2021年12月15日水曜日

主張: 文大統領が推進する平和宣言が実現すればこうなる。カギは北朝鮮だ。米国は核保有国としてのDPRKへの外交対応を検討すべきなのか。

 

 

 


 

 

朝鮮の文在寅大統領が北が平和宣言に「原則として」合意したと発表した。米国、韓国両国は宣言文原案の作成に取り組んでいるといわれる。中国も支持の姿勢を見えている。これでなにがまずいのだろうか。

 

答えはもちろん朝鮮民主人民共和国、別名北朝鮮だ。

 

文大統領によれば北はワシントンが「敵対政策」取り下げるまで一切の交渉に応じずとしており、朝鮮半島の米軍部隊プレゼンスはじめ軍事行動を指していると思われる。

 

希望にあふれた文大統領はこう言っている。「このため、南北が交渉の席に就けず、北朝鮮と米国も交渉ができない状態だ」。これが大きな障害になっているようだ。文は「交渉開始を期待している。そのため努力している」。

 

だが、こと北朝鮮に関する限り、「期待」はあてにならないのである。

 

南北朝鮮に米国、中国が今でも戦闘状態にあるため平和宣言は大きな課題だ。1950年6月に燃え上がった敵意は休戦交渉で下火となったものの、平和条約はその後も結ばれていない。ただ、これ自体は特殊ではない。軍同士の撃ち合いが止まり、その後政治家が条約を結ぶ例として第一次大戦後の米独両国の例がある。

 

1919年、米上院はヴェルサイユ条約批准を拒否し、ウッドロー・ウィルソン大統領が目指した世界改革の夢は徒労に終わったが米独両軍は再び塹壕に戻ることはなかった。むしろ、1921年7月にウィルソンの後を継いだハーディング大統領のもとで議会はノックス-ポーター決議を採択し、戦闘状態が終結した。正式な平和条約は同年に交渉が始まった。

 

ただ南北朝鮮や後ろに控える支援国には停戦後にこうした和平の動きは皆無だった。冷戦でさらに関係は凍り付き、ときたま武力衝突が半島に発生した。米中両国が真剣に協議開始したのはニクソン時代の1971年以降のことだ。また南北接触が時々発生しているが、冷戦終結後も半島関係の抜本的変更はなかった。

 

2018年のトランプ大統領がDPRKに平和実現の可能性を開いた。正式な条約が一番効果があるのだが、さきに交渉が必要だ。またこれは関係国間の協議を前提とし、都合の悪い問題も無視できなくなり、最終的に難解かつ問題をはらむ文章を調印することになる。

 

これに対して平和宣言なら単純だ。朝鮮半島が戦争状態にないと宣言し、各関係先はお互いを認め合う。文大統領の希望はここを出発点に実務的な交渉に向かうことにある。「非核化と平和へ向けた交渉開始に利用する。そのため重要な意義がある」(文)。統一相李仁栄Lee In-youngからは宣言により「平和実現の新局面への転回点」が出現するとの発言が出ている。

 

理論上は次の段階は条約交渉となる。だが、当然ながら困難が予想される。にもかかわらず、終戦宣言をすれば非公式とはいえ戦闘状態の終結となり、平和条約実現が加速する可能性も出てくる。ただし、北が米国の「敵視政策」終了にこだわらないのが前提となる。

 

宣言が象徴的存在に終わるのは確実だろう。南北朝鮮、米国、中国が戦闘状態にないと認めるだけだ。その状態が短期間に終わる可能性もある。これまでも平和条約が守れなくなった事態が発生している。また北は何十年もかけて兵器開発配備を続けており、脅威は全く減じていない。しかも台湾をめぐり不穏な状況の今日、中米両国間の武力衝突さえ可能性が浮上しているのである。

 

だとしても半島の現況は平和であり、宣言が出ればワシントンは一方的に過去の「不快感」を前面に出さず、よりよい関係樹立に前向きになるだろうが、非核化のみが目標ではない。またその他関係国も混乱はあるものの平和維持に向かうかもしれない。

 

現実的に見れば、宣言は北朝鮮を交渉テーブルに戻すための必死な試みである。このため、ソウルとワシントンで良好な関係をめざす動きもある。文の任期は終わりに近づいており、3月に大統領選挙がある。与党候補が世論調査でリードしているとはいえ、選挙戦は流動的だ。ここにきて宣言が急に動きを示しているのは大統領選挙を意識しているためもあろう。

 

宣言に立ちふさがる最大の障害は宣言から生まれる実の効果が皆無なことだ。四か国政府首脳、外交防衛部門の長や安全保障専門家が集まり、美辞麗句を展開しても結果は変わらない。

 

ただし、反対勢力には別の思惑もある。南朝鮮国内のタカ派、米国防関係筋さらに米国の朝鮮アナリスト多数派がここに含まれる。平和宣言後に米韓同盟解体、米軍撤退を叫ぶ勢力が声を上げれば、金正恩の狙い通りとなってしまうと危惧している。一発も銃弾を発射せず北は半島に朝鮮王朝を再発足可能となる。

 

例として米議会にこの動きに反対する意見が出ている。「金一族が平和合意を順守した前例がない」というのだ。

 

とはいえ、平和宣言の実現は容易だ。また北朝鮮が違反した前例があっても外交は進めるべきではないか。戦争となれば悲惨な結果となり、死傷者は数百万名規模になりそうだ。これは北が核兵器をどこまで使用するかで変わる。北朝鮮が核兵器ミサイルの整備を続ければ可能性は高まるばかりで、実際にその兆候がある。

 

これまでの制裁措置で北の軍事力開発を止められなかった。DPRKがあと二年の制裁を耐えきれば、今後に制裁強化となっても対応可能となる。また、中国が北の不安定化リスクを甘受する理由がなく、再統一を米国の望む条件で進めるのも受け入れられない。平和宣言が効果を発揮するとしたら、交渉の実施が唯一の選択肢となる場合のみだ。

 

さらに、議会批判派からは「終戦宣言で在韓米軍のみならず半島さらに域内に深刻なリスクが生まれる。中途半端な平和条約はDPRKに在韓米軍解体を叫ばせることになり、米軍28,500名は南朝鮮から退去することになる。米軍の存在意義は北の侵攻を抑止することにあり、同時に毎年の米韓合同軍事演習も永久に実施できなくなってしまう」

 

ただし、前提は南朝鮮と米国がピョンヤンの要求を急ぎ受け入れてしまった場合の想定だ。本当にそうなるだろうか。韓国世論は同盟関係を支持しており、米軍プレゼンスを評価しつつ、北へ疑いの目を強めている。革新派の南朝鮮国民でさえ米国による支援を求めている。当然だろう。自立独立を唱えれば気分は高揚するが、自立独立を実現するには多大な負担が発生する。このため国民ほぼ全員がワシントンの防衛力に依存したいと考えている。

 

米外交の主流派も宣言で朝鮮半島から一人でも軍が撤退する事態が現実になるのを恐れている。その場合、共産国家が南朝鮮を併合し、米国までとはいかなくても北東アジアへ影響が及ぶのは避けられなくなると警告している。とはいえ、米国との防衛関係を一夜で変更することなどだれも望まないはずだ。

 

宣言で生まれる結果を米議員が真剣に恐れているのなら、各議員も米国のプレゼンス継続が妥当なのか無意識のうちに疑いをもつはずだ。つまるところ、国力のあらゆる点で南はDPRKを凌駕しているのだから、自分で防衛できるはずだ。米国の裕福な同盟各国はアジア、ヨーロッパ、中東で米軍プレゼンスがないと敗北のリスクをかかえていることに疑問がわいてくる。何十年もの間、資金装備を提供し、訓練し、支援してきたのに。

 

興味深いのはタカ派議員連が以前は南朝鮮に示していなかった議題を示していることだ。「南朝鮮におけるわが軍のプレゼンスのひとつにキャンプ・ハンフリーズがあり、海外基地として最大規模で、域内の安全保障とともにDPRK、ロシア、中華人民共和国への抑止効果で重要機能を果たしている」と米関係者は述べており、明らかにROKを対中ロシア戦の出撃基地として使う前提で、南と関係のない事由での戦闘の場合も想定しているようだ。この場合、南が反発しても同国は攻撃対象となってしまう。

 

現地で暮らす人々に意見を聞くことに価値がありそうだ。米軍の基地利用は究極的にはソウルが決定することになる。また南朝鮮国民の保守派リベラル派問わず、自国を米国の利害で展開する戦争の標的にしてもいいと考える向きは皆無に等しい。その場合、ROKは周辺国間に敵意がみなぎる中で孤立してしまう。

 

事実、文大統領は平和宣言の実現をめざす中で、自国政府は米国が主張する北京冬季オリンピックの外交ボイコットに加わらないと発言している。文は率直にこう述べている。ROKは「調和のとれた関係を中国と維持しつつ、米国との堅固な同盟関係を基盤とする」。つまり、防衛してもらい感謝しているが、わが国のことは自分で決めるぞ、ということだ。戦争となれば、文はPRCの側に加わる可能性もありそうだ。

 

バイデン政権は議会内の反対意見に一部くみしつつも激しい反論はしていない。ただし、同政権も同盟国たる韓国を組み入れる策を目指している。つまるところ、バイデン大統領は同盟関係の再建を公約としている。そのためワシントンはソウルの機嫌を取りながら、文構想が消えるよう願っているようだ。

 

だが、金正恩は手を回し、ROK、米国双方のタカ派を懐柔しようと考えている。ワシントンは宣言が出ても重要度を指して感じないはずだが、ピョンヤンにはある意味で最も重要な事実容認を米政府が代償なしで提供することはないとわかっているはずだ。

 

平和宣言交渉の協議の席につくのを拒否すれば北はその他の目的追求の機会を自ら失うことになる。制裁措置の緩和もそのひとつだ。ただピョンヤンは頑固な態度を示し、都合のよいはずの議題でも討論そのものを拒否するだろう。またDPRKは文の面目をつぶそうと懸命になるはずだ。政治的には文の所属する政党に傷がつき、次期政権で「太陽政策」の再採択が難しくなる。ただし、北が最悪の敵勢力との正体を見せたのは以前にもあった。

 

米国は平和宣言の実現を求め、甘い餌として渡航制限解除による連絡事務所の立ち上げを持ち掛けるかもしれない。短期間のうちに大使館に昇格することも視野に入る。あらゆる問題についての協議も当然含まれる。非核化から「敵対政策」、人権問題などだ。歴史を見れば楽観主義の余地が少ないことがわかるが、批判勢力に対案がない。制裁からは希望は生まれず、戦争になればもっと悪い結果になる。米本土の攻撃能力を保有する北朝鮮を中程度の核保有国として交渉に臨む覚悟が必要だ。

 

こうしてみると文の切り出し方を支えるのもさして悪い選択には見えない。

 

A Peace Declaration To End The Korean War: An Idea Whose Time Has Come?

WRITTEN BYDoug Bandow

ByDoug BandowPublished1 hour ago

https://www.19fortyfive.com/2021/12/a-peace-declaration-to-end-the-korean-war-an-idea-whose-time-has-come/


Now a 1945 Contributing Editor, Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.

In this article:featured, History, Korean History, Korean War, Moon Jae-in, North Korea, Peace Declaration, South Korea

 

 

Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute, specializing in foreign policy and civil liberties. He worked as special assistant to President Ronald Reagan and editor of the political magazine Inquiry. He writes regularly for leading publications such as Fortune magazine, National Interest, the Wall Street Journal, and the Washington Time


中国の極超音速兵器開発に先を越された米国は有効な防衛力を実現できるのか



China Hypersonic Missile Testing

PLA Daily



中国のペースにあわせ、米国は極超音速兵器を月産10基以上製造する必要があるが、現状はそこまで行っていない....

 

国がFOB核運用極超音速滑空体のテストを行ったことで米国並びに太平洋地区同盟各国に戦術戦略上の脅威が加わったとペンタゴンで兵器開発にあたっていた専門家が指摘している。

 

マイケル・グリフィン博士Dr. Michael Griffinは研究開発担当の前国防次官補で、中国の極超音速兵器体系が米国を上回ればグアムや台湾のような死活的な地点への米軍・同盟国軍の接近が阻まれると発言。

 

「中国のFOBは戦術装備ながら戦略的な意味があり、手ごわい装備だ。中国がグアム西方に立ち入り禁止区域を設定すれば世界的な影響がでる」と高度核兵器アライアンス抑止力センターAdvanced Nuclear Weapons Alliance Deterrence Center主催の「極超音速兵器が政策と核抑止体制に与える影響」イベントで発言した。

 

中国が一方的に有利な形で極超音速兵器配備を進めると、米軍・同盟軍へ一斉攻撃を行い、戦闘継続できなくなる事態が生まれるとグリフィンは想定している。

 

中国の極超音速兵器の脅威

 

中国に実用レベルの極超音速兵器が各種そろい、米国にないとなると、太平洋に展開する米軍部隊に防衛手段がなくなる、というのがその考えだ。

 

その場合、米軍部隊は極めて脆弱になり、グリフィンは米軍同盟国軍は台湾あるいはグアムへの接近を「阻止される」事態となるのを恐れる。

 

中国の弾道ミサイル、核ミサイル等一斉発射に対し、防衛手段が実質上ない状態を想定している。防衛側を上回る飽和攻撃が「青天のへきれき」シナリオで想定されており、極超音速ミサイルが加われば事態はさらに深刻となる。

 

そのため大量の極超音速ミサイルの飛来を食い止める唯一の手段は、現状では敵に壊滅的被害を与える反撃手段以外にないと考えられている。

 

米抑止力はどこまで


攻撃を受ければ確実に反撃を行うとの抑止効果が極超音速兵器による大規模強襲への唯一の予防手段となる。ここをグリフィンは強調し、米国は中国に歩調を合わせた形で新型極超音速兵器の開発、生産、配備が必要だと主張している。

 

「極超音速攻撃手段では中国がわが国の先を走るのは明らか。こちらには一斉発射の阻止で手段がない。中国を上回る攻撃能力が整備できないと、中国の行動を縛ることができない」(グリフィン)

 

ペンタゴンは極超音速兵器生産を増し、パラダイムを一変させる「価値観を根底から覆す」技術を模索する必要がある。

 

通常・核双方の新型ミサイル生産を加速化する必要がある。

 

 

米装備の現状

 

米空軍では空中発射式迅速対応兵器をAir Launched Rapid Response Weapon と呼び、極超音速発射体として航空機から運用する構想が急進展している。

 

米陸軍は長射程極超音速兵器 Long Range Hypersonic Weapon (LRHW) を2023年までに実用化すると発表した。ペンタゴンは実戦用極超音速兵器の実現だけでは足らず、中国に対抗し、抑止効果をあげるため大量整備に迫られる。

 

中国が核運用可能な極超音速滑空体の試験を行ったことに大きな関心が集まったのは当然で、ペンタゴン上層部の懸念が現実になった。極超音速ミサイルの製造配備で中国は米国に先行している。

 

「現在は月産二基の極超音速兵器製造に向かっている。これを月産10本に増やす必要がある。中国はわずか12本の極超音速ミサイルでは脅威を感じない」(グリフィン博士)

 

同時にグリフィン博士は「既存価値観を覆すような」技術を開拓し現在開発中の極超音速ミサイルを超える新世代装備の開発を訴えており、弾頭部、誘導手段、推進手段で既存の空気吸い込み式や加速滑空型極超音速兵器体系を超える装備が必要と言いたいのだろう。実現のカギを握るのは迅速な試作・試験とグリフィンは見ている。

 

「テストを毎週実施すべきで、三カ月に一回ではまに合わない」(グリフィン博士)

 

中国のFOB兵器実験で緊急度はさらに高まっている。中国の新兵器は軌道上に長時間「留まる」機能があるとの観測があり、これが最大の懸念事項だとグリフィンは指摘する。つまり中国兵器は標的を選択し、飛翔経路を最適化して予想外の方向から攻撃する可能性があるということだ。

 

「軌道上に待機させ、任意の方位角で標的を狙う機能を懸念する」(グリフィン博士)■

 

 

China's Hypersonic Weapons: A Significant Global Security Threat

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN


 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 

 

2021年12月14日火曜日

米海兵隊、陸自が各地で展開するレゾリュート・ドラゴン演習のねらいは島しょ部防衛。その真意を伝えないままでいいのだろうか。

 これだけ重要な演習が展開されているにもかかわらず、メディアが演習の大きな目的をスルーするのはどうにも理解できません。防衛(軍事)記者が絶望的に足りないのか、報道しない自由なのかわかりませんが。


レゾリュート・ドラゴン演習で通信システム設営にあたる自衛隊員。八戸演習場にて。(U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Jonathan Willcox)


大規模な日米共同演習レゾリュート・ドラゴン2021は太平洋を舞台とするキーンエッジ演習にも直説の影響を及ぼす。


本で米海兵隊数千名規模が陸上自衛隊とともに海兵隊の遠征前線基地構想を試し、同盟国軍も交えた指揮命令機能の実効性を試している。


来年に予定される大規模演習の予行の意義もあると海兵隊は説明している。


「INDO-PACOMで目指す各国が力を合わせるEABO構想を試す意義がある」と第四海兵連隊指揮官マシュー・トレイシー大佐が述べている。同連隊数百名がレゾリュート・ドラゴン2021演習に参加している。


EABOとは海兵隊用語で遠征前方拠点作戦運用Expeditionary Advanced Basing Operationsの略で、海兵隊は設営が簡単な小規模拠点多数を戦闘地に展開するのをめざしている。


トレイシー大佐は海兵隊と陸上自衛隊は沖縄から矢臼別演習場で遠征活動拠点12か所を設営したと説明している。矢臼別演習場は沖縄から1,800マイル離れる。


「キルチェーンの構築よりもっと大事なのは意思決定チェーンの考え方だ。海兵隊だけが戦うのではない。ここは日本の領空、日本の主権が及ぶ領土内だ」(トレイシー大佐)


また今回の演習の目的として米日間の指揮命令系統を統合し、共同作戦を通じ構築することがあると大佐は説明。レゾリュート・ドラゴン演習で得た知見をインド太平洋司令部の大規模合同演習キーン・エッジに来年応用するという。


「体得した学びを応用し、INDO-PACOMは実戦レベル演習を展開し、太平洋全域で戦術レベルの応用を行う。日本列島の島しょ部防衛能力がこれで飛躍的に伸びると期待している」


レゾリュート・ドラゴン演習は米海兵第三師団と陸上自衛隊第九師団により12月4日から17日まで日本各地で展開すし、米国は2,600名、日本は1,400名を参加させ、さらに太平洋地域及び米本土からの遠隔支援人員も加わるとトレイシー大佐は説明。日米両国の演習として2013年以来最大規模となる。


航空戦力では海兵隊はMV-22Bオスプレイ、CH-53Eスタリオン、AH-1Zヴァイパー、UH-1Yヴェノム、F/A-18Eスーパーホーネット、KC-130Jハーキュリーズを同演習に参加させている。


海兵隊、陸上自衛隊に加え、米海軍艦艇が架空シナリオで高機動砲兵ロケットシステムを駆使した敵の探知掃討作戦を展開する。その他、市街地での地上戦闘作戦、共同給油補給演習のほか、大規模負傷者援護訓練も行う。


大規模演習キーン・エッジは統合参謀本部議長が指揮しインド太平洋内で隔年で実施されている。米各軍に自衛隊が加わり実施されている。■


Resolute Dragon: US Marine-Japanese exercise is a precursor to 2022 Indo-Pacific event

By   JUSTIN KATZ

on December 13, 2021 at 2:19 PM


なお、陸上自衛隊は次の広報資料を公開しています。


令和3年11月11日 陸 上 幕 僚 監 部

 令和3年度国内における米海兵隊との実動訓練(レゾリュート・ドラゴン21)の 概要について


 陸上自衛隊は、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化すべく、以下のとおり令和3年度 国内における米海兵隊との実動訓練(レゾリュート・ドラゴン21)を実施しますので、 お知らせいたします。 


1 目 的 陸上自衛隊及び米海兵隊の部隊が、それぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施 する場合における相互連携要領を実行動により訓練し、日米の連携強化及び共同対処能 力の向上を図る。 

2 期 間 令和3年12月4日(土)~12月17日(金) 

3 場 所 王城寺原演習場、岩手山演習場、八戸演習場、霞目駐屯地、矢臼別演習場等 

4 担任官 (1) 陸上自衛隊 東北方面総監 陸将 梶原 かじわら 直樹 なおき (2) 米海兵隊 第3海兵師団長 少将 ジェイ M バージェロン (Jay M. Bargeron) 5 訓練実施部隊 (1) 陸上自衛隊 ア 第9師団第5普通科連隊基幹 イ 東北方面特科隊、東北方面航空隊等 (2) 米海兵隊 ア 第3海兵師団 第4海兵連隊 第2-8大隊基幹 イ 第1海兵航空団 第36海兵航空群等 陸上自衛隊

6 特 色 (1) 陸上自衛隊の領域横断作戦(CDO)と米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)を踏まえた日米の連携向上のための訓練を実施 (2) 国内において海兵隊と実施する最大規模の実動訓練であり、東北方面隊と在沖米海兵 隊が複数の演習場を使用し、空中機動作戦に係る訓練、AHによる射撃訓練、対艦戦 闘訓練等を実施 (3) 平成28年9月の日米合同委員会合意に基づく、MV-22等の訓練移転に係る事 業として実施 

7 新型コロナウイルス感染症対策 (1) 自衛隊員は、防衛省・自衛隊が定める方針に基づき必要な感染症対策を実施 (2) 在日米海兵隊関係者は、米海兵隊の定める基準等に基づき、自衛隊と同様に必要な 感染症対策を徹底


2021年12月13日月曜日

DARPAのグレムリン無人機が空中回収に成功し、実戦化されれば、航空戦の姿を革命的に変える可能性を示した。中国、ロシアへのペンタゴンの切り札になるか注目。

 

2021年10月、ユタ州ダグウェイ試験地区でグレムリン航空装備のテストが行われた DARPA

 

  • DARPAのグレムリン無人機が10月に大きな成果を上げた

  • C-130でグレムリンの飛行中回収に初めて成功した

  • グレムリンが期待通りの性能を発揮できれば、米軍機は敵防空網の有効射程外に留まれる

軍のトップ研究機関たる国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が開発を進めるグレムリン無人機事業で大きな進展があった。


最新のテストでC-130がグレムリンの飛行中回収に成功した。


グレムリンが米軍の想定する性能通りなら、航空戦闘を革命化し、中国やロシアといった高度軍事力を有する相手にも優位性を発揮できる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンは想像上の生物で、2015年に開発が始まり、再使用可能かつ消耗覚悟の無人機装備の実現を目指している。


ペンタゴンは同機多数を投入し、各種武装も想定する。DARPAは同機の「大群状態」でを有人機と同時運用し、敵打破をめざす。


10月のテストではX-61グレムリン二機を編隊飛行させた。グレムリンはゆっくりとC-130に下方から接近し、母機が垂らすケーブルの先のフックに接続させた。


その後C-130機がケーブルを模き戻し、飛行中の収納に初めて成功した。テスト部隊は同機を24時間後に別のテストに供した。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


DARPAはテスト飛行四回を実施し、グレムリンの飛行特性データを収集し、母機との運用、飛行中回収を試した。


同機事業は完成の域に達しておらず、グレムリンの別の一機を事故で喪失もしている。


同無人機に情報収集監視偵察(ISR)センサーを搭載すれば航空状況あるいは地上の状況の認識能力が実現し、電子戦ジャマー装備により有人攻撃機の侵入路を「開ける」機能が実現するだろう。


グレムリンで搭載可能なペイロードは150ポンドほどなのでAGM-114ヘルファイヤミサイルなど小型装備に限られるはずだ。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンとは機体探知能力、対空能力、対無人機攻撃能力を有する大国へのペンタゴンの回答だ。


ここ20年にわたる米軍は高度といいがたい敵相手に航空優勢を維持できた。だが今やロシアや中国のような手ごわい相手との競合を想定せざるを得ず、航空優勢の確保がままならなくなる事態が想定される。DARPAはグレムリンで安価な解決方法をめざし、20回使用でき、かつ運用維持は有人機や従来型の無人機より低価格とする。そもそも既存機種は数十年もの長期間供用を前提としている。


グレムリンは空中回収可能・再利用可能とすることでコスト削減をめざしている。空中回収発進によりグレムリンの作戦半径を伸ばしながら母機は遠距離地点で無人機を発進させ、敵の対空攻撃外に留まり生存性を高める。


グレムリンはミッション完了後に母機に回収される。24時間の保守整備を受け、次のミッションにと入可能となる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


今回の空中回収が失敗におわっていれば、ペンタゴンとDARPAは同事業の見直しをせざるを得なくなるところだった。


次に考えられる同機の運行形態としてグレムリン多数を母機部隊から運行することがある。この大量運用を実現するべく、DARPAは30分以内にグレムリン4機の発進回収テストを行う。このテストに成功できないとグレムリン事業は大きく見直しが必要となる。


グレムリン事業の母機として、B-52ストラトフォートレス爆撃機、AC-130スプーキーガンシップ、MC-130コマンドーII輸送機、F-35ライトニングII以外にほかの無人機もDARPAは想定している。


1958年にソ連がスプートニク人工衛星打上げで米国の先を行くことが判明し、創設されたDARPAはグレムリン以外でも多大な成果を上げている。


同庁はペンタゴンの先端技術案件の研究開発で主となる組織で米軍の技術優位性維持に貢献している。米国の実力に伍する国の登場で優位性は揺らいでいるが、DARPAの革新技術は対潜戦、ドッグファイト、自律運用装備、さらに将来の地下での戦闘を対象に応用が期待されている。■


DARPA Gremlins Test Shows How US Planes Can Be Drone Mothership

DARPA's latest 'Gremlins' test shows how the US military's biggest planes could be motherships in future wars

Stavros Atlamazoglou Dec 10, 2021, 12:14 AM


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.


F-35:フィンランドも採用へ。スイスも先に採用を決定しており、ライトニングIIはヨーロッパで連戦連勝の状態へ。

 


Two U.S. Air Force F-35A fighter aircraft from Hill Air Force Base, Utah, fly in formation with two Finnish F-18 Hornets while en route to Turku, Finland on June 13, 2019. (US Air Force/ Airman 1st Class Jovante Johnson)


ィンランドの次期戦闘機選定でF-35の評点が4.47と次点の3.81に大差で採択された。


ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機がフィンラインドのHX戦闘機選定で採択され、契約規模は100億ユーロ(110億ドル)相当になる。


フィンランドはF-35A通常型離着陸仕様を合計64機導入する。近隣諸国ではノルウェイもF/A-18ホーネットの後継機種として導入している。また、機体以外に兵装類及び機体維持パッケージも導入する。


フィンランド国防相アンティ・カイコーネンAntti Kaikkonenは採択結果を伝える報道会見で「接戦だった」と述べた。


ロッキードには競合相手多数があり、ボーイングはF/A-18E/Fスーパーホーネット、ユーロファイターのタイフーン、ダッソーのラファール、さらにSaabのグリペンEがあったが、F-35が各機より優れるとの評価を得た。


フィンランド空軍司令官パシ・ヨキンネン少将 Maj. Gen. Pasi Jokinen によればF-35が全分野で最高評価点を得ており、性能評価で4.47点で、要求水準の4.0点を上回った。次点の機体は3.81点に過ぎなかったという。


フィンランドHX競合が防衛ウォッチャーの関心を集めたのは同国の調達戦略が独特なためで、フィンランドの要求内容に応えるべく参加各社は複数機種含む各種システムを提示可能としていた。例として、SaabはGlobalEye空中早期警戒機もパッケージとして提示し、ボーイングはEA-18Gグラウラー電子攻撃機も加え提案した。選定は二週間にわたる戦闘シミュレーションで幕を下ろした。


「最高の性能を有するシステムの選定が重要となり、支援要素や開発力をライフサイクルにわたり提供できるかを判断した」(カイコーネン)


「F-35はフィンランドの要求する保安体制、供給力、産業界の関与、費用の各面で合格した。軍事性能面の評価で同機は総合戦力で最高点となり、我が国の防衛力強化に役立つと評価した。同機の性能は空陸海のいずれでも最高点となった」


フィンランド向けF-35一号機は2025年に引き渡し予定で同年に旧型ホーネットの用途廃止が始まる。


ロッキード・マーティンは選定結果に早速歓迎の意思を示し、同社提案が産業界にも恩恵を与えると強調した。


「フィンランド政府により開かれた競合の結果当社のF-35が選定されたことを名誉に思います。今後はフィンランド国防軍並びにフィンランド防衛産業界と協力しF-35の納入及び維持に努めます」と同社F-35事業担当副社長ブリジット・ローダーデイルBridget Lauderdaleが声明文を発表している。


「F-35はフィンランド国内産業界にもデジタル機能による第五世代機技術及び製造の強化という効果をもたらします。同機関連の製造は20年超にわたり続き、機体維持関連の業務は2070年代まで展開します」


同社提案の産業界への優遇策として機体前方部分、一部構造部品をフィンランド等で生産し、エンジン最終組立もフィンランド軍機向けに行うとフィンランド国防省が発表している。


今年に入りF-35はこれで二件目の採択を勝ち取った。6月にスイスが同機をダッソー、ユーロファイター、ボーイングを破り採択した。契約規模は65億ドル。カナダも待望久しい戦闘機選定結果を来年早々に発表する見込みでF-35とグリペンに絞り込まれている。


各国の選定でF-35は連戦連勝だが、ドイツは例外だ。ハイエンド戦闘機材の導入財務的に可能な各国はF-35に傾いており、その他機材がことごとく敗退している。


ボーイング広報はフィンランド選定結果に失望したとしながら、スーパーホーネットとEA-18Gグラウラーの今後の採用に期待し、「両機種への国際市場の関心は大きい」とした。


Saab広報はフィンランドとは今後も緊密に協力していくとし、「今回の結果は当社の期待通りにならなかったが、Saabはきわめて強力な提案を行い、グリペンとGlobalEyeを組み合わせ、総合的なパッケージとしたほか、広範な産業界の関与を提示した」と述べている。■


Finland picks F-35 in $11B fighter battle - Breaking Defense Breaking Defense - Defense industry news, analysis and commentary

By   VALERIE INSINNA

on December 10, 2021 at 9:58 AM


2021年12月12日日曜日

2022年の展望② 国家偵察局NRO長官の考える宇宙配備ISR機能の重要性について

 2022年の展望特集の第二回は米国家偵察局長クリス・スコレーズChris Scoleseです。ISRの重要度は高まるばかりで、宇宙空間からの情報収集にあたる専門機関NROは俊英な技術者の集団なのでしょう。

 

 

 

家偵察局(NRO)は60年以上をかけて世界最高水準の情報収集偵察監視装備を宇宙空間に展開してきた。政策決定層に重要情報を提供し、アナリストや軍でも活用されている。悪意の行動する側の意図を理解するとともに、自然災害被害への支援にも役立ち、気候変動にも対応している。

 

 

米国の宇宙空間での優位性は数々の技術革新で達成され、その典型がNROだ。技術革新は創造性を重視する環境あってのことだが、同時にリスクをあえてとる姿勢と、作業に当たる人員を勇気づけ、他国の動静に絶えず気を配ることにより実現する。最良の人材が集まっており、今後の針路を照らす存在だ。

 

NROは空中回収式の小型カメラから地上150マイル上からデータを直接地上へ送る装備へと比較的短時間で進化を遂げた。最近ではパンデミック中でも18カ月で16個ものペイロードを軌道に乗せた。目指すゴールはより良い情報をもっと迅速にかつ利用可能な形で提供し、任務遂行に役立たせること、さらに能力を拡大し高精度情報を提供することだ。

 

今や新しい課題が控えている。わが方の装備は宇宙空間で妨害を試みる勢力から守る必要がある。米国の宇宙利用での優越性に気づき、追いつこうとしている国がある。新技術を開発し、新技法を利用し、技術を組み合わせ最大の難題となるISR問題を宇宙で解決することにかけては米国が世界のどこよりも優れている。

 

だが敵対勢力より先を進むには、わが国は単独では解決できなくなっている。同盟国等の力に頼る時が来ており、従来の想定と異なる新しい協力国を育成すべきだ。単独で対応するよりも優秀性を一貫して維持できるはずだ。

 

そのため、より多様な衛星群、より高い応答性、より予測可能なカバレッジ、よりダイナミックなタスク処理など、より弾力的でミッションに特化したアーキテクチャを実現しなければならない。わが方のアーキテクチャは、NROが開発したシステムだけでなく、現在配備されている高機能な商用および国際的なシステムにも依存する。イノベーションに境界がなく、特定機関のみのものでもない。力を合わせれば、驚くべき進歩を遂げることができる。

 

また、新技術やパートナーシップは地上システムにも適用し、頭上からの大量データをサポート・管理し、さらに多くの宇宙装備を統合し、意思決定を改善し、サイバー攻撃にも耐えられるようにする。

 

調達プロセスで進化を続けねばならない。NROは、従来の長期開発サイクルを短縮する能力を有しており、これは政府内で認知されている。実際に現在軌道に乗っている2つのプログラムは、コンセプトから3年以内で実用化できた。国家安全保障のための宇宙事業では短いタイムラインが常識になるべきだ。

 

より強固な能力をより早く、より低コストで提供できる開発や技術への投資が必要だ。例として、人工知能や機械学習のアルゴリズム改良、宇宙装備内の低消費電力コンピューターシステム、妨害に耐える通信システムなどがある。サプライチェーン全体へデジタルエンジニアリングを導入し、より迅速な開発を可能にする以外に、量子コンピューティング、センシング、コミュニケーションなど新技術へも投資が求められる。

 

また、信頼性の高い、頼れるプライチェーンも必要だ。世界規模のパンデミックで混乱が生じているが、これを二度と起こしてはならない。敵の一歩先を行くためには、宇宙で他に類を見ない状況認識を提供するシステムを構築する部品が不可欠だ。有効なサプライチェーンがなければ、実現はままならない。

 

最後に、平和維持のためシステムを構築するには、強力で有能な人材の確保が必要だ。現在のNRO人材は、任務を果たすことができると確信する。また、将来の人材が、宇宙ベースのISRにおける世界的なリーダーとしてのNROの遺産を引き継いでくれると確信している。

 

国家として今日ほど宇宙に依存したことはなかった。現代の生活様式、経済、軍事、国家安全保障は、宇宙へのアクセスと自由な活動に依存している。

 

.NROの60年にわたる革新とパートナーシップの伝統から、我が国の実力を確信させ宇宙分野における変化に立ち向かわせてくれる。技術を進歩させ、能力を迅速に提供することに成功したNROは、現在のみならず、次の60年、さらにその先も、宇宙におけるアメリカの情報面の優位性を維持するため不可欠な存在といえよう。■

 

 

NRO director: Innovation is the key to America's advantage in space

By Chris Scolese

 Dec 6, 07:10 PM

Chris Scolese is the director of the U.S. National Reconnaissance Office.