スキップしてメイン コンテンツに移動

米軍アフガニスタン撤収の混乱ぶりを見て、北朝鮮が南への工作強化を画策している。朝鮮半島からの米軍撤収が実現すれば北の思うつぼなのに、南朝鮮国民が感情に身を任せているのは工作活動の効果か。

 国はアフガニスタン撤収で拙速かつ十分な計画なしで展開するさまを世界に見せつけてしまった。同盟各国には今後の米国との関係に危惧を覚える動きも出ている。大韓民国(南朝鮮)も例外ではない。同国メディアは連日のように同盟関係を懐疑的にとらえており、北朝鮮への妥協こそ半島統一の道を信じる政治家とて変わりはない。


ピョンヤンの金正恩の視点はどうか。米韓同盟分断戦略が効を奏してきた。今回のアフガニスタン撤収は南朝鮮を対米同盟に懐疑的にさせる、あるいは妨害させる絶好の機会だ。米韓両国が半島の平和を維持すべく平和交渉で北朝鮮が新条件を飲む可能性は大きく減じている。


金正恩は朝鮮労働党(KWP)の政治局、中央軍事委員会を招集し状況を分析し、朝鮮半島への影響を検討しているはずだ。さらに党の宣伝工作部(PAD)、統一戦線部(UFD)、人民軍 (KPA)、政治総局(GPB)他を動員し、南朝鮮が韓米同盟に懐疑的になっている状況をどう利用するか作戦立案しているはずだ。


北朝鮮の宣伝工作、政治工作、情報操作、情報かく乱、特定対象工作の第一線を担うのがKWPのPADである。PADは情報工作多数を担当し、情報操作を行い、南朝鮮の世論工作も行う。特に南朝鮮一般社会を標的とする。この工作を統括するのがPAD海外宣伝局である。PADの下部祖域では防諜宣伝工作を展開し、北朝鮮国民を対象とする。国家保安省(MSS)がこうした国内工作を支援する。


UFDはサイバー部門を擁し、偽情報を南朝鮮国民に流し社会政治面の混乱を巻き起こしている。対象は南朝鮮国民以外に同国政府、政界にまで及ぶ。サイバー部門は南への心理戦も展開し、19か国のサーバーから140に及ぶウェブサイトを運営している。ウェブサイトの目的はサイバー戦で「南朝鮮国内の革命」を巻き起こし米軍撤収を実現させることにある。PADとも連携し南朝鮮を標的とするのは第101連絡センター、第26連絡センターの二部局だ。


第101連絡センターはピョンヤン中区のピョンヤン医大の正面にあり、情報操作を担当する。別の言い方をすれば偽情報であり、金日成、金正日、金正恩の三大最高指導者を扱う。第101連絡センターには南朝鮮の社会文化に通暁した専門家30名が在籍する。小説、詩歌を出版し、北朝鮮最高指導部の栄光を賛美し、KPA偵察総局(RGB)の第225情報部隊に配布させている。


第26連絡センターは最高指導者を賛美する映像作品を作り、最高指導者こそ半島統一の中心であると強調する。第26センターの作品は特に南朝鮮の大学生向けに反政府活動を支える意図がある。また救国の声放送が南朝鮮一般市民を対象としている。こうした手段を行使して米国へ疑惑を生じさせるのは実に簡単なことだ。第26センターは第225センターと共同で工作を進めることもある。第225は金日成大学の隣に本拠がある。


PADはRGBと共同で南朝鮮国内に反政府、反米の宣伝工作を浸透させている。RGBの第225情報隊は北朝鮮最精鋭の侵入部隊で南朝鮮のみならず他の国も狙う。各連絡センターと連携し、第101及び第26の成果物を南朝鮮に持ち込んでいる。米韓同盟にひびを入れるのが第225の潜入工作員の目的だ。


GPBはKPA内でのあらゆる政治活動を担当する。それだけでなく敵国工作部別名563部隊も統括する。KWPのUFDが平時には563部隊を指揮し、秘密工作活動を南朝鮮軍隊員向けに展開するほか、拉致工作、DMZ沿いでの宣伝放送、印刷物の配布を行っている。有事にはKPAの占領地国民が対象の工作でKPAへの支持者を掘り起こす。563部隊は危機が発生するたびに肥大する。


そして最も重要なのが金正恩がKPA参謀本部の作戦立案部門へ各活動を軍事作戦と統合し、南朝鮮の同盟関係への疑念を増大させるよう命じたことだ。こうした工作ですでに春夏の韓米図上演習へ反対機運が南朝鮮で拡大している。


米国のアフガニスタン撤収の混乱ぶりを見て、こうした動きに拍車がかかっている。中国が米国の台湾支援を妨害すべく台湾国民の対米信頼度を低下させる工作をしているが、北朝鮮も中国共産党、人民解放軍をまねた作戦を展開するのは疑う余地がない。


米韓同盟の弱体化を狙う金正恩体制は今後も戦術を展開し続け、アフガニスタン撤収で米国が見せる不手際を逐一注視していくはずだ。もっと重要なのはこの機会を利用して金正恩のほうが米大統領より指導者としての資質が上だとの宣伝工作が今後展開することだ。■


このような邪悪な組織を活用する北朝鮮の活動を看過できません。地上から消えてほしい政体の一つが北朝鮮です。反日活動も北朝鮮の息がかかっていないとは断言できないでしょう。防波堤としての韓国の意義が減じ、台湾の安全も危うくなっている今、日本がこのまま安閑としていられないのは事実です。

US Withdrawal from Afghanistan: The View From Pyongyang

Mon, 08/23/2021 - 11:42am

Robert Collins


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...