2020年12月16日水曜日

NATOが中国対抗策を真剣に考える時期が来る?----現状では装備、意欲ともに非現実的。欧州各国がグローバル視点で行動を変容する日は来ないのではないか。

 


NATOに春がまもなく来るのか。

4年間にわたり米国の気まぐれな態度に振り回されてきた欧州各国の外相、国防相に安堵の観がある。バイデン次期大統領は外交再構築を公約している。

 

とはいえ創設後71年でエマニュエル・マクロン大統領によれば「脳死」状態のNATOに必要なのは強い投薬であり、現状回帰では不十分だ。▼NATO事務局長ジェン・ストルテンバーグが公表したリフレクショングループによる分析では再構築と改革が必要とし、さらに中国問題にあらたに焦点を当てるべきとある。▼報告書は「2030年のNATO:新時代にむけた結束」の題名で70ページ足らずだが提言が138点も並んでおり、今後の立案実施を正面から取り上げている。▼中国に関しては情報操作への対抗からアジア諸国との連携強化まで取り上げている。

 

だがNATO加盟国に中国対抗へ舵を切ることに抵抗を感じる向きもあるはずだ。NATOにはスエズ以東には戦略的な行動用の軍事装備も意図も欠如している。▼NATO海軍部隊に任務実施は期待できない。▼たしかに英国は大型防衛予算を投じカタパルトなしの通常型空母二隻を整備し、F-35Bを調達している。▼ドイツ海軍はスキャンダルに振り回されているが、その他NATO加盟国の海軍部隊は高い水準を保ち、優れたプロ意識で費用対効果が高い艦艇を運用している。

 

残念なことに技量はあるが、性能が不足だ。▼英海軍の水上艦艇は23隻にすぎず、この規模でも運用人員にことかく状態である。▼重要な北大西洋に投入できるNATOの攻撃型潜水艦は6隻しかない。▼状況は好転しているものの2018年に北大西洋で投入できた空母は一隻のみだった。▼これでは退潮傾向のロシア海軍の封じ込めさえも不可能で、ましてPLANには手が出ない。

 

NATOは近隣のリビアに対してさえ、限定航空戦の実施に苦労している。▼2011年当時の加盟国28カ国のうち参戦したのは8国にすぎず、しかもほとんどが弾薬、予備部品がすぐに底をついてしまった。▼NATO加盟国はムアマル・カダフィ放逐後のリビアの治安維持に積極的な関与は拒否した。▼現在リビアは内戦状態にあり、ヨーロッパの玄関口に安全保障上の腫瘍となっている。

 

もうひとつの問題ははるかに規模が大きい。▼ヨーロッパには中国に対抗する意思が欠如している。▼各国指導者はストールテンバーグ含め「中国は我々と価値観を共有していない」と発言するものの、こうしたレトリック以外では中国へ対決意欲を示す兆候はNATO加盟国に皆無に近い。

 

イタリアは一帯一路に参加しており、その他加盟国にも中国のインフラ投資の恩恵を受けているものがあり、特にバルカン諸国だ。▼2019年9月のヨーロッパ外交関係協議会調査ではドイツ国民で米中戦勃発の際に米国の側に立つ答えたのは10%のみで、7割は中立を保つべきと回答している。残る13国も同様の感情を回答してた。

 

たしかにヨーロッパはファーウェイの5Gネットワークへの依存による危険に気づいており、コロナウィルスから中国への警戒心を強めている。▼だからといって中国との対立に向かう進展は見られない。▼中国との競合にのめり込む動機がなく、手段もないため、NATOとしては米国含む各加盟国向けにはヨーロッパが直面する安全保障課題に直球で焦点を合わせるのが一番となる。

 

課題ではロシアが一番上に来る。米国の外交政策上のリアリスト派はロシアとは暫定協定でリセットを図り、緊張緩和で浮いた力を中国に向けられると考えている。▼この目標は理解できるし、実現可能だろうが、単独で実施できない。▼新START条約の延長、オープンスカイズ条約への復帰など外交面で緊張を下げ、信頼関係はある程度まで回復可能だろう。だが現状の西側世界はロシアの挑発行為に振り回されている。

 

NATO加盟国でも地中海に面するフランスやイタリアはロシアよりテロ対策、難民対策を重視しており、フランス軍はマリで対テロ作戦を展開中で、その他NATO加盟国も兵員、航空機等をイラク、シリアでの対ISIS作戦に供出している。

 

報告書をまとめたリフレクショングループは中国のアフリカ内プレゼンス強化に言及し、ロシアも軍事アプローチを強めているとするが、PLANがジブチに海軍基地を確保する、エジプトでのランジェリー販売など中国の商業活動はヨーロッパにとって脅威ではない。▼実際に中国によるインフラ投資他商業活動はヨーロッパがめざすアフリカでの安全保障上の目標に合致する。▼地中海への経済難民も減るからだ。▼中国の影響力が増大し、リフレクショングループのいう「NAOTの南方」で勢力が増えてもヨーロッパは懸念というより歓迎するはずだ。

 

ヨーロッパは歴史上の長い休日にある。▼ヨーロッパ各国市民は武力対決は冷戦終結とともに過去の遺物となった考えている。▼ロシアがクリミアを併合してもこの概念に変化はない。▼NATO非加盟国のスウェーデンが一気に40%もの国防予算増額に走ったが、ドイツなど恩恵だけ享受する各国の防衛予算増額はごくわずかだ。

 

ヨーロッパの弱さは地上部隊の戦闘態勢のような基本要素でも明らかだ。▼2017年のRANDレポートはNATO三大国、フランス、ドイツ、英国あわせ一週間以内に投入可能なのは装甲大隊一個、一ヶ月以内でも装甲旅団3個足らずとしている。▼ロシアの既成事実づくりに懸念するNATOにとってこれでは十分と言えない。▼しかも年間65億ドルの米予算によるヨーロッパ防衛構想があってもこの状態だ。

 

NATOはアジアで中途半端な米軍補助部隊になるのではなく、ロシアに専念することで中国へ対抗できる。▼ロシアが中国と連携を強化し、同盟関係を樹立すれば、米国に両国へ対抗する力はない可能性がある。

 

接近阻止・領域拒否手段の進化で米国による欧州安全保障への貢献度に制限が生まれる。▼米陸軍がめざす大規模戦のマルチドメイン作戦構想では大国間戦闘で米増派部隊投入は困難になると想定している。▼ここからふたつの選択肢が生まれる。▼在欧米軍を強化するか、NATOの欧州加盟国にロシア軍へ対抗させるかだ。▼前者の実現可能性は極めて低い。後者で米国は中国への対抗る力を増強できる。▼米上院議員で選択を迫られれば、米国はアジアでの対決の前にヨーロッパの安全は放棄すると公言したものが現れた。

 

NATOの欧州加盟国が集団安全保障に関与を深め、軍事力再建を真剣に考えるべきとのリフレクショングループの指摘は正しい。▼NATOは遠方より自らの近隣地区に注意を払うべきだ。NATOが加盟国さらにグローバルな安全保障に最良の貢献をするにはまずヨーロッパの安全保障に注力すべきだろう。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

NATO's New Purpose: An Alliance Reborn to Take on China?

December 15, 2020  Topic: NATO  Region: Europe  Blog Brand: The Skeptics  Tags: ChinaNATOMilitaryTechnologyRussiaHistoryAllies

by Gil Barndollar

 

Gil Barndollar is a senior fellow at Defense Priorities.


中共が保有する核弾頭数は350発。知られざる核兵器管理の現状について米レポートが解説。

 中国国民が知らされていない事実をこうして簡単に我々がアクセスできるのもこちらのシステムが優れている証拠でしょう。このシステムを崩されないためにも抑止力による防衛が必要ですね。中国が核兵器をもっていることを脅威と「思わせない」工作への対抗も必要です。

 

 

軍事パレードにDF-41車両起立発射方式ミサイル16発が登場した。国営新華社通信は人民解放軍ロケット軍の二個連隊所属とした。(Kevin Frayer/Getty Images)

 

原子力科学者時報の論文が中国の核弾頭数を350発と推定しており、国防総省の推定より大幅に多くなっている。

 

同論文は米科学者連盟の核兵器情報プロジェクト主管のハンス・クリステンセン、同連盟のマット・コーダの共著で配備済み弾頭数と「開発中」新型弾頭数を算出している。

 

ペンタゴンの2020年版中国の軍事力レポートは極超音速ミサイル、サイロ収納式、地上移動式の大陸間弾道ミサイルや潜水艦搭載ミサイルをあわせ、「200台前半」と推定していた。▼今回の論文では350発の弾頭のうち、推定272発が投入可能とあり、推定は陸上配備ミサイルに204発、潜水艦48発、空中投下式20発を含む。

 

このうち投下爆弾のミッションは低調になっており、核弾頭をつけた空中発射式弾道ミサイルを開発中と言われる。▼西安H-6爆撃機が極超音速ミサイルのモックアップを搭載する姿が目撃されているが、開発状況は不明だ。▼推定350発には空中発射式弾道ミサイル、極超音速ミサイルは含まれておらず、DF-5C大陸間弾道ミサイルで運用する多弾頭装備も入っていない。▼中国は旧式装備を廃止しても多弾頭化で核兵力を増強できる。

 

とはいえ、論文は中国の核兵器保有量は数千発という米国、ロシアよりかなり低いと指摘する。▼トランプ政権の軍備管理特使マーシャル・ビリングスリーが中国が米ロ両国と「核兵器で同等」の兵力整備に向かっていると発言したが、「事実とする根拠は希薄なようだ」と両著者は指摘している。▼同時に中国核部隊の警戒態勢は高くなく、弾頭の大部分は集中管理しており、各地の部隊への配備は少数とも指摘している。

 

ペンタゴンもこの部分は同意見で、発射装置、ミサイル、弾頭は別々に管理されているとし、PLAロケット軍は「戦闘即応体制」や「高度警戒態勢」演習を実施しており、「ミサイル大隊に発射体制のまま月単位で交代待機させている」と述べている。

 

中国では自国核部隊の現状を「中程度の警戒態勢」としており、今回の論文では平時には「一部部隊を戦闘態勢にし、核弾頭を近隣の施設で中央軍事委員会の統制下で保管しつつ必要なら迅速に部隊に搬送する体制を維持してる」という。

 

この記事は以下を再構成したものです。


Report estimates Chinese nuclear stockpile at 350 warheads

By: Mike Yeo


2020年12月15日火曜日

PLAは高地での地上戦にエクソスケルトンを導入した模様。

  

インドとの緊張が高まる国境地帯でもゆくゆく同様のエクソスケルトンが導入されてるでしょう。高地での作戦には威力を発揮しそうですね。対するインド軍はどう対抗するでしょうか。

 

国中央テレビ(CCTV)はエクソスケルトン装着の人民解放軍陸軍(PLAGF)チベット国境警備隊員の姿を12月9日放映した。

 

A still from CCTV footage released on 9 December showing members of a PLAGF patrol unit in Tibet putting on recently delivered exoskeleton systems. (CCTV)

CCTVが12月9日に放映した映像から。PLAGF隊員がチベットで導入されたばかりのエクソスケルトンを装着している。 (CCTV)

 

 

映像には無動力エクソスケルトンを装着し標高5,500メートルのヌガリ県でバックパックをつけパトロールする光景が見える。CCTVはバックパックは20キロとした。

 

映像で紹介したエクソスケルトンは「高地の過酷な環境」で兵士の任務遂行に役立つ設計との隊員証言を引用し、バックパックの重量はエクソスケルトンのフレームに伝わっても、隊員の両脚には伝わらないという。

 

CCTVではエクソスケルトンの利用は最近になりPLAの新疆軍区部隊で広がっており、補給支援ミッションでは各自20キロの食料飲料水をバックパックで運搬したという。ただし、この際に隊員が今回と同じエクソスケルトンを使ったかは不明だ。放送ではエクソスケルトンの詳細に触れていないが、隊員は重量物を運搬しても体力を消耗しなかったと報じた。■ 


この記事は以下を再構成したものです。


PLA border patrol unit in Tibet using new exoskeleton system

11 DECEMBER 2020

by Gabriel Dominguez


2020年12月14日月曜日

2021年の展望②米空軍

 

2021年の米軍展望の二回目は空軍です。いろいろ課題があるようですね。これで中国を相手に作戦を展開できるのか試されそうです。2021年は空軍の次の姿への過渡期になるのか注目です。それにしてもやはりF-35が影を落としていますね。

 

空軍は次世代機の開発調達を進めている。新型機の投入は機体の老朽化を食い止める効果があるが、新型機の調達規模が低すぎ、効果が十分に生まれない。そこで、空軍は旧型機の退役を目指す。

ハイライト

  • 空軍制服組は現役、予備役含め2021年度に過去5年の水準から微増だが、ほぼ同じ規模のままで、増加分は文民だ

  • 空軍も日常の作戦テンポが高くないが大国間戦に備える対応も進んでいる

  • 機材老朽化はここ数年は鈍化している

  • ただし、新規購入機材が少なく、長期的に機材規模を維持できない。調達規模を増やせばれ記録破りの高支出となるので、旧式機を退役させ、規模縮小をはかる。しかし、議会がこの動きに積極的になれない

  • こうした状況から空軍は作戦飛行隊386個体制の実現に積極的になれない

  • 2021年度予算に無人機調達はなく、全体比6%を維持する

  • 核兵器運用部隊はレーガン時代の装備品が供用期間の最終部分に入り相当の予算が必要となる。その結果、核兵器近代化に反対意見が出ている

  • 宇宙軍の陣容が現れつつあり、今のところ空軍出身者だけで構成している 

2021年度の空軍兵力

2021年度の空軍兵力構造に変化はない。人員面の変化は僅少だ。注目を集めるのは現役予備役の比率で、予備役を活用し、戦力増の効果を生み出す。

もうひとつ明るい話題は新型コロナの流行で空軍を苦しめてきたパイロット不足が解消しつつあることだ。民間旅行産業の不振で、エアライン各社が採用を止めており、パイロットが空軍に残っている。

上図に示したように空軍人員数が伸びたのはアフガニスタン、イラク侵攻後のことだった。2004年以降は旧式機の廃止と人員削減で予算を近代化に投じてきた。現役隊員は377千名のピークから316千名に減っている。人員減で即応体制やパイロット不足が生まれているとの批判もある。空軍はそこで2016年度から人員増を図ってきた。人員規模は2021年規模が2025年まで続き、今後の予算動向へのヘッジとする。空軍としては維持できない人員増は避けたいところだが、一方で大幅削減も避けたい。ただし空軍予算書ではこの点に詳しく触れていない。

空軍の2021年度予算書では情報不足が目立つ。データは多いが、将来の戦力構造、人員体制がどうなるのか説明はないに等しい。さらに空軍の主要開発事業であるB-21と次世代制空機材は極秘扱いで一般公開の内容はほぼ皆無だ。

作戦テンポへの懸念

他軍と同様に空軍も多忙を極めている。年間活動を振り返り、バレット長官とゴールドフェイン参謀総長は「空軍の人員28千名が世界各地に展開し、攻撃出撃回数75千回超、うちイラク、シリア、アフガニスタンだけで11千発超を投下し、米中央軍だけで27千回の空輸給油活動を展開した」とまとめている。

高頻度の作戦展開だがストレスの発生状況について言及がない。RAND研究所は「1990年以降の米軍は平時というより戦時のテンポで作戦展開している」とし、「作戦長期化で空軍戦力に不足が発生しており、シリアやイラク国内のISIS、アフガニスタンのタリバン相手の空爆作戦の時点がピークで水準は低下している」と述べている。

2021年度以降の戦力構造

 

空軍の戦力構造は約5,500機で安定しているが、2002年から2009年にかけ大幅減少した。平均機齢は29.2年になると説明。

この原因に1990年代末に調達が止まったことがあり、当時は戦闘機攻撃機多数を全部第5世代機に置き換える予定だった。F-22調達が縮小され、さらにF-35開発が大幅遅延してこの構想が破綻した。

このことから予算に詳しいスティーブン・コシアクは機材数減少と高齢化の傾向は過去の選択の結果だと批判した。「米軍の戦力構造はDODや他軍上層部の政策選択の結果だ。現在の戦力と規模はDODが手を出せない外部や予算上の圧力の結果ではない」

朗報もある。新型機の就役で機材の高経年化がほぼ止まった。悪い知らせは従来の調達実績水準を上回る維持費用が現行機材に必要な状態が2030年代まで続くことだ。

海軍、海兵隊でも機材の高齢化と機材維持が課題だが、空軍の状況は遥かに悪く、高齢化進行に対し更新機材の調達が遅れ気味だ。

機種別で状態が良好な輸送機は平均21年とC-17、C-130の調達の成果が出ている。特殊作戦機材(12年)は優先順位が高いためで、UAV/RPV(6年)は調達機数が多いためだ。一方で、戦闘機(29年)、爆撃機(42年)、給油機(49年)、ヘリコプター(32年)、訓練機(32年)で経年化が進行している。こうした高齢機種には近代化や更新の計画があるが先送りされ、経費上昇を理由に完全実施が遅れている。

残念ながら2021年度の調達が106機では現行機材の維持に追いつかない。

供用期間を30年と仮定すると、3,180機の規模になる。

106 aircraft procured in FY 2021 x 30-year service life = 3,180 total inventory

現行の機材規模は5,387機で、この規模を維持しようとすれば年間調達機数をほぼ倍増する必要がある。

5, 387 target inventory ÷ 30-year service life = 180 aircraft acquired per year

供用期間を40年に延長してももっと多くの機数を調達する必要がある。

5, 387 target inventory ÷ 40-year service life = 135 aircraft acquired per year

結論として現行の機体数を維持するため、空軍は調達機数を増やすか、より安価な機体を導入する必要がある。あるいは空軍は保有機数を大幅に減らし戦力構造を削る必要がある。

 

削減して予算を確保する

機材数削減で関連戦力も減らす理由が2つある。まず、近年は調達規模が低下しており当面このまま続く。次に空軍が高性能で高価な装備に予算を投入していることで、航空機のみならず、兵器、センサー、ネットワークと超大国相手の戦闘に必要な装備品としていることだ。

空軍参謀総長に就任したチャールズ・Q・ブラウン大将は「空軍には統合とあわせ変化を加速化し新規作戦構想を検討し、将来の戦闘に対応できる体制を構築する必要がある」と就任直後に訓示しており、「容赦なき優先順位付け」として旧式装備多数の整理を求めている。空軍予算書類は今後大規模な戦力削減が始まると暗示している。「旧型機は減らし追加人員を将来の同等の戦力を有する相手との高密度対戦に必要な戦力構築に投入する」とある。

このため空軍は繰り返し一部機種廃止を提言している。2021年度では対象を絞っている。(表4)空軍がA-10部隊の全廃を提示した際は議会が反対し、2015年度国防予算認可法に禁止条項を加えており、2021年度法案でも同様の内容がある。


直近のCSISレポートが一部機材を退役させた場合の節減効果に触れている。可能性が最も高いのがKC-10給油機、B-1、B-2爆撃機、A-10近接航空支援機、E-8C監視機、U-2スパイ機、E-3早期警戒統制機だ。レポートでは各機種で全機廃止してこそ最大の節減効果が生まれるとあり、訓練や整備用施設の固定費に触れている。

ただし、廃止による戦力ギャップをレポートは指摘しており、例としてB-2を退役させるとステルス侵攻爆撃機がB-21が戦力化するまで皆無になる。

こうした戦力構造のトレードオフ関係から戦略的に見た航空戦力について以下の選択肢が生まれる。

  • 空軍が備えるべき戦闘の様相は超大国相手なのか、そこまで厳しくない条件の戦闘なのか: 脅威度が低い航空環境の例として北朝鮮があるが、ここなら空軍は旧型機も大幅投入できる。だが中国やロシアが相手なら防空体制の質が違い、空軍は高性能機材しか選択の余地がなくなる。

  • 空軍力で最大の効果を実現するには: 攻撃効果を最大にするのは友軍の前線付近の敵を攻撃する、つまり近接航空支援や戦場制圧任務になるのか。地上部隊がこれを強く主張しており、攻撃の効果が即発生すること、把握できることを理由にしている。航空戦力主張派は敵地奥深くの戦略目標を叩いてこそ最大効果が生まれるとし、空軍はこれまで後者の立場に立つことが多かった

  • 近代戦でステルスは効果があるのか: 強力な防空体制の突破にはステルスが必要とされるが、開発調達維持が大きな支出になる。さらに作戦上も欠点がある。推進派はコストが高くても得られる効果が大きいので価値がある、敵の航空戦力も強化されていると主張。反対派にはステルスが必要なのは一部機材に過ぎず、残りは非ステルスで十分通用するとの意見がある。

答えはこのレポートでは出せないが、こうした疑問があること自体が背後に難しい戦略上の決断が求められていることを示している。

消えた空軍拡張構想

現状の機材規模でさえ維持に苦慮する空軍で拡張提案が消えたのは当然とも言える。

2018年に当時の空軍長官ヘザー・ウィルソンが戦力の25%拡張を提案し、「必要な空軍の姿」だと述べた。(図5)案では作戦飛行隊を312から386にするとあり、給油機、特殊作戦、宇宙、指揮統制(C2)や情報収集監視偵察(ISR)を特に増やし、精密標的捕捉と長距離攻撃のニーズに答えるとあった。

 

2019年2020年と空軍はこの目標を実現すると公言していた。ゴールドフェイン大将は構想を2020年度方針で詳細に語っていたほどだ。しかし、その後の空軍が実現に具体的な一歩を踏み出していないのは、海軍が355隻体制の実現に向かっているのと好対照だ。チャールズ・ブラウン新参謀総長はこの点を聞かれて、386飛行隊体制は当時の空軍戦略で必要な規模だったと答えている。同大将は部隊数ではなく「機能」で要求に答えていくとも述べている。

これにより予算に糸目をつけない前提の演習は行えなくなるが、拡張の目標と空軍が目指す縮小・予算節約で近代化をすすめる方向との対比から議会等で旧型機退役に慎重な動きが再び出そうだ。

機種別の状況

空軍は機種ごとに近代化を狙っているが、進行が遅れ気味だったり長期間を要するものがあり、高齢化が進む機材が長期間供用されそうだ。とはいえ、機種で状況は異なり、個別検討する必要がある。

爆撃機

爆撃機部隊にはB-52、B-1、B-2の三機種がある。長期計画ではB-21レイダーがB-1、B-2の後継機種となる。B-52はすくなくとも2040年代まで供用され更に伸びる可能性もある。新型機が投入されないため爆撃機の機齢は伸びる一方で現在43年となっており、性能改修で運用を継続しているのが現状だ。例としてB-52にエンジン換装構想があり、B-2では防御装備を改修する。空軍としてはB-1一部を早期用途廃止したいところだが議会に反対意見が出ている。

B-21レイダー開発は順調で、予算要求からも安定している状況が見える。2020年度は29億ドルで21年度は28億ドル、その後2025年度まで同じ規模だ。B-21は2020年代中頃の部隊編入を目指し、現行のB-52、B-1、B-2各型は今後も活躍を期待される。B-21は極秘事業で詳細は明らかになっていない。

戦闘機

戦闘機攻撃機は空軍の中核なので詳細な説明をする。

戦闘機攻撃機の平均機齢は冷戦終結の1991年は8年だったが、現在は26年になっており、機数も1991年の4千機が1,981機にまで減った。コシアクの論点がここに使える。機材全体の高齢化と機体数の削減は空軍自体の決断であり、第4世代機のF-15、F-16を1990年代で生産終了とし、第5世代機のF-22、F-35の投入を待つ決定をしていた。ここでも海軍と対照的でF/A-18の生産は今日でも続いている。残念だったのはF-22生産が予算上の理由で187機出打ち止めとなったことでF-35も当初予定から大幅に遅れたことだ。

F-35s: 2021年度も空軍は48機を要求しており、ここ4年間同じ規模だ。ただし議会からは増加要求が繰り返し出ており,2020年度は62機になっているのは配備ペースが遅いためだ。調達予算説明書の48機は空軍が当初想定した年間60機調達には至らない。

技術の成熟化で順調な進展が続き、機体は作戦投入可能となったが、事業は期待通りの成果と信頼性を実現していない。2019年度の運用テスト評価部長による報告書では「共用打撃戦闘機(JSF)には未解決の欠陥873点があり....各欠陥の解消に向かう一方で別の問題が見つかっており、全体として欠陥つぶしは少数にとどまっている」とあり、信頼性と整備性は依然として目標未達だ。運用テストは完了していない。

新規製造のF-35が編入され機材の高齢化に歯止めがかかる。だが、年間48機の調達では目標とする1,763機がそろうのに28年かかるので達成は2049年度になる。60機調達でも22年かかる。そのため戦闘機攻撃機の平均機齢は今後長期に渡り高止まりとなり、そのまま変わらない可能性も出てきた。

F-15EX: 2020年度予算の最大の変化点はF-15Eの新型機種導入を空軍が提案したことで、これがF-15EXだ。価格はF-35よりわずか10%安いだけだが、F-15EXの維持コストは40%低く、今後の維持も楽だ。さらに部隊の機種転換も2年未満で完了するので、F-35Aの複雑な工程と対照的だ。このため空軍は実戦投入可能な飛行隊をより多く準備できる。

この提案は波紋を呼び、空軍力推進派は第4世代機調達は一歩後退だと批判的だったが、議会筋が支持した。

数の上では小規模な変化しか産まない。空軍の2021年度要求でのF-15EXは12機のみで全体でも144機だ。同じ5年間に空軍はこの5倍のF-35を調達する。とはいえ調達戦略で大きな変更となり、今後さらに大規模な変化が生まれる余地が生まれた。

A-10s: 空軍は議会の熱意(さらに現実世界の作戦に)に負けA-10の主翼交換とともに供用期間を2030年代まで延長することとした。

F-15s および F-16s: F-15、F-16の多数を退役させる予定だったが、新規機体の調達が一向に増えないため一部機材は今後も供用する。F-16は今でも空軍戦闘機部隊の4割を占めており、2021年度には6.16億ドルを近代化改修に使う。とくに高性能レーダーの搭載が中心だ。F-15には3.49億ドルでやはりレーダーの性能向上を進める。今後5年間は同じ規模の支出を続ける。

OA-X: 既存機種を使う軽攻撃機としたOA-Xは空軍の事業一覧から消えた格好だ。低脅威度の環境ならこうした機材のほうが有益で作戦運用も安価に行え、ハイエンド機の損耗を防ぎ訓練に集中できると考えていた。だが実地試験を行ったところ、空軍は調達を中止し、同盟各国を支援する姿勢は続けるとの声明を発表した。特殊作戦軍団は「武装上空偵察機」の名称で構想の実現を目指す。

次世代制空戦闘機Next Generation Air Dominance (NGAD):  水平線から姿を表し始めたのがNGADで、次世代戦闘機攻撃機は海軍、空軍が実現を目指している。2020年度予算では10億ドルに迫る勢いだ。空軍が「実寸大飛行実証機」の初飛行を発表し関心を集めており、想定以上に実現に近づいていることを示している。だが議会調査局の指摘では同機は「試作機」ではないとあり、本格生産に向け技術がすでに成熟化していることを示している。

空軍は新型機配備を短時間で実現し、開発しながら供用期間を短縮化し新規性能を迅速投入する構想を発表している。成功すればここ半世紀の慣行が一変する。ただし事業は秘匿性があり、ほとんど不明だ。予算書では研究開発テスト評価(RDT&E)で2025年度に27億ドルとあるだけで、5カ年計画にも調達の言及はない。(少なくとも公表資料上は)

この事業で将来の空軍がどんな影響を受けるのか、有人機は消える運命なのか、それとも今後も実用に耐えるのかが決まるだろう。

NGADで重要な疑問が出てきた。「レガシー」はウェポンシステムを話題にする際にどんな意味があるのか。各軍は供用中装備品で旧式なものをレガシーと定義している。旧装備は廃止し、高性能装備を導入してきた。戦略思考ではレガシー装備品とは旧技術を駆使した装備で運用構想が時代遅れになっているものを意味し、有人装備の航空機、空母、装甲車両は小型無人装備や分散装備に置き換えると主張する。

このため戦略思考ではNGADは高価な有人機をまたもや開発するものでり、過去の延長線であり未来志向ではないと疑問を呈しそうだ。

給油機

KC-46は空軍給油機の老朽化に対応する機材で、KC-135、KC-10が平均機齢が38年、35年となっている。機体がボーイングの人気機種767を原型とするため低リスク事業と受け止められてきた。

しかし、同機事業は最初からトラブル続きで、初号機引き渡しは3年遅れ2019年1月になり、技術問題が解決されず生産も遅れたままだ。主契約企業ボーイングは固定価格契約で大幅値下価格で応札したため大幅な赤字(40億ドル超といわれる)に苦しんでいる。しかし低価格戦略はKC-46調達数が増えて効果を発揮しそうだ。

結論を述べるとKC-46事業はまだ準備不足で、現行のKC-10、KC-135はまだ今後も活躍しそうだ。

戦術輸送機

C-130は配備開始が1956年だがJ型まで発展し今日でも多数が供用中で生産ラインも順調に稼働している。機数も相当なもので戦術輸送用に310機のほか特殊用途に100機がある。

最新の輸送需要検討で300機体制の必要性があらためて確認され、実際にその規模があるものの、問題は空軍が機数維持に必要な新規製造機を調達していないことだ。2021年度予算ではわずか4機で、しかも特殊作戦用機材だ。空軍は「戦術輸送機でレガシー機材と新型機の適正混成を検討している」と述べている。その意図は旧型C-130Hを退役させ、全体機数を縮小することにあり、その場合上記検討結果を無視することになる。

ただし規模縮小で課題になるのは対象機材の多くが予備部隊に分散していることで、議会では選挙区の飛行隊廃止に賛同しない議員が多いはずだ。

戦略輸送機

C-17、改良型C-5、KC-10の3機種がある。生産ラインは稼働していない。C-17最終号機は2013年に引き渡されている。しかし、全体として比較的良好な状態なのは2000年代に大型投資をしたおかげだ。

2018年の輸送力調査では輸送機部隊は適正規模にあるとされ、機齢も比較的低いため今後も安定した姿を示すはずだ。

ただし、国防戦略構想が大国間衝突に重点をおいているため戦時には損耗を覚悟せざるを得ず、戦略空輸、海上輸送双方で規模の検討が必要だ。この点は以前の検討では触れていなかったもので、ロシアや中国が海上、空中の輸送ルートに脅威を及ぼす能力を有しているが、イランや北朝鮮では不可能だ。とはいえ新種の脅威を指摘する意見も多く、輸送機部隊の適正規模はむしろ上昇するだろう。

議会はDODに対し輸送能力・輸送需要の再検討を求めており、作業は2021年春に報告書として発表されよう。一方で航空機動軍団は機体の残存性を課題とし防御装備各種の導入を検討している。

遠隔操縦機

空軍に関する限り、無人機革命は終了している。海軍が無人機を統合しようとして問題を起こしているが、空軍の無人機編入でもたしかに1990年代、2000年代初頭に強い抵抗があったが、今や日常の存在だ。

ただし、空軍は遠隔操縦機 (RPAs) を多数稼働する構想は失速している。RPAの比率はここ10年間5-7%で変化なく、最新の調達案でも変化ない。2020年度予算にはRPA調達が皆無で5カ年計画にも入っていない。空軍はRQ-4グローバルホークを全機退役させ有人機E-11を稼働させたいとする。2021年度予算では有人機106機の調達をめざす。

空軍は「忠実なるウィングマン」RPAを「スカイボーグ」として試している。「低コスト消耗扱い無人航空機事業」で低価格、自律性かつ消耗品扱い装備の可能性を追求し、敵国の防衛圏内での運用を目指す。ここからXQ-58Aヴァルキリー実証機が生まれている。空軍はこうした機体は有人機に変わる存在ではないと強調しており、空軍協会のミッチェル研究所はこう説明している。「無人機は補完的存在であり、戦力倍増効果があるのであり、第5世代ステルス機の変わりにならない」

問題は制空権が確保された、あるいは確保できない空域に投入すべくRPAsの調達をすべきかだ。MQ-9が稼働できるのは制空権を確保済み空域のみだ。米国がここ数年遭遇した戦闘ではこれで良かった。だがロシアや中国のようなハイエンド敵国との衝突となれば、こうした機材は低速、非ステルス性で脆弱となり、防御装備もついていない。2019年7月にイラン軍が海軍のRQ-4を撃墜しこの問題がクローズアップされた。

この問題は二面性がある。まず現行UAVsでハイエンド戦に貢献が可能だろうか。次に、空軍はステルスかつ高度自律運行ができるUAVsを開発調達し、防空体制の整った空域に投入すべきだろうか。ステルス無人機RQ-170センティネルが空軍・CIAにより存在していることがわかったのは一機がイランで墜落し公表されたためだ。RQ-180が長距離偵察無人機としてすでに活動中との噂がある。

航続距離の不足は深刻だ

戦術機の戦闘行動半径が大国間衝突の際に不足となるとの懸念がある。現行機の戦闘行動半径は550から750マイルだ。NGADでも1,000マイルしかなく、しかもこの数字は構想段階のものだ。

冷戦時に短距離性能は欠点とされなかったのはNATOに前線航空基地があったためだ。冷戦終結後も問題とされてなかったのは敵勢力に強力な対空装備がなかったためで、米戦術機は必要に応じ空中給油を受ければよかった。

しかし、中国やロシアが相手の作戦となると行動半径が問題となる。太平洋は広大で嘉手納空軍基地のある沖縄は台湾まで400マイルと近いが、南シナ海までは1,400マイル離れている。グアムのアンダーセン空軍基地は南シナ海まで1,400マイル、台湾まで1,700マイルの距離がある。

ヨーロッパの米軍基地も戦場になりそうな場所からは遠い。RAFレイクンヒースはバルト海から1,000マイル先であり、ドイツのスパンダーレムAFBは850マイル離れている。さらに航空基地は攻撃にさらされ脆弱となる。このため米軍機はさらに離れた場所に展開する必要に迫られ、空中給油機も敵防空体制の中で弱みを露呈しかねない。

このためアナリスト多数がスタンドオフ効果を増強し、脆弱性を減らすよう提言しており、爆撃機の多用もそのひとつだ。F-35は短距離しか飛べないので調達は削減すべきだ。基地を分散せよ。長距離攻撃手段として無人機を開発すべきだという。議会の求めに応じ戦略予算評価センター(CSBA)が出した提言は「空軍は長距離侵攻可能な爆撃機中心に機材構成を変更すべきだ」としていた。CSBAでは新型長距離戦闘攻撃機(「侵攻型制空」)をF-35にかわり整備すべきとの提言も出した。同様に議会の依頼でMITREコーポレーションも「長距離性能機と基地を整備し米軍の通常兵器抑止力を強化すべき」と提言している。

海軍も航続距離不足に直面しているものの空母は移動式基地であり、空分の方が深刻な問題と言えよう。

核兵力

これまで核部隊は安定かつ目立たない存在だったが、ここにきて再び注目を集めているのは装備近代化の経費で核兵器の存在が大きくなっているためだ。

ICBM戦力は新START条約で400発で変わらない。核爆撃機のB-2、B-52は96機のままだ。DODの核戦力点検報告(NPR)(2018年2月)が核部隊の方向を示している。同報告では核三本柱による抑止力効果は核攻撃ならびに通常兵器による侵略行為に有効で、同盟国協力国の安全を確保している、とする。

さらにNPRでは「多様性、柔軟性のニーズが高まっている」とし、「これが理由で核の三本柱ならびに非戦略的核運用能力、NC3の近代化が今こそ必要だ」と主張した。

ただし核部隊が注目を浴びるのはレーガン時代の1980年代に取得した装備品が耐用年数の終わりに近づいており、更改が必要になったからだ。ここに軍備管理推進派が声を上げる余地がある。さらに民主党政権になれば核兵器政策を変更しようとするだろう。核兵器の削減と合わせ近代化改修予算の削減も求めるだろう。バイデンの選挙運動中のウェブサイトでは軍備管理を主張し、「核兵器の役目は減らす必要がある」としていた。

表5に特に主な核兵器近代化事業を示した。

ここに含まれるB-21爆撃機やコロンビア級潜水艦が2020年代2030年代にかけDODの核兵器近代化で大きな事業となり、DODは一部内容を削減するか、それとも核部隊向け予算の増額を迫られよう。

朗報もある。数年前のスキャンダルを経て、核部隊では人員、作戦両面で向上がはかられ、その結果、ここに来て事件事故が発生していない。

宇宙軍の創設

宇宙軍はDODの第5番目の軍(沿岸警備隊も勘定に入れれば第6の軍)で、これまで空軍はDODとともに宇宙軍の組織構造を準備してきた。約6千名が宇宙軍に移籍しているが全員が空軍からの移動だった。

空軍は宇宙軍を支援し、その発足を助けた。だが人員組織面で両軍の間に未解決の問題がある。とくに敏感な問題は宇宙軍創設があってもDOD定数が増えていないことで、宇宙軍創設は空軍の負担で実現している。

弾薬類の調達も戦略の一環、長期戦に備える

各軍が弾薬調達を増やしている。超大国同士の戦闘となれば弾薬類を大量消費する分析結果があるためだ。空軍も予算を確保している。空軍の戦略方向に変化が生まれたようで、長距離と空対空の弾薬生産は維持するが、空対地弾薬は減らす。この背景には中東地区で航空戦が縮小に向かっていること、西太平洋での大国間戦闘となれば地上戦の出番が減る一方で航空戦、海上戦が増える見込みのためだ。

ただし、国防予算が減少すれば弾薬類調達を維持できなくなる。弾薬類は必要が生じないとそのまま保管され、ゆくゆく消費期限が来て処分が必要となる。弾薬類の存在は目につかないので、抑止効果も限られる。このため、米同盟国協力国の多くで弾薬類の備蓄量が不足しているのが現実だ。

対照的に航空機、艦船、車両は毎日使用される。目に見える存在として潜在的勢力に米国の軍事力を見せつけ、抑止効果が生まれる。その結果、調達では装備品が先になり、弾薬類は後回しにされやすい。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

US Military Forces in FY 2021: Air Force


December 3, 2020

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Mark Cancian (Colonel, USMCR, ret.) is a senior adviser with the International Security Program at the Center for Strategic and International Studies in Washington, D.C.