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民間船舶襲撃の応酬を繰り返すイスラエル、イランは秘密戦争状態。死亡者が初めて発生した今回襲撃受けたタンカーは日本企業の所有。中東情勢に日本も関心を。

 

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JOHAN VICTOR VIA AP

The M/T Mercer Street off Cape Town, South Africa, in 2016.

 

 

スラエル運行の石油タンカーがオマーン湾内で無人機から攻撃を受け乗組員2名が死亡した。M/TマーサーストリートMercer Street 船上で何があったのか不明だが、英国、ルーマニア国籍の二名が死亡したことでこれまでの商船攻撃がエスカレーションしているのを明白に示す事例になった。襲撃はイランあるいはイランの域内代理勢力によるものとの疑いがあり、イスラエルとイラン間の秘密戦の一環のようだ。

 

オンライン海上交通データを見ると、M/Tマーサーストリートはタンザニアのダルエスサラームを7月21日出港し、アラブ首長国連邦フジャイラに向け航行中の7月29日、オマーンのドゥクムから152カイリ地点で世界標準時午後6時ごろ攻撃を受けた。

 

 

排水量28,400トンの同船はリベリア船籍で日本企業が所有する石油タンカーで、実際の運用はゾディアックマリタイムZodiac Maritime(ロンドン本社)が行い、同社はイスラエル国籍の不動産海運富豪エイヤル・オフェールがオーナーだ。ジェルサレムポスト紙によれば襲撃時の同船は原油は搭載せずその他貨物を運んでいた。

 

ゾディアックマリタイムは当初「海賊の襲撃」と発表していたが、その後撤回している。英国海上貿易運用機関(UKMTO)は同地域で海上保安体制を監視しており、海賊による襲撃ではないと明確に述べていた。

 

事件の詳細は未確認のままだが、AP通信によれば匿名で米政府関係者が襲撃に無人機複数がかかわり、うち一機は「使い切り」無人機と述べている。同関係者は襲撃実行犯は現時点では不明とした。

 

これと別に海洋情報提供企業Dryad Globalから所属不明の飛行体が同タンカー周囲で火炎放射しUKMTOが告知を出したと述べている。その後同船で爆発が発生したとDryad Globalは伝えているが詳細に触れていない。

 

死亡した二名のうち、英国籍の犠牲者はAmbrey Ltd.社の保安要員で、同社は「完全な情報を基とする海上保安サービス」の提供企業としている。ルーマニア国籍の犠牲者は同船の船員だった。

 

UKMTOは調査が進行中だが域内の捜索救難機関ならびに連合国部隊が救援に向かっていると発表した。他方、ゾディアックマリタイム社は同船が「乗員が無事操船し14ノット未満で米海軍の護衛下で安全地帯に航行中」と発表した。

 

ゾディアックマリタイムではマーサーストリート以外に今月に入り船舶への襲撃が発生している。CSAVティンドール船上で火災事故がインド洋北方で7月3日に発生し、イスラエルあるいはイランが「正体不明の武器」で襲撃したと非難していた。4月にはイスラエル船籍貨物船ハイペリオンレイがやはり無人機によると思われる襲撃を受けている。その一カ月前には別のイスラエル船籍コンテナー船ローリがオマーン湾でミサイル攻撃を受けた。いずれもイランあるいは代理勢力が実行犯だとされた。

 

2月にはイスラエルがハイペリオンレイの姉妹船ヘリオスレイへの襲撃でイランを非難した。同船も同じ海域を航行中であったが、イランは逆にイスラエルが国旗を虚偽に掲げていたと非難した。

 

イランは2019年に外国籍タンカー複数への襲撃事件の首謀者とされ、潜水戦闘員あるいは小舟艇による襲撃だとされた。今回の報道で無人機が投入されたとあるが、マーサーストリート以外にも使用されたかは確認が取れていない。イランはこうした攻撃が可能な無人機数型式を保有しており、中東の代理勢力に技術を移転している。また、小舟艇から無人機を運用する技術を公開したこともある。

 

イランの三角翼無人機シャヘド-136が2019年にサウジアラビア石油施設襲撃に使われており、今回のマーサーストリート襲撃にも投入された可能性がある。ただし、これも未確認情報だ。いずれにせよ、マーサーストリート襲撃事件はイランの実行といわれ、イスラエル関連の海上輸送への襲撃がオマーン湾周辺で増えているここ数カ月の動きに呼応している。イスラエル船舶以外に、イラン船舶も攻撃を受けており、海上が舞台の報復合戦が進行中だとわかる。

 

目立つ事例としてはイランのM/Vサヴィズが4月に紅海で標的にされた。同船はイラン革命防衛隊がイエメンのフーシ反乱勢力支援のため使っていたといわれる。

 

こうした事例でイラン-イスラエル両国の緊張が高まっており、そこにイラン核開発合意問題が絡む。バイデン政権はトランプ大統領の同合意脱退を覆し、復帰をめざしているが、イスラエルは一貫して合意に反対姿勢でイラク、シリアで核施設の疑いのある地点へ先制攻撃を実行している。イランは4月のナタンツ核施設攻撃でもイスラエルを非難した。この際の攻撃の詳細も不明だが、一部報道ではサイバー攻撃、別報道では爆発物による襲撃だったとある。

 

こうしたオマーン湾周辺でのイスラエル、イラン所属船舶への襲撃事件多数の正確な詳細は不明な点が多く、両国対立を悪化させかねない。ただし、今回のマーサーストリート襲撃事件で死亡者が発生したことでエスカレーションが明白かつ深刻になことが明らかになり、双方がさらに強硬に反応してもおかしくない。今のところイスラエル、イラン双方から正式発言は出ていないが、今回の事案については今後の進展に応じ追加でお知らせしていきたい。■

 

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Fatal Attack On Tanker Off Oman Blamed On Suicide Drone: Report

BY THOMAS NEWDICK JULY 30, 2021

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