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改オハイオ級SSGNは大量のトマホーク巡航ミサイルを敵地に放り込む最強の潜水艦、だが供用期間に限りがある。後継艦は....?

 

 

 

隻供用中のオハイオ級SSGN潜水艦は世界最強の巡航ミサイル搭載艦で接近阻止領域拒否をとる敵への対抗で強力な選択肢になる。

オハイオ級弾道ミサイル型潜水艦(SSBN)は核戦争で敵都市や軍事集積地の破壊を目的に建造されたが、より正確に言えば敵が開戦に踏み切るのを抑止するためだった。ただし、冷戦が終結すると米海軍は核抑止ミッションで同級18隻は必要ないと判断した。

 

海軍は最初に建造した4隻を廃艦予定だったが、かわりにトマホーク対地攻撃巡航ミサイル(TLAM)搭載艦に転用する大幅改修を各艦700-900百万ドルで行った。対象艦はオハイオ級誘導ミサイル潜水艦(SSGN)に変更され、通常弾頭による対地攻撃を任務とした。まず、オハイオ、フロリダが核燃料交換、大修理を受け同時に兵装転換作業を2003年に開始し、2006年に現役復帰した。続けてミシガン、ジョージアが2008年に改修を完了した。

 

オハイオ級SSGNはトライデント弾道ミサイルの発射管(直径88インチ)24本を活用し最大規模の通常攻撃能力を有する艦となった。発射管22本がトマホーク発射用のキャニスター運用に改装され、各7発を運用するのでトマホークは合計154発となった。

 

単価150万ドルのトマホークは千ポンド弾頭を最大1千マイル先の標的に向けGPS誘導で発射する。となると改オハイオ級は最大2億ドル相当の兵装を搭載することになる。

 

オハイオ級SSGNは多任務艦でもある。発射管で残る2本は特殊水中ロックに改装されネイヴィーSEAL60名を特殊作戦で発進させる。また、水中無人機(UUV)、SEAL搬送機(SDV)、小型潜水艇、ソナーブイ他の水中センサーを運用できる。

 

トライデント運用艦のように姿をひそめる必要がなく、2010年にオハイオ、フロリダ、ミシガンの各艦は中国のミサイルテストに対抗し、ディエゴガルシア、フィリピン、南朝鮮の沖合にほぼ同時に浮上し存在を誇示した。2011年のオデッセイ・ドーン作戦支援でUSSフロリダはリビア防空施設に93発のミサイルを発射したが、命中したのは3発のみだった。とはいえ反カダフィ勢力によるリビア上空の航空作戦に道を開き、オハイオ級ミサイル原潜で初の実戦となった。

 

では大型巡航ミサイル発射潜水艦の投入目的はなんだろうか。水上艦で長距離トマホーク攻撃すればいいのではないか。あるいは空母から航空機を発艦させれば、安価な精密誘導弾投下が実現する。端的に言えば、ステルスSSGNsは探知されずに敵沿岸へ接近でき、内陸部への攻撃、大規模攻撃を実施しつつ、水上艦や航空攻撃のように姿を露呈することはない。

 

新型長距離対艦ミサイルの例にロシアのカリブル巡航ミサイルがあり、陸上、空中、水上から発射が可能なため、大型艦艇の沿海域運用を困難にし、航空母艦やミサイル巡洋艦に影響が出る。空母搭載機材でも敵の対空母兵器を考慮し空母が敵国沿岸部から800マイル以内に近づけないと攻撃効果が減る。

 

これに対し原子力潜水艦の探知追尾が極めて困難なのはひとえに低ノイズのまま長時間潜航できるためだ。敵がオハイオ級SSGNを探知できるのはミサイル発射後で、その時点で潜水艦側は深く潜航し静寂を守り敵の報復を避ける。

 

ただし、オハイオSSGNの強大な火力が利用可能なのは残り10年程度に限られる。オハイオ級は全艦が新型コロンビア級弾道ミサイル潜水艦に交代する。通常型対地攻撃任務はヴァージニア級攻撃型潜水艦がヴァージニアペイロードモジュールを搭載してトマホーク50本を発射することで引き継ぐ。計算上はヴァージニア級4隻でオハイオ級一隻と同等の火力となるが、反面攻撃力を分散させることで実戦で有効性を発揮するはずだ。

 

だがそれまではオハイオ級SSGN各艦が世界最強の巡航ミサイル搭載艦の座を守り、接近阻止領域拒否体制を整備した敵へのけん制、対応で強力なツールのまま残る。■

 

Ohio-Class Submarines: How Joe Biden Could Order A Nuclear War

by Sebastien Roblin

July 30, 2021  Topic: military  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologySubmarinesSubNavyU.S. NavyCruise MissileTomahawk Missile

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article was first published in January and in 2020. 

Image: U.S. sailors aboard the guided-missile submarine USS Georgia. Wikimedia Commons/U.S. Navy


コメント

  1. 2011年に93発撃って3発しか当たらなかったのは何があったんでしょうね?
    トマホークは現在の防空兵器なら簡単に落とせると言う主張もありますが落とされるならなおさら大量に発射すべきとも考えられ、SSGNの存在は重要であり続けるでしょう。

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