2020年9月13日日曜日

新次元の長距離精密攻撃ミサイルで米陸軍が中国海軍艦艇を攻撃する日が来る

Lockheed Martin

 

 

陸軍は最大500キロ先を移動中の水上艦船をとらえ破壊する能力を2025年までに実現する。その手段として精密打撃ミサイルPrecision Strike Missile (PrSM)の開発を急ぐ。同ミサイルは異次元の攻撃能力を有し、精密かつ高性能標的捕捉効果をもたらす。

 

PrSMは最初は対地攻撃用だったが、標的捕捉用に高性能マルチモードシーカーを搭載して柔軟な標的対応が可能となり海上目標攻撃も可能となる。

 

このたび新型標的捕捉シーカーによる航空機からの「キャプティブキャリー」発射テストが終了し、実戦配備に道が開いた。

 

「初回テストは成功だった。防空ネットワークに接続したセンサー多数を使い、長距離から目標多数を攻撃するのが狙い」と長距離精密火力実現機能横断チームLong-Range Precision Fires Cross Functional Team長のジョン・ラファティ准将がNational Interest取材に応じた。

8.4M

5.1Problem China's J-20 Stealth Fighter Doesn't Have a Gun

 

新型シーカーの技術詳細は保安上の理由で不明だが、ラファティ准将の説明では米陸軍がめざす複合装備運用Combined Arms Maneuver構想さらに重要なマルチドメイン作戦Multi-Domain Operations構想のめざす性能に発展する余地がという。

 

ラファティ准将は同装備の開発は順調に進行中と述べ、メーカーのロッキード・マーティンが予定より一年早く基本設計を完了したのが大きいという。「議会からは開発を加速し2025年までの完成を求められている」

 

この装備が登場し、次世代照準技術が加われば、陸軍にアウトレンジでの攻撃能力となり、安全なスタンドオフ地点からの攻撃に道が開く。PrSMがあれば敵レーダー、防空網や空母への遠距離からの攻撃が実現する。

 

米海軍のトマホークの900マイル射程には届かないが、照準技術の向上でトマホーク新型では不可能な効果も可能となる。海軍のトマホークでは飛翔中に方向転換が可能となり、海上航行中の艦船を攻撃できる。従来は固定標的対応だった装備品に全く新しい可能性が生まれるわけだ。陸軍が陸上発射型トマホークの開発にあたっていることにも興味を感じる。

 

新型照準シーカーが実現すれば現場指揮官に移動中の装甲部隊や歩兵部隊を攻撃する手段が生まれる。

 

シーカーに採用する新技術の内容がまったくわからないが、複数モードのシーカーを搭載し各種技術と組み合わせればよい。RF誘導、レーザー、赤外線の応用が可能だろう。

 

新型センサーではネットワーク技術が使われているようで、ラファティ准将はこれでマルチドメインでの照準を実現すると言いたいのだろう。標的情報は無人機、航空機、前方配備統制官さらに艦艇から入ることで全く新しい形の攻撃手段となる。

 

この構想の一環としてラファティ准将から陸軍が高優先順位をつける統合戦闘指揮システムズIntegrated Battle Command Systems (IBCS)についての言及があった。これは網目のようにレーダー他センサー各種をつなぎ、標的情報をリアルタイムで共有するもので、従来のバラバラで独立した戦闘単位を一変させるものだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Precision Strike Missile: How the U.S. Army Plans to Sink a Navy

September 12, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: PGMsU.S. ArmyMilitaryInnovationMissiles

by Kris Osborn

 


 

2020年9月12日土曜日

F-15EXは米航空宇宙産業の新しい発展に道を開く存在になる----ヒント デジタルセンチュリーシリーズ

 ーイング、国防総省、米空軍は旧型機により米航空宇宙産業に新しく学習させられるだろうか。

 

空軍はF-15EXの大規模調達を複数年度で実施すると発表した。F-15EXはF-15C/D型の更改機材とみられていたが、最新報道によればF-15Eの後継機にもなるという。

 

F-15EXは旧型F-15の機体に技術革新を盛り込む構想だ。機体こそF-15だが、内部にこの30年間にわたる改良点が見られる。

 

F-15生産は海外向け販売でここ数年維持してきたが、連続生産が可能となり生産ラインを維持できる。F-15Eに交代する構想では以下が盛り込まれている。

 

- F-15とF-35で重複するミッションもあるが別個のミッションもあり性能も異なる。

- F-15EXの性能は既存F-15各型を大きくしのぐ

- 高額出費につく耐用年数延長改修が不要となる

 

F-15EXにより米空軍はF-15旧型の任務を新型かつ高性能の機材で引き続き実施できる。

 

興味を感じさせるのがF-15EXがデジタルセンチュリーシリーズ(DCS)へ道が開く可能性だ。これには空軍で調達を取り仕切るウィル・ローパーが絡み、画期的な機材を少数生産で多数型式そろえる構想で、オープンアーキテクチャアを採用する。ローパーは以前のセンチュリーシリーズを振り返り、性能面で凡庸な機体が相次いで登場し、F-4ファントムIIを待つしかなかったこと、有人機偏重の傾向を踏まえ、DCSでは無人機に重点を移すと表明している。

 

DCS構想の中心にデジタルエンジニアリングがあり、設計と製造を分離し、3Dプリント他の高度製造技術で補修部品や整備の問題を解決できる期待がある。もっと重要なのが新技術の継続的採用で、これに対しステルス機では緻密な要求を設定したため調達が遅れてしまった。「デジタルセンチュリーシリーズ」は従来の機材調達の考え方を一新させ、米航空宇宙産業の実質的な再編の可能性を秘める。

 

とはいえ、F-15EXはDCSの第一弾ではない。F-15EXにはDCSが想定する技術手段多数が使われているのは事実で、高性能コンピュータモデリングの採用やモジュラー構造機体になっているが、DCSと別の存在だ。知的財産の取り扱いでも異なり、ボーイングはF-15EXの知的所有権大半を保持するが、DCSでは空軍が知財を完全所有する形になる。

 

だが、だからといってF-15EXがDCSのテスト例にならないわけではない。ボーイングからはF-15EXでは迅速改修に道を開く設計上の特徴が盛り込まれており、新型戦闘管理システムも採用しているとの説明が出ている。特に後者はDCSの中核部分だ。

 

無視できないのはF-15EXによりボーイングは今後も戦闘機ビジネスに残ることだ。ローパーがDCSで狙う一つに業界寡占化を食い止めることもあり、1990年代から顕著になった合併統合の流れを逆行させたいとする。DCS支持派には軍用航空宇宙作業の一部で国有化を主張する声もあり、ソ連時代の国営設計局と製造拠点の分離状態を思わせる構想だ。米国防産業の経緯や米国の政治体制を踏まえると、さすがにこれは行き過ぎだろう。とはいえ、デジタルツールを駆使しF-15EXの設計製造をこなすボーイングの実力を見れば、空軍の次期機材開発でも同社が重要な存在になりそうだ。

 

F-15EXは決して安価な機材ではなく、F-35Aの機体価格を上回りそうだ。空軍は悩みの種だった既存機材と技術進歩のバランス問題を解決できそうだ。F-15EXの教訓をDCSに生かし、空軍の有する各機材に高度技術を逐次導入する課題が解決できる。しかし、この実施は未経験分野であり、超大国間対決が中心課題に戻ってきた現況で旧型戦闘機の生産を続けることの是非は長期間にわたり有効な装備品を実現する能力が米国航空宇宙産業にあるのかという公然たる疑問につながるはずだ。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

Could the F-15EX Transform the U.S. Defense Industry?

September 11, 2020  Topic: Technology  Blog Brand: The Buzz  Tags:

by Robert Farley 


Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005.  He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph.D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.


2020年9月9日水曜日

ロボット軍用犬がネリスAFBでの演習に登場。警備任務に投入された。

 Air Force robot dog security

ジョン・ロドリゲス技術軍曹がゴーストロボティクスのVision 60試作型とともにネリス空軍基地での演習に巡回警備している。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne

 

  • リス空軍基地(ネヴァダ州)で「ロボット犬」が試用され、基地が攻撃を受けた想定の演習で警備に投入された。

  • 演習ではF-16ファイティングファルコン等に迅速燃料補給や装備搭載がおこなわれ、ロボット犬が空軍警備要員を視覚的に補助した。

「ロボット犬」は警備要員の状況認識を強化する狙いがある。


ロボット犬を開発したのはゴーストロボティクス Ghost Robotics で、空軍研究本部の契約が4月だったが、先週迅速戦闘投入演習の会場となったネリス基地に姿を現し、敵攻撃を受けた想定の飛行施設確保をシミュレートした。


Air Force robot dog security


ロドリゲス軍曹がゴーストライダーのVision 60試作型をネリス空軍基地での演習で制御した。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne



演習には全米各地から正規部隊と州軍航空隊が集結し、空軍が目指す次世代の高度戦闘管理システムの効力を試す目的があった。


今回投入されたロボット犬の型式名は Vision 60でゴーストロボティクスが情報収集監視偵察(ISR)用、通信用、「連続警備用」の軍用仕様にかえたものだ。「全地形で安定した移動と事実上あらゆる環境に対応するため、設計の中心思想では脚走行ロボットの機構部分を簡略化しており、車輪付きUGVよりも簡単な構造になっている」とゴーストロボティクスは説明している。「簡素化により耐久性、迅速性が増加しているし、運用コストも下がっている」


Air Force robot dog security


ゴーストロボティクスのVision 60 試作型がネリス空軍基地の演習で警備を担当した。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne



今回の演習では321緊急対応飛行隊、621緊急対応飛行団がコロラドのバックレー空軍基地からネリスAFBへ109空輸団のLC-130ハーキュリーズで移動した。


Vision 60ロボット犬は一帯の視覚評価を提供し、621飛行団隊員が機体周辺を警備した他、増援部隊の到着時に安全を確保した。


演習にはC-130の二番機にF-16ファイティングファルコン4機が加わり、迅速燃料補給・装備再搭載をする間、ロボット犬が保安要員とともに安全を確保した。


Air Force robot dog security


ロドリゲス軍曹がゴーストロボティクスVision 60試作型とネリス空軍基地での演習で警備にあたった。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne



Vision 60ロボット犬が今回の演習でどの能力を試されたのか詳細は不明だが、公表写真では621CRW所属の隊員がロボット犬各種と勤務にあたる姿が見え、ゴーストロボティクスが主張するモジュラー構造設計が活用されていることがわかる。■


この記事は以下を再構成したものです。


The Air Force just tested 'robot dogs' to help security forces keep an eye on their bases


Jared Keller, Task & Purpose 18 hours ago


2020年9月8日火曜日

MQ-9後継機は全く違う機体になる兆候。登場は2030年以降だが、最新技術で中国、ロシアへ対抗する

 

MQ-9 Reaper

Air National Guard photo by Tech. Sgt. Neil Ballecer

 

 

ェネラルアトミックスのMQ-9リーパーは中東で延べ数百万時間も投入されてきた。だがペンタゴンはこれからは互角戦力を持つ敵が相手の厳しい戦闘と考え、後継機に全く別の戦闘環境を想定している。

 

 リーパーは先行登場したMQ-1プレデターを拡大し、ペイロードを増加させ、「ハンターキラー」として攻撃のみならず情報収集偵察監視任務まで実施している。ただし、関係者はこうした任務を別の機体に任せる時が来ていると見る。

 トランプ政権の2021年度予算要求にその意向が反映され、MQ-9新規調達をゼロとし、後継機開発を求めたが、議会はこれを突っ返した。

 

ローパー次官補の考え方

 米空軍で調達を取り仕切るウィル・ローパー次官補は「MQ-9を廃止してハイエンド戦に対応させる転換を図った」と7月に記者会見で話していた。空軍は後継機をMQ-Nextと呼ぶ。

 空軍は2012年にも後継機をMQ-Xとして実現を狙ったものの中止した経緯があり、今回が二回目のトライとなる。ペンタゴンがロシアや中国といった高度戦闘能力を有する敵相手に重点を移しつつある背景が今回の違いだ。

 空軍は業界に情報提供(RFI)を6月に求め、7月締切までに大手防衛産業数社が回答している。

 一方でローパーは機体価格も重要視する。

 「MQ-9のミッション以上の可能性を模索している。ただし空軍省予算内で実現するためには機体価格が重要要素だ」空軍省にはその他高額案件があり予算の余裕がない。第五世代戦闘機、新型ステルス爆撃機、地上配備核抑止力の近代化、宇宙装備や全ドメインの指揮統制機能などだ。

 野球のたとえを使い、ローパー次官補は次期機材は多彩な用途をこなす選手にしたいと述べた。ローパーの考える機体はISRデータを収集し同時に空対空兵装も搭載する。

 「ハイエンド戦でも敵戦闘機がやすやすと侵入できない哨戒線を作れる無人機が実現できないか。同じ機体を呼び戻し重要装備、機体や基地の防御にあてられないか」

 期待される任務をこなすためには一機種では足りなくなるかもしれないとローパーは見る。

 「ファミリー構成のシステム装備品にしてもよい」といい、産業界にはハイエンドの敵相手に戦うため独創的な発想を期待したいという。

 自律運航度を高めるのも一つの解決策で、機体価格を下げる効果も期待できるとローパーはみている。

 「MQ-9一機運航するだけでも多数の人員が必要だ」「当時の技術で設計されているからだが、いまや自動化の範囲が拡大している」

 「機体価格を下げるため可能な限り自動化させる必要がある」

人工知能に制御させ、運航コストを下げる技術解決もあるという。

「ISRの時間当たり経費は下がる。アルゴリズムで元の映像を迅速処理し遠隔地の操作員に送り、標的を識別できる」とローパーはミッチェル航空宇宙研究所開催のイベントで発言していた。.

 一方でどこまで残存性を求め、どこまで消耗品としてあきらめるべきかも重要な検討要素だ。

「低価格の機体を多数製造すれば補給活動が課題となる。他方で防御力が高い機体にすれば、敵は重要装備を投入しても阻止に動くだろう」

 ただし消耗前提の機体への移行は容易ではないという。「出撃すれば必ず帰還できる機体を作ってきた。帰還が期待できない機体を作るとなると用兵部門にも製造部門にも全く違う考え方となる」

 ローパー次官補はRFIへの業界対応に独創的な発想を期待している。

 空軍がもくろむのは2030年の納入開始で初期作戦能力の獲得は2031年とRFIにある。

 「デジタルエンジニアリングでは、10年は永遠に近い。この10年で数十年に相当する効果を期待したい。2030年までに完成できないのなら、システムの何かがおかしいことになる。10年間をまるまる開発に使っていいわけがない」

 

ジェネラルアトミックスの意気込み

 ジェネラルアトミックスはRFIに回答ずみで、MQ-9の知見を応用して成果を上げたいと同社広報が語っている。

 「当社が提案する先進技術はオープンアーキテクチャ、人工知能、自律運航、モジュラー構造さらに相互運用への対応でシステム効率を最大限に実現します」「当社の先端技術でライフサイクルコストを下げつつ第一線部隊で高性能無人装備を通じ、共通性と相互作戦能力を実現すると見ています」

 同社はすでに各種システムのファミリー構成を想定していると同社広報は続けた。次期機材では自動化の幅を広げるが、一部はMQ-9ですでに実現しているという。

 「離着陸の自動化や遠隔地上走行さらに運搬式機体制御装置を使い、離着陸地点に人員配置が不要になりました。また地上制御装置は一人で対応可能としつつ、最大6機の同時制御が一人で可能となりました」

 リーパーの自動化ツールを全部そのまま使えば、人員経費を50パーセントが減り、1500人分の人員余裕が生まれると同社は述べている。

 

各社競合になるのか

 業界筋はジェネラルアトミックス以外にロッキード・マーティンボーイングノースロップ・グラマンの参入があるとみている。

 まず、ロッキード・マーティン広報はRFIに対応し、スカンクワークスによる高度技術開発成果を反映していくと述べている。

 ボーイング、ノースロップ・グラマン両社はRFIを提出するか口を濁している。

 MQ-Nextはジェネラルアトミックスにとり重要事業となる。というのもMQ-9が同社の主力製品だからだとフィル・フィネガン(Teal Group)が解説する。同社はヴァージニア州フェアファックスに本拠を置く航空宇宙防衛市場を分析する企業だ。

 「同社は後継機の採用を狙い全力をあげてくるだろう」と述べ、同社はリーパーの収益で維持されており、採用されないと存続が危うくなるという。

 一方でマーケティングコンサルティング企業のフォアキャストインターナショナルで上席防衛アナリストのラリー・ディッカーソンは MQ-Next受注失敗でジェネラルアトミックスの運命が決まる話にならないと見る。

「リーパーは今後も軍に残り、長期にわたり機体整備や支援の業務が同社に残るはずだ」というのだ。

 

変化に消極的な態度の議会

 他方で空軍がMQ-9後継機づくりに前向きなのと対照的に議会に熱気が見られない。下院版の2021年度国防予算歳出案が7月に可決されたが、MQ-9の16機を344百万ドルで調達する内容が盛り込まれており、生産ラインを維持するとある。本稿執筆時点では最終法案は通過していない。

 「空軍の2021年度予算要求にはMQ-9生産の終了がうたわれており、作戦要求に対して機材数が余剰なのを理由にしている」と下院歳出委員会国防小委員会が解説。「当委員会はこの提案を認めず、逆にMQ-9の追加調達16機分が妥当と提言する」

 議会には空軍が十分に計画せずに後継機調達に飛びつく現状に懸念する向きがある。同上小委員会は空軍に対しMQ-9後継機報告書を2022年度予算要求案の前に提出するよう求めている。

 「報告書では次期装備の望ましい性能水準、経費ならびに大日程を開発、配備の実現に関連で示すとともに開かれた競作を確保し、国家防衛戦略構想の目標をどのように実現できるのか説明を求める」との内容が法案に付随している。

 ローパーは新型機の有用性を議会に納得させるのは空軍の仕事だと強調している。

 「いろいろ使える選手を育てて多様なミッションに投入するためこれまでの調達方法ではうまく行かない。議会には大きな転回点と理解してもらいたいし、今後議論を進めていく」

 フィネガンもMQ-9生産終了を認めたくない議員の心情がMQ-Nextで支障になると注意している。

 「議会にとって気に入らないのは生産ライン閉鎖です。そのため事業を止めるのは極めて難しい話なのです」

 

無人機輸出条件緩和の影響は

 他方で、トランプ政権から7月にUAS輸出規定をミサイル技術規制制度(MTCR)との絡みで緩和する発表があった。これでリーパー並びにMQ-Next双方に影響が生まれそうだ。新分類では「カテゴリー1」装備品は最高速度が時速800キロとなる。改定後は米企業に商談の可能性が増えるとみる向きが多い。

 ジェネラルアトミックスでは規制緩和でMQ-9輸出が増えるとみているものの障壁も残っているとディッカーソンが指摘している。MTCR変更がMQ-Nextの販売にどう作用するかはだれにもわからないという。

 「どのシステムを選択するかにかかってきます。米国はこの装備品は簡単に他国に使わせたくないはずです」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

MQ-NEXT: Air Force Sets Sight on Reaper Drone Replacement

By Yasmin Tadjdeh

 

— Additional reporting by Mandy Mayfield

Topics: Air Power, Air Force News


2020年9月7日月曜日

歴史に残る機体(28) F-4ファントムはいまだに供用するところもあるが誕生から60年が経過している

 歴史に残る機体(28)マクダネル・ダグラスF-4

 

 

クダネル・ダグラスF-4ファントムIIは伝説の域に入る機体だ。ヴィエトナム戦争を象徴する機体であり、第三世代ジェット戦闘機の典型となった同機は1960年代に供用開始し、5千機超が生産された大型超音速戦闘機だ。今日でも供用中であり、一部空軍では実戦部隊に配属されている。

 ファントムにはヴィエトナム戦でエンジン推力にあぐらをかいた不器用な乱暴者で使う兵装も旧式だったとの定評がある。

これは公正ではない。

 

 

ファントムの基本欠陥は1970年までに是正され、最近もエイビオニクス、兵装面で現在の水準まで引き上げられている。近代化改修したファントムはトルコ、ギリシアの両空軍で供用中で、F-15と同程度の性能でありながら、はるかに安価に実現している。

 

実戦で洗礼を浴びる

 1958年に登場したF-4は革命的な設計で数々の航空記録を樹立した。

 空虚重量が30千ポンドで大型J79エンジン双発により優秀な推力を実現し、これだけの機体でもマッハ2、時速1,473マイルで飛行できた(できる)。 

 初期のファントムは18千ポンドの爆弾等を搭載でき、これは第二次大戦時のB-17の三倍に相当した。後席の兵装士官が高性能レーダーや兵装運用システムを担当してパイロットは操縦に専念できた。

 さらに、F-4には地上運用型、空母運用型双方があり、米空軍、海軍、海兵隊で供用された。三軍共通機材の例はF-35までなかった。

 ただし、軽量のMiG-17やMiG-21と北ヴィエトナムで空戦に臨むと、ファントムに被撃墜機が発生した。朝鮮戦争では米空軍は一機撃墜されるても敵機6機ないし10機を撃墜していたが、ヴィエトナム戦では2対1程度に縮小していた。(ファントム以外の米軍機全体での数字)

F-4の問題は機体に機関砲が搭載されていないことだった。空対空ミサイルに全面的に頼っていたためで、レーダー誘導方式のAIM-7スパロー、熱追尾式AIM-9サイドワインダー、旧式AIM-4ファルコンを搭載した。

 初期のミサイル性能がひどいことに空軍は気づいていなかった。

 検証したところ、ヴィエトナム時代のAIM-7では45パーセント、AIM-9では37パーセントしか発射に成功あるいはロックオンできず、退避行動をとると撃墜可能性はそれぞれ8パーセント、15パーセントに落ちると判明した。ファルコンに至ってはさらに悪く、その後供用を終了した。

 北ヴィエトナムのMiG-21には機関砲、ミサイルがともに搭載されており、重量が大きいF-4に速力、機動性で勝った。米パイロットが至近距離のドッグファイト訓練は行ってなかったのは、空軍が空対空戦は長距離ミサイル攻撃になると想定してきたためだった。

 さらにファントムのJ79エンジンは濃い黒煙を発し、機体サイズとあわせ空中で発見は容易で遠距離から標的になった。他方で交戦規則により米パイロットは未確認目標が視認距離外にあれば攻撃を禁じられていた。これでせっかくのミサイル性能も発揮できなくなった。

 

改良策

だが、F-4の問題点は解決されていった。空対空ミサイル技術は大幅に向上し、後期型のスパロー、サイドワインダーに反映された。F-4EではついにM161ヴァルカン機関砲が搭載された。.

 それ以前は外部ガンポッドを搭載して対応するファントムがあったが、大きな振動が発生していた。

 1972年、フィル・ハンドレー少佐のF-4がMiG-19を機関砲で撃墜したのが超音速域での銃撃による撃墜事例で唯一のものとなっている。

 空軍はF-4E全機に主翼スラットを搭載し、操縦性を大幅に改良した。新型J79エンジンでは黒煙問題の解決を狙った。

 対照的に米海軍は航空戦闘機動訓練の欠如が原因ととらえ、トップガン訓練を1968年に開始した。海軍パイロットはキルレシオで優秀な結果を残しており、7機を喪失したが40機を撃墜している。 

 空軍のファントム全体では107機を撃墜したが、33機を喪失している。海兵隊は3機撃墜したとする。地上砲火で三軍で474機のファントムを喪失したのはファントムに対地攻撃も担当させたためだ。

 派生型が二種類生まれた。RF-4写真偵察機とワイルドウィーゼルで、後者は敵の地対空ミサイル防空体制の撃破を専門とした。米軍のファントム実戦投入は砂漠の嵐作戦が最後となり、1996年に用途廃止した。ペンタゴンは一部機材を無人標的機QF-4に改修した。

 

中東のファントム

 ファントムは世界中で供用された。特にイスラエルではエジプト、シリアを相手に116機の撃墜記録を達成した。

 1973年のヨムキッパー戦争(第四次中東戦争)ではエジプト空軍のMiG編隊がオフィール航空基地を急襲し、離陸できたのはファントム二機しかなかったが、7機の撃墜に成功した。.

 イスラエルのファントムの第一の標的はアラブ側の地対空ミサイル陣地だった。SAMによりイスラエルはファントム36機を喪失している。

 イスラエルのファントムで最後の奉公となったはレバノン戦で、新型F-15やF-16のエスコートを受けたファントム編隊は一日でベカー警告内のシリア軍SAM陣地30か所を全部撃破したが一機の喪失もなかった。

 イランは革命前に米国より225機のF-4を受領し、イラン戦闘機部隊の中核となり9年にわたり続いたイラクとの戦争に投入した。イランのファントムはイラクMiGに善戦したほか、長距離攻撃も実施した。ただし、空対空ミサイルの成果については疑問の余地がある。

 

21世紀のファントム

ファントムをF-15イーグルと比較してみよう。

 F-15の供用開始は1975年で第四世代戦闘機として今日まで近代空軍力の中心的存在だ。F-15は意図的にF-4とは別の路線の高機動性を誇る機体になっている。

 レバノンでF-15、F-16が初の戦闘投入された1982年にイーグルはシリアの第三世代機80機超を撃墜しながら被撃墜機は皆無だった。

 第四世代戦闘機の優秀性が実証されたのが湾岸戦争で、イラク戦闘機が撃墜に成功した第四世代戦闘機はF/A-18ホーネット一機に過ぎないが、第三世代機では33機を撃墜している。F-4は新しい環境に対応できるのだろうか。

 簡単である。第四世代機で搭載したハードウェアと同じものを搭載すればよいのだ。

 トルコ空軍、ギリシア空軍で供用中のファントムには新型パルスドップラーレーダーが搭載され、「ルックダウン、シュートダウン」攻撃がF-4で可能となった。従来は高高度飛行中はレーダーによる低空飛行中の機体探知は困難な仕事だった。レーダー波が地上に反射してクラッターが発生するためだ田。アクティブドップラーレーダーだと地表クラッターの影響を受けない。

 近代改修型F-4では各種近代装備を運用でき、AIM-120C AMRAAM空対空ミサイル(射程65マイル)、AGM-65マーベリック精密誘導弾、スパロー後期型、サイドワインダーミサイルがそれぞれ搭載可能だ。

 現代の戦闘航空機材はウェポン搭載手段にすぎず、こうした装備を運用できるF-4は第四世代機のF-15、Su-27と同様の攻撃任務をこなせる。

 だが電子装備や計器類は陳腐化しているのではないか。必ずしもそうではない。たとえば、近代化改修型のF-4にはヘッズアップディスプレイ(HUDs)がつき、パイロットは視線を落として計器盤をチェックする必要がなくなった。

 ドイツは改修型F-4Fを2013年まで運用し、将来のため機材を保管している。韓国にはF-4Eが71機があるが、改修は一部にとどまる。日本もF-4EJ改を同数保有し、パルスドップラーレーダーと対艦ミサイルを搭載する。イスラエルはファントム改装をいち早く1980年代に開始し、ファントム2000クルナス(ハンマー)と呼んだ。イスラエル企業はギリシアのピースイカルスファントム41機にANPG-65パルスドップラーレーダーを搭載し、AMRAAMミサイル運用を可能とした。

 イスラエルはトルコにもターミネーター2020事業で協力しており、主翼にストレーカーを追加し操縦性能を向上させている。

 同機改修では配線20キロメートル分を交換し重量1,600ポンドの軽量化に成功した。トルコ向け機材ではセンサー、電子装備も一新している。またぺイヴウェイ爆弾、HARM対レーダーミサイルやポパイミサイル(3千ポンド級、射程48マイル)の運用が可能だ。

 ターミネーター各機は基本的に対地攻撃が任務だが悪評もある。クルド人組織PKKの戦闘員をトルコ国内、イラクで2015年から2016年にかけ爆撃した。RF-4偵察機がシリアで2012年に撃墜され、F-4三機が2015年に墜落しており、トルコ国内では「空飛ぶ棺」と揶揄されている。

 イラン空軍はF-4D、Eの76機とRF-4の6機が作戦投入可能と2009年に述べていた。同国はロシア製中国製の空対地、対艦ミサイルの運用を可能とする改修を実施したようだ。ただし、中古品のAIM-7スパローを今も使っている。イランのF-14トムキャット同様にF-4でも部品入手は密輸に頼っている。

 イランのファントムはイラク国内のイスラム国標的を2014年12月に空爆し、ペルシア湾上空で米軍機との追いかけっこをしている。

 性能強化されたとはいえ改修版F-4は本当に第四世代機と同等といえるのか。21世紀でも供用中のファントムで空対空戦は一回も発生していないが、ギリシアのF-16と撃墜に至らないドッグファイトは発生している。

 また中国のSu-27と2010年の演習で模擬空戦を行い、ネット上の情報ではゼロ対8機と優秀な成績だったという。

 主翼スラットを追加したファントムがきつい旋回をこなし、180度方向展開をする様子を映像で見ると、F-15並みの機体操縦が実現しているが、F-4では旋回完了まで7-8秒かかっているのがわかる。F-15が操縦性では一歩上を行く。

 だからと言って改修型F-4がその後登場した機体より優れた設計であるとの証明にならないが、第四世代機の機体重量と比べ相当大きな重量の機体の飛行制御が可能とわかる。

 ファントムの1958年初飛行時、その60年後にも第一線で活躍している姿を想像できたものは皆無に近かったのではないか。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

America's F-4 Phantom: Taking On the World's Best Fighters (At 60 Years Old)

 

March 5, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-4 PhantomMilitaryTechnologyWorldU.S.Air Force

by Sebastien Roblin