米陸軍はブラッドレイの残存性を高める改良を進めている。
M2ブラッドレイ歩兵戦闘車両は歩兵部隊隊員を戦場に輸送するのが任務だが、報道陣は戦車と誤解することが多い。軌道走行式で33トンの車重と装甲を施し、25mmブッシュマスター自動機関砲とTOW対戦車ミサイル発射機で武装しているため無理もないところか。
ただし、M2への批判派は火力性能が不足と見ている。機械化歩兵分隊は地形を縫い敵位置を偵察し、あるいは敵を待ち伏せし、防衛線を守る、あるいは敵を建物内から追い出すのが役目だ。
ただし、M2の歩兵輸送能力に制約がある。初期型では7名しか搭載できず、やっと9名を運べるよう改良されたにすぎない。となると機械化歩兵小隊の輸送にブラッドレイ4両必要となり、全員が一両に乗ることはできない。
M2およびM3ブラッドレイは1,800両近く供用中で米陸軍では二段階で性能改修を行い、ちょうど半分まで来ている。2018年1月にさらに上の性能を狙うM2A5改修の企画が生まれ、搭載兵員数を増やすべく車体の拡大と装甲を強化し、30mm機関砲の搭載を狙う。
陸軍の大型かつ強力な歩兵輸送車ブラッドレイはさらに大型化しそうだ。
M2A4 性能改修型
米陸軍ではブラッドレイが活躍する場面はM1エイブラムズ主力戦車より多い。イラク砂漠戦となった1990-1991年の湾岸戦争でブラッドレイはエイブラムズ以上の敵装甲車両を葬った。
敵の犠牲となったブラッドレイはわずか3両で、友軍の誤射で破壊されたほうが多い。だが、その後、長期化したイラクでの対戦闘員作戦中にブラッドレイ数十両の喪失が発生した。装甲防御で改良を受けていたにもかかわらずだ。そもそもブラッドレイでは地雷や即席爆発物(IED)への防御は優先度が低く、これより装甲が薄いストライカー装甲車両より被害事例が多くなっていた。
装甲改良とあわせセンサー機能の充実を図ったものの本格的な解決策にならなず、追加重量がエンジン負担につながり、電気系統に不足が生まれ、機動性が犠牲となってしまった。2012年からM2A4仕様への改良が始まり、現在も「技術改良提言」(ECP)を二段階で進めている。
このうちECP1がほぼ完了しており、ブラッドレイは設計時の車両性能を回復すべく、大型トーションバーと軌道改修を行い、サスペンションとショックアブソーバーを取り換えた。これにより車両の摩耗が減り、信頼性が高まり、地上クリアランスが増えIED爆発時の残存性が高まった。
ECP第二段階では電気系統の強化、パワートレインに従来より高出力の電気系統に対応した新型電力管理ソフトウェアを導入する。2018年開始予定だったが、ソフトウェアのバグつぶしと信頼性問題で開始が遅れた。ただし、改修後のブラッドレイは平均281マイルでの故障と想定した400マイルに満たない状態で、電力系の故障とトランスミッションオイル冷却が原因となっている。にもかかわらずECP2の実施は間もなく本格開始される。
ブラッドレイ改修でM3騎兵戦闘車両に近くなる。M3は装甲偵察任務に投入されている。M2A4仕様へ改修が終わった車両は従来より高い性能を発揮し、さらに上を狙うM2A5仕様への改修に近づく。
M2A5で車体大型化、砲塔が実現
M2A5では第三世代の前方監視赤外線(FLIR)センサー、レーザー照準器、カラー外部監視カメラで敵を長距離で捕捉することが可能となる。なお、エイブラムズ主力戦車の装備品と同時に改修を行う。
また、ブラッドレイの砲塔、車体がともに大きく変わる予想図が出ており、開発には4-5年かかるとするとの予測がツイッター上に出た。米陸軍は新型車両の開発及び部品調達に6億ドルを計上しているが、さらに増加するとみられる。ペンタゴンが砲塔と車体ともに対象とするかあるいは片方だけを選択するかは不明だ。
車体はストレッチして追加装甲の搭載、新型トランスミッション、さらに搭載人員を8名に追加する。車重は40トンへと一気に20パーセント増になる。改良で車内の隊員には従来の二倍から5倍の装甲防御が実現するという。
防御面の改良ではアクティブ防御装備(APS)があり、飛来するミサイルやロケット推進手りゅう弾に対抗する。エイブラムズ戦車ではトロフィーAPSが導入されているが、ブラッドレイではイスラエル製アイアンフィストをテスト中だ。
砲塔関連では25mm機関砲にかわり30mmのXM813ブッシュマスターII自動機関砲が搭載される。同装備はストライカー装輪歩兵輸送車両にも導入されている。一見、大幅改良に見えないが、30mm弾は25mm弾の二倍の大きさがあり、炸裂効果、装甲貫通効果がともに大きくなる。
射程が2マイル近くとなり、装甲貫通能力も30パーセント増えるとの観測がある。ブラッドレイは敵IFVの撃破で実力を発揮するはずで、シリア、イラク、ウクライナなどで存在感を増しているIFVによりよく対応できるようになる。さらに新型砲は空中炸裂へプログラム可能で遮蔽物背後に潜む敵部隊やヘリコプターにも有効に使える。ただし銃弾が大きくなるため、従来の300発搭載が180発に減る。とはいえ、ブッシュマスターIIでも毎分200発発射のまま、精度があがり、火力が増すため、同じ効果を得るため発射弾数は少なくてすむとする。
新型砲塔では車長、砲手双方の視野が広がり、イーサネットにより両名の動きが連携でき、レーザー照準器、航法装置の性能がともに上がる効果も期待できる。その他、「5.56mm制圧兵器」の遠隔制御機関銃が敵地上部隊から車両を防御するとの予想がある。
当然ながら車体拡大と砲塔の改良でブラッドレイに悪影響も出る。車重が増え操縦性が低下し、価格上昇で世界各地への展開も困難となる。とはいえ、陸軍としてはブラッドレイの残存性を高めるべくロケット推進手りゅう弾やIEDの脅威に悩まされたイラク、アフガニスタン戦訓を念頭に、同時に新型誘導対戦車ミサイルやIFVへの対抗も進めたいとしており、今後の超大国相手の戦闘も視野に入れている。より軽量な車輪走行式のストライカーAPCも新型砲・ミサイルが導入しつつあるが、ブラッドレイでは残存性を確保しつつ攻撃力を最も過酷な戦闘環境でも確保し、戦場に真っ先に投入するとしている。■
Could a Bradley Fighting Vehicle Take out a Tank?
August 27, 2021 Topic: Bradley Vehicle Region: Americas Blog Brand: The Reboot Tags: BradleyIFVInfantry Fighting VehicleTankArmorMilitaryTechnologyU.S. Army
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
This article first appeared in February 2018.
Image: Wikimedia Commons.
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