スキップしてメイン コンテンツに移動

極超音速ミサイル発射を無人機で探知する日本の構想の行方.....探知も困難だが撃破能力の開発も課題。総合防衛体制構築には巨額の費用が必要となる。

 

  •  

 

GAO

極超音速滑空体の飛翔パターンを通常の弾道ミサイルと比較した図。空気吸い込み式極超音速巡航ミサイルの飛翔パターンも示した。

 

本の防衛省は赤外線センサーを無人機に搭載し極超音速ミサイル攻撃への早期警戒の実現を検討している。日本国内報道では無人機を利用した警戒態勢が中国、ロシアが開発中の超高速兵器への対抗策で浮上している。

 

これを伝えた産経新聞によれば防衛省は8月7日にこの方針を発表した。「極超音速兵器の開発に呼応し対抗策の整備を急ぐ」

 

記事では無人機に既存の赤外線探知装置を搭載するとあり、これは2019年に開発が終了した「弾道ミサイル識別用に開発された技術実証」装置のようだ。この「小型赤外線センサー」を無人機に搭載し「敵国付近の空域で運用」し、長時間滞空させる。

 

多数国が開発を進める極超音速ミサイルへの対応ではなるべく早期探知が重要さをましている。

 

極超音速ミサイルはマッハ5超で飛翔し、軌跡は弾道ミサイルに近いが、ちがうのは予測可能な弾道軌跡を使わず、途中で制御可能なまま標的に向かうことだ。このため探知、撃破はともに困難となる。「飛翔制御で自由に低高度を突き進む極超音速ミサイルは既存の探知迎撃の仕組みでは対応が困難」と米議会調査局は今年6月に報告していた。「地上レーダーでは見通し線でレーダー探知効果が限定され、極超音速兵器を探知できても手遅れとなる。このため防衛側には迎撃手段の稼働に残された時間は限られてくる」

 

日本の無人機利用探知システムは「複数の」UAVを連続稼働させ空域を監視し、集めたデータを地上局へ送る。

 

想定する無人機の型式は明かされていないが、日本は出遅れたものの無人機装備の整備を加速化させている。

 

その一環で航空自衛隊はRQ-4Bグローバルホークのブロック30仕様の高高度偵察装備を3機発注しており、これが候補になりうるが、3機では探知効果の実現が不足する。

 

NORTHROP GRUMMAN

日本向けRQ-4Bグローバルホーク二号機は2021年6月24日に初飛行している。

 

 

他方で米国のミサイル防衛庁(MDA)はUAVを使う弾道ミサイル探知をめざしており、対象に加速滑空体も含める。MDAは特殊改装したMQ-9で空中センサー機能テストを行っており、ハワイで2016年実施した際にはMQ-9のペアで弾道ミサイル追跡に成功している。

.

おそらく日本は同様の効果を想定しているのだろう。しかし、無人機2機を最低でも同時投入することが前提条件となっており、データを複合して脅威対象の追尾と位置情報が把握させ、同時に二機以上を別々の地点に滞空させることが必要だ。とはいえ、日本がこの課題の研究を進め、米国の支援も得て脅威に対応することは十分可能だろう。

 

日本にとっての喫緊の課題となるのは加速滑空体への対応のようだ。

 

産経新聞記事では中国のDF-17、ロシアのアヴァンガードを探知能力開発で想定する脅威としている。このうち、DF-17は弾道ミサイルで加速してから無動力DF-ZF極超音速加速滑空体でマッハ5のまま飛翔経路を制御しつつ標的に向かわせる。

 

アヴァンガードも弾道ミサイルで極超音速加速滑空体を適切な高度と速度にしてから最終飛翔段階にもっていくが、サイロ発射に限定される。これに対しDF-17は道路移動式発射台を使う。アヴァンガードは核弾頭搭載可能で、DF-17も同様と想定される。こうした装備は日本へ到達可能だ。

 

想定シナリオ通りに進展するとしても、日本をねらう極超音速ミサイル攻撃の警戒手段として無人機だけに頼るわけにいかない。赤外線センサーにも限界があり、大気状況に左右される。産経新聞記事では赤外線センサー以外に新型レーダーも艦艇に搭載し活用するとある。

 

記事では日本政府は小型衛星多数を低地球軌道に打ち上げ広範囲の探知ネットワークとする構想を検討しているとある。同様に米国でも多層配備宇宙探知ネットワーク、別名極超音速弾道追尾宇宙センサー Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor (HBTSS)の実現を目指しており、日本がこのデータを供与される可能性がある。

 

今回の記事では極超音速ミサイル探知に成功した後に撃破する手段についての言及がないが、迎撃ミサイル、超高速発射体、レーザー、電子攻撃あるいはこうした手段の複合が考えられる。MDAでは滑空段階迎撃手段 Glide Phase Interceptor(GPI)をイージスウェポンシステムに取り入れ、2020年代末までに極超音速ミサイル防衛体制の実現をめざす。日本もイージスシステム運用国であり、GPI取得に向かう可能性がある。

 

日本がどの選択をするにせよ、現時点では優位性が潜在敵国側にある。

 

極超音速兵器の構想は以前からあるが、技術の進展により加速滑空体でマッハ5の飛翔が現実の脅威になっている。空気吸い込み式極超音速ミサイルへの対応は困難な課題で、打ち上げ地点の特定はさらに困難だ。

 

合わせて日本も独自に極秘の極超音速兵器開発を進めており、同様に加速滑空体の実用化をめざす。特に中国を意識した封じ込め効果を東シナ海で必要とする中、日本は二段階方式でこの種の装備品を開発する。昨年の報道では2026年にも実戦化できるとある。

 

ただし、極超音速兵器への実効性ある防衛策が本当に生まれるかは不確かだ。

 

日本が多層構造の防衛体制を構築し、極超音速ミサイルの探知、追尾機能を実現させようとすれば数百憶ドルが必要となりそうだ。これ自体が難関だが、日本政府はそこまで脅威を深刻にとらえているのだろう。

 

その狙いが実現し、無人機による探知がどこまで実現するかは時が立てばわかる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

 

Japan Wants To Detect Incoming Hypersonic Missiles With Unmanned Aircraft

BY THOMAS NEWDICK AUGUST 9, 2021


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM