カブール空港の混乱ぶり
米空軍輸送機に加え契約企業所属の航空機がアフガニスタンに向かい、同国内に留まる米国人、アフガン人数千名の国外脱出を助ける。タリバンがカブールに向かう中、ペンタゴン報道官ジョン・カービーが述べた。
先週木曜日に第二の都市カンダハールが陥落し、カービー報道官は「時間が貴重。このままではカブール包囲は時間の問題だ」とした。
ペンタゴン内部では迅速な事態の変化に戸惑いが生まれている。米国が訓練してきたアフガン軍がどうして簡単に崩壊しているのか。
米国は2002年以来でほぼ830億ドルもの装備、訓練をアフガニスタン国防治安維持部隊ANDSFに供与してきた。このうち航空機、車両だけで100億ドルに上る。
「タリバンの侵攻が早く、抵抗らしき抵抗がないことに驚いている」とカービーは述べ、米国から訓練を受けたアフガン軍の反撃を期待していた。
「空軍もあるし、装備は近代的だ。組織もしっかりしている」「この20年にわたりわが国が訓練を提供してきた。装備、機材で目に見える形で優位なはずだ。今こそ優位性を発揮するべきだ」
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安全保障専門家には米国はアフガニスタン崩壊を覚悟すべきとの声がある。米軍はアフガン軍を米国のイメージで訓練し、中央集中の指揮命令系統とし、西側の戦闘方法で訓練した。とはいえアフガニスタン駐留米軍でさえ、戦闘員の襲撃に非対称的対応に努めるよう自ら変革してきたのだが。
「ハンビー、戦車、火砲、ヘリコプターがあれば強い軍隊になると考えていた」と語るのはバイデン政権のアフガニスタン構想に反対姿勢を取る民主主義諸国防衛のための財団で主任研究員を務めるビル・ロジオだ。装備品を惜しげなく与えたものの現地部隊に戦闘意欲は育たなかったという。
組織的な汚職体質に加えアフガン政府の統治体制が脆弱でアフガン軍への給与支払いが滞り、負傷しても十分な手当もできないまま状況は悪化していった。
政府監視プロジェクトの研究員ダン・グレイジアーは元海兵隊でこう語る。米国によるアフガン部隊向け訓練が始まったが、アフガン陸軍を自立機能させる全体計画は存在していなかった。米軍部隊もローテーションで出入りする中で訓練に一貫性が確保できなかった。
「最初から現地駐留専門家がないまま、陸軍、海兵隊が自分たちのイメージそのままに現地軍を訓練していった」(グレイジアー)バイデン政権は今年早々に今後もアフガン部隊向けの資金、装備の提供を続けると公約しており、米軍は撤退する中で、タリバンが進撃を続け政府軍が寝返る状況を見てロジオのような専門家には果たしてこれまでの米支援が続けられるのだろうかとの疑問が生まれていた。
「これ以上の装備品をアフガニスタンにつぎ込んでもアフガン部隊に戦闘意欲がないため無駄だ」とロジオを見ていた。
7月に入りアフガニスタン再建特別監査官が国防総省が37億ドルをアフガン軍向け燃料代に2010年から2020年にかけ出費しており、「さらに14.5億ドルを2025年度にかけ支出する案がある」ことを見つけた。「この燃料はDODがANDSF向けに調達した航空機、車両98億ドル用ならびにANDSFの各基地向け発電用だった」
アフガン空軍には20年で130機が供与されており、国防総省は追加機材を提供すると7月に発表していた。内訳はブラックホーク35機とA-29スーパートゥカーノ3機で米軍撤退後もアフガニスタン支援の姿勢のあらわれとした。うちブラックホーク3機が先月に引き渡されている。
追加機材の提供予定に変化はないかとの問いに国防総省から回答がまだない。供与してもそのままタリバンの手に落ちるだけだ。
警戒する議会は2022年度国防認可法の中にカブール陥落の場合は援助を止めるとの条項を盛り込んでいる。同法案では「タリバンまたは別のテロ集団に資金、補給品、その他を渡さない」こととある。
アフガニスタン全土でアフガン軍が急速に崩壊していることから数千名に及ぶ通訳者他米国を助けてきた国民の間に国外脱出がかなわず残留するのではとの懸念が強まっている。
米国はカブール空港への追加機材、人員の送付を急いでおり、米軍の国外脱出便のため滑走路を確保する必要がある。
アフガニスタンで弁護士として働くキム・モトリーは特別査証発行の支援をしている。モトリーは出国を急ぐアフガン国民から査証発行の遅れで不満が出ているという。
「米国に見捨てられるとの思いがある」「これは人権上の核爆弾で導火線に火をつけたのは国際社会だ」(モトリー)
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The US Spent $83 Billion Training Afghan Forces. Why did they collapse so quickly?
SENIOR PENTAGON REPORTER, DEFENSE ONE
AUGUST 14, 2021
アフガン軍が急速に溶解したのは意外でない。記事にあるように「戦闘意欲がない」からだが、その裏側には深刻な問題があるだろう。
返信削除例えば、米軍撤退の裏切り的行為、腐敗したアフガン政府と軍、タリバンの恐怖等々。そして最大の問題は、米国の対テロ戦争そのものが間違っていたことだ。
米国は、9.11連続テロの怒りに任せ、ハンマーで胡桃を潰す行為、アフガンとイラクの二つの独裁政権の破壊を行った。壊した国をどのように再建するか計画さえもなく、独裁政権に虐げられていた人民は、米軍を歓迎し、国家再建に協力すると恣意的に考えていたと推測する。その結果が、傀儡政権の米軍依存と20年にも及ぶ戦闘である。この後遺症は長く続き、イラクからの米軍撤退後の混乱により、さらに痛みがより増すことになるだろう。
米国の対テロ戦争の敗北は、同時に米ソ冷戦後の米国のグローバリズムの失敗でもあるだろう。米国は、今後、米中冷戦の中で新たな国家戦略を模索することになる。
また、視点を変えて対テロ戦争の契機となった9.11連続テロをもう一度見直すべきだろう。アルカイダは、9.11連続テロで、それまでの反米テロと全く異なった手段を使ったが、なぜこのようなテロが可能になったか、洗い直すべきと考える。
タリバンと中国の関係も重要だが、アルカイダの背後に中国の存在が垣間見え過ぎるのだが?
補足
削除日本、米国を含む大手メディアは、アフガンでのタリバン復活でイスラム過激派が伸長し、中国国内のウイグル人に影響が波及するとの論調であるが、これは全くのフェイクである。
CCPは、1990年代後半よりタリバンを支援し、2001年9.11連続テロが起きた時には、タリバンとの間で経済的・技術的支援を約束する協定を結んでいる。もちろんこの協定の裏側には軍事援助やウイグルとの断絶の約束、アルカイダ支援等もあるだろう。この年の米軍のタリバン攻撃でPLA兵士が20人ほど亡くなっていることや、トラボラ等での書類から、PLAの軍事支援は相当なものであったようだ。
米国のタリバン、アルカイダ攻撃が激しくなると、PLA兵士派遣は停止したようだが、アフガン戦争中もCCPとタリバンは継続的に会談しており、少なくても2015年以降は年1回以上の頻度で行っている。この会談の主な目的はCCP/PLAのタリバン支援である。
このように見てみると、タリバンは、9.11テロ前から一貫してCCPと友好関係にあり、支援されていたのは明らかである。その見返りにタリバンは、アフガンからウイグルのルートを遮断し、アフガン戦争中も新彊を孤立させていた。
このように見てみると、タリバンは、友好国CCP中国のため、これからもウイグル人を孤立化させるのに尽力すると考えるのが妥当である。