2021年3月12日金曜日

この兵器はなぜ期待通りに機能しなかったのか② 米巡洋戦艦アラスカ(CB−1)級

 期待はずれに終わった装備品 ②米海軍巡洋戦艦アラスカ級


 

海軍で最強の艦種となるはずの艦艇が役に立たなかったというのはなんとも皮肉である。

 

USSアラスカは姉妹艦USSグアムと第二次大戦中で最大規模の巡洋艦となり、実現しなかった脅威に対抗すべく建造された。高速力と強力な兵装を実現したが、航空戦力へ中心が移り、当初の想定から航空母艦の援護に投入された。

 

巡洋艦の概念は19世紀に生まれ、蒸気機関、砲弾その他海軍技術の革新が進む中で海軍力再定義の重要な要素とされた。巡洋艦の長所は高速、重兵装だが比較的薄い装甲艦として駆逐艦を撃破し、民間商船を防御史、偵察任務を遂行することだった。巡洋艦は「経済的な戦力実現」の選択肢となり、各国が重宝し、戦艦では過大な場面に投入された。

 

米海軍は巡洋艦を重視し、第二次大戦開始前に重巡洋艦18隻を建造していた。各艦は大戦初期に活躍し、とくガダルカナル戦では航空母艦整備が進み、航空戦力を十分活用できるまで戦闘の中心だった。

 

1930年代に米海軍は日本帝国海軍が大型水上艦艇を整備し、海上交通路の遮断を狙うと疑っていた。帝国海軍はドイツのシャルンホルスト級をお手本に高速重巡洋艦を建造中と見られていた。重武装艦が輸送部隊を襲撃すれば、連合軍の海上輸送に大きな脅威になると危惧された。

 

米海軍は対抗策として攻撃力を充実した大型巡洋艦CBの小規模建造で、日本海軍の通商破壊艦艇を撃破することとした。艦名は当時の米領土からとり、1号艦アラスカにつづき、グアム、ハワイ、フィリピン、プエルトリコ、サモアを建造し、通商破壊艦を殲滅する構想だった。高速、重装備で長距離移動可能なこの艦種は巡洋戦艦と呼ばれ、最小限の支援で敵を撃破する期待が寄せられた。

 

巡洋戦艦の全長808フィートはエセックス級空母より60フィート短く、満載排水量は34,253トンとエセックス級空母より大きい。各艦はバブコックアンドウィルコックスのボイラー8基を搭載し、ジェネラルエレクトリックのタービン4基を駆動した。航続距離は15ノット航行で12千カイリだった。最大速力は33ノットを誇った。

 

アラスカ及び姉妹艦は当時として相当の火力を有し、砲塔3基に各3門の12インチ主砲を搭載した。二次兵装として5インチ砲塔3基があり、小型水上艦、航空機に対応した。米航空力の勢力外でも単独行動可能とする構想で、このため対空火力は強力だった。40ミリ砲56門、20ミリ砲34門が搭載された。航空機カタパルト二基で4機搭載したヴォウトOS2U水上機を偵察任務に投入した。

 

アラスカ級で注目されたのは装甲だった。CBs は装甲を犠牲に速力を確保し、通商破壊艦を追尾しつつ敵火力を回避する想定だった。装甲は側面で5-9インチ、砲塔は12.8インチ、上部構造で4インチ、艦橋は10.6インチとなった。

 

初号艦は真珠湾攻撃の10日後に起工され、1943年8月15日にアラスカ (CB-1) として進水したが、その時点で日本には通商破壊手段がないことがあきらかになっていた。また、ドイツ戦艦ビスマルクが英巡洋戦艦フッドを撃沈し、各国海軍に衝撃が走っていた。別の英巡洋戦艦HMSレパルスが日本の航空戦力で沈められていた。軽装甲の大型水上戦闘艦のアラスカ級に不利な状況になった。米海軍は1943年に同級の未完成三隻フィリピン、プエルトリコ、サモアの建造を取りやめた。

 

想定した任務が取り消されたアラスカ、グアムの二隻は太平洋で高速空母任務部隊の援護に投入された。強力な対空装備が日本軍機の撃破で効果を示した。両艦は1947年に予備艦になり、1961年にスクラップ処分された。三号艦ハワイは終戦時で82%の完成度だった。一時は誘導ミサイル艦あるいは指揮統制艦に転用する案もあったが、結局スクラップになった。

 

当初の期待と裏腹にアラスカ級は過酷な運命に直面した。建造開始前から旧式化していたが、6隻建造の決断は裏付けのない憶測を根拠とし、過誤だったのは明らかだ。航空戦力が主役になると、巡洋艦は空母戦力の護衛役に変更され、存在が陳腐化した。にもかかわらず、アラスカ級巡洋戦艦は優秀な艦種であり、当初の想定なら十分な効果を発揮しただろう。日本海軍の通商破壊艦艇の憶測が事実でなかったのが悔やまれる。■

 

 

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The Sad Tale of That One U.S. Battlecruiser That Did Nothing


March 11, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarNavy

The Sad Tale of That One U.S. Battlecruiser That Did Nothing

by Kyle Mizokami

 

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.

This first appeared in early August 2019 and is being republished due to reader interest.


2021年3月11日木曜日

F-15EX導入を急ぐ米空軍の姿勢に懸念がある理由

 

 

 

週の報道ではボーイングF-15EXは残存性テストを免除となるとあり、国防長官官房がテスト免除を決め、経費108百万ドルに加え実施期間まるまる一年以上の節約をねらっている。

 

ペンタゴン内部メモをもとにこれを伝えたInside Defenseでは、この措置は前政権で調達部門トップのエレン・ロードが退任数日前に承認したとある。

 

トランプ政権は新たに近代化改修したF-15EXの8機を11億ドルで導入する提案を昨年9月にしており、この後合計144機を調達する。空軍が同型機導入をかねてから模索し、1974年に導入開始したF−15イーグル旧型との交代を狙う。

 

空軍はF-15各型合計453機を供用中で、うち最新機体は2001発注分だ。F-15はその後も各国向けに製造が続いている。

 

 

新造機材を空軍が導入することにしたのは、F-15EXに「今後の寿命」が長いためで、既存機の改修より費用が節約できるためだ。合わせて、旧型機を用途廃止できる。新造F−15EXは今後数十年に渡り供用が可能であり、部品の7割ちかくが現行のF-15C型E型と共通すると空軍は見ている。セントルイスの生産ラインも残せるし、訓練施設、整備補給処等インフラをそのままF-15EXに使える。

 

問題はF-15EX導入を高ピッチで進めることでどんなしわよせが生じるかだ。

 

Inside Defense記事にあるように残存性試験免除でF-15EXがロシアや中国の地対空装備にどこまで対応できるのかが逆に疑問となる。さらに、ロシア、中国ともに防空装備の輸出を続けているので、F-15EXは世界各地で新鋭装備の脅威に直面する可能性がある。F-15で防空装備の脅威に対する脆弱性が試されたのは2008年が最後だ。

 

その後、ロシア、中国の防空能力は確実に改善されている。

 

空軍が第5世代戦闘機のみ整備するとした方針を再考している。F-15EXは費用対効果は高い機材だが、F-15EX導入を受け入れられない向きもあるのは事実で、長く供用されれば、敵の新鋭装備の前に一蹴される危惧がある。

 

「第5世代戦闘機は今後発生する危機事態対応で中心装備となり、第一、第二列島線の各所で必要となる機材だ」との上院軍事委員会での現状報告でインド太平洋軍司令官フィリップ・デイヴィッドソン海軍大将発言をInside Defenseが伝えている。■

 

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Rushing Boeing's F-15EX Fighter Into the Sky Could be A Big Mistake

March 10, 2021  Topic: F-15EX Test  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15EXF-35MilitaryDefenseRussiaChina

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He regularly writes about military small arms, and is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.

Image: Reuters


新INDO-PACOM司令官は海軍パイロットでキャリアを上り詰めたアキリーノ大将へ。


第79回真珠湾回想記念日でスピーチする米太平洋艦隊司令官ジョン・アキリーノ大将。真珠湾国立記念館にて。US Navy Photo

 

 

ンタゴンは米太平洋艦隊司令官ジョン・アキリーノJohn Aquilino大将がインド太平洋米軍部隊の総司令官に就任すると3月6日発表した。

 

今回の発表はトランプ政権が昨年12月にアキリーノを米海軍最大規模の戦闘部隊司令に抜擢したことを裏書きする形になった。バイデン政権は前政権人事を再検討し発表につなげたとUSNI Newsは複数筋から知った。

 

1984年兵学校卒のアキリーノは2018年5月からPACFLTのトップで、F-14トムキャット、F/A-18Cホーネット、F/A-18E/Fスーパーホーネットを操縦した。第五艦隊司令官もつとめ、作戦戦略担当の海軍作戦次長(OPNAV N3/N5)でもあった。

 

現INDO-PACOM司令官のフィル・デイビッドソンPhil Davidson大将は退官する。

 

同発表では第五艦隊司令官サミュエル・パパーロ中将がアキリーノの後任として大将昇格後に太平洋艦隊の司令官になるともある。

 

米第五艦隊ならびに海兵隊部隊司令官のサミュエル・パパーロ中将。Nov. 3, 2020. US Navy Photo

 

パパーロは中東地区米海軍部隊司令官として昨年8月に就任し、以前は米中央軍で作戦次長だった。ヴィラノヴァ大卒で1987年に任官。同じく航空畑でF-14トムキャット、F/A-18ホーネットを操縦した他、交換プログラmづえ米空軍のF-15Cを71戦闘飛行隊で操縦し、サウジアラビア、アイスランドに展開した。

 

太平洋方面の新人事に加え、ペンタゴンは南部軍、輸送軍団の新トップ人事も発表した。

 

陸軍中将ローラ・リチャードソンがSOUTHCOMの新司令官となり、クレイグ・フォーラー海軍大将と交代する。フォーラーは2018年11月に現職に就任し、今回の人事で退官する。リチャードソンは米北方軍の陸軍部門Army Northの司令を務める。

 

航空機動軍団司令のジャクリン・ヴァン・オヴォスト大将が米輸送司令部のトップに内定した。ヴァン・オヴォストは現司令官の陸軍大将スティーブン・リヨンズ(2018年8月より現職)に交代する。■

 

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Pentagon Announces Nominees to Lead INDO-PACOM, Pacific Fleet - USNI News

By: Sam LaGrone

March 6, 2021 5:27 PM

 

2021年3月10日水曜日

謎の無人シャトル機X-37Bの技術、運用面の意義を大胆に予想。極超音速ミサイルにも有益な宇宙空間での運用技術。次代宇宙機に道を開く存在なのか。

 

 

 

宇宙軍のX-37B軌道上実験無人機の任務そして運用構想とは何か。対衛星攻撃用の宇宙機なのか。飛翔中のミサイルを追尾し撃破できるのか。一向に回答がない中で疑問ばかりがたまっている。

 

ボーイング製の同機は技術成熟度を高め、通常の運用段階に入ろうとしている。NASAのシャトルオービター以来となる地球往還機X-37Bの試験解析をペンタゴンは続けてきた。

 

「地上から指令を受けるとOTVは大気圏再突入を自律的に行い、地上滑走路へ通常の型で着陸する」と米空軍は説明していた。

 

空軍はさらに試行対象の技術として高性能誘導方式・航法制御、熱保護、エイビオニクス、高温対応構造・密閉技術、一体型再利用可能絶縁技術、軽量電気機械式飛行制御、高性能エンジン、高性能素材、自律軌道飛行、再突入着陸機能を列挙していた。

 

 

上記の各技術は検証段階となっており、外部の関心・好奇心を呼んでいる。一部が超高速運用を狙ったものであり、高温度環境も想定しているからだ。「熱保護」は宇宙空間での運用に不可欠だ。大陸間弾道ミサイルや極超音速ミサイルの飛翔を安定させるのに必須な技術となるからだ。さらに、熱保護、熱絶縁技術は今後の有人宇宙飛行にも必要だ。武装有人高速宇宙機が大気圏外からの攻撃手段として将来登場する可能性がある。

 

次に、「高性能素材」は宇宙空間での運用に不可欠だ。機体、部材、推進系を厳しい環境で保護し、宇宙飛行を可能とする。この種の素材技術は急速に成熟化しており、極超音速兵器の基礎となる。飛翔中の安定性を維持する以外に、ミサイルあるいは宇宙機の機体構造の維持にも必要だ。

 

宇宙空間での自律運用機能に大きな意味がある。アルゴリズムの高度化で自律宇宙飛行の幅が広がり、今後無人宇宙装備による衛星通信網が拡大する他、地上からの指令で兵装を発射する機材も登場するだろう。

 

X-37はNASAプロジェクトとして1999年に生まれ、2004年にDARPAへ移管された。■

 

 

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Top Secret: Why No One Knows the X-37B Space Plane’s True Purpose

March 9, 2021  Topic: X-37B  Region: Space  Blog Brand: The Reboot  Tags: X-37BDroneU.S. Air ForceU.S. Space ForceMilitary

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the new Defense Editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University. This article first appeared last year.

Image: Reuters

Image: Reuters


2021年3月9日火曜日

またもや中国発の首をかしげたくなるニュース。香港マカオ出身者にPLA入隊を認めるべきとの発言が全人代台湾代表からあった模様。

  

   まともには受け止められないような意見ですが、こうした戯言を真剣に展開するのが共産党支配下の中国の言論空間なのでしょう。あやしい団体も出てきますが、中国共産党の言う同胞、愛国者とは共産党に賛同するもののみということに注意が必要です。中国のあまりにもひどい発言やニュースはいずれターミナル5にしてまとめていきたいと思いますが、読者がつくでしょうかね。それにしても台湾でビジネスを営みながら、北京の全人代に参加する台湾代表がいて、自由に往来しているんですね。

 

 

A fighter jet attached to a naval aviation brigade under the PLA Southern Theater Command takes off for a 2-day continuous flight training exercise from February 24 to 25. Multi types of fighter jets participated in the flight training mission which included various offense and defense operations.   Photo:China Military Online

A fighter jet attached to a naval aviation brigade under the PLA Southern Theater Command takes off for a 2-day continuous flight training exercise from February 24 to 25. Multi types of fighter jets participated in the flight training mission which included various offense and defense operations. Photo:China Military Online

 

港、マカオ、台湾出身の若年層にも人民解放軍(PLA)入隊を認め、国防強化の一助にすべきとの声が全人代で台湾代表から出た。

 

台湾の全人代委員Cai Peihuiは実業家で、香港出身者で中国本土に居住するものの間に軍学校に入りPLA入隊することで市民としての責務を果たし、国防に貢献したいとの声があると紹介した。これは環球時報に送られてきた全中国台湾同胞連合All-China Federation of Taiwan Compatriotsの声明文の紹介である。

 

国民としての自覚を引き上げ、軍事教練を経て社会建設に貢献したいとする希望を尊重するべきとCaiは発言した。

 

香港、マカオ出身の若年層にPLA入隊を許す提案は2018年にも出ていた。 

 

香港の発展と向上を目指す民主連合Democratic Alliance for the Betterment and Progress of Hong Kong は2018年の全人代で香港出身で中国本土の大学で学ぶ学生にPLA入隊の道を開き、学費免除など優遇策を与える提案を出していた。

 

国防省報道官Wu Qianは2018年8月の報道会見で1997年の香港の本土復帰以後、香港住民はPLAへの理解を高めている、とし、香港同胞にPLA入隊を希望する声があると述べた。

 

「香港住民の愛国感情を歓迎し関連機関がこの件を検討中だ」とWuは発言した。■

 

 

Youth from HK, Macao and Taiwan should be allowed to join PLA: deputy

By Zhang Hui and Shan Jie

Published: Mar 08, 2021 08:33 PM


歴史に残る艦(1) USSニミッツの退役が近づく中、あらためてスーパー空母各艦の1号艦の功績を振り返り、処分手順を見る。

歴史に残る艦(1)USSニミッツCVN-68


U.S. Navy aircraft carrier

USS Nimitz. U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Aiyana S. Paschal/ Released

  • USSニミッツは1973年完成し、二隻目の原子力空母となった

  • ニミッツは5年かけて退役し、装備や原子炉を除去する

  • 海軍は長年活躍した同艦を「リサイクル」する


海軍は2020年12月に今後30年にわたる建艦計画を発表し、2051年までに546隻体制を整備するという野心的な案で、404隻が新規建造で、供用中の304隻を退役させる。


この304隻中で14隻が原子力推進艦で艦船潜水艦リサイクル事業で各艦をリサイクルする。リサイクル事業は原子力艦艇の安全な廃棄処理をめざしたものだ。


この14隻のうち、13隻が原子力潜水艦でロサンジェルス級攻撃型潜水艦11隻とオハイオ級ミサイル潜水艦2隻となる。残る1隻が長年活躍してきたUSSニミッツで、ニミッツ級超大型原子力空母の一号鑑だ。


ニミッツ他潜水艦13隻は今後5年をかけてリサイクルされる。ニミッツは50年におよぶ艦歴を終える。


USSニミッツの就役は1975年5月で、当時はUSSエンタープライズに次ぐ原子力空母2隻目となった。


艦名は米太平洋艦隊司令官として第二次大戦の連合軍作戦を率いたチェスター・ウィリアム・ニミッツ・シニア海軍元帥にちなむ。


全長1,092フィートのニミッツは米海軍、世界ともに最大の艦となった。最高速度は30ノット超で60機の航空隊を搭載し、乗組員は海兵隊員含み5千名だ。


原子力推進方式には数々の利点がある。航続距離は事実上無限で、作戦期間は年単位であり、航行用の燃料搭載が不要となり航空燃料搭載量が2倍増に、さらに航空隊の兵装搭載も3割増えた。原子炉がハイテク電子装備へ電力供給し、蒸気カタパルトを稼働し大型機発艦が可能になった。


長い輝かしい戦歴


USSニミッツは大規模作戦少なくとも7つへの参加したほか、数多くのパトロールや航行の自由運用の記録がある。


ニミッツは1976年に地中海に初めて投入された。1979年にはインド洋でイラン人質危機で待機した。その間に米大使館員の救出を狙ったものの失敗したイーブニングライト作戦に加わった。


1981年には同艦のF−14トムキャットがシドラ湾での航行の自由作戦実施中にリビアのSu-22の2機を撃墜した。


ニミッツは大部分の運用を中東で過ごした。1980年代末のタンカー戦争ではイランの攻撃からクウェイト船籍タンカーを守る米海軍のアーネスト・ウィル作戦で重要な役割を果たし、第二次大戦後で最大規模の船団護衛にあたった。


Navy aircraft carrier Nimitz helicopters Evening Light

1980年4月24日、イーブニングライト作戦でUSSニミッツから発艦したRH-53Dシースタリオン編隊。CORBIS/Corbis via Getty Images


ニミッツは第三次台湾海峡危機の1996年にも関与した。ニミッツ空母群および強襲揚陸艦USSベローウッドが台湾海峡を航行し、USSインディペンデンス空母群も付近に展開した力の示威で中国は台湾への圧力継続を断念した。


1990年代にはニミッツ艦載機は砂漠の嵐作戦、南の見張り作戦で偵察活動を展開した。2003年にベルシア湾に戻り、アフガニスタンやイラクの空爆を不朽の自由作戦、イラクの自由作戦で展開した。


2012年にUSSエンタープライズが退役し、ニミッツが最古参空母になった。


2017年には太平洋に短期配備されてからまたペルシア湾に移動し、イラク国内のISIS拠点を空爆し、わずか3ヶ月の間にソーティー1,322回で904発をISISにお見舞いした。


最後の展開とリサイクル作業

2020年4月には太平洋で一部乗組員がコロナウィルスに感染し、ほぼ一ヶ月におよぶ隔離体制をワシントン州ブレマートンでとってから、USSロナルド・レーガンと南シナ海に展開した。


ソマリアの米軍部隊を支援したニミッツは2020年12月に帰国予定だったが、イラン司令官カセム・ソレイマニの殺害一周年で中東に残り抑止力を発揮するよう突如新しい命令を受けた。2021年2月1日に帰国命令が出た段階で外洋航海は240日になっていた。


ニミッツは2022年に退役し、リサイクル工程が2025年開始の予定だ。リサイクルは三段階に分かれる。不活性化、原子炉撤去、リサイクルだ。


Navy aircraft carrier USS Nimitz

USSニミッツは2020年6月8日に母港サンディエゴの海軍航空基地ノースアイランドを出港した。 US Navy/MCS 2nd Class Natalie M. Byers


このうち、不活性化は艦内装備品を撤去後に開始し、原子炉2基の核燃料を撤去することを意味する。核燃料は密閉移動用コンテナに格納され、その後専用コンテナに移し海軍原子炉施設のあるアイダホ州に輸送される。


原子炉撤去段階で原子炉を完全清掃し、密閉し、撤去する。その後、ワシントン州のハンフォード核廃棄物処理施設に送付される。ここはエナジー省の施設だ。


各段階が完了すると、ニミッツで残る部分は姉妹艦での利用のため撤去され、保管される。先に退役したUSSエンタープライズの部品もニミッツ級で再利用されている。


その後、艦体は完全スクラップされる。エンタープライズでは全工程に10年かかる予想だが、ニミッツでも長期事業になりそうだ。


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The US Navy is planning to 'recycle' one of its first supercarriers. Here's what's next for USS Nimitz.

Benjamin Brimelow Feb 2, 2021, 11:12 PM


2021年3月7日日曜日

2021年3月5日、中国の国防予算6.8%増と公式発表がありましたが、米中での伝え方にこれだけの違いがありました。

 まず、Defense Newsの記事です。

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Sailors stand on the deck of the new Type 055 guide-missile destroyer Nanchang of the Chinese People's Liberation Army Navy as it participates in a parade on April 23, 2019. (Mark Schiefelbein/AFP via Getty Images)

 

国は2021年の国防予算を6.8%増と発表し、前年の6.6%から微増で軍事力近代化を続ける。

 

中国財務当局は支出ベースで1.35兆元(2086億米ドル)と全国人民代表者会議で説明した。

 

大部分がそのまま承認される法案説明で、李克強首相は人民解放軍の戦力強化に向けた取り組みの継続を再び表明し、訓練強化とともに全方位での即応体制強化更に国防関連で科学技術研究、産業力強化を強調したが、詳細には触れなかった。中国の予算年度は1月1日から12月31日までである。

 

今回の予算増発表はPLAで何かと話題が多い中で行われた。2020年はインド軍と山岳国境地帯で衝突し、双方が素手で戦い死者が発生した。

 

またPLA各軍で大幅な軍事力近代化を継続し、東・南シナ海では強硬な態度が目立ち、軍・準軍組織部隊を投入したほか、台湾への圧力となる展開も見られた。中国はアジア数カ国と領土を巡る対立を続けている。

 

Google Earth衛星写真では055型(NATO呼称レンハイ級)巡洋艦三隻のうち二隻が海南島の三亜海軍基地に見つかり、南海艦隊に配属されている。

 

055型はPLA海軍の主要水上戦闘艦で、各艦に垂直発射管128セルを搭載し、対空、対艦、対地の各ミサイルを発射可能。また3Dフェイズドアレイレーダーや各種センサー・電子戦装備も搭載している。

 

同型艦は少なくとも8隻建造されており、空母三号艦・強襲揚陸艦3隻と行動をともにすると見られる。強襲揚陸艦の二隻は海上公試中で、海南島三亜基地に少なくとも一隻が配属されるだろう。■

 

 

China boosts defense budget again, exceeding $208 billion

By: Mike Yeo


あまり内容のない記事なので、肝心の中国がどう報じているか見てみましょう。共産党プロパガンダ紙として知られる環球時報からです。