タイプ45(左)とまや級駆逐艦(右)
米国の側につく日本と英国はともに海軍力を冷戦初期から整備し、海上で力のバランスを西側有利に維持することが国益につながると理解していた。
だが冷戦終結後の両国海軍は全く反対方向に進展し、日本が引き続き能力整備にあたり世界有数の艦隊規模を実現したのに対し、英国は艦艇数を大きく削減した。
その背景に両国の海軍部隊さらにいえば国防部門の実効性に大きな差がある。英国の国防支出は日本よりはるかに多いにもかかわらず、ほぼあらゆる側面で英海軍は海上自衛隊の実力に及ばない。
Japanese Maya Class Destroyer
両国海軍力の中心をなす駆逐艦で比較してみよう。日本は44隻と世界第三位の規模の駆逐艦部隊を運用するが、英海軍は6隻のみだ。冷戦終結時の英国は13隻を稼働しており、新設計のタイプ45級12隻を建造し交代させる構想だったが、予算不足にくわえタイプ45艦の建造費が高騰したため12隻が9隻に削減され、さらに6隻に減らされた経緯がある。
これに対し日本の駆逐艦戦隊は欧州各国の駆逐艦合計を上回る。単に隻数が多いだけでなく、各艦の性能が英海軍を上回っている。英タイプ45艦は垂直発射管48基を搭載するが、日本は96基で、単純比較すれば日本艦は2倍の火力を誇ることになる。
海上自衛隊はイージスシステムも運用し、垂直発射管から各種兵装を運用できる。対潜ミサイル、対空ミサイル、対艦ミサイルのほか対弾道弾ミサイルまでだ。これと対照的にタイプ45艦の垂直発射装備は旧式でアスター15、30の対空ミサイルのみ運用する。さらにアスターは日本のSM-3やSM-6より低速かつ射程距離も短い。SM-3最新型は1,200キロまで交戦が可能で、アスター30の10倍に達する。
日本は対艦ミサイルやAESAレーダーの技術でも先を行っており、世界に先駆けて艦艇、ミサイル、航空機に同レーダーを搭載した。国内の産業力、技術研究開発力により日本の駆逐艦戦隊には英海軍をはるかにしのぐ技術優位性がある。
British Type 45 Destroyers
日本の海軍部隊の火力は水上艦以外でも潜水艦が英海軍より優勢で、日本の潜水艦20隻に対し英海軍は11隻を運用する。英国の運用技術は米国に相当部分を依存しているが、日本は独自に潜水艦技術を磨き、最近はリチウムイオン電池の推進方式を実用化している。
これは日本独自の装備で、高速航行、短時間充電、長期間の電池寿命を実現しながら、容積が減り、保守管理が楽になるため各国海軍も導入を進めそうだ。新技術開発には確かに相当の費用が必要だったが、兵器としては英国装備より優秀なので経済効果が高く、予算内でより信頼性の高い選択となる。
英国の優位性は空母と戦略ミサイル原潜で、日本は核兵器や攻撃的兵力投射用装備の保有を自ら禁じている。日本にはひゅうが級いずも級の四隻の21世紀型空母がある。とくにひゅうが級は世界最高峰の対潜空母といわれ、いずも級はF-35B戦闘機運用を想定して建造されたとされる。
英国にはクイーンエリザベス級空母2隻があるが、両艦で技術的なトラブルが発生し、運用航空部隊も想定の半分程度にとどまっている。英海軍は費用と搭乗員の削減のためF-35Bを選択したが、戦闘能力が通常運用型の艦載F-35Cより劣り、艦容こそ威圧的だが運用戦力は低い。
いずも級同様にクイーンエリザベス級も早期空中警戒機がなく、通常型空母として能力も限定される。日本は今後新型空母を就役させるかもしれないが、クイーンエリザベス級は英国最後の空母となりそうで、しかも厳しい状況に取り囲まれている。タイプ45艦も同様に英国最後の駆逐艦となる予想で、今後は小型軽量で安価なフリゲート艦を中心にする。
British Queen Elizabeth Class Carrier
日本の海軍戦力は米国除く西側諸国の上を行っており、英海軍は他軍より優先されて装備近代化を続けていく。英海軍艦艇では水上艦から戦略ミサイル潜水艦まで押しなべてコスト超過と遅延に苦しんでいるが、日本の艦艇建造基盤は世界のトップクラスのままだ。
1970年代以降の英国産業力の減退で造船業も自国建造から海外発注が主流となり、艦艇建造も例外ではない。このため巨額の防衛予算を投じても非効率さを食い止められず、海軍国としての地位が守れなくなった。往時は世界最強の海軍国だった英国が艦艇の維持に苦労し、改修事業も次々に中止となり、有事に対応したくても満足な戦力を展開できなくなっているのが現状だ。■
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Japanese Navy vs. British Royal Navy: Contrasting Capabilities of Rising and Declining Naval Powers
June-16th-2021
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