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原潜シーウルフは米海軍で最も機密性の高い任務についている。注目ワードは北極海だ。

 

 

 

 

2013年8月原子力攻撃型潜水艦USSシーウルフがワシントン州ブレマートンを出港し、1997年の就役から5回目あるいは6回目の任務についた。

 

一か月後にヨーロッパを担当する第六艦隊が公開した画像に米国ノルウェー大使がシーウルフがシーウルフをハーコンスヴェルン海軍基地で視察する様子があった。ワシントン州から数千マイル離れている。

 

シーウルフはノルウェーまでどう移動したのか。その際に取った移動経路から海軍の中でも機密性を重んじる潜水艦部隊の運用の一部がうかがい知れる。シーウルフは北極海経由でノルウェーに移動したのだ。

 

沈黙の部隊

 

米海軍は潜水艦の話題を好まない。潜水艦の最大の利点はステルスだ。海軍には70隻近くの潜水艦があるが、シーウルフと姉妹艦コネティカット及びジミー・カーターは最も機密性が高い。

 

隻数が最大のロサンジェルス級ならグーグル検索で海軍の発表文書や公開画像が見られる。だがシーウルフ級は皆無に近い。

 

同艦の公式ウェブサイトはアクセス不能となっている。シーウルフの外観写真が出たのは2009年が最後だ。

 

シーウルフ級が特別な艦であることが理由だ。新型、大型で高速かつ重武装で建造単価30億ドルのシーウルフ級は数億ドル相当の特殊装備を搭載し、ワシントン州に独立戦隊を編成している。

 

いったん任務に出ると数ヶ月にわたりまったく公表されず活動する。シーウルフ乗組員の妻も「予測不可能」と表現するほどだ。

 

受勲が連続していることから秘密任務が着実に成功していることが間接的にわかる。2007年にシーウルフ乗組員140名が戦時なら銅星章に相当する部隊勲功章を受け、2009年には銀星章相当の海軍部隊勲功章が授与された。

 

海軍での潜水艦部隊の仕事は情報収集、巡航ミサイルをテロリストやならず者国家に打ち込むこと、特殊部隊員を偵察強襲任務に送り込むことにある。だがシーウルフの任務は不明のままだ。

 

またシーウルフがどの海域に展開しているかも不明だ。太平洋艦隊に配属されるが、すぐ変更されてもおかしくない。

 

謎を解くピースを集める

 

判明している事実がある。2011年3月に姉妹艦コネティカットが北極海でテストに投入されたとの珍しい報道が出た。

 

コネティカットは新造ヴァージニア級ニューハンプシャーとアラスカのプルドーベイに向かい「ICEX」演習に加わった。1958年にUSSノーチラスが初めて北極点に到達して以後海軍が不定期に実施している演習だ。

 

海軍はコネティカットが「米海軍北極海潜水艦研究所、ワシントン大学応用物理教室とともに新装備を試行し北極海での水中運用訓練を行った」と発表した。

 

新装備品には「安全な航行用の高周波ソナーやレイセオン製のディープサイレン音響通信機」があると海軍は述べていた。

 

シーウルフは2009年9月から3年近く乾ドック入りしていた。受注企業は280百万ドルで作業した。シーウルフが太平洋に復帰したのは2012年4月で「これまでより性能が向上した」と当時の艦長ダン・パッカー中佐が述べている。

 

コネティカットでテストしたのと同様の装備をシーウルフが搭載している可能性がある。北極海は海軍にとって新しい重大な海域だ。氷が減少する中で新しい航行路が開かれ、他国海軍の動きが活発になってきた。

 

シーウルフの謎への反応

 

いずれにせよ、シーウルフが世界の頂上部分を経由し移動したのは明らかだ。ワシントン州を出港しノルウェーに数週間で到達するにはこれ以外の航路はない。

 

ではシーウルフは北極海でなにをしていたのか。訓練の可能性はある。氷の下での戦闘技法を磨いたのか。潜水艦乗組員にとって北極海行きは「戦闘システムを試し航法機能や通信機能の効果を見て厳しい環境での作戦実施となる」と当時の海軍作戦部長ゲーリー・ラフヘッド大将が述べていた。

 

伝統に則り静かに動くことにはそれなりの理由がある。2009年のICEXに対しロシアがどう反応したかを見てほしい。「外国潜水艦がロシアの海洋国境線近くで行動すれば当然の結果としてわが国が関心を示すことになる」とクレムリンは警告していた。

 

ロシア側も米潜水艦が何をしているのかを知りたがっているのだ。■

 

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Why Is the U.S. Navy So Secretive about Its Seawolf Submarine?

by David Axe 

August 4, 2021  Topic: Submarines  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaSubmarineMilitaryTechnologySeawolfNavy

 

David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

This article first appeared on WarIsBoring in 2013.

Image: U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Kevin S. O'Brien


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