いまいちわかりにくい概念的な説明に終始しているのは安全保障上仕方がないことなのでしょうか。ともあれ、ここまでの技術が実現すれば新しい抑止力になるのですが、ノースロップの言い分通りなら実現がそこまで来ていることになります。
極超音速兵器の危険や脅威が話題になることが多いが、追尾破壊手段が現れつつある。だがマッハ5の速力かつ飛翔経路を制御可能な極超音速ミサイルを本当に破壊できるのだろうか。
ロシア、中国の極超音速ミサイルの現実の脅威を前に米ミサイル防衛庁(MDA)が産業界に多層防衛構想の技術課題への挑戦を求めている。
極超音速兵器防衛の課題
「中国は引き続き高性能兵器体系の実現を目指し、極超音速ミサイルや二重用途技術など、これまでの次元を超えた装備品が出現してくる」と米戦略軍司令官チャールズ・リチャード海軍大将が述べている。
HBTSSの構想図
めざすのは向かってくる極超音速滑空兵器をで空中、地上、海上で「見る」「見つける」「追尾する」こと実とリチャード大将は表現。この脅威は深刻であり難易度が高い。極超音速兵器への対応の実現はまじかに迫っているが、現時点で有効策は存在しない。
「極超音速滑空体に代表される機動性の高い脅威対象が増えており、現行の地上配備レーダーネットワークの能力では対応しきれない。現状ではこうした脅威に対抗する手段がない」とマイク・シフォン(ノースロップ・グラマン、戦略、捕獲、作戦、OPIRおよび地理空間装備担当部長)も述べる。
HBTSS
一つ有望に見えるのがミサイル防衛庁が業界とともに進める新型衛星ペイロードで極超音速攻撃の際に標的の飛翔経路を「保持」する装備だ。
これを極超音速弾道飛翔経路追尾宇宙センサーHypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor (HBTSS)事業と呼び、弾道ミサイルと異なり既存の軌道を経由しない極超音速滑空体の高機動性への対応を目指す。
「発射直後の加速段階では通常は予測可能な弧を描き、頂点で燃料がなくなる。そこから先を予測し命中地点を推定することでデータが入手できる」(シフォン)
高機動極超音速標的は弾道そのものを変更し位置も変更可能だとシフォンは説明している。
「極超音速滑空体の発射は連続することがある。HBTSSは最初の発射を捉え、第一、第二、第三と分離していくのを把握する。HBTSSのデータをリアルタイムで連続送信し、極超音速滑空体の飛翔を追尾することが可能だ」
シフォンによればノースロップ・グラマンはHBTSSの軌道上テストを2023年に行い、極超音速滑空体の追尾情報をミサイル防衛網に送る。目標は迎撃手段をしかるべき位置に移動させ極超音速滑空体を排除することだ。
「HBTSSは短期間で実現を急ぐ試作装備です。脅威に対抗して行くためにも必要な機能となり、現場指揮官なら探知追尾データを正確かつタイムリーに入手する機能の重要性は理解できるはずです」
HBTSSの技術成熟度を伝える内容として、既存レーダーは「開口部」あるいは「視野」をもとに作動する。つまり一定の範囲しか有効でない。制御可能な極超音速滑空体は一つの視野から超高速で移動してしまうので「連続」追尾が不可能に近くなり、迎撃が失敗に終わる可能性が高い。
「レーダーの目を通過してしまい、特別なアルゴリズムがないと識別ができない。迎撃ミサイルを発射後にミサイルにデータを伝えるのだが、時間があまりにも短い。ミサイルを戦闘システムの一部に統合する必要がある」(シフォン)
技術はどこまで進歩していくのか
HBTSS以外にもペンタゴンが注力するのがICBMの追尾破壊手段となる新技術で、予算を重点的に投入する。目指す新技術は多数の発射体を探知するもので、大気圏ギリギリの地点で探知する。
このためには技術要求内容の完成を加速し、各軍の装備を統合して「共用」作戦環境の実現を急ぐ必要がある。
「これまで存在しなかった共同能力が必要となり、共同運用、共同指揮統制、補給活動で情報活動で優位性を発揮しなければならない」と統合参謀本部副議長ジョン・ハイテン大将が2021年の宇宙ミサイル防衛シンポジウムで講演していた。
この実現のためににはハイテン大将は産業界と共同でニーズの「ギャップ」を把握する必要があると主張。つまりミサイル警報システムのことを指している。このためには「キルチェーン」内で重要となる点をひとつずつ解決していく必要がある。
これに応えるべくノースロップ・グラマンのミサイル防衛技術部門では新型ミサイル警報技術とともにセンサーペイロードに取り組んでおり、敵兵器を宇宙空間での探知、追尾、破壊をめざす。
同社のシフォンはこの動きは次の三点にまとめられるとした。
ひとつはキルチェーン各要素の活用だ。つまり、システムによる捕捉を最適化し、システム間の相互運用を最適化し、各要素に十分な投資をしていくこと。
ふたつめは新機能に資金投入し、既存の枠組み内で活用すること。既存の探知ネットワークの弱点が判明すれば、新技術への資金投入で迅速にニーズ実現を図る。
三番目はキルチェーンの穴やほころびを見つけ、各技術をつなぐ技術を確立すること
シフォンはノースロップが有望技術分野を把握すべく資金投入を続けている姿勢を強調し、ペンタゴンのミサイル防衛ニーズをあらかじめ想定し、今後の要求内容に応えられる体制を維持していると述べた。
新技術の内容は当然ながら公表できないが、長距離対応の高精度センシング、光ファイバー通信や新型通信技術で即座に脅威データを「ネットワーク」し、従来より迅速に脅威データを共有する。
HBTSSのねらいは新たなネットワークを作り、高速対応の宇宙配備センサーをつなぎ、極超音速脅威対象の「探知追尾」を実現することにある。ノースロップ・グラマンはHBTSS開発でMDAから153百万ドル契約の交付を受けている。
「CDR(重要設計審査段階)が今年末にあり、試作型を2023年に納入します」(シフォン)
敵の極超音速ミサイルの探知、追尾が重要となるが、それだけではない。機動性を発揮する高速ミサイルが各レーダーの視野を通過するが単に追尾するだけでなく情報を処理し通信する必要がある。
飛翔軌道などの重要情報はいったん整理・処理し、指揮命令所に伝え、迎撃手段や対抗手段の投入を下令する。だが極超音速の敵に対応すできるスピードで実現できるだろうか。
秒単位でこれを実現すべく、ペンタゴン、MDA、産業界は一致して極超音速兵器の撃破をめざしている。
「対応の一つがデータ融合で、衛星からの情報を地上に送り、兵器運用部門まで最短時間で伝える必要があります。このためデータ一部をリアルタイムで兵器データベースで処理し、衛星からデータを兵器に伝えます」(シフォン)
データ処理の一部はAIを応用し、データ取得場所で完了させ、センサーデータの発生ごとにこれを行う。コンピュータ処理速度は加速化しており、AIが加わり技術上のブレイクスルーで飛来する脅威の情報を即座に解析し、整理統合し、評価する。これが重要な点で現場指揮官へ飛躍的なスピードで情報を伝える。
この通り成功するかは衛星、センサーのネットワークにかかっており、まさしくペンタゴン、MDA、ノースロップ・グラマンが注力する対象だ。このため軍で従来より高速、小型かつネットワーク機能が優れた低中地球軌道衛星の整備を急いでいる。
新衛星群で既存の大型静止衛星ネットワークを補完しつつネットワーク機能を活用し広範囲な対象を近くから監視する。ここにノースロップ・グラマンが開発中のHBTSSの役目があり、高解像度衛星群での極超音速ミサイル追尾を実現する。
「デジタル技術能力やモデリング、シミュレーションのツールを活用することで複雑な装備の性能のモデル化が可能となり、これまで不可能だったシステムの最適化が可能となります」「国家安全保障では失敗は許されません。人命がかかる案件に実証できない技術に賭けるわけにいかないのです」(シフォン)■
Hypersonic Missiles - How the Defense Industry is Tracking Incoming Threats
Performing the Impossible? Pentagon May Stop Hypersonic Missile Attacks
Modernizing Hypersonic Weapons defense systems is an urgent priority for the Pentagon
-- Kris Osborn is the President of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --
Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master's Degree in Comparative Literature from Columbia University.
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。