2016年2月4日木曜日

オーストラリアの安全保障のとらえ方・コミットメントは日本にも参考になる


最近はインド太平洋Indo-Pacificという言葉が目立ちます。安全保障、通商上の権益を考えると太平洋だけでは不十分という意識の広がりからでしょう。日本にとっても単に潜水艦の調達問題以上にオーストラリアとの安全保障意識の共有は重要です。その中でオーストラリアで国防問題に精通した前国防相の発言が出ていますので、同国の問題意識をのぞいてみましょう。

Australia Taking Long View in Defense Spending in Emerging Sub, Frigate Programs

By: John Grady
February 3, 2016 9:57 AM

Collins-class attack boats HMAS Dechaineux leads HMAS Waller and HMAS Sheean in formation in Cockburn Sound, near Rockingham Western Australia in 2013. RAN Photo
2013年、西部オーストラリアのコックバーンサウンドを通過するコリンズ級潜水艦三隻、前からHMASデシャニューDechaineux、HMASウォーラーWaller、HMASシーアンSheean RAN Photo

オーストラリア軍の装備近代化の上位項目は潜水艦、フリゲート、遠洋監視艇だと前国防相が2月2日にヘリテージ財団で講演した。
  1. ケビン・アンドリュース前国防相はワシントンDCで自由民主党政権により国防支出をGDP2%相当まで引き上げると決定されたことで10年間にわたる「長期的展望」で安全保障上の抑止効果と各国との協力体制がより効果を上げると述べた。
  2. アジアがオーストラリアの主要貿易相手先であり、「安全保障上の権益を決定する要因だ」と述べた。
  3. また新型潜水艦ではまもなく調達先をドイツ、フランス、日本から選ぶとしている。「既成の潜水艦では選択対象にならない」とし、潜水艦事業はオーストラリアにとって大型案件であり、今後10年間が事業期間となり、艦隊就役もその後20年に及ぶと指摘した。
  4. オーストラリア政府はインド・太平洋諸国が軍事装備の近代化を進めるのを横目に見ながら事業を推進していくが、特に中国の動向を意識している。アンドリュースも中国が域内で最大規模の海軍力、空軍力を保有しつつサイバー・宇宙分野でも装備を拡充していることを指摘し、「オーストラリアも静観しているわけにいかない」と発言。

Royal Australian Navy MH60R 'Romeo' Seahawk, flies past HMAS Canberra. RAN Photo
HMASキャンベラのわきを飛行するオーストラリア海軍所属のMH-60R『ロミオ」シーホーク。RAN Photo

  1. ますます自己主張を強める中国は東シナ海、南シナ海で大部分を自国領土と主張している。サンゴ礁を人工島に変換させ、米駆逐艦より大きな海洋巡視船を建造し、海洋進出の動きで野心を隠そうともしていない。
  2. 米駆逐艦が最近になり問題海域を航行したが「中国にとっては脅威と感じられない」形で人工島の近辺を航行しただけだとアンドリュースは指摘する。またオーストラリアも同海域に艦船を派遣しており、米国と同様に自国機を上空飛行させているほか、マラッカ海峡では30年にわたり監視活動を展開しているという。
  3. 「航行の自由を主張すると中国の利益にかなうことになる」とし、問題海域での領有権を巡っては平和裏に交渉すべきだと主張。
  4. アンドリュースは昨年行われたオーストラリア北部での演習に米海兵隊2,500名が参加しており、今後はダーウィン協定で海兵隊の規模は増えると紹介した。またダーウィンの軍港施設は拡張工事中でさらに大型の艦船の利用が可能になると言及。
  5. 「日本とは良好な関係にある」とアンドリュースは通商と安全保障の両面で権益を共有し、自衛隊との演習に米軍も加え実施していると紹介。インドとの関係は労働党政権で「険しくなった」が関係は改善しつつある。シンガポール、インドネシア、マレーシアとは強いつながりがあると述べた。
Three F/A-18 Hornets, Royal Australian Air Force, fly in a training mission during Red Flag 12-3 March 9, 2012. US Air Force Photo
オーストラリア空軍所属のF/A-18ホーネット三機編隊がレッドフラッグ演習で飛行中。2012年3月9日撮影。US Air Force Photo

  1. 中東ではオーストラリアはイラク政府を米国に次ぐ規模で支援しており、イスラム国との闘争を助けているという。イラクでは900名のオーストラリア軍隊員がイラク正規軍、特殊部隊の訓練にあたっており、空軍も作戦を展開している。F/A-18ホーネット・スーパーホーネット6機を派遣し、イラク・シリアで空爆を実施中であり、空中給油機、空中指揮統制機もそれぞれ1機派遣している。ただアンドリュースは空軍ミッションの三分の二は弾薬を投下せずに帰還していると推測している。目標情報が不正確なためだという。
  2. イスラム国との戦いが続くが、アンドリュースは「ラマディ奪還はモスルやラッカよりも重要度は低い」と述べた。モスルはイラク第二の都市でラッカはシリアでイスラム国が首都と称する都市である。ラマディはイラクのアンバール地方の中心都市だ。
  3. アンドリュースはインド太平洋地区の各国とオーストラリアは域内でイスラム過激主義が台頭していることを懸念していると強調した。ジャカルタで発生したテロ事件で8名が死亡したが、インドネシアが容疑者を釈放したこと、イラクやシリアから外国人戦闘員が帰国していること、さらにフィリピン南部でゲリラ活動が依然続いていることをオーストラリア政府は他国とともに注意深く観察していると述べた。■

米海軍の航行の自由作戦を非難する中国の自己矛盾



一方で国際法を順守し、他方で国際法と異なる解釈を堂々と主張する中国の論理構造はどうなっているのでしょうか。中国は既成事実を積み上げれば自分の勝ちと考えているのでしょうか。習金平主席の提唱する中国の夢が中華思想そのもので全部中国のものと勘違いしているとすれば大変な代償が待っているのに認識していないのでしょうか。しかし無害通航では相手国の領海であることを認めてしまうのですが。

China Upset Over ‘Unprofessional’ U.S. South China Sea Freedom of Navigation Operation

By: Sam LaGrone
January 31, 2016 11:48 AMUpdated: February 1, 2016 10:52 AM

USS Curtis Wilbur (DDG-54) in 2012. US Navy Photo
USS Curtis Wilbur (DDG-54) in 2012. US Navy Photo

中国から米海軍による1月末の航行の自由作戦を非難する声明が複数出ている。パラセル諸島のうちトライトン島を実効支配する中国の眼前で米誘導ミサイル駆逐艦が12カイリ以内を通航したためだ。
  1. USSカーティス・ウィルバー(DDG-54) が通過直後に中国国営通信は外務省と国防省の声明を伝えている。.
  2. ウィルバーによるFON作戦は「大人げなく無責任....米国の行為は中国法に違反し、平和、安全保障と秩序を乱した」と国防省報道官楊宇軍Yang Yujunは1月30日に発言している。”
  3. 「これまで米側から艦船航空機の安全通行を保障する方策の提案があったが、繰り返し中国の領海領空に自国艦船・航空機を送り込み、中国の抗議を無視し、両国の海軍空軍部隊の一触即発状況を招いているのは米国だ」
  4. 外務省報道官華春瑩Hua Chunying は声明文で「米軍艦は中国法に違反し、中国領海に許可なく侵入した。中国は同艦を終始監視し音声により警告を発した」としている。
  5. ペンタゴンからはUSNI Newsに1月30日にウェルバーがトライトン島付近を通過したのは無害通航であると伝えてきた。海洋法では軍艦は他国領海内を「領有国の秩序安全を乱さない限りにおいて」通航することが国連海洋法条約第19条で認められている。.
  6. 中国の両報道官とも1992年制定の中国国内法を根拠としており、外国艦船はいかなるばあでも事前許可なく中国領海に侵入することはできないとしている。両名は中国が1996年に該当島嶼部分に基準線を引いており、これで該当部分は中国領土になっていると説明。
  7. 「米側はこの事実を認識しているにもかかわらず中国領海に軍艦を送り込んできた。これは意図的な挑発行為そのものだ」(国防省Yang)
  8. 米側は中国に無害通航に関し事前通告を求める権利はあるとは認めず、中国が領有の根拠とする基準線も認めていない。
  9. 30日にはベトナム外務省報道官 Le Hai Binh がベトナム(パラセル諸島に一部領有権が重複している)は自国領海での無害通航権の行使を認めると発表。
  10. 中国は同様の無害通航を米領土のアリューシャン列島で昨年9月に行っており、米北方軍司令部は「国際法に従っていた」と発表していた。
  11. 米国の航行の自由作戦は1979年に始まっており、米国から見て過剰な領有宣言や国際法に違反する主張に対応するもの。昨年10月にはUSSラッセン(DDG-84)がスプラトリー諸島のスビ環礁上で中国が建設した人工島付近を航行するFON 作戦を実施している。■


2016年2月3日水曜日

2017年度国防予算の概要が明らかになる 総額5,827億ドル


オバマ政権が最後に編成する国防予算が数年先に望ましい結果を生むことを祈るばかりです。研究開発関連では長官が発表した以外のプロジェクトがあるはずですから期待しましょう。F-35調達が犠牲になりそうですが、ますます機体価格が上昇しそうですね。それにしても大国対応と同時並行で戦闘員への対抗策さらに同盟国防衛のコミットメントまで米国の国防政策は大変ですね。日本はじめとする同盟各国への期待や要求が高まるのも当然ですね。カーター長官はオバマ政権としては優れた人事だと思います。


Carter Unveils Budget Details; Pentagon Requests $582.7 Billion

By Aaron Mehta 9:31 a.m. EST February 2, 2016

635877556554241486-DFN-P-P-Americas2.JPG(Photo: Air Force Senior Master Sgt. Adrian Cadiz/DoD)
WASHINGTON — オバマ政権による2017年度予算法案では国防に5,827億ドルを計上し、うち714億ドルを研究開発、75億ドルはイスラム国集団への対応、潜水艦に81億ドル、18億ドルを弾薬類調達に使うとアシュ・カーター国防長官が2月2日に表明した。
予算案公表を次週に控え、カーター長官は開発中の新技術で国防総省にとって「大局的な観点」が必要となる長官のいうところの「大きな変曲点」に対応すると紹介した。
予算案では5つの視点がある。二大大国としてロシア、中国それぞれの台頭、北朝鮮が米国・太平洋同盟各国へ脅威となっていること、イランの湾岸諸国への「悪影響力」、イスラム国集団への戦闘の継続の5つである。
「敵対勢力が一つだけというぜいたくな環境にはないし、現在の戦闘と将来の戦闘の区別もできない、ともに今対応する必要がある」とカーター長官は述べ、「そのための予算案を作成した」
言い換えれば、予算案はペンタゴンが直面する脅威の二面性に対応するものだ。米国とほぼ同格のロシア、中国へは新開発技術で対抗し、同時に対戦闘員作戦にも対応する。
「そのためにカギとなるのがもっとも強力な競争相手を抑え込むことだ。有力な敵対国が挑発的な行動に出るのをあきらめさせるため、または実行した場合に深く後悔させるだけの大きな対価を支払わせる必要がある」とカーター長官は述べ、さらに「この意味でロシア・中国が我が国にとってもっとも重要な競争相手だ」と付け加えた。
カーター長官は以下数字を列挙した。
  • ISISには2016年予算より50%増の75億ドルを計上
  • 18億ドルを2017年に支出し精密誘導弾45千発以上を調達する。これはISIS対応予算とは別扱い。長官は言及しなかったがこれは海外有事作戦(OCO)勘定になるとみられる。
  • A-10退役は2022年まで先送りとする。それまでにF-35Aが第一線に投入される前提。A-10で議会は空軍が同機を早期退役させるようとこれまで二年度予算にわたり働きかけた。2022年まで先送りし、さらに後年度国防計画Future Years Defense Program (FYDP)からも外すことで、オバマ政権は同機退役の決断を次期政権に委ねる格好だ。
  • ヨーロッパ諸国向け安全保障再保証構想(ERI)は2016年の789ッ百万ドルから一気に4倍増の34億ドルに増やす。これはロシアのウクライナ侵攻(2014年)を受けて各国を支援するための事業だ。
  • 81億ドルを潜水艦に支出する他、今後5年間で400億ドル以上を出す。これでヴァージニア級攻撃潜水艦9隻を調達し、既存のヴァージニア級にもペイロードモジュールを追加装備する
  • サイバー分野では70億ドルを計上し、今後5年間で350億ドル程度の規模を支出する
  • 宇宙関連では長官は数字を挙げていないが、ペンタゴンは昨年を上回る支出をすると発言している。昨年は50億ドルとしていた。
  • 二年度連続で研究開発勘定を増額し、2017年は714億ドルとする
最後の点がペンタゴンが進めるいわゆる第三の相殺の技術開発でカギだとフランク・ケンドール副長官が述べている。「もしR&Dをしないと何も生産できなくなる」とケンドールは述べ、「これは固定費用だ。R&Dをなくせば未来はなくなる」
予算案は新規プロジェクトでの開発について、カーター長官は2012年に新設した戦略技術室により「DoD、情報各機関、民間技術を再定義しそれぞれに新しい役割並びに画期的な能力を与え、敵対勢力に挫折感を与える」と述べている。
カーター長官がまず紹介したのは爆弾誘導技術で「スマートフォンで利用されているのと同じ小型カメラとセンサーで小口径爆弾の命中率を上げる」ものだという。その目標はその他の搭載物にも応用できるモジュラーキットの開発だ。
二番目は自律無人機の多数同時運用だ。
「空の分野ではすでにマイクロドローンを開発済みで高速かつ回復力が高い。強風下でも飛行でき、マッハ0.9で飛行中の戦闘機から放出することに昨年アラスカでの演習で成功しており、イラクの砂漠で陸軍隊員が放出することも可能だ。水中でも自律潜航艇を開発しており、ネットワーク環境で作動し艦艇防御から接近偵察までこなすことができ、人工島だろうと天然の島だろうと周回しても人員の生命を危険にさらすことはない」
次に電磁レイルガン用に開発した発射体があり、これは既存兵器にも搭載可能で、「海軍駆逐艦が搭載する5インチ砲や陸軍のパラディン迫撃砲にも応用できる」とし、既存の火砲をミサイル防衛用に転用できる。カーターはパラディンで新システムを先月に実験し成功したという。
最後にカーター長官は「大量武装機」 “arsenal plane”の概念を紹介した。これは空軍の旧型無武装機材を「すべての通常搭載物の空飛ぶ発射台に転換する。実現すれば同機は巨大な飛行武装機となり、ネットワークで第五世代戦闘機の前方センサーとなり、同時に目標補足情報の中心となる。すでに実用化している各種システムを統合し全く新しい機能を実現する」ものだという。
カーターが言及しなかったのはF-35で、優先順位が高い他事業のため同機の調達は削減される見込みだ。また海軍のUCLASSを空中給油機CBARSに転用する案も口にしなかった。これは2月1日ににDefense Newsが初めて伝えたニュースだ。■

★★★F-35の戦闘能力に深刻な制約あり、とペンタゴン試験部門報告書が指摘



今までもF-35の諸問題が取り上げられていますが、今度はペンタゴン内部から厳しい判定が出ました。テストが長引くのも種々の問題が出ているためなのですね。機体だけ完成してもソフトウェアなければカタログ上の能力を発揮できません。F-35開発が鳴り物入りではじまった2000年代から無人機や防空体制の進歩がどんどん進み、ついには第六世代機まで話題になってきています。本当にこんな機体に西側の防衛を託していいのでしょうか。事業に従事する方々は真剣に対応されていると思いますが、問題の山が着実に解決されて実戦化した段階で世界は当初の想定と相当変わっているでしょう。大きすぎてつぶせない、とリーマンショックの際の某大企業のような感じです。皆さんはどう思われますか。

Test Report Points to F-35’s Combat Limits

Jan 31, 2016 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

ブロック2B搭載のF-35で米海兵隊が昨年7月に初期作戦能力(IOC) 獲得を宣言しているが、支援なしで敵に戦闘を挑めないとペンタゴンのマイケル・ギルモア(作戦試験評価部長[DOT&E])が明らかにした。このたびAviation Weekは間もなく公表される全48ページの事業報告書の写しを入手した。DOT&Eは報告書内で「F-35Bブロック2B機材は敵との交戦を避ける必要がある....敵の抵抗が予想される状況では....また友軍の追加投入も必要」としている。
  1. 米空軍で初期作戦能力を得たF-35Aブロック3iでも制約がある。「一部欠陥を補正しているが、ブロック3i搭載機材の戦闘能力は大した違いを生んでいない」
  2. 報告書は「事実として正しい」とF-35共同開発事業室は公式に認めるものの、「判明した問題や日程上のリスクを解決しようと努力中の状況は完全に記述していない」という。ロッキード・マーティンは同室の見解を支持すると伝えてきた。
  3. 12月のメモでソフトウェア欠陥の詳細を述べたギルモアによれば武器放出正確度(WDA)テストがブロック2B開発中に実施されたが12回中11回でチームがシステムの欠陥を補正し、テストが成功するように手を入れたとしている。ギルモアによれば戦闘状況でのF-35の性能は「その場での解決策の有用性に頼るところが多い」とテスト中の解決方法を指して述べている。
  4. WDAテストが難航した原因にギルモアはWDA実施前の部品テストが「契約上の要求水準に合致しているか、に重点をおき、戦闘実施に適しているかを重視しなかったため」としている。部品テストでは構成部品の作動だけを求めていた。実際のWDAテストで全体の作動状況から「欠陥が浮かび上った」という。F-35事業の統括責任者は一部を意図的に「命中」と判定しており、標的の動きを制限したり対策を講じて無理やり結果を作っている。
  5. また海兵隊もIOCを宣言したとはいえ不良現象をそのまま受け入れている。この結果「ミッションシステムの作動状況と正確度」で問題が生じ、具体的には機体のデータ融合システムとレーダー性能が問題として表示されたままだった。
  6. 技術的な問題が残っているため飛行速度や機体制御に制限がかかっていると報告書は指摘。地上温度が華氏90度(約32C)以上の場合に兵装庫扉を10分以上閉めたままにしておくと兵装庫内温度が限界を超える。(兵装庫扉を開放するとステルス性がなくなる) F-35Aでは現在速度制限は高度により500から600ノットになっている。
  7. 発熱問題は数年前から判明していたが、燃料ポンプ他の変更で解決したとされてきた。F-35は燃料をヒートシンクに使って機体内部及び各システムを冷却するが、冷却能力が不足する状況がある。2014年12月にはルーク空軍基地から燃料車両を白色塗装にして熱問題を軽減したと発表があった。開発関係者は「これはF-35の問題ではない。燃料温度関連でF-35には何ら制約はないはず」と述べていた。
  8. また燃料を内部に満載した状態のF-35ではg制限がある。原因は空気がサイフォン燃料ラインに入るとタンク内圧力が限界を超えるためだ。補修作業が進行中。
  9. 全体として報告書は「欠陥の解決のペースが新たな不良現象の発見に追いついていない」とし、問題多数がテスト中に見つかるが、解決は遅れる一方だとする。「よく知られた問題の中でも重大なもの」として自動補給支援情報システムの欠陥、エイビオニクスの不安定、なかなか解決しない機体・エンジンの信頼性、点検整備の件がある。
  10. 機体数がそろわないこともあり実績記録からDOT&Eはこう結論付けた。フライトテストはブロック3Fの供用開始までに間に合わない。ブロック3Fは海軍用及び輸出用機材のIOCの必要条件であり、システム開発実証(SDD)段階終了の条件にもなるが予定日程に間に合わないのだ。ブロック3F開発用のフライトテストは2015年3月に始まっている。予定ではブロック3FのWDAは48項目あり、ブロック2Bのテストより複雑かつ難易度が高いが、このままでは2017年5月まで完了できない見込みが大で、「大幅に工程の達成度のペースを上げない限り無理」だとする。
  11. さらにDOT&Eが予見するのは初期作戦テスト評価(IOT&E)には生産段階の機体で計器類を完全装備した機体が2017年8月までは確保できない可能性だ。IOT&EはSDDの後で軍が主体となるテストで作戦能力獲得宣言の前に位置する。IOT&E部隊はまず各機体を乗りこなし訓練しておく必要があり、その後IOT&Eが始まる。ギルモアはこれは2018年8月以前の開始は無理とみている。
  12. IOT&Eでは敵脅威を正確に再現し、シナリオも相当複雑で実弾発射では実現できない内容の試験を行う。ギルモアはこの数年間にわたり同機事業の検定シミュレーション(VSim)のサブシステムに不良があり日程も遅れていると警鐘を鳴らしてきた。2015年8月、突然VSimは中止され(2010年以来合計250百万ドルが支出されている) 代わりに政府が主体となった共用シミュレーション環境Joint Simulation Environmentを使うこととした。だがこれはIOT&E開始までに間に合わないので、テスト部隊はシナリオを使うのをやめるか高価かつ時間がかかる実弾発射テストの実施に踏み切るか決断を迫られる。■


2016年2月2日火曜日

FC-1/JF-17最新型に空中給油能力が加わる模様 中国・パキスタン


中国とパキスタンの共同開発機の近況です。空中給油能力を付与すればパキスタンの隣国インドも神経をとがらせるでしょうね。第五世代機ではないですが、比較的安価で調達可能であれば数で敵の少数精鋭機材を圧倒することも可能になるかもしれません。

JF-17 Block II advances with new refuelling probe

Richard D Fisher Jr, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
27 January 2016
成都航空機が作成した空中給油用のプロウブが成都FC-1/JF-17戦闘機に装着されたのが初めて目撃された。1月末成都航空機施設にて撮影。 Source: CJDBY Web Page

中国国内ウェブサイト上で1月23日に成都飛機工業公(CAC)のFC-1輸出用戦闘機(共同開発するパキスタン公空工業集団はJF-17サンダーと呼称)が「ブロックII」開発に進展し、新型装備のテストをしていると報じている。

CAC社有飛行場で撮影されたFC-1の新しい写真には機体番号229がついており、中国で設計した空中給油用のプローブが見える。これがJF-17ブロックIIの大きな特徴だ。プローブはコックピットキャノピーの下にあり、脱着可能なのだろう。

中国国内の報道では空中給油用のプローブがFC-1/JF-17のブロックIIに加わると前から言っていたが、パキスタンで目視されたJF-17の初期型にも中国製の空中給油装備はついていた。だが今回視認されたプローブとは全く違う構造だった。これは南アフリカのDenel Aviationが中国に技術支援したものと思われる。同社はパキスタンのミラージュIII戦闘機用にも空中給油用プローブで支援した実績がある。
An earlier JF-17 refuelling probe design revealed in Pakistan in late 2013 was probably achieved with assistance from South Africa. (CJDBY Web Page)初期型のJF-17の給油用プローブが2013年にパキスタンで明らかになった。南アフリカが開発に手を貸したとみられる。 (CJDBY Web Page)


これ以外に中国国内のウェブサイト上の写真では新型空中給油用プローブを付けたFC-1の飛行テストが撮影時期不明で写っている。ブロックIIのJF-17では南京恩瑞特実業有限公司Nanjing Research Institute of Electronics and Technology (NRIET) 製のKLJ-7 V2レーダーと改良型データバスで高性能空対空兵器、精密誘導爆弾を運用できる。

1月24日に発表された裏づけのない記事が中国国内のSina.comに出ており、パキスタンの国産ラード(雷)空中発射巡航ミサイル(核弾頭付き、射程350キロ)がJF-17から発射されたという。ラードミサイルの直近のテストは1月19日に行われているが、パキスタンにはJF-17から発射したとの報道はない。同ミサイルはJF-17での運用が想定されてきた。■


ボーイング>弾みがついてきたP-8ポセイドン海洋哨戒機


ベストセラー民間機737をベースにしたP-8はなかなか好調ですね。国産P-1はそれに引き替え今のところ海外には発注の動きがありません


20 More P-8s for US, Australia Ordered From Boeing

By Christopher P. Cavas 12:59 a.m. EST January 29, 2016
Boeing P-8A Poseidon(Photo: PS1 Anthony Petry, US Navy)
WASHINGTON — ボーイングは米海軍からP-8A16機の追加発注25億ドルを受けた。またオーストラリア空軍(RAAF)も同型機4機を発注したとペンタゴンが1月28日発表。
  1. P-8Aは高年式になったP-3Cオライオン(米海軍)、AP-3C(オーストラリア)に代わり配備が進んでいる。
  2. 合計20機はロットIII本格生産段階の機体になる。今回の発注はこれまで米海軍が認めてきた固定価格報奨制度契約とは異なる形態を取る。
  3. オーストラリアのポセイドン発注は2014年に8機導入で合意ができており、別にオプションで4機がある。このオプション行使の決断は今年発刊される国防白書で明らかになる。
  4. インドも同型機P-8iを運行中でネプチューンの名称が付いている。英国が9機のP-8A導入を最近決めており、ニムロッド哨戒機を中止した2010年で生まれた空からの海洋監視対潜能力のギャップを埋める。
  5. RAAF隊員はジャクソンビル米海軍基地(フロリダ州)でP-8Aの訓練を一年前に開始している。またカンザス州ではスピリットエアロシステムズがオーストラリア向けのポセイドン1号機の胴体部分の生産を昨年10月に開始している。
  6. オーストラリア向け事業は40億オーストラリアドル(21.5億米ドル)になる見込みでここにはインフラ関連や設備更新を含む。最初のRAAF向けP-8Aの引き渡しは2017年の予定だ。
  7. 当然ながらボーイングは今回の受注に大喜びだ。
  8. 「当社は米海軍から同機の素晴らしい性能ぶりについてフィードバックを受けています」とジェイムズ・ドッド(ボーイング副社長兼P-8事業統括)は28日に声明を出している。「運用中の部隊からは期待以上の実績だと伝えてくれています。今回はオーストラリアにさらに上を行く能力を提供できることを楽しみにしています」
  9. 今回の発注の前に14.9億ドルで8月に成約した契約はオーストラリア向け最初の4機と米海軍向け9機がまとまっている。■

中国への対抗にはパラセル諸島に照準を合わせろ、軍事行為を実施せよ、無害通航ではだめだ



やはり無害通航では中国の論理の罠に入ってしまうというのが識者の指摘です。逆に考えれば中国軍艦が尖閣諸島を無害通航すれば日本の勝ち、ということになるのでしょうか。(中国の領有権主張が崩れるから) しかし現実には中国艦船が侵入すれば逆の行為をする可能性が高く、だからこそ日本は必死になって尖閣周辺のパトロールをしているのですね。南シナ海が落ち着けば次は東シナ海から沖縄までが中国の主要活動舞台になるのではないでしょうか。

McCain, Forbes Praise New Navy Challenge To China In Paracel Islands

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 30, 2016 at 2:06 PM

Sen. John McCain, R-Ariz., chairman of the Senate Armed Services CommitteeSen. John McCain, R-Ariz., chairman of the Senate Armed Services Committee
WASHINGTON: 太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将が南シナ海対応で対中強硬策を取ると発言したわずか二日後に駆逐艦USSカーティス・ウィルバーがトライトン島から12カイリ以内の航行を実施した。同島は中国、台湾、ベトナムがそれぞれ領有を主張するパラセル諸島の一部で、中国は1974年に当時の南ベトナムから奪取し実行支配している。その際はベトナムに少なくとも70名の死者が出た。パラセル諸島は石油・ガスの埋蔵が期待されており、人工島ではなく自然の島嶼である点も重要だ。
  1. 上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長および下院シーパワー小委員会のランディ・フォーブス委員長はともにオバマ政権が太平洋の友好国同盟国の目の前で中国の横暴なふるまいを許していると批判的だったが、今回の実施は称賛している。ただし、マケインは渋々といった感じだったが。
Navy photoUSS Curtis Wilbur
  1. 「米海軍が航行の自由作戦を南シナ海パラセル諸島トライトン島付近で行ったと聞いてうれしい。今回の作戦は米国他各国に国際法で認められている権利と自由を制限しようとする過剰な海洋上の主張に挑戦するものだ」(マケイン)
  2. 「トライトン島の周りを航行することで、USSカーティス・ウィルバー乗員の男女は米国の対アジアならびに法の支配に対するよどみのない力の入れ方が強く伝えたはずだ。島嶼部分の帰属で紛糾していても周囲の上空飛行、航行、作戦実施は違う。この権利の行使、示威を通常の形で実施できるようになり喜ばしい。現政権には今後も航行の自由作戦の継続を強く求め、海洋を共有する各国には立ちあがり、権利を分かち合い、自由に権利を行使するよう訴えたい」(フォーブス)
Rep. Randy ForbesRep. Randy Forbes
  1. 米国は南シナ海の島嶼、環礁、岩礁の帰属はどの国なのかを明確にしないという点で一環しているが、中国が各種地物、人工島から12カイリを「領海」と主張し、主権の及ぶ領土だとすることに反発している。だがペンタゴンは12カイリ以内での軍艦や航空機を通行は2012年以来実施していないと昨年明らかにしていた。
  2. 数々の公式発言、混乱、遅延の末、昨秋ついにUSSラッセンがこの三年間にわたる「航行の自由作戦」の凍結を破り中国が実効支配するスビ環礁の12カイリ以内を航行した。中国へは事前通告せず、また許可も得ないことで中国の解釈する国際法を破った。しかし、国際法の解釈上の多数意見によればラッセンは「無害通航」を行ったことになる。紛糾中の海域を直進し、軍事活動を展開していない。無害通航は各国が他国領海で自由に行える。
  3. 他国の領海内で禁じられているのは純然たる軍事行動で、ヘリコプターを発艦させることや照準レーダーを稼働するのもその一部だ。批評家はこのような軍事活動を12カイリ以内で行えば(米国の視点から)同海域は中国の領海ではなく、「公海」としていかなる国家も好きなように行動できることを明確に示すことになると指摘。
  4. ペンタゴンは声明文で「USSカーティス・ウィルバー(DDG-54)は無害通航としてトライトン島から12カイリ以内を航行した」とするが、つまりいかなる軍事行動もとっていないということだ。では中国の主張に対して今回の作戦はどこまで有効なのか。新しいアメリカの安全保障を間ゲルセンターでアジア太平洋部長のパトリック・クローニンは記者に「中国はアメリカは真剣ではないと受け止めており、アメリカは自ら問題を複雑にしている」と語ってくれた。
  5. 「実は米国は中国の主張に挑戦しておらず、逆に無害通航をすることで中国を助けているのです。これはいかなる国の領海でも12カイリ以内で認められている権利です」と語るのはブライアン・クラークで、かつては海軍作戦部長のトップ補佐官であった。「もし米国が中国やその他国の主張に真っ向から挑戦するのであれば、『軍事行為』を艦に行わせるはずで、レーダーを作動させたり、ヘリを運用するはずですが、今回はこれを行っていません」「興味深いことに台湾とベトナムは抗議していませんね。これは両国が無害通航がUNCLOS(国連海洋法)で認められている権利であり、たとえ自国の領土でも認めるべきものだからです」 抗議の声を上げたのは中国だけで、その根拠は歴史上での領有の記録であり、自国の領土所有を国際法の下でかなり自由に解釈していることだ。
  6. 今回のウィルバーの運航は基本的にラッセンの時と同じだ。「これではラッセンのFONOPから進歩がない」と言うのはボニー・グレイサー(戦略国際研究センター、中国国力プロジェクト部長)だ。「これは2012年より前に行っていたFONOPSの再開にすぎない」
  7. 「掛け金を上げるべく、米国のFONOPはミスチーフ環礁周囲で実施すべきです」とグレイサーは述べる。米国による国際法解釈ではミスチーフ環礁は領海の根拠となる陸塊ではなく、単に「引き潮時に出現する地点」であり、満潮時には完全に水没するので500メートルの安全地帯を構成するだけだ。さらにミスチーフは南シナ海で中国が実効支配する地点で唯一ほかのいかなる地物から12カイリ以上離れており、つまりいかなる領海の外側に位置する。対照的にスビ環礁を昨年ラッセンが通航したが、「岩石」と分類された地物の12カイリ以内に位置し、この岩石を起点とする領海内に位置している。
  8. 「したがってもし米国がミスチーフ環礁付近で航行の自由を示そうとするのなら、『無害通航』ではだめで、軍事活動としてレーダー作動やヘリ発艦を12カイリ以内で実施する必要があるのです。中国が急速にミスチーフ環礁上に施設建設を進めており、軍事利用の可能性もあることからFONOPの次の対象はここにすべきです」とグレイサーは言う。
  9. ハリス海軍大将やホワイトハウスがこの助言に耳を傾けるか注視しよう。ペンタゴンが公表している詳細情報はわずかしかない。
  10. 「本作戦は過剰な権利主張で合衆国含む各国の権利や自由に制限をかけようとする者への挑戦であり、地物の領有権主張を対象にするものではない」と発表したのは国務省だ。「合衆国は南シナ海で自然に形成された地物に対する関係国間の主権をめぐる主張に組する立場をとらない。合衆国はすべての国家に保障されている海洋、上空をめぐる権利、自由、合法的な活用方法が保護されるべきであり、すべての海洋上の主張は国際法に従うべきとする点で強固な立場をとる」
  11. 中国が米国を非難したのは驚くにあたらない。
  12. 「米海軍艦船は中国法に違反し中国領海に侵入した。中国は同艦の動向を監視し、法に従って音声で警告した」と中国外務省報道官は述べている。「米側には中国の関連法規を尊重するとともに遵守するよう求め、二国間の信頼関係を改善し、同時に域内の平和と安定を実現するよう求めるものである」
  13. クラークは「中国の反応は国粋主義的な熱狂で自国の海洋主張への挑戦に対抗させるための国内向け広報の一環だ。中国はこの問題を話題にしても決してこの問題が『本末転倒』となり本当に米国に軍事対抗せざるを得なくなる事態は避けたいはずだ」
  14. 「国際法では他国による自国領土の侵犯にどう対処するかが重要だ」とクラークは続けた。「侵犯された側が抗議しないと、その領土はもともと主張した側に属さないことになる。したがって中国は今後も繰り返し抗議の声を上げて自分たちの主張を正当化してくるはずです」■


イラン無人機の米空母上空飛行の事実を米海軍が認める


どうやらイランがUAVをトルーマン上空に飛行させたのは事実として、もう一つイランが主張する小型潜水艦の空母捕捉はどうなのでしょう。カディール級は120トンとペルシア湾内での作戦に特化した構造のようでこちらを米海軍が捕捉できていないとすると大変なことなのですが、情報を公開しないということは作戦上必要なので、事実は①そもそも同潜水艦は空母戦闘群に接近していない ②わざと空母に接近させて同潜水艦の音紋等を収集している のいずれかでしょう。

U.S. Navy Confirms ‘Abnormal and Unprofessional’ Iranian UAV Recon Flight Over Carriers Truman, Charles de Gaulle

By: Sam LaGrone
January 29, 2016 10:39 AM

Screen shot of an Iranian video claiming to be spy footage of USS Harry S. Truman from an Iranian UAV.
イランが公表したUSSハリー・S・トルーマン上空飛行した際に撮影したとする動画からのスクリーン・ショット

米第五艦隊関係者は USNI Newsに対しイラン軍が無人航空機一機をフランス空母シャルル・ドゴール(R91)およびUSSハリー・S・トルーマン(CVN-75)上空を1月に飛行させた事実を認めた。
  1. 第五艦隊報道官のケビン・スティーブンス中佐は無武装未確認のUAVが1月12日にペルシア湾内で作戦中の空母二隻上空を飛行したと述べた。
  2. 「このUAVはUSSハリー・S・トルーマンに向かい飛行してきた。シャルル・ドゴールとハリー・S・トルーマンはペルシア湾内公海で航行中だった」と声明文は説明。「ハリー・S・トルーマンから米海軍ヘリコプター一機が発進し、目視によりイラン所属のUAVで無武装と確認した」
  3. UAVが無武装かつその時点でトルーマンは飛行活動を実施していなかったので、このUAVは危険と認識されなかったが、UAVはトルーマンへ直進し上空を通過した。
  4. 第五艦隊は「イランUAVは艦に対して危険はないと判断したが、異常かつ危険な飛行だった」と声明文で発表している。
  5. 第五艦隊が今回の発表をしたのはイランのファルス通信社がUAVと潜水艦がトルーマンの捕捉に成功し活動を監視したと伝えてきたためだ。
  6. 「イラン海軍所属の無人機が米空母上空を飛行し映像で監視活動を実施した」とファルス通信は伝えた。「その一方で、海軍のカディール級潜水艦一隻も米空母に接近し、情報収集および米艦船の動向をビデオ撮影するミッションを実施した。潜水艦は空母に気づかれることなく鮮明な画像情報を収集した」
  7. さらにイランは上空飛行の画像を公開した。
  8. 第五艦隊はこのイランが公開したトルーマン上空飛行ビデオの真偽は確認できないとする。米空母を撮影した動画は数多くあるためだ。
  9. イランが無線操縦の小型無人機をプロパガンダ動画撮影用に使っているのは周知の事実だ。■

2016年2月1日月曜日

★米大統領専用機にボーイング747-8が選ばれました(米空軍発表)



VC-25Aは747-200が原型ですから確かに民間航空から同型機が消えている中で維持運航が大変なのでしょうね。ただ以下の空軍広報を見ると機体はボーイングでも保守管理や内部機材は他社提案が安ければどんどん採用していく姿勢が見えます。おなじ-200をベースにしたE-4フリートはどうなるんでしょうか。なお、日本政府は777-300ERを次期専用機として選定済みです。

AF awards contract for next Air Force One

By Secretary of the Air Force Public Affairs, / Published January 29, 2016


WASHINGTON (AFNS) -- 米空軍はボーイングに1月29日次期大統領専用機調達事業に関しリスク低減活動の契約を交付した。

同事業で契約交付はこれが初。この契約案に追加条項が加えられ民間向け747-8の改修を進め、大統領の搬送ミッション用に設計変更、テストが実施される。

第一ステップとしてリスク低減とライフサイクルコストの管理を進める。要求性能の決定および実機製造決定の際に設計上の代償も検討し、リスクを低くした形で技術製造開発段階に進み、ライフサイクルコストを低くするのが狙い。

「ボーイングとはこれで契約関係ができた。ボーイングは次期エアフォースワンの設計ができる」とエイミー・マケイン大佐(次期大統領専用機事業主査)は語る。「まずリスク低減策からはじめます。これは大変な作業となる個所を見つけることで、経済的な解決方法を探し、納税者の皆さんに最大の価値を実現しつつ、最高司令官のニーズにこたえる道を求めることです」

空軍長官は経済性が次期大統領専用機調達事業ではカギとなると明確に述べている。

「事業が負担可能な範囲で進むことをめざし、コストを意識した調達とします」とデボラ・リー・ジェイムズ長官は発言している。

空軍は供用期間を30年と想定して技術緒元を十分検討し改修と機体維持では企業間の競合を前提とする。競合でコストが下がり、革新性と技術の選択肢が広がる。

「この事業では価格を重視していきます」とマケイン大佐は語る。「今回の契約では747-8を同改造して次期エアフォースワンにするかを決めます。その後コスト削減の可能性を要求性能を検討して探り、サブシステムは競争入札にし、機体の維持管理でも同じとします」

「現有のVC-25A大統領専用機材は非常に高い性能を示してきました。これは機材を管理紙飛行させている空軍隊員各位の努力の結晶でもあります。ただし、機材更新の時期がきました。部品が陳腐化し、製造元が減り、整備時間が長くなっている現状の課題は新型機がやってくるまで増える一方です」とジェイムズ長官は述べている。■


★★★航空自衛隊の南方増強とX-2公表を米国はどう見ているか



F-15Jの実力について理解に苦しむコメントもありますが、先週は日本の動きが注視を集めた一週間でした。

Japan Shifts Air Force Posture South, Unveils Stealth Demonstrator

By Paul Kallender-Umezu, Defense News 2:18 p.m. EST January 31, 2016
X-2 stealth fighter, japan(Photo: Toshifumi Kitamura/AFP via Getty Images)
TOKYO —防衛省の次年度予算要求を見ると航空自衛隊(ASDF)はF-35調達42機は進めるもののF-2とF-15の性能改修実施の決定は先送りされたようだ。
  1. その裏でASDFは南方重視の部隊配置を発表し、南西諸島への脅威へ対応しようとしている。さらに三菱重工業が開発中のX-2心神ステルス試作戦闘機が先週発表されたのは日本が国産技術開発でF-2やF-15の後継機づくりに本腰を入れている証左だ。
  2. ASDFは1,350億円(11億米ドル)でF-35を6機調達し、38億円でF-2改修を進めるほか、294億円がF-35の国内生産に計上されている。
  3. 日本がF-4ファントム後継機としてF-35導入を決めたのは2011年のことで当時の試算では80億ドルだったが、一方でF-2とF-15の性能改修も進め人民解放軍空軍(PLAAF)に対する航空優越性を維持する。
  4. 部隊配備では南方重視が目立つ。ASDFは那覇基地へのF-15配備を40機に倍増し、第9航空団を新設し南西諸島に向けた活動を増大させているPLAAFに対抗する。昨年のスクランブル発進441回は2011年から二倍増だ。(防衛省)
  5. 「日本が航空戦力を九州沖縄と南方へ配備しているのは中国の東シナ海進出に対抗する意図なのは見え見えだ」と日本の軍事問題に精通したウォーウィック大のクリストファー・ヒューズ教授(国際政治、日本研究学)は述べた。
  6. 南方重視の背景に長期的展望ではASDFの対応能力不足が顕著になることがある。装備の老朽化が重しとなるとの分析がある。
  7. 「航空自衛隊の南西方面強化はよいことだ。中国の領空侵犯へ対応しやすくなるが、現状は中国機対応で機体寿命が早く来ることを食い止めようと実際に訓練時間を削っているほどだ」と語るのはグラント・ニューシャム(日本戦略研究フォーラム上級研究員)だ。「航空自衛隊が戦闘機部隊を前方配備すると望ましい。たとえば、尖閣諸島に近い下地空港がある。作戦実施に有効活用でき、自衛隊も南西諸島に近い地点でプレゼンスを配置する。与那国島に陸上自衛隊を配備するのとも関連する」
  8. 新設航空団の意味は大きく、日本が直面する脅威に対抗し、南西諸島の防衛が死活的と認めたことになるというのはアヴァセントインターナショナル(戦略政策コンサルティング会社)社長のスティーヴン・ゲイナードだ。「戦闘機部隊を最前線近くに移動するのはよい考えだ。だが戦力はそれでも連続哨戒飛行の実施には不足気味だ。防衛省には南西諸島防衛で名案があるのだろうが、防衛予算の現状では要求すべてを満足することが難しい」
  9. ゲイナードはF-15は改修しても「痛ましいほど性能不足」と指摘する。「F-15Jは米空軍の1990年ごろのF-15と同じといってよい。日本がF-35を求めるのはわかるが、F-15については米空軍の仕様まで性能近代化が必要だ」
  10. ティールグループ副社長リチャード・アブラフィアも同意見だ。「日本は戦闘機の性能向上を重視しているが、防衛予算の現状では最優先事項すべてが実現するのとは程遠い。言い換えれば日本の外交政策には裏付けになる防衛予算と装備が欠けているということだ」
  11. 長期にわたる抑止力整備で日本が考えなければならないのは高くつく国内防衛産業基盤をどこまで維持するのかだ。先週公表された心神ステルス試作戦闘機は現地報道によれば335百万ドルで、国産ASW/MPA機材P-1(ボーイングP-8導入はしなかった)とC-2輸送機(C-17やC-130J導入の代わりに開発)の生産に踏み切ったことから日本は国産装備生産に余分な価格を支払ってまでもよしとし、F-15やF-2の後継機種にも大きく賭けに出ようとしている。
  12. 「ステルス戦闘機試作の真の意図がわからない。技術基盤を確立し日本も戦闘機で国際共同開発で交渉力を得て、F-35事例のように置いてきぼりを食いたくないのではないか」(ヒューズ)
  13. 心神を完全開発段階にもっていくと数十億ドル規模になり、生産に踏み切ればもっと大きな予算が必要だ。これは日本でもそう簡単に負担できない。
  14. 「心神は技術実証機であり、科学研究の材料だ。その他各国(韓国、トルコ等)と同様に第五世代機以後の機材開発に意欲がある日本だが単独で開発するだけの資金的余裕がない」とゲイナードは見る。
  15. 「これまでの航空自衛隊は米国製戦闘機の国内生産で最良の実績があったが、国内開発したF-2では不満足かつ非常に高価な結果しか生んでいない」とアブラフィアも指摘する。「そのため日本が防衛政策で強気になれば結果は逆に悪くなる。F-35をもっと調達すべきか国産戦闘機開発に進むべきかで議論が進んでいる」
  16. ニューシャムは長期的に調達方法や戦略方針を根本的に変換すれば航空自衛隊は抑止機能を今後も発揮できると考える。「日本のやりかたはゆきあたりばったりだ。統合指揮運用で南西諸島を利用すれば航空自衛隊にも有益だろう。各部隊を一本の指揮命令系統で運用することのほうがどんなハードウェア調達より価値が生まれるはずだ」■