2021年8月14日土曜日

米中戦争を真正面から描いた小説2034年の共著者にWIREDが背景等を聞いた。

 小説「2034年」の共著者エリオット・アッカーマン、ジェイムズ・スタヴリディス海軍大将に執筆の背景、個人の経験、心配な事項を聞いた。

 

Elliot Ackerman and Admiral James Stavridis

Elliot Ackerman and Admiral James Stavridis, authors of the novel 2034.PHOTO-ILLUSTRATION: SAM WHITNEY/GETTY IMAGES/ALAMY

 

book cover with title '2034 A Novel of the Next World War'

COURTESY OF PENGUIN RANDOM HOUSE

 

Wiredは小説2034: A Novel of the Next World Warの抜粋を六回に分けて公開した。


aircraft carrier with an American flag

Part I: 南シナ海の危機

「国旗を掲げず無理やり航走してくる船舶があり、遭難信号も出していない。何か変だ」

soldiers with guns drawn on a person who is cuffed and blindfolded

Part II: ワシントンDCが連絡不能へ
「目まぐるしいほど多くの事件があった。Wen Rui、F-35、エアフォースワン...でもどれも報道がない。すべて隠ぺいされている」

jet flying over water toward a ship

Part III: 生存者はひとりのみ

「攻撃に向かってくる機体が見えず、艦の乗員は全員沈黙に包まれた。なぜ仕留めに来ないのか」

A scene with two men at a conference table.

Part IV:スプラトリー諸島の待伏せ攻撃

「千年後にはアメリカは国家ではなく、一瞬の出来事として記憶に残っているだろう」

Two men having a conversation in a trophy room.

Part V: 暗闇に向かう

「ブラックホールの中のどこかに中国艦隊がいる。司令官はその位置を突き止め撃破するよう期待されている」


A Russian vessel breaks through ice.

Part VI: レッドラインを超える

「米軍には最終的に見つかるだろうが、その時ではもう遅すぎる」


年初めWIREDは2月号で小説2034年を特集した。その後6回に分け原作短縮版をウェブ上で公開した。今回は最終回として共著者とのインタビューを掲載する。

 

マリア・ストレシンスキー(WIRED): 執筆のきっかけは?

ジェイムズ・スタヴリディス海軍大将: 何年も前に読んだ小説で、米国とソ連の世界規模の戦闘を描いたサー・ジョン・ハケットの「第三次世界大戦」から着想を得た。

 ここ数年にわたり中国と米国が冷戦に向かう状況が現実味を帯びてきた。ヘンリー・キッシンジャーが「まだ冷戦ではないが、冷戦の入り口にきている」と発言したのを覚えているだろうか。

 そこで考え始めた。中国との戦争をどうしたら回避できるか。ソ連との戦争は回避できたが、実際に開戦となっていれば恐ろしい結果が生まれていただろう。そこで「第三次世界大戦」が道しるべになった。

ストレシンスキー: おふたりとも深い知識に基づいて執筆されている。小説の筋はどこまで現実なのだろうか。どの程度までお二人の経験に基づいているのか。

スタヴリディス: 登場人物で自分の経歴から一番身近なのがサラ・ハントだ。違いは多い。サラは自分より背が高く、髪の毛も多い(笑)。だが二人の経歴は似ている。彼女は准将で自分も准将だった。駆逐艦戦隊の司令官で南シナ海に展開した。実際に冒頭場面にあるように中国漁民を救難したことがある。こうした経験を活用できた。

 また空母打撃群の司令という重責を得たのは幸運だった。サラも同じ立場になった。だから状況はよくわかる。また司令官としてサラは不安な状況に置かれるが、指揮官なら同じ経験はある。

 エリオットは小隊、中隊の指揮官を経験し、30回もの戦闘を経験している。次の状況は誰にも予測できない。サラも同じだ。

エリオット・アッカーマン: 作中でサラが抱く疑念は自分も経験したことがある。友人が傷つくのを見れば答えが出てこない厳しい課題に直面する。

ストレシンスキー: 南シナ海事件の描写は経験に基づいているのでは。

スタヴリディス: とても現実的なものだ。

ストレシンスキー: 他にどこから着想を得たの?

スタヴリディス: 戦闘発進の部分は現実に近い。1990年代には国家安全保障会議で働いた。シチュエーションルームがどんなところか知っているし、行政府ビルからホワイトハウスのウェストウィングに移動するのも経験している。コードレッドについても詳しい。

 ロシア側の登場人物コルチャックはロシア人の経験に基づく人物だ。NATOの最高司令官をしていたからね。また中国大使館付き武官 Lin Baoが醸し出す雰囲気が好きだ。両方の世界に詳しい人物だね。フレッチャー時代のクラスメートに中国人がいて、米国で教育を受けており、この男がまさしく両方の世界に足を踏み入れていた。Lin Baoは魅力ある人物だが複雑な人物だね。

 そしてエリオットがウェッジのもとになった人物を知っている。

アッカーマン: うん、そうだね。作中のウェッジはパイロットで海兵隊戦闘攻撃飛行隊323デス・ラトラーズの指揮官となる。親友の一人が実際にこの瞬間にペルシア湾にデスラトラーズ指揮官として出動中なので、敬意を表し、同飛行隊の設定にしたんだ。

 執筆する小説では登場人物の内面を描くことが多いよね。一定の地点を超えると人物がみんな自分になってしまうんだ。各自が自分の一部を切り取った人物になるんだ。

 例えば、ウェッジは冒頭でくりかえし祖祖父が第二次大戦で示した実績に触れている。本人は同様の功績をあげる機会は来ないと思っている。私自身はパイロットではないが心情的に同じような心の旅路が理解できる。その他の登場人物でも国家安全保障会議のチョードリーがおり、複雑な経歴の持ち主で離婚も経験している。私も離婚している。

 さらにDCで暮らしてきた。政府で働き、極秘の政府の仕事で名を秘して働いたこともある。チョードリーがこのことを語っている。本人の性格の一部だ。作中では実際の経験が反映される。意識下の話も登場人物の一部になっている。

ストレシンスキー: こうした登場人物の性格付けをもとに一読してみたら、強い感情を持った。こう問い続けている。どうして止められなかったのか。ボタンを押してはいけない。爆弾投下してはいけない。この本は強い警告を発している。でも自制心があるのに止められない。私自身も同じなのか。軍の組織内だからこうなるのか、指揮命令系統の中では避けられないものなのか。

スタヴリディス: 軍に限った話ではない。むしろ、社会、人間全般にかかわる話だろう。ここ百年の歴史を見てほしい。種として進化したはずで、各国が交易し、女性や少数派の権利が上がり、その他素晴らしい成果がこの百年で実現した。ただし世界大戦が二回発生した。合計すると80百万人が殺害されたのが20世紀だ。

 二度の大戦で誤った指導者もいた。事態の悪化を止められたはずなのに止めなかった。特に第一次大戦では血縁でつながった各国が結局ずるずると破滅的な戦争に進んだ。

アッカーマン: お尋ねの問いは本書の中心テーマだ。人間はなぜ何度も何度も繰り返しているか。著者はともに戦争を終わらせたいと考えている。アメリカの世紀は二回の世界大戦で特徴づけられた。ともにアメリカが始めた戦争ではないが、終わらせたのはこちらだ。その結果、大繫栄時代を迎えた。では米中間で戦争が始まれば、どうやって終戦させるのか。両国にとって益のある形で終結できるのか。このテーマが作中通じ繰り返し問いかけられている。

スタヴリディス: 本書は未来を予見するものではないと強調したい。このような事態に足を踏み込まないよう警告している。また、これからの傾向を示した本でもある。

ストレシンスキー: 心配になる傾向には何があるのか

スタヴリディス: 第一に米国への大規模サイバー攻撃だ。敵陣営はサイバー技術をステルスにし人工知能を利用しわが国に向けている。

 二番目に米中両国が実際の開戦に向かう事態を憂慮すべきだ。発生するとすれば南シナ海だろう。なぜなら両軍の実力が拮抗しているからだ。南シナ海から意図しない結果が生まれる。

 またイランやロシアといった国の役割にも注意を喚起している。イラン、ロシア両国がかつての帝国の後を引き継ぐ国家であることが興味深い。ともに栄光の時代は終わっている。それでも国際分野で相当悪いことを行う力がある。エリオットはどう思う?

アッカーマン: 今回のプロジェクトの前はもっとよく眠れたね。

ストレシンスキー: 本書を読了する前は寝つきがよかった。

アッカーマン: 現実世界のイベントが原稿より先に現実に発生していることだ。とくにカセム・ソレイマニ、イランの革命防衛隊のクッズ部隊司令官が無人機により暗殺されたのが2020年1月だった。原稿の先の版では本人が何度も登場しており、2034年時点でも存命の想定だった。そこで書き直しになったが、コロナウィルスが発生した。これも言及する必要が出た。

 思い返すと執筆を始めた時点とは全く違う世界になっている。となれば2034年の世界などだれにも想像できないことになる。

スタヴリディス: そうだね。書き始めた段階ではトランプ政権が中国と貿易交渉にあたっており、うまくいきそうな感触だった。執筆を始めると対中関係が悪化の一途となった。バイデンに代わってもコースが逆転するとは考えられない。ということでご指摘の点の通りだ。われわれは小説2034の世界に近づいている。

アッカーマン: そもそも2034という年号からスタートしたのではない。もっと先の未来を考えていた。でも執筆が進むと年号は近づいて、これはまずいぞと気づいた。実際に事態は発生しつつある。

ストレシンスキー: 11月の大統領選挙と1月6日の米議会占拠事件の間に作中の警告のメッセージで変化は生まれたのだろうか。

アッカーマン: 小説の結末に向かうところでチョードリーがリンカーン演説について考察している。リンカーンは「欧州、アジア、アフリカのすべての軍隊が連合し、世界の富がすべて各国の手にわたり、ボナパルトが司令官となっても、オハイオから水一滴も、ブルーリッジに足を踏み入れることは一千年かけても実現しない....自由国民の国家としていかなる時も存続を維持するか、できなれば自害する」というもので、選挙が終わり議事堂占拠までは「自害」に向かっていたといえる。だがこの回避方法は見つかるとの希望がある。

ストレシンスキー: 現実世界でこうした声が大きくなれば安心して眠れるようになるかな。

スタヴリディス: 1月21日になり、バイデンチームに主役が変わり、中国への対処、サイバーセキュリティ、貿易関税問題、5Gネットワーク、南シナ海、人工島構築等の深い知識があり安心した。 

 このチームなら中国に対応できる戦略を構築できると期待している。ここ四年は事案ごとに戦術対応しただけでマー・ア・ラゴでの夕食会から疑似合意になった貿易問題も航行の自由作戦が南シナ海で展開した事実に遠く及ばない。すべて戦略的な意味での手段、結果、方法につながらない。バイデンチームは戦略を打ち立てるはずで、専門家の意見を拝聴するだろう。以前より意味のあるアプローチを示すはずだ。

 だからといってグローバルシステムで一定の地位を占めようとする中国にこちらから妥協する必要もない。その時代は終わった。中国は戦略、作戦案を用意している。一帯一路と呼んでいる。バイデンチームはこれを十分認識している。また我々も戦略面を同時に考えていく。どうやって戦争を回避するか、国際社会の主導的立場を中国にむざむざ渡す必要はない。これをしたら米国の間違いとなる。カギを握るのはインドだと思う。

ストレシンスキー: 小説ではインドが大きな役割を果たしている。フィクションなのはわかっているが、インドの将来についてどこから着想を得たのか。

アッカーマン: 小説家として人間の行動にパターンがあるとみている。2034の中ではインドがグローバル大国として台頭しているが、その行動様式には米国を思わせるものがある。小説の大きな教訓は戦争を始める国になってはならない、戦争を終わらせる国になるべきという点だ。アメリカの優位性が20世紀に確立した際の教訓だ。この国は第一次大戦、第二次大戦ともに始めていないが、終わらせたのはこの国だ。その結果がほぼ一世紀にわたる世界支配を生んだ。では次の大戦に火をつけることを回避できる賢明さが残っているだろうか。ないのであれば、どの国なら終了させられるのか。

ストレシンスキー: おふたりとも現政権で働きたいと思っているみたいね。

アッカーマン: 押しつけがましい小説を書くような連中が必要となればね。(笑)

スタヴリディス: 作家兼評論家という役割で十分だよ。今回のWIREDとの仕事に興奮しているんだ。大のヘミングウェイのファンでね、彼の「老人と海」は全編ライフに連載されたんだ。

ストレシンスキー: それに近いことをWIREDがやってます。マイクロソフトの反トラスト法裁判で丸々一冊を使っていた号が数年前にあった。

アッカーマン: ぼくたちの小説のほうが反トラスト法よりは興奮度が高いと思うけど。

スタヴリディス: そうだな、反トラスト法裁判とヘミングウェイ小説の比較なら、我々の勝ちだな。■

 

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What Did I Just Read? A Conversation With the Authors of '2034'


2021年8月13日金曜日

在アフガニスタン米大使館の撤収、特別査証発行の支援に米追加部隊派遣へ。レーガン空母打撃群も海上から撤収を支援中。一方でタリバンの都市占拠が止まらない。

 


南西方面機動部隊所属の米海兵隊員がアフガン国民軍(ANA)第215部隊を支援した。 March 12, 2018. US Marine Corps Photo

 

ンタゴンは3千名規模の部隊をアフガニスタンに派遣し、カブールの米大使館撤収支援にあたらせる。

 

派遣されるのは歩兵三個大隊で、うち1個が陸軍、2個が海兵隊所属と国防総省報道官ジョン・カービーが本日発表した。

 

「各部隊はハミッド・カルザイ国際空港に24時間から48時間に進駐する」(カービー報道官)

 

同報道官は各大隊の所属を中央軍隷下部隊と述べた。現在、第24海兵遠征部隊(MEU)がイオージマ揚陸即応集団に配属されており、オマーン湾に展開している。日本を母港とするロナルド・レーガン空母打撃群が6月から中東に展開中で、今回のアフガニスタン撤収を支援している。

 

カービーは今回の措置を「臨時ミッションで限定範囲の任務」とし、空軍、陸軍から1,000名をカタールに派遣し、アフガニスタン国民向け査証発行を支援するとも述べた。

 

「次の段階として米陸軍空軍支援部隊千名規模に特別移住査証申請者の対応を円滑化させる。第一陣がカタールに数日内に到着する」「三番目としてフォートブラッグからクウェートに歩兵旅団戦闘チーム一個を移動させ、空港の保安体制の強化が必要となる事態に備える。同部隊は来週にもクウェートに到着する」(カービー報道官)

 

米軍が20年近く続いたアフガニスタン作戦から撤収するのと並行しタリバンがアフガニスタン国内都市数か所を占拠した。8月12日報道ではガズニ、ヘラト両市を占領し、ニューヨークタイムズはカブールも数カ月以内に陥落するとの米国政府関係者の発言を伝えている。

 

カービー報道官は今回の展開は非戦闘員撤収作戦(NEO)にはあたらないと述べた。

 

「あくまでも大使館文官の撤収を支援することが目的です。米政府関係者以外も含む大量の人員を対象とする非戦闘員撤収作戦とは異なります。「もう一つ、今回も国務省を支援し、特別移民査証の発行処理を加速化させます。これも非戦闘員撤収作戦の定義にあたりません」

 

撤収活動のため追加部隊を派遣するものの、米国のアフガニスタン撤収は8月末の予定通り進めているとカービー報道官は述べた。ペンタゴン発表に対し議会が反応している。

 

「カブール大使館の人員削減や移転は同国内の情勢を考えれば実効性ある対応だ」と下院軍事委員会委員長アダム・スミス議員(民、ワシントン)が声明を発表した。「追加米軍部隊の展開で大使館機能縮小を進めるのも意味があう。アフガニスタンの治安情勢が悪化する中で、わが国の同地域内戦略も呼応していくべきだ」

 

上院軍事員会の有力議員ジム・インホフェ(共、オクラホマ)はバイデン政権によるアフガニスタン撤退に批判的だが、本日発表の声明文で追加部隊派遣は正しい動きと評価している。

 

「こういう事態になるとわかっていた。バイデン大統領がこの決断に迫られることを前から警告していた。残念ながら予測が現実になってきた。最悪のシナリオだけは見たくない。つまりタリバンがアフガニスタンを完全支配し、米国人の生命が失われ、テロ集団が再び支配する事態だ」「バイデン政権は迅速に対応し米民間人ならびにわが国に協力したアフガン国民を国外脱出させるべきだ。バイデン大統領が当方の主張に耳を傾けていれば追加部隊派遣は不要だったはずだ」

 

英国も600名を派遣し同国大使館撤収と査証発行支援に当たらせると8月12日に発表した。

 

「追加派遣は600名規模で同国内の治安悪化と暴力のまん延を考慮したもの」と英国防省が報道発表した。「在カブール英大使館勤務の職員は縮小し、領事業務査証関連業務にあたる中核チームのみとし、同国から脱出が必要な層への対応にあたる」■

 

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Pentagon Sending 3,000 Troops To Evacuate US Embassy in Afghanistan - USNI News

By: Mallory Shelbourne

August 12, 2021 5:07 PMUpdated: August 12, 2021 6:05 PM


極超音速ミサイル発射を無人機で探知する日本の構想の行方.....探知も困難だが撃破能力の開発も課題。総合防衛体制構築には巨額の費用が必要となる。

 

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GAO

極超音速滑空体の飛翔パターンを通常の弾道ミサイルと比較した図。空気吸い込み式極超音速巡航ミサイルの飛翔パターンも示した。

 

本の防衛省は赤外線センサーを無人機に搭載し極超音速ミサイル攻撃への早期警戒の実現を検討している。日本国内報道では無人機を利用した警戒態勢が中国、ロシアが開発中の超高速兵器への対抗策で浮上している。

 

これを伝えた産経新聞によれば防衛省は8月7日にこの方針を発表した。「極超音速兵器の開発に呼応し対抗策の整備を急ぐ」

 

記事では無人機に既存の赤外線探知装置を搭載するとあり、これは2019年に開発が終了した「弾道ミサイル識別用に開発された技術実証」装置のようだ。この「小型赤外線センサー」を無人機に搭載し「敵国付近の空域で運用」し、長時間滞空させる。

 

多数国が開発を進める極超音速ミサイルへの対応ではなるべく早期探知が重要さをましている。

 

極超音速ミサイルはマッハ5超で飛翔し、軌跡は弾道ミサイルに近いが、ちがうのは予測可能な弾道軌跡を使わず、途中で制御可能なまま標的に向かうことだ。このため探知、撃破はともに困難となる。「飛翔制御で自由に低高度を突き進む極超音速ミサイルは既存の探知迎撃の仕組みでは対応が困難」と米議会調査局は今年6月に報告していた。「地上レーダーでは見通し線でレーダー探知効果が限定され、極超音速兵器を探知できても手遅れとなる。このため防衛側には迎撃手段の稼働に残された時間は限られてくる」

 

日本の無人機利用探知システムは「複数の」UAVを連続稼働させ空域を監視し、集めたデータを地上局へ送る。

 

想定する無人機の型式は明かされていないが、日本は出遅れたものの無人機装備の整備を加速化させている。

 

その一環で航空自衛隊はRQ-4Bグローバルホークのブロック30仕様の高高度偵察装備を3機発注しており、これが候補になりうるが、3機では探知効果の実現が不足する。

 

NORTHROP GRUMMAN

日本向けRQ-4Bグローバルホーク二号機は2021年6月24日に初飛行している。

 

 

他方で米国のミサイル防衛庁(MDA)はUAVを使う弾道ミサイル探知をめざしており、対象に加速滑空体も含める。MDAは特殊改装したMQ-9で空中センサー機能テストを行っており、ハワイで2016年実施した際にはMQ-9のペアで弾道ミサイル追跡に成功している。

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おそらく日本は同様の効果を想定しているのだろう。しかし、無人機2機を最低でも同時投入することが前提条件となっており、データを複合して脅威対象の追尾と位置情報が把握させ、同時に二機以上を別々の地点に滞空させることが必要だ。とはいえ、日本がこの課題の研究を進め、米国の支援も得て脅威に対応することは十分可能だろう。

 

日本にとっての喫緊の課題となるのは加速滑空体への対応のようだ。

 

産経新聞記事では中国のDF-17、ロシアのアヴァンガードを探知能力開発で想定する脅威としている。このうち、DF-17は弾道ミサイルで加速してから無動力DF-ZF極超音速加速滑空体でマッハ5のまま飛翔経路を制御しつつ標的に向かわせる。

 

アヴァンガードも弾道ミサイルで極超音速加速滑空体を適切な高度と速度にしてから最終飛翔段階にもっていくが、サイロ発射に限定される。これに対しDF-17は道路移動式発射台を使う。アヴァンガードは核弾頭搭載可能で、DF-17も同様と想定される。こうした装備は日本へ到達可能だ。

 

想定シナリオ通りに進展するとしても、日本をねらう極超音速ミサイル攻撃の警戒手段として無人機だけに頼るわけにいかない。赤外線センサーにも限界があり、大気状況に左右される。産経新聞記事では赤外線センサー以外に新型レーダーも艦艇に搭載し活用するとある。

 

記事では日本政府は小型衛星多数を低地球軌道に打ち上げ広範囲の探知ネットワークとする構想を検討しているとある。同様に米国でも多層配備宇宙探知ネットワーク、別名極超音速弾道追尾宇宙センサー Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor (HBTSS)の実現を目指しており、日本がこのデータを供与される可能性がある。

 

今回の記事では極超音速ミサイル探知に成功した後に撃破する手段についての言及がないが、迎撃ミサイル、超高速発射体、レーザー、電子攻撃あるいはこうした手段の複合が考えられる。MDAでは滑空段階迎撃手段 Glide Phase Interceptor(GPI)をイージスウェポンシステムに取り入れ、2020年代末までに極超音速ミサイル防衛体制の実現をめざす。日本もイージスシステム運用国であり、GPI取得に向かう可能性がある。

 

日本がどの選択をするにせよ、現時点では優位性が潜在敵国側にある。

 

極超音速兵器の構想は以前からあるが、技術の進展により加速滑空体でマッハ5の飛翔が現実の脅威になっている。空気吸い込み式極超音速ミサイルへの対応は困難な課題で、打ち上げ地点の特定はさらに困難だ。

 

合わせて日本も独自に極秘の極超音速兵器開発を進めており、同様に加速滑空体の実用化をめざす。特に中国を意識した封じ込め効果を東シナ海で必要とする中、日本は二段階方式でこの種の装備品を開発する。昨年の報道では2026年にも実戦化できるとある。

 

ただし、極超音速兵器への実効性ある防衛策が本当に生まれるかは不確かだ。

 

日本が多層構造の防衛体制を構築し、極超音速ミサイルの探知、追尾機能を実現させようとすれば数百憶ドルが必要となりそうだ。これ自体が難関だが、日本政府はそこまで脅威を深刻にとらえているのだろう。

 

その狙いが実現し、無人機による探知がどこまで実現するかは時が立てばわかる。■

 

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Japan Wants To Detect Incoming Hypersonic Missiles With Unmanned Aircraft

BY THOMAS NEWDICK AUGUST 9, 2021


2021年8月12日木曜日

金正恩が死亡したらどうなるか。生きていても死んでも世界にとって迷惑な事態が生まれる。とりあえず存命していることに安堵する人たち....

 North Korea Tank

 

 

正恩の姿を見る機会が昨年すっかり減った。公式の場から姿を消すと、本人病気説さらに死亡説が同時にでてきた。本人はその後再び姿を見せ、死亡を願う筋はばつの悪い状況になった。

 

本人が公の場で姿を見せ続けて再び推測が出てきた。まず、体重の変化で、南朝鮮の推定で44ポンド減とある。意図しての減量なら本人には良い結果だ。一時は308ポンドだったとの推測で、すぐ死亡してもおかしくない水準だった。本人は飲酒好きで愛煙家でもあり、この二つもリスク要因だ。心臓病、糖尿病他の症状がある。減量は延命効果を生む。

 

しかし、減量は必ずしも本人の意思によるものではない。むしろ深刻な疾病の可能性を示すことがあり、ガンが一例だ。だが体重減少が健康状態悪化と無関係なら、やはりダイエットに成功したのか。ただし、その後頭部に包帯をつけているのが目撃されている。

 

もちろん公式発表は皆無で、こうした事象は些細なことなのかもしれない。7年前にも一時姿を消したあと、つえを使い歩行する姿を見られたことがある。踝の手術を受けたが術後は良好とされた。2008年に本人の父も卒中で姿を長く消し、その際も公式発表はなかった。最新の事例もさしたる重要さはないのかもしれない。

 

とはいえ、金正恩本人あるいは側近が権力移譲を画策している兆候がある。今年に入り早々に最高指導者は朝鮮労働党総書記に昇格している。そして第一書記は不在とした。これまでは実父のため空席とされていたが、この就任も重要ではないのかもしれないが長年の北朝鮮ウォッチャーは権力移譲と関係があると見ている。権力継承第二位が空席のままの共産国家はこれまで皆無だからだ。

 

金一族はこれまでも非公式に権力を分与してきた。金正日は事実上の首相として金日成の晩年に国内政策を取り仕切っていた。金日成が卒中から回復した2008年8月には義兄の張成沢が代理を務め、金正恩の指導役にもなったが、金正恩は本人を処刑した。権力奪取を図ったためとされる。

 

金正恩の現在の健康状態でわかっていることは憶測、噂、その他非公式情報の域を超えない。独裁体制にある同国の政治体制を考えれば本人が死去した場合の影響は重い。レーニン、スターリン、毛沢東の死亡後に権力闘争が長期にわたり発生したからだ。

 

これに対し金日成は権力移譲を数十年にわたり準備できた。ライバルを排除し、金正日を昇格させ、日常の運用を任せた。だが金正日には自身の子息に使える時間が足りず、本人が脳卒中に倒れてから権力移譲が始まった。この間三年しかなかった。移譲そのものは支障なく進んだようだが、金正恩がどこまでの権力を即座に引き継いだのか、またその後に障害を取り除きどこまで権力を入手したのかは不明だ。

 

いずれにせよ、現時点では後継者が不在だ。自らの子どもたちは小さすぎる。妻には政治的な役割が皆無だ。兄は父親から素質なしと判断され、政治面で無力だ。腹違いの兄は金正日により大使として国外追放された。一人だけ可能性を残すのが妹の金世与だ。重責にあるものの権力は兄に依存している。昇格、降格は兄の意思のようで、本人独自の権力基盤はないようだ。

 

一族の血を引き継ぐものの、本人の地位が公的に示されていないのなら意味がない。特にここにきて血筋がものをいう事態になっている。南朝鮮発の情報の連発に金正恩が怒りを高めており、北朝鮮側はここ数年になく不信感を強めている。同様に重要なのがDPRK政治体制はかたくななまで男性優位であることで、実質的権力があるのは金一族の妻、姉妹のみで、かつその力も権力移譲が始まれば消失する。

 

ではだれが次の権力者になるのか。金正恩のこれまでの側近の処遇を見るとナンバーツーは不在で、まさしくそれが本人の狙いなのだろう。今年6月に党トップ数名を「人民の安全並びに国家の安泰の維持で重大な事態を招いた」として処分している。ただし、叔父の例と異なり、単なる降格にとどまっている。

 

後継者不在のままだと、その座をめぐる戦いは血なまぐさくなりそうで、かつ結末が予測できない。保安関係機関トップが権力を握る可能性がある。ソ連では秘密警察トップを長年務めたラブレンティ・べリアがやはりトップの座を狙ったが失敗している。1953年のことだ。KGBトップのユーリ・アンドロポフが1982年に共産党最高指導者の座に就いたが直後に死去した。

 

北朝鮮の政治体制では常に単一の指導者が力を握ってきた。その点では南朝鮮も同様で選挙による大統領選出は1987年から機能しているに過ぎない。北朝鮮の政治体制とはいったん失敗すれば安全がおぼつかなくなる独裁体制でつねにライバルの上に立つ必要がある。ドナルド・トランプが言うように二番手は敗者なのである。

 

米国がこの点で何らかの影響力を行使する可能性は皆無に近い。とはいえ、バイデン政権は不安定さが脅威に進展しないよう事態を注視すべきである。ワシントンには中国との連絡を維持し、北の政治局面の難関に対応すべき大義がある。一番良いのは改革指向の新政権が発足することだが、これを期待する向きは皆無だ。

 

最悪の場合は内部抗争が進展し、暴力が跋扈し軍が動き、核兵器、化学兵器生物兵器の管理がゆるむことだ。ブルース・ベネットはDPRK崩壊の可能性を10年前から分析しており、以下警句を発している。「北朝鮮の全体主義が近い将来に終焉を迎える可能性は十分あり、暴力や混乱を伴う終わり方になる可能性が高い」とし、ROKと中国にとってはDPRK内部崩壊による朝鮮半島の平和安定への影響をあらかじめ備えておく必要がある。

 

もちろんこうした事態が今すぐ発生するわけではない。金正恩はまだ数年は存命のままとなりそうだ。そうなると次の観測が出てくる。本人が死亡した場合の影響は甚大で西側では本人の健康を祈る向きが多い。

 

金王朝が姿を消す日がいつか来る。それまでは金正恩の不在、あるいは絆創膏を付けた姿に朝鮮半島の住民のみならず世界が一喜一憂するだろう。望むらくは本人には平和理にこの世から消えてもらいたいのだが。■

 

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What If Kim Jong-un Dies? It Could Mean Nuclear War.

by Doug Bandow 

August 9, 2021  Topic: Kim Jong-un Death  Blog Brand: Korea Watch  Tags: Kim Jong-unNorth KoreaMilitaryNorth Korea WarNorth Korea Civil War

 

Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.


2021年8月11日水曜日

コロナウィルスが中国から漏洩していたと判明すれば世界は中国に35兆ドルを請求する。もちろん中国は一切支払いに応じない。ならば、7つの方策で中国に罪を償わせばよい。

 日本人は人が良すぎるのか、コロナウィルスの発生源を疑うことなく、感染者の数字にだけ一喜一憂しており、原因の構図を描けないようです。8月下旬には米情報機関がまとめた報告書がバイデン大統領の手もとに届き、世界はそれまでの中国への態度を一変させそうです。

 

Coronavirus Lab Leak

Image: Chinese State TV Screenshot.

 

ロナウィルスの大流行は中国が発生させたのだろうか。

 

ジョー・バイデン大統領が命じたCOVID-19起源の調査報告書の提出期限が8月24日である。報告書がCOVIDの起源を中国の武漢ウィルス研究所と結論づけるのか、あるいはそうでなくても米国人の大部分がそう結論づければどうなるか。後者は現実に発生しつつあり、7月の世論調査では実験室漏洩説を信じるのは52パーセントに上り、自然発生説は28パーセントにとどまっている。

 

では中国政府はどんな反応を示すだろうか。中国が世界に与えた損害は莫大なものになる。COVIDによる死亡は世界合計で430万人に上る。中でもアメリカが最大で633千人、次にブラジルが563千人、インド428千人、メキシコ244千人と続く。死者、感染者は今も増えている。

 

パンデミックを悪化させたのは中国が世界に拡散を許したためだ。中国は国際渡航を止めなかった。また世界保健機関等による武漢研究施設調査を妨害した。

 

損害賠償額の算定として死亡者一人につき5百万ドルとしよう。死者430万人はパンデミック終結時点で700万人になるとの予想がある。となると賠償額は35兆ドルになり、中国の年間GDPの二倍だ。もちろん中国がこの金額を支払うことはない。いかなる過誤に対しても中国は一文も支払わない。ではこの罰金をどこに求めるべきか。

 

まず、中国は米国債をおよそ1.1兆ドル分保有している。中国国民が保有する証券を無効にし、この債務をある日時以降はなしにする。

 

二番目に中国から米国行きノンストップ便は一切認めないこととする。中国から米本土に渡航するものは隔離し今後もっと恐ろしい病原菌が中国で発生しても簡単に米国に入れないようにする。

 

三番目に中国留学生向け査証を取り消し、同時に米企業で働く中国人にも同じ扱いとする。一時的移民により米国の高度知識を盗み、諜報活動や政治工作をこれまで展開してきた。これは終わりにする。中国留学生の落とす金に慣れ切った米国内の諸大学は苦しむだろうが、誰が気にするだろうか。多くの大学が反米かつ独裁体制を支援する傾向を示してきたのだ。

 

四番目に、関税を課し輸出規制のレベルを引き上げる。助けの手を差し伸べない国とは同盟関係も貿易関係も終わらせる。トランプ政権は最高性能の半導体について対中輸出を止めたが、同様にハイテク関連はことごとく輸出を止めるべきだ。さらにトランプ時代に始まった関税課徴金は中国の輸出全般に拡大し、かつ四半期ごとに5パーセントずつ増加させる。アップルはじめ悲鳴を上げる企業が出るだろうが、知ったことか。各企業も愛国心を少しでも発揮すべきで、米国の敵たる共産体制に労働力を外注してはいけない。

 

五番目に、アパルトヘイト時代の南アフリカに使ったツールを利用する。JPモーガンチェイスCEOのジェイミー・ダイモンが中国でビジネスを展開するのは外交政策と無関係と公言した。いいだろう、ウォールストリートも閉鎖し、中国国内への投資も税控除を一切認めない措置にする。これが南アフリカに大きく効いた。

 

六番目に、中国が諜報活動に長けていること、特に人的情報収集に優れていることを認めよう。人的情報活動の中心は外交団にあることが多い。そこで全米各地の中国領事館はすべて閉鎖する。当然中国も同じ扱いをわが外交使節団に求めてくるだろうが覚悟の上だ。

 

7番目に中国抑止を口だけでなく本当に軍事力を西太平洋に移動させよう。ヨーロッパ、アフリカ、イラク、シリアから米軍部隊は全部撤収させる。NATOに大西洋の守りを求めるかわりに米国はNATOを脱退しない。それで浮いた分を全部太平洋方面に投入する。第二次大戦同様に海兵隊は全員太平洋に配備する。南朝鮮からも部隊を撤収する。中国との有事でが同地に部隊を配備しても何の役にも立たない。台湾には防衛装備品購入を許すが、あくまでもキャッシュアンドキャリーで進め、米国に負担を生じさせない。台湾の直面する危険や台湾-中国の開戦でその他各国が直面するリスクを考慮し、台湾にはイスラエル並みの防衛支援を行う。年間40億ドルだ。

 

こうした策を展開すれば、特に最後の項が中国首脳陣を弱体化させ、COVIDでの愚行で中国に悪い結末に直面する。これで中国は大切な教訓を得るはずだし、しからずんば国力を失うことになる。■

 

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China Owes The World $35 Trillion If Coronavirus Lab Leak Is True

ByChristian WhitonPublished2 days ago

 

Christian Whiton is a senior fellow at the Center for the National Interest and edits Super Macro. He was a State Department senior advisor during the George W. Bush and Trump administrations.