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バイデンも覆せなかったトランプの遺産F-15EX。イーグルIIは戦術機材の中でどう位置づけられるのか。最終生産規模が見えてこないが、ボーイングは今後も事業量を確保している。

 

F-15EX rendering

Boeing illustration

 

主党のジョー・バイデン大統領は就任にあたり、先任大統領の決定多数を覆すと誓っていたが、共和党のドナルド・トランプ大統領時代に始まったたF-15EX調達は全面的に進展している。

 

Tealグループ副社長のリチャード・アブラフィアは「トランプの置き土産がF-15調達の復活だ」と述べる。

 

イーグルIIの名称がついたEX型はC型の後継機種の位置づけだが最終調達規模はまだ見えてこない。

 

ボーイングは空軍から12億ドルでロット1契約の交付を昨年受けた。さらに期限機数を特定しない229億ドル契約もある。空軍はこの契約で最大200機調達に向かうとボーイングは解説している。

 

イーグルIIにはフライバイワイヤ機体制御、高性能コックピット装備、BAEシステムズ製AN/ALQ-250イーグルパッシブアクティブ警告生存装備を電子戦に備え搭載している。

 

特に兵装搭載量が大幅強化され、全長22フィート重量7千ポンドの極超音速ミサイルも運用可能となった。ボーイングは高度50千フィートでマッハ2飛行可能とする。

 

同機はペンタゴンがめざすDevSecOps構想の先駆けとなる。これはソフトウェアのアジャイル開発を目指し、オープンミッションシステム想定の機体構成とデジタルエンジニアリングがあいまって従来より迅速かつ平易に性能改修が実現できたとボーイングは説明している。

 

空軍は同機にスカイボーグ事業で開発する無人ウィングマンをつける予定だ。「スカイボーグ担当部門とは毎週ミーティングを行っており、こちらには短期での実証実現を求めてきた」「有人無人機のチームとしてF-15EXがまずこれを実現する」とボーイングは説明。

 

 

トランプ政権が同機の調達を求めたのは2020年度からである。空軍上層部には第五世代機調達に集中したいとの意向があったが、その後イーグルII調達を求める意見に変わった。

 

議会は2020年度8機、2021年度12機の調達予算を承認した。バイデン政権の2022年度予算では12機を上乗せするとある。

 

ボーイングは政権交代があったが同機調達の方向に変化がなかったことに驚く様子がない。

 

「最初はトランプの事業だとしていたが、政争とは無関係にあくまでも要求性能の実現をめざしDoDは検討してきた」ことでペンタゴンは同機調達に進んだとボーイングは見ている。

 

「空軍からは老朽化したF-15Cの代わりが欲しい。迅速かつ運営する州軍航空隊が機種変更の際に実効性を犠牲にしない形で進めたい....しかも早く入手したい。ボーイングはどこまで迅速かつ負担可能な価格を実現できるのか」と聞かれたという。

 

アナリストのヘザー・ペニーは空軍退役中将デイヴィッド・デプチュラとミッチェル研究所レポートでボーイングが「要求性能の実現に全くの新型機を提案せず、一種の賭けをした」と記している。

 

同レポートはF-15EX採用を間違った決断とし、ハイエンド戦では生き残れない機体とする。ステルス性能がないからだ。だがボーイングは賭けに勝った。

 

「当社はこの事業に相当の額をつぎ込んでいる。自信がなければこんなことはしない」とボーイング副社長プラット・クマールは述べている。

 

主要議員の間ではイーグルIIへの関心が高い。上院軍事委員会の2022年度国防予算認可法案が7月にまとまったが、バイデン政権が求めた12機にとどまらず、さらに5機調達を認めている。

 

F-15EX契約の成立はボーイングに単なる朗報以上の結果を生んだ。

 

「戦闘機製造は巨大事業です」とクマールは述べ、F-15事業で契約企業400社が全米42州にまたがると述べた。

 

「サプライチェーンに55千名が雇用されており、それぞれの技術基盤を維持し次の事業に活用することが重要なのは単にボーイングのみの問題ではなく、各社にも大切な意味があります」「この技能基盤を喪失すれば、次の事業へのつなぎがなくなります」

 

またボーイングは機体整備事業も伸ばせす効果が生まれた。

 

サターフィールドからはF-15用の支援装備は93パーセントが互換性があり、供用可能な状態にあるとし、旧型から新型への機種展開が楽になったと述べている。

 

「完全新型機ではなくボーイングはF-15系列の供用を選択し、F-15EXが生まれた」とミッチェル研究所報告書にある。「これによりボーイングはごくわずかなコストで長期にわたる機体維持事業の収益を期待できることになった」

 

事業では今年大きな成果を達成した。2月に初号機がボーイングのセントルイス工場で完成し、3月に空軍がエグリン空軍基地でテストを開始した。同社は2号機も製造済みで三号機の生産が始まったところだ。ロット1の残る機材は2023年はじめまでに納入される。

 

ロット1に続きロット2生産が始まるが、「海外発注分の機材も同時に生産する必要があります」とクマールは述べている。

 

ボーイングは今後の需要に応えるべく、生産能力を月産2機に引き上げ、月産3機もオプションとするとクマールは説明。

 

F-15EXは現在生産中の機材で最先端性能を有するカタール向け仕様をもとにしており、10点ある重要技術のすべてが成熟化済みとの政府評価もある。低率初期生産は2022年3月から開始の予定だ。

 

「F-15EXは既存生産ラインを活用することもあり、製造リスクは低いとの評価が出ている」と報告書にあり、「製造工程は実証ずみ」ともある。量産型への設計変更の可能性も低いとの評価も出ている。

 

2021年時点のF-15EXの単純製造価格は88百万ドルほどと空軍の予算書類にある。クマールはロット1機材では臨時コストを除けば一機80百万ドルを割り込むとする。「今後さらに下がるのは間違いない」

 

F-15EXのアピールポイントの中心に運用維持コストがあり、フライト時間あたり運用費を29千ドルと想定しており、F-35Aは33千ドルだ。

 

イーグルIIはじめ四機種を米空軍は2030年時点の使用機材と位置付けているが、空軍が最終的にイーグルIIを何機調達するのだろうか。

 

議会調査局は「F-15EXはつなぎ調達から本格的防衛装備品調達に変わる予想がある。調達事業ベースラインで調達規模が明示されよう」としている。

 

国防総省では戦術機構成について検討を進めており、コスト評価事業評価(CAPE)の部長代行ジョセフ・ノエリアが下院軍事委員会で7月に以下述べていた。

 

「CAPEでは戦術機材の調達価格を中心に性能面のトレードオフを検討しています」「統合参謀本部が戦闘部隊司令部と調整のうえ、将来の戦闘で戦術機をどのように活用すべきかを検討しています」

 

空軍は近未来から中未来を想定した戦術機の投入案を海軍と検討中だ。

 

こうした検討結果がバイデン政権による国防戦略構想、さらに2023年度予算要求に加え今後の防衛事業に反映されると述べた。

 

「議会ではF-15EX事業予算をどこまで計上すべきかについて空軍やDoDのその他優先事業とのからみで検討している」とCRS報告書にもある。

 

こうした決断では以下の疑問に答える必要がある。F-35Aの予定調達規模の実現にペンタゴンはどこまで真剣なのか。F-15の機材更新は空軍がめざす386個飛行隊構想に合致するのか。戦術航空機メーカーの維持はどこまで国益につながるのか。超大国相手の国防戦略にF-15EXはどこまで合致しているのか。

 

調達の行方を左右しかねないのは無人機だ。

 

「F-15EXに求めるニーズがとこまで無人機で実現するか」と同上報告書は指摘している。■

 

Trump's F-15EX Legacy Lives On in Biden Administration

8/20/2021

By Jon Harper

 

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