Business Insider記事からのご紹介です。
インド太平洋地区での影響力をめぐり米中両国が綱引きしている
注目を集めるインドネシアは一方の陣営に組みすることに抵抗を示してきた
だが中国への懸念が高まる中でインドネシアは軍備増強に乗り出した
インド太平洋で緊張が高まりを続けており、中国の経済成長と軍事力近代化に域内のみならず世界各国が懸念を強めている。
米中両国が域内で影響力を強めようと競合する中、両国から注目を集める国がある。歴史を通じ外交関係で一定の距離を保ってきたインドネシアだ。
人口270百万人のインドネシアは世界第四位、アジアでも三番目の大国だ。17千を超える島しょ国家で太平洋とインド洋を結ぶ位置にあり、重要なマラッカ海峡を抑える位置にある。
「これからの地政学でインドネシアの戦略的位置は重要性を強めていく」というのが戦略国際研究センターのアジア日本部門上級研究員マイケル・グリーンの見解だ。
中国、域内、さらに世界にとってインドネシアの重要性はどれだけ強調しても足りない。同国は大部分の問題で中立を維持しつつ、大幅な軍事力強化を目指している。
非同盟主義の伝統
インドネシアは超大国の一方の陣営にくみすることを避けてきた。オランダ植民地だったが1949年にスカルノ大統領の下で独立を勝ち取って以来、反帝国主義を貫いてきた。
インドネシアは非同盟運動を冷戦時に提唱し、1955年に第一回世界会議を主催した。1960年代に入り中国や共産主義ブロックへの傾斜を強めた。
これに対し米国西欧の支援を受けた軍部が1965年にインドネシア共産党員を粛正し、左翼陣営や少数派を活動停止させた。
この中で50万人から3百万人が1965年から1966年にかけ殺害されたといわれ、共産主義は今日も禁止されたままだ。ただし、インドネシアは西側に完全に組したわけではない。
グリーンは「インドネシアの対米関係の歴史は複雑で振り子のように行き来している」と表現。
インドネシアの西側との関係は20世紀後半に気まずくなった。オーストラリアがインドネシアの人権実績を非難し、米豪両国が東チモール独立運動を支援したためだ。
2000年代に入ると米軍の中東介入をインドネシアは否定的にとらえた。同国は世界最大のイスラム教徒を抱える国家である。
その後の関係修復の背景に安全保障面の協力の強化、特に対テロ作戦とのからみで続いたこと、2004年の地震と津波で130千人が犠牲となり米国が救援したことがある。
軍事力整備
インドネシア軍は大規模かつ比較的強力なことで知られる。
国内でイスラム教徒のテロリスト集団の抑え込みに成功しているのは西側にとって安堵すべき実績だが、より通常の形の敵への対応力整備を続けている。
今年初めに出てきた草案では2040年代中ごろまでに1千億ドルを防衛装備品に支出するとあり、インドネシアが中国の台頭を懸念している証拠だ。
中国とインドネシアには公式には領土問題はないとされるが、中国が周辺水域で活動を強めていることへ懸念が高まっており、特に南シナ海南部のナトゥナ海Natuna Seaが焦点だ。
インドネシアはFREMM型フリゲート艦6隻を発注しており、米海軍が導入を目指すコンステレーション級に近い。さらにイタリアのマエストラーレ級フリゲート艦二隻も調達する。
また新型双胴船形式の警備艇の評価も実施中で、戦車の砲塔を搭載しており「タンクボート」の名称をつけている。
潜水艦一隻の喪失事故が最近あったが、海軍は潜水艦を現行12隻から36隻に増やそうとしており、南朝鮮、フランス、ロシア、トルコの各国企業が提案を出しており、日本もここに加わりそうだ。
空軍力整備でも大きな計画がある。まずF-15EXの8機調達があり、ラファール36機をフランスからさらに、ユーロファイター15機の調達をもくろむ。南朝鮮とはKF-21戦闘機開発を共同で行い、48機調達の構想がある。
陸軍の装甲車両では新型中型戦車をトルコ支援の下で進めており、103両残るレパード2戦車と交代させる。チェコのパンダーII装甲兵員輸送車や国産のコモド装甲車両の代替車両にもなる。
最悪の事態に備える
装備品調達に加えインドネシアは各国協力も強化しようとしている。
3月には日本と協定を結び、日本製防衛装備品や技術のインドネシア移転が可能となり、日本との共同訓練実施にも道が開いた。
6月には米国との共同発表でインドネシア沿岸警備隊がバタム島に訓練施設を新設することになった。同島はマラッカ海峡、シンガポール海峡にともに近い位置にある。
一方で中国との緊密な関係も維持している。
中国海軍はジャワ海で沈没したインドネシア潜水艦の回収をする。一部には中国海軍には軍事面でねらいもあるといわれる。中国は同時にCOVID-19ワクチン数千万トンをインドネシアに送っている。インドネシアで感染と死亡例が増えている。
域内各国は中国が影響力を強め西側に対抗する動きを多様な視点でみつめている。ラオスやカンボジアは中国に傾いているが、インドなど中国との対立姿勢を強めている。
その中でインドネシアは最悪の事態に備え国内状況を注視している。
グリーンは「現時点のインドネシアはいささか身体麻痺の巨人といったところだ」とし、「どちらの陣営に組することなく、現政権は国内重視の姿勢のままだ」とする。
とはいえ、中国が南シナ海で強硬な行動を示す中で、インドネシアはこれまで以上に中国の脅威を意識しており、米国はじめ同盟側が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の価値を実感している。グリーンは米中競合関係が今後強まる中でインドネシアの重要性が強まると見ている。
「インドネシアの地政学上の意味に見合った関心を集めていない。最重要地域で弱点となりかねない」(グリーン)■
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The US and China Both Competing for Influence With Indonesia
The US and China both have their eyes on a country at the heart of the Indo-Pacific
Benjamin Brimelow Jul 30, 2021, 9:21 PM
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