2022年3月9日水曜日

ウクライナ軍が予想外に奮戦している理由。国防に必要な要素は装備品だけではない。日本にも学ぶべき点が多い。

 



 

強力なロシア軍の前に数日で崩壊すると思われていたウクライナ軍がなぜ今も抵抗できているのか不思議に思う向きも多いのではないでしょうか。ウクライナ軍の改革と訓練、装備品の充実が事前にあったことを実際に支援に従事した米軍関係者が説明しています。今回は非営利ニュース論評サイトThe Conversationからのご紹介です。


広範な軍事改革の成果

2014年、ウクライナ軍を「老衰状態」と表現し、海軍は「残念な状態」とした国家安全保障アナリストがあらわれた。ウクライナ軍の元総司令官ヴィクトル・ムジェンコVictor Muzhenko大将は、「文字通り軍隊の廃墟」とまで言い切る始末だった。

 

 

しかし、それから8年後、2022年2月24日に始まったロシア侵攻でウクライナ軍は、規模が大きく、装備の整ったロシア軍に対し驚くほど強力に対応している。

 

ウクライナの堅固な抵抗は、大きな要因4つの結果だ。

 

最初の2つは、2016年にウクライナ政府が軍事改革に尽力したこと、ならびに欧米の援助と軍事装備数百万ドル相当だ。

 

3つ目の要因は、ウクライナ軍の考え方が大きく変化を遂げ、現場で下級指揮官が意思決定を行えるようになったことだ。それまでは、指揮官が下した命令を変更するには、上級指揮官の許可を得る必要があった。

 

最後の重要な要因は、間違いなくウクライナ人の間で起こった変化だ。つまり、軍に志願する国民文化が生まれた。その結果、軍事攻撃からの防衛に民間人を組織し、訓練する政府機関が創設された。

 

2016年から2018年にかけて、筆者はウクライナの防衛組織の改革を支援してきた。その間、2008年のロシア-ジョージア戦争を研究するため、ジョージアで現地調査も行った。その調査の結果、ウクライナ侵攻に用いられたロシアの戦術には、驚くべきものは皆無だと判明している。

 

驚くべきは、ウクライナ軍の戦果だ。

 

広範な国防改革

2014年、ウクライナ政府は国家安全保障と軍事防衛の包括的見直しに着手した。その結果、戦闘能力の低下に直結する問題が多数明らかになった。

 

サイバー攻撃に対応できない、医療提供の不備に至るまで多岐にわたった。汚職が横行し、部隊に給料が支払われず、基本的な物資は常に不足していた。補給活動と指揮統制も非効率的だった。

 

こうした欠点を改善するため、2016年に当時のペトロ・ポロシェンコ大統領は、指揮統制、立案、作戦、医療・兵站、5つのカテゴリーで部隊を専門的に育成させる抜本的な改革を指示した。

 

わずか4年での完了を目標に掲げた野心的な計画だった。ウクライナ軍は当時ドンバス地方でロシア分離主義勢力と戦っており、最高の環境での努力となった。

 

ロシアが侵攻してくるとの恐怖が、ウクライナ政府を動かし、改革を加速させた。改革はすべて完了していないものの、6年間で大きな進歩があった。

 

成果が、ロシア侵攻への対応に現れている。

 

米国の軍事援助

ウクライナ軍事改革を支援するため、米国は2014年のロシアによるクリミア不法併合とウクライナ東部の分離主義者支援の直後からウクライナへの資金援助を拡大した。

 

2014年、オバマ政権は291百万米ドル支援を行い、2021年末までに米国は訓練と装備で合計27億米ドルを提供した。

 

支援の一環として、米国はヤヴォリヴYavoriv軍事基地でウクライナ軍の訓練を支援した。同基地は短期間で大規模訓練センターとなり、2015年以降、毎年5個大隊が訓練を受けている。

 

2016年、ポロシェンコは米国、カナダ、英国、リトアニア、ドイツから上級軍事顧問を招き、2020年までにNATOの基準、規則、手順に到達するのを目標に、ウクライナ軍の近代化で助言を求めた。

 

重要なNATOの基準のひとつは、ウクライナが展開する際に、NATO部隊と後方支援を統合することだった。

 

欧米の支援には、ハンビー、無人機、スナイパーライフル、敵攻撃源を特定するレーダー、昼夜を問わず目標を確認するサーマルスコープなど、さまざまな武器や装備が含まれていた。

 

ウクライナ側が特に関心を示したのは、対戦車ミサイルの充実だった。2014年にロシアが分離主義者を支援し国境を越えT-90戦車を送り込んだとき、ウクライナの既存兵器ではT-90の装甲を貫通できなかった。

 

2017年、米国はジャベリン対戦車ミサイルをはじめてウクライナに提供した。

 

侵攻の恐れが切迫する中で、欧米諸国はリトアニアとラトビアからスティンガーミサイル、エストニアからジャベリン対戦車ミサイル、英国から対戦車ミサイルなど、武器・軍需品をウクライナに送った。

 

戦場での意思決定

2014年、ウクライナの軍事価値観では、中尉や大尉といった下級指揮者がリスクを取るのを抑制していた。意思決定できない下級指揮者は、いちいち行動の前に許可を得る必要があった。

 

最初の命令がもはや適切でなくなった、あるいは状況の変化に適合しなくなった場合に問題が起こる。現代戦のスピード、機動性、殺傷力を考えると、統制のとれた取り組みが成功と失敗の分かれ目となる。

 

2014年、ドンバス地方でロシア支援を受ける分離主義勢力およびロシア軍と戦っていたとき、ウクライナ軍は、小隊長や中隊長は、すべての動きについて上位司令部の承認を待つことが不可能とすぐに理解した。戦闘のスピードがあまりにも速すぎた。

 

新しい価値観の下で、ウクライナ軍は「目的は手段を正当化する」という新しい形で戦うようになった。プロセスよりも結果が重要だ。

こうした価値観の変化と、ドンバスでの8年間にわたる戦闘が相まって、即戦力となる新世代の指揮官が生まれた。

 

志願者を生む国

2014年、ロシア支援を受ける分離主義勢力と戦うため、ウクライナ全土から志願者がドンバスに集まった。あまりの数の多さに、志願兵大隊創設が必要になったほどだ。

 

しかし、訓練時間はほとんどなく、志願者は、不揃いの迷彩服を着て、急造部隊に放り込まれ、寄せ集めの武器で前線に送り出された。

 

しかし、この志願者部隊がウクライナ軍に動員時間を稼ぎ、ロシアのウクライナ侵入を防ぐため戦線の維持に貢献した。

 

志願兵問題を改善するため、ウクライナは法律を制定し、2022年1月1日に発効した。この法律により、軍の独立部門として「領土防衛軍」が設立された。

 

平時には職業軍人1万人を含み、12万人の予備役を旅団20に編成する。

 

ロシアは、この部隊が完全に発足する前に侵攻を開始したが、戦争が続く中で組織的な対応が生まれている。

 

ウクライナの決意

こうした改革とウクライナの抵抗にもかかわらず、ロシア戦力はウクライナを圧倒している。

 

ロシアへの防衛は困難な課題で、ウクライナ国民が過去8年間、そして今回の戦争の開始から何度も示している決意が今こそ必要だ。

 

ウクライナ人は誇り高く、愛国心が強く、国を守るため必要なら何でもする覚悟がある。■

 

In 2014, the 'decrepit' Ukrainian army hit the refresh button. Eight years later, it's paying off

Published: March 8, 2022 1.18pm GMT

by Liam Collins
Founding Director, Modern War Institute, United States Military Academy West Point

 


2022年3月8日火曜日

ウクライナ戦でロシア空軍が存在感を示せない理由を英軍事シンクタンクRUSIが分析。我々はロシア空軍力を過大評価していた。

 


Sukhoi Su-25SM3 of the VKS shot down in Ukraine. Credit: Ukrainian Ministry of Defence


ロシアがウクライナに侵攻し1週間以上経過したが、ロシア空軍はいまだに大規模作戦を展開していない。開戦直後の不活発さには要因がいろいろあったが、大規模航空作戦が行われないままなのは、深刻な問題があることを示している。

 

 

シアのウクライナ侵攻の初期段階で驚かされたことのひとつに、ロシア航空宇宙軍(VKS)の戦闘機・爆撃機隊が航空優勢を確立できず、ロシア地上軍の支援を展開できなかった点がある。侵攻の初日、巡航ミサイルと弾道ミサイルによる攻撃開始の後に、予想されていた大規模なロシア航空作戦はなかった。原因を分析したところ、地上の地対空ミサイル(SAM)のデコンフリクションに問題があった、精密誘導弾の不足、VKSの平均飛行時間が短く、地上作戦支援の精密打撃の専門知識を有するパイロットが不足していたことなどが指摘された。各要因は関連するが、侵攻が2週目に入っても、VKSの作戦が低調なのを説明できない。ロシアの高速ジェット機は、ウクライナの携帯型防空システム(MANPADS)や地上砲撃による損失を最小限に抑えるため、単機または二機で、低空で、主に夜間の限定的出撃に終始している。

 

筆者含むアナリストは、2010年以降のロシア戦闘航空装備の近代化に目を奪われる傾向がある。特に顕著なのは、VKSが10年で最新鋭機約350機を導入したことで、これにはスホイSu-35S航空優勢戦闘機、Su-30SMマルチロールファイター、Su-34爆撃機が含まれる。また、 Mig-31BM/BSM迎撃機約110機と少数のSu-25SM(3)地上攻撃機の再生産とアップグレードとの野心的な近代化運動も行われている。ロシアは通常、ウクライナの射程圏内にある西部および南部軍管区に最新戦闘機約300を配備しており、侵攻前の軍備増強の一環として、ロシア内の他地域から連隊を移動させていた。特に2015年以降のシリアへのロシアの軍事介入では、戦闘空中哨戒や攻撃任務にVKS固定翼機を多用していることから、使用の意図があったことは明らかである。ウクライナの北部と東部でロシアの地上戦がなかなか進まず、ウクライナ軍により車両や人員の損失が続く中、ロシア航空作戦の欠如には別の説明が必要だ。

 

ありえない、あるいは不十分な説明

一つの可能性として、VKSの戦闘機隊は、NATO軍の直接介入への抑止力として保持されている可能性がある。ただ、これは考えにくい。もしVKSがウクライナ上空で迅速に制空権を確立する大規模作戦を実施可能なら、それを実施しないことで、NATO軍への潜在的な抑止力は維持するどころか、むしろ弱まる。ロシア軍が、はるかに小規模で陣容の劣るウクライナ軍を迅速に制圧できず、最新車両と人員を大量に失ったことで、ロシア通常軍事力への国際的認識が大きく損ねられた。NATO抑止力の観点から、ロシア軍参謀本部とクレムリンには、失われた信頼を回復すべく航空兵力を最大活用する動機があるのだ。

 

また、VKS固定翼機は精密誘導弾を効果的に使用できる割合が比較的低いため、制圧・利用したい重要インフラの損傷を避けるため、あるいはウクライナ市民の犠牲を最小限に抑えるため、無誘導弾やロケット弾による大規模攻撃が避けられているとの見方もある。ロシア指導部が迅速な軍事的勝利を目論んでいた侵攻当初なら、これは有効な仮定だった。しかし、この可能性は急速に薄れ、ロシア軍は包囲した都市(特にハリコフとマリウポリ)に重砲と巡航ミサイルで砲撃するパターンに落ち着いたため、この理論では大規模なVKS攻撃の不在を説明できないことになる。

 

ロシア軍の指揮官が、高価かつ威信のある高速ジェット機の大損害リスクを避け、リスク許容度でVKSを抑制しているとの説もある。これも筋が通らない。ロシア地上軍は最新型戦車・装甲兵員輸送車数百両、短・中距離防空システム、精鋭空挺部隊(VDV)や特殊部隊を含む数千人の兵員を1週間で失った。ロシア経済は深刻な制裁措置で急速に疲弊し、ロシア指導部はヨーロッパはじめ世界各地で慎重に築き上げてきた影響力ネットワークと同盟関係を焼失させた。つまりクレムリンはすべてを危険にさらしている。損失を避けるため空軍戦力を抑制するのでは意味をなさない。

 

現時点で有力な唯一の説明

VKSが初期に航空優勢を確立できなかったのは、早期警戒、調整能力、立案時間の不足で説明できるが、継続的な活動パターンは、VKSに大規模で複雑な航空作戦を計画、準備、実施する制度的能力が不足しているとの、より重大な結論を示唆する。この暫定的な説明を裏付ける重要な状況証拠もある。

 

VKSは2015年以降、シリア上空の複雑な空域で戦闘経験を積んできたが、小規模編隊で航空機を運用してきたに過ぎない。単機、二機、時には4機編成が普通だった。異なる機種の航空機が同時運用される場合も、せいぜい2組の構成に過ぎない。戦勝記念日の展示飛行のような威信をかけたイベントは別として、VKSは訓練飛行の大部分を単機か二機一組で行っている。つまり、VKSの作戦指揮官は、脅威の高い空域で多数の部隊が参加する複雑な航空作戦を立案、説明、調整する方法について、実践的な経験を持っていない。過去20年間、イラク、バルカン、リビア、アフガニスタン、シリアで行われた西側の軍事作戦では、統合航空作戦センターを通じ複雑な航空作戦が当たり前に行われてきたため、西側の航空戦力の専門家多数がこの点を見落としがちだ。

 

第二に、ほとんどのVKSパイロットの年間飛行時間は約100時間(多くはそれ以下)であり、NATO空軍の飛行時間の約半分である。また、複雑な環境下で高度な戦術を訓練・実践する近代的なシミュレーター設備もない。ロシアの戦闘機パイロットが得る実戦飛行時間も、NATO軍の飛行時間と比べ、複雑な航空作戦に対応する準備として、価値が著しく低い。英空軍や米空軍含む西側諸国の空軍では、パイロットは、悪天候、低空で、地上や空中の脅威を想定した複雑な出撃に厳しく訓練されている。高速ジェット機の上級訓練に合格するため、こうした訓練を確実にこなし、しかも計画したタイムオンターゲットの5〜10秒以内に目標に命中させることができなければならない。これは、前線任務において、複雑な攻撃パッケージによる複数の要素として、銃撃を受け視界が悪くても、安全かつ効果的に操縦と攻撃を繰り返すために不可欠なスキルである。また、訓練に長時間がかかり、定期的に実戦飛行とシミュレーターで最新の技術を習得する必要がある。これに対し、VKSの最前線での訓練は、比較的無菌状態で行われ、航法飛行、オープンレンジでの無誘導兵器運用、地上防空システムとの連携による目標シミュレーション飛行など、単純タスクがほとんどだ。地中海、北海、カナダ、米国にある十分整備された射場で日常的に共同訓練を行っているNATO空軍に匹敵する訓練・演習体系をロシアは利用できない。また、NATO加盟国が毎年行っている、現実的な脅威を想定した大規模な複合型航空演習(最も有名なものは「レッドフラッグ」)に匹敵するものもロシアにない。そのため、ロシアのパイロットの多くが、熟練度を欠いていて複雑でダイナミックな任務を遂行する大規模な混合編隊の一員として、効果的に活動できないとしても不思議はない。

 

第三に、VKSが複雑な航空作戦を実施できるのであれば、ウクライナ上空での航空優勢の獲得は比較的簡単だったはずである。自国の都市上空で勇敢に防空する少数のウクライナ軍戦闘機は、ロシアの長距離SAMシステムにより低空飛行を余儀なくされており、その結果、状況認識力と耐久力が比較的限られる。ウクライナ国境周辺に配置された、重武装で高性能VKS戦闘機多数なら、比較的容易に圧倒できたはずである。ウクライナのSA-11やSA-15などの中・短距離移動型SAMシステムは、ロシアのヘリコプターや固定翼機に有効だ。しかし、護衛戦闘機と中高高度で飛行するロシアの大型攻撃機部隊は、ウクライナのSAMを素早く発見し、位置を把握し攻撃できる。その過程で一部航空機を喪失しても、SAMを攻撃すれば、航空優勢を迅速に確立できるだろう。

 

ロシアには航空優勢を確立する動機があり、大規模な混合編成でウクライナの戦闘機とSAMシステムを制圧し、追い詰める戦闘作戦を行う能力は、書類上はある。しかし、VKSはウクライナのSAMの脅威を最小化するため、少数かつ低空での作戦しか続けていない。低空飛行では、状況認識や戦闘効果に限界があり、ウクライナ軍のイグラやスティンガーなど高射程ミサイルの射程内に入る。また、苦境に立たされているウクライナ軍に西側諸国が物資を送り、MANPADSは増えている。MANPADSによる損失を避けるため、出撃は主に夜間に行われており、搭載する無誘導空対地兵器の有効性はさらに低下している。

 

以上の説明がまちがっていれば、NATO諸国やイスラエルのような近代的な空軍が日常的に行う大規模で複雑な航空作戦をVKSが突然開始するかもしれない。しかし、そうでなければ、今後数週間でウクライナ軍への戦闘力と、西側諸国への通常型抑止手段としての価値が大きく問われる事態になろう。

 

Is the Russian Air Force Actually Incapable of Complex Air Operations? | Royal United Services Institute

Justin Bronk

4 March 2022

 

Justin Bronk is the Research Fellow for Airpower at RUSI


オーストラリア潜水艦基地建設をめぐり、西側報道と中国報道を比較してみた。同じ事実が違うメッセージを発する好例。

 オーストラリアが原子力潜水艦基地を新設すると発表しました。今回はBreaking Defenseと環球時報の伝え方をそれぞれご紹介します。まず、米メディアBreaking Defenseです。


Scott Morrison, Prime Minister of Australia, speaks at UN Climate Change Conference in November. (Ian Forsyth/Getty Images)


ーストラリアはAUKUSの一環で100億豪ドル(73億米ドル)で原子力潜水艦運用基地を同国東海岸に構築するとスコット・モリソン首相が本日発表した。軍事基地新設は1990年代初めてで、候補地はブリスベーン、ニューカースル、ポートケンブラの三箇所だ。



基地には特別整備施設、潜水艦乗員や基地要員の宿舎等も含み、英海軍米海軍の原子力潜水艦も利用する、とモリソン首相は述べた。戦略的に意味のある地点で各艦を再補給しつつ、三カ国の潜水艦部隊が情報共有しつつ親密度を上げるねらいだ。


基地構築の初期段階は2023年末までに完了する。


モリソン首相は国政選挙前に原子力潜水艦の国内建造あるいは海外調達の大方針を決めたいとし、AUKUSウォッチャーの関心を集めている。


ピーター・ダットンPeter Dutton国防相は、日曜の報道番組で、「今後数カ月以内に決定する」と発言していた。モリソン首相はこれを否定したが、ダットンと意見が対立していると思われるのを避けるため、「ピーターが言ったように、我々は前進できている」と付け加えた。この件では「時間を無駄にしていない」。しかし、意思決定プロセスまで18ヶ月というスケジュールは変わらないというのだ。


モリソン首相はAUKUS原子力潜水艦事業は単なる調達事業の域を超えていると強調している。「パートナーシップ」だという。米国は技術アクセスを統制しており、「我が国が使いたい技術だけでなく、英国に対しても同様に管理している。そのため、パートナーシップの性質として貿易取決め手続き同様にともにスピードを持って進めていくことになる、という。


さらに広い世界に言及してモリソン首相は暗い見方を紹介した。二元論的で、「中国の好戦的な姿勢や独裁体制の台頭、ウクライナ侵攻で明らかになったロシアの脅威へ、西側の開放性と国際機関の利他的な野心が、知らず知らずのうちに扉を開いてしまった」と発言。


「包容力と融和により独裁政権に改革や穏健化がもたらされるとの期待」は、「裏切られた」と、長年にわたり国会議員を務めてきた首相は述べている。


オーストラリアはこの見解に基づき行動している。「先週火曜日、私はウクライナ防衛を支援するため、約7000万ドルの防衛軍事支援と非殺傷軍事装備および医療品の提供を発表しました。我々のミサイルは現場にある」と述べた。「我々は祈りを捧げたが、弾薬も送っている」


モリソン首相は、ウクライナでプーチンが勝利するかと尋ねられ、以下慎重に評価した。


「ロシア軍の実力は過大評価されていると思う」と、仮定の質問に答えたがらないことで知られるモリソン首相は言った。「ウクライナには抵抗勢力があり、時間とともに拡大するだろう。その結果、ロシアが利益を得られるとしても、維持できなくなる」。


モリソン首相は中国がウクライナ侵攻を台湾占領のモデルとして利用するのではないかという憶測で注目されるインド太平洋にも触れた。


「台湾海峡の状況とウクライナの状況に類似性を見出そうとは思わない。全く異なる状況だ。台湾海峡で予想される反応は、ウクライナで起こっていること全く異なる」■


Australia commits $10B to nuke sub base; US, UK boats welcome

With $70 million defense package to Ukraine, Australian PM says, "So yes, we have offered our prayers, but in Australia, we have also sent our ammunition."

By   COLIN CLARK

on March 07, 2022 at 1:14 PM



では、環球時報の報道ぶりを見てみましょう。中国の権益の観点しかないことが明白ですね。例によって「専門家」に伝えたい主旨を喋らせる格好になっています。記事はトップの扱いで並々ならぬ関心を示した格好ですが....


 

   

中国はオーストラリアの原子力潜水艦基地構築に警戒すべき、と専門家が警句。

 

ーストラリアは、原子力潜水艦基地の建設に巨額の予算を投じる計画を明らかにした。AUKUS協定に基づく初の原子力潜水艦が2038年までに登場すると伝えられていることから、新基地は米国の原子力潜水艦が先に使用する可能性が非常に高いと、匿名希望の北京在住の軍事専門家は述べ、基地は中国にとって脅威となるため、中国は警戒を強め海上防衛力を強化すべきだと注意喚起している。

 

スコット・モリソン首相は月曜日、東海岸に基地を設置すると発表したとオーストラリア・メディアが報じた。

 

「米国と英国の原子力潜水艦の定期的な寄港も可能になる」とモリソン首相は述べた。コリンズ級通常型潜水艦から原子力潜水艦への移行に100億オーストラリアドル(74億ドル)以上が必要になると指摘した。

 

モリソン首相は、ウクライナ危機が必然的にインド太平洋地域に及ぶと主張したが、人民解放軍海軍研究院上級研究員Zhang Junsheは、積極的な国防計画を守るための言い訳だと指摘した。

 

Zhangは、原子力潜水艦基地の整備計画は、実はAUKUSへの加盟と同じ目的に沿ったもので、オーストラリアは米国の世界覇権と地域問題介入の共犯者として行動し、中国を封じ込めるためのいわゆるインド太平洋戦略への協力を決意していると指摘した。

 

AUKUS潜水艦事業は、オーストラリアの近隣諸国や各国の核軍縮支持者の激しい批判にあっており、インドネシアやマレーシアなどの国々は、AUKUSが核軍拡競争に火をつけ、地域の平和を損ねると懸念を示していると、Zhangは指摘する。

 

北京の匿名専門家が月曜日に環球時報に語ったところによると、原子力潜水艦が運用開始するのは2030年代後半と言われているため、オーストラリアの原子力潜水艦が引き渡される前に、中国はより発展し潜在的脅威への対応力を強める。

 

しかし、匿名専門家は、基地が完成すれば、米国や英国の原潜だけでなく、オーストラリア原潜も配備でき、中国への直接的な脅威となると警告している。

 

「おそらくオーストラリアの原子力潜水艦は、AUKUS全体の枠組みの中では、基地整備より重要度が低いのだろう。基地ができれば米原子力潜水艦に中国に近い安定した場所とな利ながら脆弱性を減らせる」

 

Zhangも同様の見解で、基地は「間違いなく米国に利用される」と述べた。

 

 「中国は平和的発展の道を歩むと約束し、海洋防衛能力を開発し続け、起こりうる外部からの脅威に対処し、国家の主権、安全、領土の一体性を守るべきである」とZhangは述べた。

 

China should be on alert over Australia's future nuclear-submarine base: experts - Global Times


China should be on alert over Australia’s future nuclear-submarine base: experts

By Xu Keyue

Published: Mar 07, 2022 10:17 PM


次期大統領専用機VC-25B引き渡しは再度遅延し、2024年以降になると判明。

 



現行のVC-25Aがオファット空軍基地(ネブラスカ)に立ち寄った。Jan. 22. (US Air Force/Josh Plueger)


期大統領専用機の納入は以前の予定からさらに遅れる模様だ。




ボーイングはVC-25B一号機の引渡しを17ヶ月先送りする想定だと複数の消息筋から判明した。


空軍は新日程を了承しておらず、ボーイングと交渉の可能性がある。だが、ボーイングによる新日程予想は社外関係者に伝わっており、昨年時点の12ヶ月遅れが更に拡大していることがわかる。


「当社は空軍当局と密接に作業し、大日程の承認を得たいと考えています」とボーイング広報ディディ・ヴァンニエロップDidi VanNieropが声明を発表した。


空軍協会主催の航空戦シンポジウムで空軍の調達責任者代行ダーリーン・コステロDarlene Costello はVC-25Bの引き渡し時期を2024年との当初予定から「一年超の遅れ」になると認めた。


空軍は独自に事業点検を終えたばかりで、ボーイングとの新日程確定に「一ヶ月ないし2ヶ月」かかるとコステロは見ている。


「重要なのは事業を先にすすめることだ。新日程が決まるまで何もしないわけではない」


計画遅延は昨年夏に初めて明らかになった。コステロが議会でボーイングから通知があり、12ヶ月相当の遅れが発生しているとわかったと述べていた。


ボーイングはCOVID-19パンデミックさらに契約企業GDCテクニクスの倒産を遅延の腫瘍原因に上げている。GDCテクニクスはVC-25Bの内装工事を担当していたが、ボーイングは契約を破棄し、同社を告訴し、同社の作業が一年以上遅延しているのを理由にしていた。


遅延による費用増加分はボーイングが負担することになる。契約が39億ドルの固定価格のためだ。同契約で技術製造開発業務で747を大統領専用機に改装し、防御装備(内容は機密扱い)、電子装備および通信装備の保安強化が行われる。■


Air Force One replacement facing additional delays, up to 17 months late: sources - Breaking Defense Breaking Defense - Defense industry news, analysis and commentary

By   VALERIE INSINNA

on March 04, 2022 at 3:36 PM


前線のロシア軍はここまで苦労している。車両にまにあわせの丸太で待ち伏せ攻撃に耐える....プーチンの威勢のいい発言とあまりに対照的な姿からロシア軍の劣勢ぶりがわかる。

 Russian Trucks Wood Ukraine Armor

VIA @OSINTTECHNICAL

 

 

給活動の悪化が伝えられる中、ウクライナの道路がロシア軍殺戮の場と化している。重装甲車両や装甲兵員輸送車が対戦車兵器の餌食になる一方、非装甲車両は小火器にさえ脆弱だ。また、前進するロシア軍に人員物資を運搬する軽車両や非装甲車両の損失も増えている。そのため、ロシア運行要員は、ウクライナ内部へ続く危険なドライブでトラックを強化しようと工夫している。

 

土曜日公開されたロシアのKAMAZトラックの画像では、フロントバンパーに丸太を積み上げ、即席装甲としていた。ロシア車両に見られる「V」マークも残ったままだ。前面部分の保護に、木の板やジャンクメタルを使う車両もある。

 

VIA @OSINTTECHINICAL

 

車両は、貴重な燃料トラックと並んでPMP架橋の部材を積んでいるようだ。PMP橋は、開戦直前にチェルノブイリ立入り禁止区域のベラルーシ側でプリピャチ川Pripyat Riverに架けられたと思われる。

丸太は背後の森から切り出し、小銃の攻撃からラジエーターを保護するためだろう。ロシア乗員にとって、待ち伏せにあい、トラックがオーバーヒートで動けなくなるのは最も避けたい事態だろう。

 

ロシア軍がウクライナ侵攻で車両防御を改良した例は、これ以外にもある。鹵獲したT-72戦車の1台は、爆発反応装甲ブロックを強化するために砲塔に土嚢を載せていたが、これは無駄な試みだった。また、オフロード走行で脅威となる泥から車両脱出させる手段として、丸太を搭載した部隊もあった。さらに、無人機や対戦車誘導弾による攻撃に対抗するべく、侵攻前から戦車には檻のような即席装甲も搭載されている。

 

ロシア軍のウクライナ進攻に伴い、ロシア、クリミア、ベラルーシの友好国への補給線が長くなったため、安全性確保がより必要になった。西側の国防関係者やロシアのリーク情報によると、補給線は混乱しており、衛星画像で見られるキーフ北部のトラックと装甲車の数キロに及ぶ渋滞もその一例だ。ウクライナでは、ロシア軍を混乱させ、待ち伏せの罠に誘い込むべく、道路標識を取り外している。

 

ウクライナ側の攻撃を受け黒焦げになった残骸のビデオや画像が大量に出回っている。こうした攻撃は、ウクライナ地上軍、抵抗勢力、戦闘機、ヘリコプター、ベイラクターBayraktar製TB-2無人機が行っている。待ち伏せにより、車両多数が損傷を受け、道路に放置されている。

 

丸太がロシアのラジエーター防御にどれほど効果があるのか、火炎瓶攻撃にトラックがどこまで脆弱なのかは不明だ。しかし、木材を装甲材とする発想は前からあり、ロシア軍部隊が待ち伏せ攻撃に弱いことを考えれば、何もないよりはましと言う程度だ。

 

 

PUBLIC DOMAIN

硫黄島でM4A3 が木材で防御していた.

 

つまるところ、必要は発明の母であり、たとえ丸太がラジエーター防御に何がしかの効果があるのなら試す価値があるのだろう。■

 

 

Desperate Russian Rear-Area Troops Are Armoring Their Vehicles With Wood Logs

ssian drivers are doing whatever they can to survive Ukrainian ambushes.

BY STETSON PAYNE MARCH 5, 2022


2022年3月7日月曜日

主張 きびしい制裁でロシアが中国に運命を握られる事態が生まれる

  

 

回のロシア制裁では迅速さと効果で世界が驚いた。ただし、制裁の影響は、ウクライナ戦争が追わても続く。ロシアにとっては深刻な経済危機の始まりであり、ユーラシア大陸に広がる中国勢力圏に沈む可能性が出てくる。

 

 

制裁で直ちに出る影響は深刻だ。ロシアの新興財閥オリガルヒの関心は、財産と金融資産の保全にある。例えば、アブラモビッチRoman Abramovichは、チェルシーフットボールクラブを慈善信託に移管したと言われる。だが財産を隠しても、オリガルヒは海外に戻れないだろう。

 

深刻なのは一般ロシア国民だ。ルーブルは記録的水準に急落し、金利は2倍に上昇し、市中銀行の資金量は不足気味である。ダイムラーなどのメーカーやBPエクソンモービルシェルなど西側エナジー企業は、ロシア事業の廃止を発表した。ボーイングの部品供給停止で、ロシア航空会社の欧米製航空機700機は飛行できなくなる。ロシア向け海上貨物の予約は停止された。ロシア市場で消費財を販売するEU企業は輸出を停止した。サプライチェーンの遮断でロシア消費者が大きな打撃を受ける。

 

このままだと、ロシア経済は停止状態になるか、中国の慈悲にすがるかのいずれかだろう。

 

ロシアの対中貿易は急成長中だ。2020年、ロシアの対中輸出は日用品中心に約490億ドルだった。同年ロシアの中国からの輸入は約540億ドルで、主に製造品(二流軍需品を含む)だった。中国はロシアへの制裁措置に加わっていない。したがって、両国の二国間貿易は、さらに拡大する予想がある。

 

ロシアの戦略思考家は、対中貿易の拡大を歓迎するだろう。短期的には、制裁による損失をある程度埋め合わせる効果が生まれる。しかし、長期的に見れば、ロシアは戦略的な罠にはまる。ロシア貿易の主要市場は中国のみとなる。

 

ロシアの自業自得が悪化してもかまわないと中国がほのめかしていることがロシアには不吉にきこえるはずだ。中国の準公式紙環球時報は、ロシアによる侵攻を肯定しないものの、NATOの東方拡大へのプーチンの不満に理解を示し、西側に傾いたウクライナを非難している。2月28日の中国外務省報道官発言の論調とほぼ同じだ。また、微妙な兆候に中国の考えがあらわれている。中国の著名歴史学者5人がモスクワの侵略を糾弾する共同書簡に署名した。中国でこのような書簡は大きな意味を持つ。中国は言論や文章表現を厳しく統制している。中国が学者に共同書簡を書かせ、発表させたのは興味深い。ただし、中国はロシアを非難する準備はしていない。ウクライナ戦争で露呈するプーチンの脆弱性を利用し、中国はロシアへの戦略的態勢を柔軟に取ろうとしている。

 

ロシアにとって、準国家メディアの記事や学術書簡よりはるかに不吉なのは、中国の外交トーンの変化だ。北京オリンピックでのロシアとの共同声明で、中国は「限りない友情」を両国が享受し、「禁じられた」協力領域は存在しないと表明していた。これに対し、2月28日記者会見での外務省報道官は、中国当局の古典的なあいまいさを用いた。中国ロシア両国は「非同盟が特徴の」関係で、「協調する包括的な戦略パートナー」と呼んだ。中国の呼称への敏感さ(リトアニアが台湾を「間違った」名称で呼んだときの危機があった)を考えれば、ロシアは突然のトーンの逆転に特に注意するべきだ。中国はモスクワに好意を抱いているわけではない。

 

モスクワの観点で一番気になるのは、中国の国有銀行2行が、商品購入用のロシア向けドル建て信用状発行を制限し始めたことだ。中国がロシアと侵攻のタイミングを先に協議していたとの報道もあり、中国が慎重に検討していたのがうかがえる。

 

プーチンと習近平は、民主主義と法治主義に対し共通大義を見出す。中国は、ウクライナ戦争への制裁で、短期的にはロシアを救済するかもしれない。しかし、ロシアの孤立が深まれば、プーチンの遺産はロシア帝国の復活どころではなくなり、ユーラシア大陸唯一の超大国の属国となりかねない。プーチン支持者は、ロシアの未来が中国に握られていいのか、問うべきだろう。■

 

Russia's Chinese Future - 19FortyFive

ByThomas GrantPublished14 hours ago

 

Thomas D. Grant served as Senior Advisor for Strategic Planning in the Bureau of International Security and Nonproliferation, U.S. Department of State, 2019-2021. He is the author of Aggression Against Ukraine: Territory, Responsibility, and International Law (2015).

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