2021年12月12日日曜日

米海軍のスーパー駆逐艦ズムワルトが艦体に錆を走らせたまま、第一線配備が進んでいない状態についてSNSで関心が広まっている。

 

@CRJ1321 VIA @WARSHIPCAM

 


海軍に三隻しかないDDG-1000級駆逐艦の一号艦USSズムワルトは南カリフォーニア沖合で試験評価と訓練を続けているが、5年前に就役したものの、サンディエゴ湾を定期的に出入りする状況が続いている。二号艦USSマイケル・マンソー(DDG-1001)もサンディエゴに到着し、艤装工事と公試に入った。だがズムワルトの外観がここにきて輝きを失っている。レーダー波吸収タイルの一部が脱色しており、艦体に錆が見られる。

 

 

@CRJ1321撮影の写真がツイッター@Warshipcamに掲載されているが、同艦は通常のきれいな状態と異なる外観だ。


 

米海軍自慢のスーパー駆逐艦に錆が広がっていることにソーシャルメディアの関心が広がりを見せている。

 

長期間展開する艦艇を高ピッチで運用した場合は、整備の整った基地に停泊されたままの状態と異なり、艦の状態が悪くなることはよくある。「錆の広がり」は議論を呼ぶが、艦が動く限りは大きな問題ではないとの意見もある一方、海軍内に大きな問題がある証拠で憂慮のタネだとの意見もある。

 

同艦の外観での言い訳として、そもそも同艦乗組員が最小規模で設計されており、DDG-1000級はアーレイ・バーク級よりはるかに大きいものの、乗組員数は半分程度の175名で、しかもこれは実戦投入時の定員だ。

 

自動化の採用で省人化を進めているとは言え、肉体労働は必要であり、DDG-1000の清掃対象が広い。ズムワルト級乗員は低視認性塗料の維持もこなす必要があり、艦体には従来艦より曲面が多く錆発生への対応が大変だ。このため、ズムワルト、マイケル・マンソーの艦橋は複合材とし錆の発生を少なくしている。ただし姉妹艦USSリンドン・B・ジョンソン(DDG-1002)の艦橋は鋼鉄製に変更されている。

 

ズムワルトがいつ第一線配備になるか不明だが、現時点で初期作戦能力は獲得済みのはずだ。米会計検査院(GAO)は主要米軍装備品事業について最新の報告書で同級について以下述べている。

2020年9月時点で海軍は169百万ドルの予算要求でDDG 1000級の少なくとも一隻に新装備4種類の搭載を想定している。さらに追加予算を要求し、残る各艦への装備搭載を進めるとしている。海軍は各装備品は艦艇搭載に向け成熟化済みと主張するものの、搭載の完了は2021年12月の初期作戦能力獲得から数年先となる。このためDDG 1000級各艦は少なくとも2025年までは想定した作戦能力を下回る状態のままとなる

 

ズムワルトの近況について海軍に照会している。同艦は巨額の予算を投じ物議を醸しだしたものの、このような状況に置かれているのは不幸とした言いようがない。外観のみじめさのため、同艦が初めて出動した際の成果予想に陰りを落としてる。

 

海軍省は以下返答してきた。

USSズムワルト(DDG 1000)は高度消磁テストを終え12月9日母港に入港した。水上艦部隊には常に錆との戦いがある。運用環境の厳しさのため乗員は懸命に錆対策を整備中に行い、艦艇の戦力維持のため乗員訓練が必要だ。

The Navy's $9B Stealthy Super Destroyer Is Covered In Rust


 

The controversial futuristic warship looked less than gleaming as it pulled into San Diego Bay recently.

BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 10, 2021

2021年12月11日土曜日

米中が空中給油機開発を懸命に進めている。中国はY-20改装、米国は無人機MQ-25とアプローチが全く異なるのが興味深い。

 


MQ-25スティングレイがF/A-18スーパーホーネットへの空中給油に成功した Courtesy photo/Boeing

 

  • 米中両国で新型空中給油機開発に大きな進展

  • 輸送機、無人機と形態は異なるが、空中給油機として僚機の運用距離を延ばす効果を期待


中両国で新型空中給油機開発が進んでいる。両国軍それぞれで長距離作戦運用を重視する動きを反映したもので、広大な太平洋を考えると当然といえる。


Y-20


11月28日にY-20空中給油機1機がその他軍用機26機とともに台湾防空識別圏に進入した。中国機の大量侵入は日常茶飯事となっているが、11月28日はY-20戦略輸送機の空中給油型が初めて加わり注目された。


China Y-20 aerial refueling aircraft

Y-20空中給油型の写真を台湾国防部が公表した. Taiwan Ministry of Defense



Y-20タンカーはJ-20など戦闘機やH-6爆撃機への空中給油が可能で、H-6は11月28日にも5機が加わっていた。


中国の空中給油機は現在30機ほどあり、旧ソ連製Il-78やH-6爆撃機を改装したHU-6がある。中国国営通信によればY-20タンカーは燃料90トンを搭載し、Il-78に近いが、HU-6を上回る。


タンカーの「大きな意義」は「H-6K爆撃機の作戦行動半径を延ばすことにあり、米艦艇や台湾東海岸も脅威を受けることにあるとRANDコーポレーションのティモシー・ヒースTimothy Heath主任研究員が評している。


中国軍に関する最新レポートをまとめた米国防総省はY-20給油機の登場で中国の航空戦力は「第一列島線外でも運用可能となる」としている。


Y-20タンカーは完成した機体ではなく、ソ連製エンジンに代わり中国製エンジンに換装し、性能向上が期待される。


中国は空中給油の経験を増やす中で、Y-20タンカーについて「PLAは時間をかけて新機材の運用の経験を積むだろう」とヒースは見ている。


MQ-25


数日後に米海軍から最新鋭無人空中給油機MQ-25スティングレイが空母USSジョージ・H・W・ブッシュ艦上で初の「空母艦上運用テスト」を開始したとの発表が出た。


米海軍は2018年8月にボーイングへMQ-25契約800百万ドルを交付し、同機は一年後に初飛行した。


2021年6月に海軍のF/A-18スーパーホーネットへ無人機による初の空中給油を行った。


飛行を伴わない空母艦上テストでMQ-25は「飛行甲板上を移動させ、取り回し特性を検分する」「カタパルトへの移動、固定、着艦地帯他各種の動きをまず見る」(同上報道官)


海軍はMQ-25を72機調達する。搭載燃料は15千ポンドで二機分の給油に相当し、空母から500カイリ地点へ進出すれば、スーパーホーネットの運用半径が300カイリほど伸びる。


MQ-25は米海軍空母航空団の飛行距離を拡大する効果を生むべく、今は空中給油に軸足を置いている。海軍上層部には同機で別のミッションも実行させる期待もある。情報収集や空爆任務だ。


海軍はMQ-25の第一線運用を2025年ごろには開始したいとしており、同機は陸上及び艦上で各種テストを受ける予定で今後は空母発着艦も行われる。同機の投入で空母航空戦力の飛行距離が延びるのは事実だが、中国には対艦弾道ミサイル等の攻撃手段があり、中国沿岸には接近が難しくなっている。この点をハドソン研究所レポートが指摘している。


同レポートではMQ-25調達が72機では空母から遠く離れて運用するその他機材への支援として不十分との指摘も見られる。


数が限られてもF/A-18部隊に安堵感が生まれる。同機にはタンカー任務も兼用する運用があり、タンカー用途に当たるパイロット・機体は給油任務に不適だと指摘するのは元スーパーホーネットパイロットのケヴィン・クランKevin Chlan(戦略予算評価センター主任研究員)だ。


「無人機運用が始まれば戦闘機による空中給油が不要となり、負担感が大きく減る効果が生まれる」(クラン)■


US, China Developing New Aerial Refueling Tankers to Extend Range

Christopher Woody 23 hours ago


2021年12月10日金曜日

もがみ級FFM四号艦「みくま」が進水!

 

もがみ級フリゲート艦みくまの進水式。JMSDF picture.



菱重工業で海上自衛隊向けFFMもがみ級フリゲート艦四号艦「みくま」が12月10日進水した。同級は海上自衛隊が調達を進める次世代フリゲート艦でFFMと呼ばれる。


一号艦もがみは2021年3月に三菱重工が進水させており、三井E&Sが岡山で二号艦くまのを2020年11月に先に進水させていた。三号艦のしろは三菱重工で2021年6月進水した。


同艦は大分県の三隈川にちなみ命名され、同級各艦は国内河川の名をつけている。同艦は同造船所で艤装工事に入り、2022年末から2023年初頭の引き渡しを予定する。


同級はFFM(30FFM)との名称で多任務フリゲート艦として海上自衛隊向けに建造される。計22隻が就航する予定だ。


各艦は三菱重工長崎造船所と三井E&Sのある岡山で建造される。


もがみ級FFMの諸元


「みくま」の進水式JMSDF picture.



FFM多任務フリゲート艦は満排水量5,500トン、全長132.5メートル、全幅16.3メートルで最高速度は30ノット超、乗組員は90名と極めて少ない。これは高度の自動化を採用したことで実現した。


FFMは以下の各種武装装備品を搭載する。

  • BAEシステムズ製Mk.45 mod.4 5-インチ砲 ×1

  • 日本製鋼所製J12.7mm遠隔操作兵器システム ×2

  • Mk.41 VLS

  • レイセオン製SeaRAM ×1

  • MHI 製 17式対艦ミサイル ×8

  • 三菱電機製OPY-2 多機能レーダー

  • 三菱電機製OAX-3EO/IR センサー

  • 日立製OQQ-11 機雷ソナー

  • NEC製OQQ-25対潜ソナー(VDS/TASS)

  • UUV (MHI製OZZ-5) ・USV (型式不明) を掃海任務に

  • 機雷敷設も可能


Mk.41VLS搭載の予算化について


当初、もがみ級FFMにはMk.41VLSの搭載は想定しながら調達していなかった。だが令和3年度補正予算によりFFM2隻分のVLS調達のめどがたった。VLSは16セルで、74百万ドルを調達にあてる。令和4年度予算ではFFM9番艦、10番艦用にVLS調達予算を要求している。このため補正予算で調達するVLSは1号艦から8号艦のいずれかに搭載される。■


Japan’s MHI Launches ‘Mikuma’ 「みくま」Fourth FFM Mogami-class Frigate for JMSDF

Xavier Vavasseur  10 Dec 2021

https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/japans-mhi-launches-mikuma-%e3%80%8c%e3%81%bf%e3%81%8f%e3%81%be%e3%80%8dfourth-ffm-mogami-class-frigate-for-jmsdf/


クアッドは軍事同盟のみの存在ではない。中国の技術覇権に対抗すべく、今や単独では中国の後塵を拝する米国が各国と組んで技術戦略を展開するしくみづくりへ。

 

 

 

 

iStock illustration

 

 

戦布告なき技術戦争が米国と中国の間で始まっており、米国の懸念事項は多い。重要分野で米国側の手詰まり状態がある。

 

 

米国に挑戦する中国は産業諜報活動に長け、数十億ドル相当の知的財産を盗み出している。中国は統制経済と長期展望での技術開発を目指している。予算の遅れや意見の相違に煩わされることはない。また限界がないほどの資金を新技術につぎ込み、軍用化を目指しており、強い経済で優位に立っている。

 

ただし、中国にないものが米国に豊富にある。同盟国、友邦国の多さだ。米軍首脳部はよく米国単独で戦争開始することはないと発言している。

 

今回は軍事研究開発部門でも同じ方法論を採用すべきとの論調で記事をまとめた。同盟各国との共同作業で先端技術を開発委s中国が目標とするインド太平洋での覇権確保を阻止するのである。

 

防衛問題を扱うのが本誌の趣旨だが、中国への対抗を軍事技術のみで捉えるのは近視眼的だ。中国は民生技術、軍民両用技術の数々を開発し、戦場と商業の双方を制するのが目的と明言しており、世界各国の指導層、民間産業が米国を見限り、どの同盟国とたもとを分かつことを狙っている。

 

これまで米中競合関係は分野別に見てきた。海洋技術、人工知能、極超音速技術、戦略鉱物資源などだ。今回は「クアッド」加盟国が軍事研究開発アライアンスに発展する可能性に着眼し、中国の豊かな人的資源に対抗できるか検証する。

 

日米豪印戦略対話の四か国は共通の権益つまり「自由で開かれたインド太平洋という共通ビジョン」のもと結集している。四か国は「クアッドプラス」と呼ぶヴェトナム、ニュージーランド、南朝鮮も加え、9月にワシントンDCで会談した。

 

共同声明で四か国の目指す技術協力の行動予定が示された。クアッドが目指す第一の分野としてCOVID-19ワクチン生産の新規製造拠点をインドに

設ける。次に四各国はクリーンエナジーの実現で協力する。また、半導体含む重要技術や原材料のサプライチェーンを確立する。また重要技術向けで復元力にあふれ、安全なサプライチェーンを確保し、政府による支援策、政策の重要性にかんがみ、透明性と市場重視を貫く、と声明文にある。

 

その他の技術協力の分野として宇宙空間の持続的利用や衛星を介したリモートセンシングを気候変動の監視に応用することがある。

 

また、中国を意識したクアッドは5G通信技術の応用推進を前面に押し出し、中国企業の独占状態を打破する。また四か国はサイバーセキュリティ分野での協力を確認した。

 

クアッドでは「人材確保の戦い」への関与を目指し、理学、工学、数学の理系学卒者100名に研究職を与える。

 

また、さらなる技術協力の枠組みも作った。クアッド原則を技術、設計、開発、ガバナンス、利用に関し制定し、対象各国のみならず世界規模での応用を通じ、責任ある、開かれた、高度のイノベーションを実現すると声明文にある。

 

一方で2021年に中国の研究開発支出が米国を上回る予想がある。中国は2021年に6215億ドルを研究開発に投じ、次世代の経済社会の実現を目指しているが米国は5987億ドルで二位となると調査会社Statistaは見ている。

 

ただし、クアッド加盟国をここに加えると、合計額は中国を上回る。

 

その他インド太平洋諸国の台湾、南朝鮮、カナダ等が中国との競合を強く意識しているため、中国には不利な状況に見える。ただしこの構図は実際には単純でなく、各国とも中国と交易関係があり、中国は各国に投資活動を展開している。米国も例外ではない。

 

また落とし穴になりそうな側面もある。クアッド四か国それぞれに官僚組織や政策があり、国際協力に抵抗する場面が想定される。特に機微情報の共有への反対が出よう。例えば米国は武器国際取引規制を厳しく適用しているため、多国間あるいは合同による事業の支障になりそうだ。

 

四か国はすべて自国経済の構築と自国民の雇用機会創出を目指している。例としてオーストラリアは国内防衛産業を整備することで米国等外国との提携への依存を減らそうとしている。

 

日本は民生技術イノベーションで世界のリーダーの座を1980年代は守っていたが、今は二十年間に及ぶ不況を脱しようと懸命だ。昨今の政策方針の変更で日本は世界的な兵器市場に参入することが可能となった。

 

インドは国境線をめぐり実際に中国と対立する唯一の存在で、軍事技術の向上を目指すものの、冷戦時のロシア製装備の全廃に踏み切っておらず、米国との間でリスク要因になっている。

 

中国にも同盟関係はある。一帯一路政策で開発途上国を巻き込み、重要な天然資源もあわせ自国の影響下に置こうとしている。さらに独占供給状態を作り、他国を中国サプライチェーンに依存させようとしている。

 

クアッド加盟国が知恵を合わせ結果を出せればいい。新型ジェットエンジンが例となる。だが中国が世界のコバルト供給を独占すれば思惑通りに進めなくなる。

 

今回の特別記事の論点はクアッド加盟国でどんな協力分野があるのか、また乗り越えるべき障壁は何かにハイライトをあてる。また米国防産業から残る三国に何が提供できるかも探る。

 

技術戦争の勝者が戦場のみならずこれからの経済も支配することになるだけに大きなリスクが潜んでいるのである。■

 

Part 2: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

Part 3 - India Manages Diverse Arms Sources for Military Modernization

Part 4: to come

Topics: Global Defense Market

 

The Quad: Creating a Defense Tech Alliance to Stand Against China

By Stew Magnuson

12/7/2021



2021年12月9日木曜日

防衛技術開発:日米二国間さらにクアッド時代の日本の役割を展望。軍民両用技術で日本は非通常型防衛装備品の開発で大きな力を発揮しそう。

  

Concept art for the Japanese F-X fighter

Japan MoD concept

 

 

国にとって日本はすでに親密な軍事同盟国であるが、両国関係はここにきて一層堅固になっている。両国が防衛関連の研究開発の協力案件を増やしているためだ。

 

ここにオーストラリア、インドが加わりクアッドとしても技術提携が強まる方向に向かっている。

 

米国は長きにわたり日本への防衛装備輸出でトップの座を守り、2016年から2020年でみると97%の圧倒的シェアを達成している。

 

また両国部隊は合同演習を頻繁に実施しており、日本には米軍50千名超が駐留している。

 

「日米の防衛関係が日本防衛で最も重要な要素だと新アメリカ安全保障センター主任研究員ジェイコブ・ストークスJacob Stokesは評している。

 

中国の軍事力近代化と域内で示す強硬態度の高まりが日本の防衛力整備の背景にあるというのだ。

 

日本が導入を目指す米製装備品の筆頭にF-35のA型B型、V-22オスプレイ、イージス艦載システム、PAC-3迎撃ミサイル、E-2D高性能ホークアイ指揮統制機、RQ-4グローバルホーク、SM-6ミサイル等がある。

 

防衛装備庁も米製装備品の大量導入に加え、高度技術に関し米国依存を認める。

 

ただし、中国が技術面で格差を埋めようと軍用技術の研究開発に注力している現状は要注意だ。

 

技術面の優位性を失っては大変なので、日米両国は今以上にR&Dへの出費を増やす必要がある。米国は同盟国協力国との協力が不可欠と見ている。

 

2022年度の防衛予算要求では28億ドルを研究開発に充て、前年比50%増とする。そのうち相当部分を「ゲームチェンジャー」となる技術、すなわち、宇宙、サイバー、電子戦、人工知能、指向性エナジーに充てる。

 

さらに防衛装備庁は外部人材を取り入れ技術開発を目指す。

 

日米の防衛装備開発ではSM-3ブロックIIA迎撃ミサイルでレイセオン、三菱重工業の共同生産等があるが、日本政府はこうした成功事例をもとにペンタゴンの研究開発部門との共同事業を特に先端技術分野でさらに推進したいとする。

 

ペンタゴンも中国軍事力をいわゆる「忍び寄る脅威」ととらえ、日本との共同事業に一層関心を示している。

 

研究及び技術推進担当国防次官補ハイディ・シューHeidi Shyuはこれまでを上回る国際協力が目標の一つとする。「この方向に今向かっている。研究での提携で技術を迅速に発展させる。同盟国に同等の実力、製品があれば共同運用力が向上する。これからの戦闘は米国単独ではなく、同盟国協力国と一緒に戦う。このため新型装備の開発では初期段階から各国と共同作業することに意味がある」と述べている。シューはNational Defenseに対し、日本との協議を開始していると述べ、「日本側の関心領域は広範囲」とし、極超音速技術、量子技術の例を挙げた。

 

今後のフォローアップ会議が予定されており、科学技術面の共同開発の可能性を模索する。

 

米航空宇宙大手ロッキード・マーティンは日本の目指す次世代戦闘機F-Xへの技術支援を展開しており、ノースロップ・グラマンも関与している。昨年末に三菱重工業が主契約企業に選定され、防衛省はその後国際協力なかんずく米国企業との共同開発を旨とする構想を発表した。

 

防衛省はシステムレベルで英国との共同開発にも言及し、エンジン、エイビオニクスでの費用逓減とリスク回避を目指すとも発表した。

 

三菱重工のパートナーにロッキード・マーティンが選定されたことでF-XとF-35の共同運用力が高まる期待が生まれたと国際戦略研究所で航空宇宙分野の主任研究員ダグラス・バリーDouglas Barrieが見ている。「日米の安全保障、防衛産業のつながりがさらに強化される。両国は中国の軍事力増強に対応していく」とし、「ただし、日本が米国以外と二次レベルの防衛技術開発協力国を模索する可能性はある」とした。

 

戦略国際研究所で日本関連部門次長のニコラス・スゼチェニNicholas Szechenyi,は日米両国には限られた財源をどの分野に集中投入するかという課題とともに新技術を迅速に実用化する課題があると指摘している。「日米同盟が重要な時期になっている。両国とも中国の脅威に対応すべく防衛力整備の必要を痛感しているからだ。両国政府で広範囲の防衛協力の課題を解決するしくみ、いわゆるツープラスツー会合で同盟協力の次の段階を実現していく」と、日米の外交防衛部門閣僚の協議に言及した。

 

両国の協力関係ではミサイル防衛の実績が大きいと指摘し、SM-3ブロックIIAが好例だという。だが日本国内には今後の進め方でまだコンセンサスができていないという。今後の協力分野では状況認識機能があるのではないかというのが本人の意見だ。

 

「同盟関係の活力を維持し抑止力を今後も機能させるには共通の作戦構想で域内の事態に対応することがカギとなる。このため技術協力が必要だが、情報共有、情報活動共有も必要だ。これが同盟関係で優先事項になる」

 

つまり、今後の両国ではこうした分野が重要視されるという意見だ。

 

一方で、ここ数年の日本政府の方針転換で日本は従来より攻撃的性格の強い「スタンドオフ」機能の装備品を導入する可能性が増えてきた。ペンタゴンは米防衛産業とともに長距離性能を有する新型装備品の開発を進めている。

 

日本が打撃機能すなわちミサイルを導入することでは広く議論が政界で活発になっており、日本が国産で装備品を開発するのか、日米同盟の傘の下で共同作戦や合同運用構想に資する形で開発するのかの議論になる」とスゼチェニは見ている。

 

軍事技術に関する限り、日本指導層は国産技術と米国支援への期待のバランスを取る姿勢が見られるとも指摘。

 

「日本が国産技術を開発する余地は大きいが、優先順位をどこに置くかの議論は始まったばかり」とし、「最終的には既存の米国技術を迅速に入手することとともに日本独自に開発し防衛力を整備する課題の二つを組み合わせるのではないか。ただこの議論は極めて流動的であり、結論に達するまで時間がかかりそうだ」

 

前出のストークスも日米防衛協力で最大の阻害要因は政治、財政であり、既成の障壁はないと断言する。米国は概して日本への高性能防衛装備品の販売に前向きだというのだ。

 

「日本国内の憲法論議が政治面で大きな障壁となっており、個別具体的にはミッションと能力の問題がある」「財政上の障害が日本の比較的小規模な防衛予算の拡大を難しくしているが、流れは変わりつつあると思う。現在の日本の防衛予算は500億ドルだが、ペンタゴンは2021年に7000億ドル予算を得ている」

 

日本は米国以外にもオーストラリア、インドとの関係強化に乗り出している。米国と合わせ四か国安全保障対話すなわちクアッドの構成国だ。

 

限定的ながらオーストラリア、インド両国と日本は共同研究を行っており、今後の移転対象となる「候補分野」を模索している。

 

重要かつこれから登場する新技術がクアッド協力の柱となり、純然たる軍事技術というより民生技術に大きな焦点が当てられているとストークスは評し、クアッドは軍事同盟ではないと指摘した。

 

スゼチェニはクアッドは今後防衛産業虚力にっ発展する可能性があるが、実現してもかなり先の将来の話だろうとする。他方で米国政府は二国間安全保障条約を日豪両国と締結済みで、さらに三国間軍事ネットワークの形成で「機が熟している」という。

 「三国間の戦略対話が長く続いており、防衛協力分野以外にアジア太平洋での問題解決方法を模索しているので潜在的な可能性が高い」とストークスは見ている。

 

軍民両用技術で日本に強み

 

 

日本は防衛力の近代化に向かい、防衛装備品の輸出も目指している。同国の民生品や軍民両用技術での強みが大きな効果を上げると関係者、アナリスト双方が見ている。

 

一方で日本はすでに強力な軍事力を有している。

 

「自衛隊の戦力はインド太平洋でずば抜けた規模になっている」と米中を除き日本の実力を評価するのがストークスだ。「日本は島しょ地形を生かし、強力な対潜戦力を整備し、海洋ドメインでの探知能力を磨き、海洋安全保障を広く整備してきた」

 

自衛隊部隊は米軍他の有志国との共同演習に頻繁に参加しており、共同運用を高いレベルで行う態勢を維持している。中国特に人民解放軍の戦力整備を意識し、防衛省は戦力強化をねらいつつも財源の制約がのしかかる。

 

そこで民生技術の進んだ成果を取り入れ対というのが防衛装備庁の考えだ。政府内外から広く人材を集め、技術トレンドに詳しく防衛装備への応用を考える。

 

Jane'sでインド太平洋の研究分析にあたるジョン・グラベットJon Gravettは日本が通常型防衛装備品の輸出を目指していることに着目している。

 

ただし、「今後10年たてば中心は非通常型の装備品、技術、軍民両用技術、人工知能、サイバー、データ解析技術に移行していくと見ている」とし、「こうした技術は民生分野で生まれつつあり、日本はこれから域内各国に対して強い立場になる」とした。

 

日本の防衛部門が享受できる民生技術には大規模予算出費は不要となるとRAND Corp.も指摘している。

 

「こうした分野で必要な投資はヒトであり、設計開発にあたる人材でAI、ビッグデータ、自律運用、サイバー、EWの開発にあたる。さらに民間部門が主要技術分野に大きく関心を示し投資しているのも日本の強みで、開発・実用化が進む」

 

日本は長く続いた武器輸出制限を緩和したが、国際兵器供給国の座を確保したいとの熱望の前に障害が立ちふさがった。日本に防衛装備専門企業がそもそも少ないこともその一つだと指摘する専門家も多い。

 

スゼチェニは「武器輸出は徐々に進んでいるが日本が今後装備品の主要輸出国になるのか予測は難しい」とみている。ただし、防衛装備品の共同開発国なら軍民両用技術を活用する潜在力を秘めていると指摘した。

 

ペンタゴンも巨額予算を民生分野技術に投入し次世代システムの実現を狙う点で防衛省と同じ姿勢だ。

 

ストークスは日本が技術大国であり各種分野で世界クラスだとし、衛星技術やロボット工学の例を挙げる。

 

「軍民双方で重要な新技術が米日同盟のこれからで大きな柱になる」とし、「両国が協力すれば相乗効果を上げる」と述べた。

 

ペンタゴンには海外協力テスト事業があり、外国製技術で米軍の戦力に「相当以上の効果があるか」試している。

 

このチームが日本を初めて訪問したのは日本政府が憲法解釈を変更し、他国との共同開発に前向きになったためだ。「以後関係が続いている」と国防削総省は認めている。また同省の国際技術センターは東京にもあり、米軍関係者が日本側と新技術の探求を続けている。

 

バイデン政権は中国との長期にわたる競合で日本を最重要パートナーとみており、笹川財団の渡辺恒雄主任研究員は今年初めに「日米サミットの戦略的意義、対中経済安全保障について」とのレポートを著している。その中で自衛隊と米軍の共同作戦運用が高いレベルになっているとし、「シナジー効果が生まれる」と指摘した。日米両国は民主体制の価値観も共有しているとも指摘している。

 

「日本を米国が長期にわたる同盟国とみなしていることに疑いなく日本は中国との対決の時代で最前線国になる」■

 

US, Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

 

GLOBAL DEFENSE MARKET

SPECIAL REPORT: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

12/8/2021

By Jon Harper

 

Topics: Global Defense Market