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未確認宇宙現象(UAP)の正体を探ろうとする民間科学者の動き。ペンタゴンの抱える機密データに頼らず、解明をめざす。もはや国家安全保障の問題という認識も。

 

 ターミナル1、ターミナル2共通記事です。


Oumuamua interstellar object

初めて見つかった星間物体オウムアムアの図。発見は2017年10月19日のことだった。

Credit: M. Kornmesser/ESO

 

400年も前にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが一冊の本を著し、太陽系について別の見方を提示し、地球が中心ではなく太陽の周りを地球が回っていると主張した。

 

著書「天文対話」は物議を醸しだし、以後190年間出版禁止扱いとなった。懐疑派は天体望遠鏡を覗くことさえ拒否し、ガリレオの主張の裏付けとなる木星の月、土星の輪の観察を避けた。ガリレオは残りの人生を囚われたまま過ごした。

 

そのガリレオの名を使い、地球外生命による人工物を探知しようという科学者の一派がある。

 

ガリレオプロジェクトは未確認宇宙現象(UAP)の公開データベース整備をめざす。「目標は現在理解されている物理学に基づいて透明度の高い分析を行うこと」とハーヴァード大宇宙物理学者エイヴィ・ローブが記者会見で7月26日に語った。

 

「科学界にはシステム的科学的かつ透明性ある形で地球外技術の証拠を追い求める必要がある」「地球外技術が発見された場合の科学、技術、さらに世界全体への影響はとてつもなく大きくなるだろう」

 

民間資金で発足したガリレオ・プロジェクトと並行し、ペンタゴンは6月25日の報道発表で軍と情報機関によるUAP目撃事例144件の一次調査結果を議会に伝えたとした。目撃事例の大部分は物理的な存在とし、光学あるいは大気状況による錯視ではない。ただし、詳細情報につながる精度が足りない。「最も保守的な組織である政府がこれを公表したこと自体が異例で、頭上の空に人知では理解できない物体があると述べた」(ローブ)

 

「国家安全保障にかかわる問題だ」とローブは評した。だが目撃例は「軍人や政治家が解釈できるものではない。観察訓練を受けておらず、そもそも科学者ではないからだ。科学界が解明するべきで、天文学者が物体の本質を解明するように進めるべきだ」

 

ペンタゴンのUAPタスクフォースの結論は説明がつかない目撃談多数は米国の極秘技術と無関係ながら、軍のパイロット他信頼のおける人員がこうした事例を目撃していることだ。「そこに大きな意味がある」と語るのはルイス・エリゾンドで、2007年に発足した米政府のUAP調査をねらった高度航空宇宙脅威識別事業の責任者だった。

 

「30年にわたり、超特別な技術へ注意を払ってこなかった。だが、この考え方は終わった」とエリゾンドはワシントンポスト取材にこう述べている。

 

「我々の技術から50年から1,000年先の技術が対象だ。こうした技術なら我々の現有装備より高い性能を発揮できる。要するにいったい何を対象にしているのかわからなくなる。オプションはすべて示すべきだ」

 

ガリレオプロジェクトは研究分野を3つ想定する。UAPの高解像度画像を同時に多数の装置で撮影すること。次に星間物質の探査で、2017年に見つかった葉巻状の星間移動体オウムアムア(ハワイ語で偵察者)の例がある。さらに地球周回中の地球外生命による衛星の存在を確認することだ。

 

「UAPの多くで説明がつくようになればよい。蜃気楼や電磁効果あるいは地学上の現象かもしれない」とプロジェクトの共同創設者フランク・ローキン(バッカーグループ社長兼CEO、科学器具メーカー、本社マサチューセッツ)が述べている。「あくまでも不可知論でとらえ、データは公開する」

 

ガリレオプロジェクトはこれまでの目撃例の評価はしない。「こうした事案は交差検証、証拠に基づく科学的説明につながらないためだ」とローキンは述べた。「霧を取り除き科学的解析をデータを積み重ねて進める。政府所有のセンサーで得たデータは使わない。大部分が機密扱いのためだ」

 

プロジェクトはこれまで1.81百万ドルを集めており、天文望遠鏡のデータを活用する。同グループではオウムアムアのような物体を近い地点から観察すべく宇宙機打ち上げも企画している。■

 

Scientists Launch Privately Funded Hunt For Unidentified Space Objects

Irene Klotz August 05, 2021

https://aviationweek.com/defense-space/space/scientists-launch-privately-funded-hunt-unidentified-space-objects

 

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