視を実施中でありアジア太平洋地区への戦力再整備にとりかっている。米国の同盟国多数はこの政策を歓迎しているが、米中の衝突の可能性が増えていると憂慮する専門家もいる。
  4. 「中国による発表で米国の軍事作戦が該当地区で影響を受けることは一切ない。米国は外交および軍事チャンネル通じ重大な関心事を中国に伝えており、地域内の同盟・連携各国を密接な協議をしている」とヘイゲル国防長官は発言。
  5. .「各同盟国、連携国には確固たるコミットメントを維持する。合衆国は日米安保条約の第五条が尖閣諸島に適用されるという長年の政策内容を再度確認する」と付け加える。
  6. 8月にペンタゴンで記者会見に臨んだ常万全国防相 Gen. Chang Wanquan は中国の立場を強調する発言をしている。「対立点は対話と交渉で解決すべきと常に主張してきた。しかし、中国が中核的権益をやすやすと売り渡すと考えるべきではない。また領土、主権、海洋権益を守る中国の意思と決意を過小評価することも許されない。」
  7. 常国防相は同時に「アジア太平洋は共通の故郷であり、大小を問わず各国は積極的かつ建設的に地域内の平和と安定を促進する努力をするべきである」と付け加えている。

Pentagon: U.S. Planes Buzzed China’s Air Defense Claim

US Naval Institute News Tuesday, November 26, 2013
  1. .米軍機2機が中国が設定した防空識別圏を通過飛行したと米国防総省が26日午後発表。
  2. 飛行実施は25日夜間でアンダーセン空軍基地(グアム)から発進した2機が尖閣諸島付近を飛行した。
  3. これは訓練飛行で「かねてから予定されていたもの」で「防空識別圏設定のずっと前から企画されていた」と米空軍は言う。
  4. ウォールストリートジャーナルは該当機はボーイングB-52としている。
  5. 日米両国は中国の動きに反発を強めている。
  6. チャック・ヘイゲル国防長官は「地域内の現状を変更し不安定化につながる進展と見ている」と先週土曜日に声明を発表している。「中華人民共和国による一方的な発表で合衆国の同地域内軍事行動が変更されることは一切ない」
  7. 中国の動きに前例がないわけではない。世界各地域に同様の空域が設定されている。日本の防空識別圏は今回の中国設定の空域と一部重複している。北米もADIZが周辺に設定されている。
  8. ただし今回の中国によるADIZは公海上空に設定され、国際法上の整合性があいまいな形になっている。日本の識別圏は同国の排他的経済水域を囲む形で台湾のADIZと重複し、両国間に緊張が走ったことが過去にあった。
  9. そもそもADIZとは設定する側が「申し立てる」ものではない。各国家ができることは民間航空機の識別、飛行位置、航空管制を求めること、あるいは迎撃の可能性を示し引き返させることだ。だがこれも国際法上の根拠があいまいだ。米国政府はADIZの実施の法的根拠として国家には領土へ入るものにあらかじめ条件を設定する権利を有するとする考えを採用。
  10. 「国際法では国際空域内で国家が防空識別圏を設定することを禁じてはいない。」と米海軍の海軍作戦関連法規ハンドブックは解説している。「ADIZの法的根拠は国家に与えられている自国領空進入を合理的な範囲で規制する権利となる。したがってある国家の領空に接近する航空機には自らを識別させ、国際空域内にある間に領空侵入の審査の条件とすることができる」
  11. .この観点から中国のADIZは無視が米国政府の標準行動となっていることに注目すべきだ。
  12. 「合衆国は領空に入る意図がない外国航空機に沿岸国がADIZを適用することは認めない。また合衆国も自国のADIZを合衆国領空に入る意図のない外国航空機に適用することはない」
  13. 「したがって米軍用機で領空に侵入する意図のない場合は自らを識別する必要はないし、他国が設定したADIZを尊重する必要もない。ただし合衆国が特に合意した場合は除く」
  14. 今回の米軍機はグアムのアンダーセン空軍基地を発進している。同基地には常駐の機体はなく、かわりに米空軍は定期的に戦略爆撃機や戦闘機を同基地に配備している。現時点でローテーション配備されているのはB-52Hで空中給油なしで7,652 海里の飛行が可能であり、中国のADIZ対応には十分である。
  15. .同上米空軍筋によると訓練ミッション中に一回は空中給油を行っているという。■

2013年11月6日水曜日

グローバルホーク4機を調達する韓国の戦略的目標は?


South Korean Global Hawks Set For 2017-19 Delivery

By Bradley Perrett perrett@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com November 04, 2013

韓国はノースロップ・グラマンRQ-4ブロック30仕様のグローバルホーク無人偵察機計4機を2017年から2019年にかけて受領することとなり、北朝鮮のミサイルを発射前に探知するセンサー装備の中心とする。
  1. 米政府による契約交付は2014年になりそうで、それに先立ち米韓政府間の合意が年末に成立すると、ノースロップ・グラマン幹部が説明。ただし韓国国防省は政府間契約を来年第一四半期に成立させたがっており、機材は米海外軍事販売制度で引き渡す。
  2. 韓国の支払い総額想定は9,000億ウォン(850百万ドル)で、国防省は2017年の採用を期待する。ノースロップ・グラマンは2019年に引渡し完了としている。
  3. 同機には画像処理装置は装備されるが、信号情報収集装備はつかない。機内に搭載スペースがあるが、米政府が供給を認めないと装備は支給されない。現状での韓国のグローバルホークは米空軍が運用中の画像処理専用ブロック30機体と同程度となる。
  4. 同機取得は韓国の2005年以来の希望だが、米国に正式要請したのは2009年のこと。同機は韓国の滞空無人機構想 Hovering Unmanned Aerial Vehicle (HUAV) の想定性能を実現するもので、これとは別に韓国は中高度飛行無人機 Miniature Unmanned Aerial Vehicle (MUAV)  構想を開発中だ。導入に障害となるのはミサイル技術管理制度 Missile Technology Control Regimeで長距離ミサイルとともに無人機の普及を防いできた同制度だが、米政府はグローバルホークに同制度を適用しないと決めた。
  5. 韓国は同機の離着陸を実施する地上ステーション整備も進める。韓国空軍はRC-800 電子情報収集機(ホーカー800ビジネスジェットの改装)を運用しているのがソウル南方の城南基地 Seongnam だが、北朝鮮からわずか55Kmの地点でS-200地対空ミサイルの射程範囲に収まっている。
  6. グローバルホークの空中待機地点は北朝鮮近くとしても韓国空軍基地から1,000Km以内とする必要がある。すると4機は、それぞれ航続距離が18,000Km 以上あり、36時間の滞空が可能なので連続哨戒飛行の必要はなくなり、一機は整備を受けて残りの3機があれば任務を実施できる。反対に4機発注する根拠は同機の耐用年数を意識したものだろう。グローバルホークの機体構造は4万時間の耐久設計なので、4機あれば理論上は常時1機が空中にあるとして供用期間は18年となる。
  7. 同機の合成開口レーダーは韓国領土内の山岳部で発生する靄を考慮すると有効な装備となる。韓国政府による Kill Chain 政策は北朝鮮によるミサイル発射準備の探知をした場合迅速にミサイルが発射されれる前に破壊することが主眼。韓国から先制攻撃を行うとの明白な発言はないが、韓国大統領パククネ Park Geun-hye の最近の発言には核兵器の使用は無意味と北朝鮮に理解させようという意向が見える。
  8. ただし韓国に高性能情報集衛星やレーダー搭載機材がなければ北朝鮮の地上活動の監視能力はひどく限定的になってしまう。同国は米国の情報活動に依存中だが、グローバルホークの導入でこれが大きく変わることになる。ノースロップ・グラマンは同機は韓国が独自に運用する機材と表現する。
  9. ノースロップグラマンにとって今回の韓国向け技術業務は旧式地上設備の更新ぐらいに限定されそうだ。契約により韓国メーカーがワイヤーハーネスや機械部品を韓国用機材のみならずグローバルホーク全機向けに製作することになる。韓国政府としては産業強化のため国内メーカーを指名したいところだが、ノースロップ・グラマンは価格品質両面で要求水準に合うか確かめたいとしている。
  10. 韓国にとってはノースロップ・グラマンからの技術移転のほうが意味がある。運用訓練、シミュレーション用モデル作成技術に加え無人機の耐空性証明の知見が手に入るからだ。これにより同国が進めるプロペラ推進式のMUAVや将来型の高高度飛行用機材の開発が進む。同国の国産開発機の情報は少ないが、開発が難航していることは明らかだ。MUAVはジェット推進式に換装すればグローバルホークの実用運用高度60,000 ft. (18,200 メートル).に近い高度での運用も視野に入る。■

2013年11月3日日曜日

SR-72について 米海軍協会はこう伝えている

SR-72の話題続編です。海軍協会はAviation Week特ダネを以下伝えています。

Lockheed’s SR-72 Could Fill Crucial Pentagon Need

By: Dave Majumdar
                        
USNI News,
Friday, November 1, 2013
                                                 
Artist’s conception of the SR-72 so-called Son of Blackbird concept from Lockheed Martin Skunk Works. Lockheed Martin Photo



ロッキード・マーティンのスカンクワークスによるSR-72極超音速機構想はペンタゴンが求める敵地に侵入可能な情報収集監視偵察(ISR)機材になりえるだろうか。その可能性は十分ある。

  1. ロッキード・マーティンはマッハ6飛行可能な同機構想をAviation Weekに金曜日に明らかにしている。
  2. 一方、Flightglobalの Dew Lineブログに同機の想像図が7月に掲載されており、一方で同社はスカンクワークスの業績を祝うビデオを公表している。
  3. SR-72構想は確かにすばらしいが、率直に言って国防総省にこのような要求性能の想定はあるのだろうか。
  4. これについても肯定的な結論になりそうだ。
  5. 本年7月に米戦略軍司令官ロバート・ケーラー大将 U.S. Strategic Command chief Gen. Robert Kehler  が報道陣に米軍には敵防空網を突破可能なISR機材が必要と発言している。
  6. SR-72は国防先端技術研究プロジェクト庁のブラックスイフト実証機の焼き直しともいえる内容だが要求水準を満足させる可能性がある。
  7. マッハ6巡航飛行を想定するSR-72が実戦配備されれば現行の超音速ステルス機でも侵入不可能な領空含む全領域での飛行が可能となる。
  8. Aviation Weekは「SR-72は情報収集衛星、亜音速有人機、無人機でSR-71を代替する目論見だった機動性情報収能力の不足分を埋めるべく企画された機体」だとしている。この意味は米空軍はSR-72予算を確保するということだ。
  9. 同機が実用化されれば敵対勢力の領土奥深くからISRデータを集め、損失を受けずに分散型共用地上システムDistributed Common Ground System 施設(情報収集)に送付する。同時に敵に反撃の隙を与えずに強固に防御された目標を攻撃することが可能だ。構想どおりに行けば、国防総省の進めるエアシーバトルで不可欠な役目を果たせる。
  10. ただしSR-72実現の道は遠く、技術面だけでなく、ペンタゴンの予算縮小の中でも課題は残りそうだ。■

2013年11月2日土曜日

SR-71後継機種は極超音速SR-72、ただし配備は2030年代に

Exclusive: Skunk Works Reveals SR-71 Successor Plan

By Guy Norris guy.norris@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com November 01, 2013

ロッキードSR-71ブラックバードが米空軍から退いてほぼ20年、その間一貫して、同機の後継機種として新世代の高速機がいつあらわれるのか、が疑問だった。
  1. だが答えが表に出てきた。長年の沈黙を破りロッキード・マーティンのスカンクワークスが長年にわたり暖めてきた同社がいうところの手が届く価格の極超音速情報収集監視偵察(ISR)兼攻撃用機材開発計画が存在し、早ければ2018年にも実証機の飛行が予定されていることをAW&ST独占記事として明らかにできることとなった。SR-72の呼称で双発エンジンでマッハ6巡航飛行が可能な機体はSR-71の二倍の速度となる。さらにオプションで地上目標を攻撃することも可能。
  2. 米空軍の極超音速機開発ロードマップにより、SR-72は情報収集衛星、亜音速有人機、無人機でSR-71を代替する目論見だった機動性情報収能力の不足分を埋めるべく企画された機体だ。脅威となる対象が機動性を高める一方、一層高度な防空体制を整備する国が現れ、情報収集衛星の上空飛行予定が解明されて対策をとり、領空侵入は困難になっている現状がある。
  3. 高高度からマッハ6で侵入すれば、ロッキード・マーティンが「スィートスポット」と呼ぶ空気取り入れ式極超音速機として生存し帰還する可能性があるが、音速機では無理だ。さらに兵装を運べば敵目標を迅速に攻撃する能力が実現する。
  4. 今までもSR-71後継機の開発が極秘に進んでいるとの情報があったが、確たる証拠が出てこなかった。極秘開発の世界でははよくあることだ。高速ISR能力の軍事上の必要性に疑念をいだく向きは少数派でも、天文学的な開発コストを考えると構想実現は不可能と思われていた。
  5. だが、ロッキード・マーティンはその答えがあるという。「スカンクワークスはエアロジェットロケットダイン Aerojet Rocketdyne  と共同し過去7年間にわたり既製タービンとスクラムジェットを組み合わせマッハ6以上の速度を実現する技術を開発してきました。このアプローチでHTV-3Vができましたが、今回はそれ以上の性能を実現するため、高速タービンエンジンという課題に挑戦したわけです」と解説するの空気取り入れ式極超音速技術を担当するブラッド・リーランド Brad Leland, portfolio manager for air-breathing hypersonic technologies だ。彼が言及しているのは米空軍と国防先端技術研究開発庁(Darpa)が共同開発した再利用可能極超音速技術実証機のことで、2008年に中止になっている。
  6. 再利用可能極超音速機の構想はDarpaのファルコン計画の延長で生まれた。ファルコンは小型打ち上げ機、共通飛翔体 common aero vehicles (CAV) および極超音速巡航飛行体 hypersonic cruise vehicle (HCV) で構成し、ロッキード・マーティンに無動力の極超音速飛行テスト機体 hypersonic test vehicles (HTV) の製作予算を交付していた。
  7. だが開発途中で、2004年の宇宙開発計画再構築の余波を受けてNASAが極超音速飛行研究のほぼ全部を取りやめ、X-43Cコンバインサイクル推進実証機も中止になった。DarpaのHTV開発はそのため三番目の機体を追加し、HTV-3Xは滑走路からターボジェットで離陸し、スクラムジェットでマッハ6に加速し、地上に帰還する構想だった。
  8. HTV-3Xの次の実証機はブラックスイフトと呼称され結局実現しなかったが、その構想設計から「数点の成果が出ているが、公表を控えていた」とリーランドは説明する。
  9. 飛行制御システムでめどがついたことなど基礎ができたのでロッキード・マーティンは風洞テストで離陸速度を下げ、機体制御が可能なことを確認していた。
  10. .スカンクワークスの設計部門がタービンを利用したコンバインサイクル turbine-based combined cycle (TBCC) による実用的な推進システムを開発した。「ターボジェットからラムジェットに切り替え、その逆に戻す技術を開発したのです。テストを多数実施し、モード切替技術を実証しました。」とリーランドは回想する。スカンクワークスはTBCCの縮尺モデルで地上テストを実施し、小型高マッハ飛行可能なターボジェットと切り替え式ラムジェット/スクラムジェットを搭載し非対称形の空気取り入れ口と排気口を二つ備えていた。
  11. そのころ米空軍の研究本部では平行しHiSTED(高速タービンエンジン技術実証)が進められていたが、小型ターボジェットでマッハ4を実現する技術開発に失敗。そのためスカンクワークスは通常型タービンエンジンの限界マッハ2.5とラムジェット/スクラムジェットのマッハ3から3.5の間をどうつなぐかという課題に直面していた。
  12. HTV-3X終了後は研究がさらに進展するはずだったが、やがて退潮となったのはTBCCエンジンモデルが2009年ごろ完成したためだ。そこでロッキード・マーティンはエアロジェット・ロケットダインと「これは製作可能だろうか、何がまだ足りないのかを話し合い」その後7年間にわたる共同開発を続けてきた。
  13. 両社はついに設計上の突破口を開き、SR-71後継機種として意味ある極超音速機の開発が可能となった。「できあいの戦闘機用エンジンF100やF110を使い開発を始めました。ラムジェットを改良して離陸速度を遅くすることがこの機体の実現の鍵で、実用度を上げるとともに開発期間を短縮し、価格も低くできるわけです」(リーランド)「仮にHiSTEDエンジンが実現していても、ブラックスイフトが飛行に成功していたとしても、結局タービンの大型化が必要となっていたはずで、それだけで数十億ドルもかかっていたでしょう」
  14. .ロッキードは推力のつなぎをどう解決したかを明らかにしていないが、リーランドは「当社は他社ではできないことをめざします」とし、これ以上の詳細は口にできないという。ただし、構想案には大型の縮小モデルでのテスト実施段階まで技術が成熟化したものもあったと判明している。その際の検討課題は推力を増大させるために大量の低温空気流を確保することだった。他にも「ハイパーバーナー」としてアフターバーナー機能に加え加速するにつれラムジェットになる機構もエンジン出力増の方法として検討している。エアロジェットは今年に入りロケットダインを吸収合併しているが、ロケット補助動力つき排出機構でマッハ6までスムースな加速が可能と提案していた。
  15. .この推力補助案の詳細は不明だが、リーランドによれば推力切り替えを成功させる鍵は空気取り入れ口にあるという。ラムジェット用とタービン用それぞれの圧縮機を安定して並行に作動させるためだという。
  16. ロッキードは部品レベルの縮小テストを実施している。「次の段階はテストを終了し、実証に移ること」とリーランドは解説する。「実証の準備は進行中で2018年に実証機の飛行を開始するだろう。これにより実機の製作とテストが始まることになる。現時点で必要な技術は開発済みだ。ただ極超音速飛行にはいつもお金がかかりすぎる、大規模技術かつ珍奇だという固定観念が障害になっていますね」
  17. 2018年目標は高速打撃兵器 high-speed strike weapon (HSSW) と呼ぶ米空軍とDarpaによる極超音速ミサイル開発計画の工程表から決められたもの。「今からでも重要な実証項目を試すことができますが、HSSWが実現すれば極超音速技術への疑問も一段落し、信頼性が確立されますね」(リーランド) これまでもX-51Aウェイブライダーのような成功例もあったが、リーランドは「極超音速飛行はまだ眉唾ものと見られています」と認める。
  18. 目標設定は空軍の極超音速機開発ロードマップとも一致しており、2020年までに極超音速攻撃兵器を、敵地侵入可能で地域全域を対象とするISR機材を2030年までに開発する内容になっている。高速飛行可能なISR/攻撃機で不可欠な性能要求はなんと言っても生存性であり、通信・航法衛星の援助なくても生存し、防空体制の整った領空に侵入する能力だ。TBCCによる推力があれば空軍は当初マッハ4と設定していた目標を自ら引き上げることができる。現在は最低でもマッハ5以上の巡航速度ならびに通常滑走路からの運用が要求されていると思われる。
  19. SR-72実現への道のりはまず有人操縦も選択可能な飛行実験機flight research vehicle (FRV)からはじまるだろう。同機は全長 60 ft.でエンジンは一基だが、実寸大で仕様どおりの推力を持つ。「実験機はF-22ほどの大きさでマッハ6を数分間持続できるはずです」(リーランド) そのあとにSR-72として作戦能力のある機体開発へすすみ、双発無人機で全長は 100ft.超。「ほぼSR-71と同じ大きさで航続距離も同じでうが、スピードは二倍になります」 FRVの登場は2018年で飛行開始は2023年となる。「その直後にSR-72が飛行開始し、2030年配備となるでしょう」
  20. スカンクワークスの技術・高性能システムズ担当副社長アル・ロミグ Al Romig, Skunk Works engineering and advanced systems vice president  によるとスピードはステルス性につながるという。これには極超音速機の探知性を減らすという大きな課題があってのことだ。空気取り入れ口が大型になり、空力特性の要求からSR-72ではステルス性能を実現できる形状にはなりにくい。機体表面にはレーダー波吸収剤を塗布するとしても鋭い機体形状全体で熱からの保護が必要なことからステルス性に相反する条件となる。
  21. ナセルが長いことはHTV-3Xで採用したコンバインサイクルエンジンが機体全長にわたり搭載されていること、ならびに一体型ターボラムジェットの空気取り入れ口がついていることを意味するのだろう。「実験機とHTV-3Xの比較では抗力を抑えるためにタービンを小型化していることです」とリーランドは言い、「戦闘機用エンジンを使うので加速はきびきびして、性能に世湯を持たせる改良を加えています。また空気取り入れ口と排気口を共通化していることはとても重要で空気取り入れ口での漏出による抗力および排気口の抗力が相当な量になるためです」
  22. 空力特性で見れば機体前部は高速度での空気圧縮用の取り入れ口を重視した形状に見えるが、X-51Aウェイブライダーの特徴は見られない。「当社はウェイブライダーの機体形状を踏襲するつもりはありません」とリーランドは言う。「ウェイブライダーは巡航飛行中に燃料をほぼ全部燃やして加速する必要がありました。加速だけで燃料を全部消費するのではなく、もっと効率の良い機体でないと巡航飛行の維持ができません。結局離着陸が困難で、燃料積載量を犠牲にして亜音速での抗力が大きい機体になってしまいます」
  23. 機体で目を引くのは機体ほぼ半分を占めるデルタ翼と一体化されていることだ。これにより安定性を確保するとともに高揚力と高い巡航速度を実現するのだろう。エンジン空気取り入れ口の外側で前縁角が胴体と平行処理され、背後に台形の主翼がつけられている。ジグザグにした主翼の角度は低速飛行時に役立つ渦流揚力を確保するためだろう。
  24. SR-72に攻撃能力を持たせることも念頭にある。「長距離ISR任務に加えてミサイル発射の役割も想定しています」(リーランド) マッハ6飛行中に発射すればブースターは不要となり、ミサイルは大幅に重量が軽減される。またSR-72では機動性の高い目標の捕捉、攻撃が可能だ。「SR-71でさえ、速度はマッハ3でも同機の接近がわかる時間的余裕がありましたが、マッハ6となると移動目標を隠す時間的余裕はなく、文字通り回避不可能なISR機になります」
  25. 「SR-72の存在を公表することができるのはHSSW開発が進展しているからです」とリーランドは言う。太平洋へ軸足を移す戦略ので高速ISR機材構想は「弾みがついてきた」という。「極超音速機開発ロードマップではミサイルからはじめることになっていますが、現在は重要な技術実証の時期です」とリーランドは言う。つまり、推進手段の技術要素をひとつずつテストしていることを意味して、実寸大のFRVの評価につながるのだろう。
  26. 「自社資金を投入してやっと大型縮尺機によるテストまできましたが、資金投入規模を大幅に増やす段階に入ったわけです。空軍とDarpaが次の段階に向けた予算を手当てする可能性は相当あります」とリーランドは話しており、FRVが完成すれば開発費用の全体額がスカンクワークスに把握できるようになるという。
  27. 高速飛行可能なISR機がすでに存在しているとの噂にはリーランドは否定的だ。「SR-71が引退して20年近くなりますが、もし後継機があるのであれば相当巧妙にその存在が隠匿されていることになりますよね」■
コメント ISR、無人機、極超音速飛行と今すぐにもほしい技術要素の詰まった構想ですね。



2013年10月29日火曜日

新型爆撃機構想に名乗りを挙げないノースロップ・グラマンの目論見は何か


Northrop Grumman Mum On Bomber Bid

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com October 25, 2013
Credit: USAF

ノースロップ・グラマンは米空軍向け長距離打撃機構想の爆撃機型提案に参加するのか態度をはっきりさせていない。
  1. ボーイングロッキード・マーティンからは先に両社がチームを組み契約獲得を目指すとの発表があり、ボーイングが主契約社となるとしている。
  2. 「ノースロップ・グラマンは長距離打撃機爆撃機型は国家安全保障、米空軍の戦力投射の双方で不可欠な存在と見ております」と同社は声明を発表。「当社として他社の事業取り組み姿勢についてコメントはいたしませんし、現時点で同構想にこれ以上のコメントもしません」
  3. 同社のこの構えは驚きの反応を呼んでいる。なぜならノースロップはこれまで10年間以上にわたり空軍向け次期爆撃機の製造を現行のB-2開発の知見をもとに実施すると公言してきたからだ。同社はこの文脈で先月の空軍協会大会でもB-2開発の経緯を紹介する図書を公開している。ただ、同社は空軍向け空中給油機選定でもエアバスA330長年にわたり相当額を投資した挙句に最後になって辞退している。
  4. 仮に同社が競作に参加しないこととなるとペンタゴンは微妙な立場になり、総額600億ドルの案件を単独企業の指名契約にまかせることになり、特に議会から詮索を招くことは必至だ。
  5. 業界筋にはノースロップ・グラマンはペンタゴンに圧力をかけて予算規模を増やそうとしているのではと見る向きがある。ペンタゴンでは固定価格制を取らない開発対象分野は政府から見てリスクありと判定される範囲に限定されるとしており、奨励金は目で見える成果を対象にし、紙の上での達成報告は相手にしないとする。ペンタゴン交換は「あるべきコスト」の考えで開発を監督するとし、開発室への予算提供を管理するという。
  6. もうひとつの見方としてノースロップ・グラマンは一部報道にあるようにロッキード・マーティンがLRSーB仕様の実証機を製作中とすれば、自社の立場を見極めようとしているのかもしれない。これと同じことがステルス機開発の初期にもあり、ノースロップが1979年に後にB-2となる機体の開発参入を断ったのは要求性能がロッキードに有利になっていないことが確認できないためとしていた。当時ロッキードはハブブルーステルス試作機をすでに飛行させており、F-117契約も獲得していた。■


2013年10月26日土曜日

ボーイングがロッキード・マーティンと共同で新型爆撃機開発に名乗りを上げる


Boeing And Lockheed Martin Team On New Bomber

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com October 25, 2013
Credit: Boeing

ボーイングロッキード・マーティンは10月25日合同発表をおこない、米空軍向け長距離打撃爆撃機 Long-Range Strike Bomber (LRS-B) に共同して開発することを明らかにした。ボーイングが主契約社となり、ロッキード・マーティンが共同開発先となる。
  1. LRS-Bとは高性能ステルス長距離爆撃機を80から100機米空軍に納入する構想で初期作戦能力獲得を2024年ないし26年に設定し、機体価格の上限を550百万ドルにする。
  2. 今回の進展を見ると、2007年以来はじまっていたとされる極秘プロジェクトが順調に進展していることがわかる。両社が最初に制作しようとしていた時点では次世代爆撃機 Next-Generation Bomber (NGB) 計画と呼称され、2018年の実戦化をめざしていた。だがNGBは2009年に前年の金融危機の余波をうけ取りやめとなっている。空軍はLRS-B開発の裁量を2011年初頭を得て、その際に作戦能力の諸元は若干低くすることで単価目標を下げている。
  3. LRS-BはLRSファミリーの一部となる点でNGBと異なるのが特徴で、長距離ステルス無人機、新型巡航ミサイルと一体で運用される。しかし、NGBもリスク回避のため並行して継続されていると業界筋は証言しており、ロッキード・マーティンのスカンクワークスが飛行実証機を作成しているという。
  4. 2011年に空軍を退役したマーク・シャックルフォード中将Lt. Gen. Mark Shackelfordは当時調達担当空軍次官補室に軍事代表として勤務しており、9月の空軍協会大会でリスク軽減さくとしての契約がLRS-Bの中核となる5分野で交付されており、競作に参加する各社は要求水準を上回る性能を実現することができると発言。政府筋から「リスク低減」契約とは実は相当の規模であるとの示唆をAviation Weekは受けている。「リスクヘッジの対象は2025年に機体を納入できなくなるリスクで、現時点でもう一歩で飛行させることができなければ、結局時限は絵に描いた餅になるからね」
  5. ボーイングが主導的立場に立つことで同社のあまり知られていないがずっと開発してきたステルス技術が大きな進歩をとげていたことが判明した。ロッキード・マーティンはステルス機で蓄積したステルス機の知見を持ち込むとともにPolecat UAV試作機での空力特性技術も盛り込む。ノースロップ・グラマンがLRS-Bの競合先になるだろう。■


2013年10月20日日曜日

KF-X 韓国による採用をまだ断念しないボーイングのねらいはF-15使用国へ性能改修の売り込みにあるのか


Boeing Sees Possible Split Fighter Buy For Korea

By Amy Butler
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com October 11, 2013

韓国により選定対象からいったんはずれたボーイングF-15サイレントイーグルで痛手を受けたボーイングだが再入札では期待値を下げ、一部採用が実現すれば上々と考えている。

  1. ボーイング防衛宇宙安全保障部門 Boeing Defense, Space and Security のデニス・ムレンバーグ社長 Dennis Muilenburg によると同社は今もサイレントイーグル開発に費用を支出しており、韓国のF-Xフェイズ3に再提案するという。当初案では60機導入し、F-4、F-5の代替機材とする内容だった。ボーイングは韓国とイスラエルを念頭にサイレントイーグルを開発したもののイスラエルは同機に目もくれずF-35を選定してしまった。
  2. 韓国政府は国防調達計画庁による勧告を無効としサイレントイーグル導入案を白紙に戻している。同国の求める予算規模(8.3兆ウォン、77億ドル)でサイレントイーグルが唯一の選択肢であった。ユーロファイターのタイフーンは資格外となり、ロッキード・マーティンのF-35は予算超過だった。
  3. ムレンバーグによれば韓国はサイレントイーグルと他機種を分割購入するのではないかという。他機種がF-35になるで能性が高い。「今回実行が遅れている調達は60機の同時導入ですが、予算制約があり、日程が厳しい一方で高度技術導入をめざすのであれば分割調達がいいのではないでしょうか」と Aviation Week主催の円卓会議(10月10日)で語っている。韓国の希望は新型戦闘機を2016年に就役させることで、F-35では最初からその日程では実現が危ぶまれていた。
  4. ムレンバーグはさらに同社提案は価格保証をしつつ韓国が求める性能がすばやく実現できるという。「第五世代戦闘機という用語はロッキード・マーティンに都合のよいことば」という。言及しているのはF-35のことであり、「全方位ステルス性能に議論が傾いていますが、ステルス性能重視のあまり性能が犠牲となっていない当社の機体について話をしたいですね」という。サイレントイーグルは全方位ステルス性能がないが、前面ステルス性を最適化しており、ペイロード、速度でF-35より優位だというのだ。
  5. 韓国内にF-35を推す声が強いのは明らかで、韓国空軍の元空将15名が連名でF-35採用を求める公開書簡を出していた。
  6. そこでボーイングの韓国戦略はオーストラリア事例と類似してくる。F-35を待つオーストラリアに同社はF/A-18追加購入させることに成功している。
  7. j時間逼迫を強調するのが同国向け営業戦略の一部で同社製品を導入すれば早ければ2015年12月には実戦運用能力が手に入ると主張する。
  8. 一方でムレンバーグはサイレントイーグルのパッケージにならったF-15の性能改修が同機運用中の各国から関心を集めていると発言。改修内容でデジタル式電子戦能力やレーダーの導入が可能となり、その場合はステルス性を意識した一体型兵装庫他は不要だという。■

2013年10月6日日曜日

米政府機能ダウンで国防産業でも生産ストップへ

Government Shutdown Puts Aerospace Jobs At Risk

By Joseph C. Anselmo janselmo@aviationweek.com, Michael Bruno michael.bruno@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com October 03, 2013

米政府の機能停止がこれ以上続くと、数千人単位で航空宇宙産業従業員が一時的に仕事ができなくなるかもしれない。.
  1. シコルスキーエアクラフトは10月7日に自社の三工場合計2,000名の従業員を自宅待機にする。国防契約管理庁(DCMA)の監督官が工場駐在できないためだ。監督官は工場内の生産を監督承認する役目を果たす。親会社のユナイテッドテクノロジーズは同様に傘下のプラット&ホイットニーでも2,000名を自宅待機措置とする可能性があるとしている。
  2. そのほかの国防産業企業も同様な措置をとろうとしている。「このままだと国防総省の契約事務に影響が出て数千名単位で自宅待機を迫られる会員会社が続出します」と航空宇宙産業協会 Aerospace Industries Association会長マリオン・ブレイキーがチャック・ヘイゲル国防長官宛書簡で警告している。
  3. ブレイキーが気にしているのはDCMAの関与なしには進めない契約案件が多いことだ。「現場監督、承認手続きがないと生産工程も止まります。数日のうちに、多くの会員企業で生産を止める以外に選択肢がなくなり、従業員を無期限に自宅待機させることになります。政府によ指導監督と支払いがない限り」
  4. 10月4日までにロッキード・マーティン他も自宅待機の準備に入っており、同社は10月7日より3,000名の従業員を自宅待機にすると発表している。同社CEOマリリン・ヒューソンは「今後政府による監督作業の停止が長引けば、当社のみならず協力企業も影響を受け、自宅待機扱いや契約行為の停止で影響を受ける社員の数は増える見込み」としている。