2022年9月6日火曜日

イランがSu-35導入を検討中。ロシアとの無人機商談が背景にあるのか。国産技術に自信たっぷりのイランだが、米国の評価は低い。

 

 

ラン空軍司令官のハミド・ヴァヘディ准将Brigadier General Hamid Vahediは日曜日、イランが戦闘機購入を模索していることを明らかにした。

 ヴァヘディ准将は、ロシアからのスホイSu-35戦闘機の購入が空軍の議題であると発表した。「この問題は議題に上がっており、将来的に4++世代戦闘機を手に入れられることを望んでいる」。

 空軍司令官はまた、スホイSu-35の購入に関する最終決定権は、陸軍と軍参謀本部にあることを強調した。

 Su-35は、N011Mレーダーをさらに発展させた強力なN035 Irbis-E(Snow Leopard)PESA(受動電子走査アレイ)レーダーを採用し、武器管制システムの中核としている。最大400km離れた空中目標を探知でき、30個の空中目標を追跡し、8個と同時に交戦可能で、さらに合成開口モードを使用して地上の高解像度画像を提供できる多機能レーダーである。

 また、コックピット前方にはOLS-35光電子照準装置を装備し、赤外線探知追尾も可能である。また、敵の追跡からの防御に、L175MキビニーM電子対策システムを装備している。Su-35の正面レーダー断面積を半分にし、敵レーダーの検出範囲を最小限に抑えるために、エンジン入口とエンジン圧縮機前段にレーダー吸収材を適用している。

 Su-35は2基のサトゥルンAL-41F1Sターボファンエンジンを搭載している。AL-31Fの高度改良型であるAL-41F1Sは、Su-57のAL-41F1(izdeliye 117)と関連しており、エンジン制御システムが異なっている。

 エンジンは、回転軸が斜めに傾いた推力偏向ノズルを搭載し、ノズルはピッチに対し一平面で動作するが、傾きにより各エンジンノズルを異なるベクトルにすることでロールとヨーの両方を発生させる。この構造はSu-30MKIで最初に実装され、Su-57も採用している。

 

イランとロシアの無人機協力を危惧する欧米諸国

欧米のメディアは、テヘランとモスクワ間でドローン取引が行われる可能性があると、しきりに報道している。

 先週発表されたNBCニュースは、「ロシアはウクライナ戦争のためにイラン製無人機の第一陣を取得したが、無人機の最初のテストで技術的な問題に遭遇した」と、米国当局者の主張を引用している。

 「ウクライナ戦争の長期化と欧米制裁の壁に直面するロシアは、両国で利害が一致するため、軍備増強と経済浮揚のためイランに目を向けている」と記事は続けた。 これは、イラン当局者が、イランが無人機に関してロシアと協力していることについてのコメントをまだ拒否している間の話だ。

 「ロシア貨物機は今月、イランの飛行場で数日間にわたってMohajer-6とShahedシリーズ無人航空機を積み込み、無人機をロシアに運んだ」と、米当局者3名がNBC Newsに語った。この輸送は、ロシアがイランから『数百機』の無人機を輸入する計画の一部である、ととNBCは付け加えた。

 イランのドローン能力が軍事戦略家の注目を集めていることは周知の事実だ。また、イランが国内の知識を投入し高度な無人機を製造し、それを輸出する用意があることも、大いに注目される。

 しかし、イランはウクライナでの戦争は対話によって終わらせるべきだと主張している。

 革命防衛隊IRGCの航空宇宙司令官アミール・アリ・ハジザデAmir Ali Hajizadehは8月22日、ドローン産業の進歩を支える頭脳は知識集約型企業であると発表した。

 イランは、いかなる状況でもドローン技術の進歩を止めることはないと明言している。

 防衛能力は、軍隊と知識ベースの企業との相互作用の産物であるとハジザデは指摘し、「知識ベースの生産は飛躍を生み出すことができるので、外国に依存しない。多くの分野で知識ベースの対策が必要である」と付け加えた。

 IRGC航空宇宙部長は、こうした措置が防衛産業でとられていると述べ、イランは過去にこうした能力を保有していなかったと指摘した。

 「昔は有刺鉄線を輸入していたが、今はドローンを輸出している。この道は間違いなく、知識集約型の学部や大学、軍エリートの関係を確立することで切り開かれた」と強調した。

 また、IRGCの航空宇宙部門は、障害を克服できるよう研究部門に投資してきたと述べた。

 「このため、イランは空で優位に立つことができ、欧米諸国は、イラン製無人機とミサイルの能力を制限するため交渉を優先させるとくりかえし表明している」と述べている。■


Iran to purchase Sukhoi Su-35 from Russia: report - Tehran Times

September 4, 2022 - 22:7



中国経済の崩壊はいつが問題ではない。すでに始まっている。史上最大の経済危機が現実になる。

 

 

経済を刺激するため、中国当局は国内銀行に融資ノルマを課している

成困難な目標をめざし、巧妙な銀行は融資実行と同時に、借り手が同額を同じ金利で金融機関に預けることを可能にしている。

もはや企業は新プロジェクトを立ち上げる資金を欲しがってはいない。中国の役員室や社会全体では経済に対する悲観的な考えが支配的だ。

中国経済が崩壊するかが大きな話題ではない。輸出部門を除けば、中国経済はすでに崩壊している。大きな問題は、成長を加速させるのに成功してきた中国の景気刺激策が、今回は機能していないことである。中国経済は一言で言えば、疲弊している。

これまで経済が疲弊しているように見えるとき、中国経済界は中央政府の大規模な景気刺激策で成長をを期待できた。温家宝 Wen Jiabao前首相が、2008年の景気後退で世界中が苦しむ中、中国が縮小を回避できたのは、この方法だった。

温首相は大規模な景気対策を行った。2009年から半年の間に、北京は米国の銀行システム全体に匹敵する規模の信用を追加した。2008年末にはアメリカの3分の1にも満たなかった経済規模に、温家宝首相は大金を注ぎ込んだ。

温家宝首相は行きすぎた。Jキャピタルリサーチのアン・スティーブンソン・ヤン Stevenson-Yangによると、中国人は長い間、自国を最後尾の車両が火事になった列車に例えてきたという。炎を後方に吹き飛ばすために、列車は速く走らなければならない。しかし、列車が減速すれば、炎が客車を飲み込んでしまう。

「それが中国であり、負債なのです」。「十分な資金を投入すれば、古い借金の借り換えを続けられますが、指数関数的に資金を投入しなければなりません」(ヤン)。

この国の負債は指数関数的に増えており、おそらく名目国内総生産の約7倍の速さで負債を作っている。

中国がどれだけの負債を積み上げているかは誰も知らないが、負債総額はGDPの350%に相当する額になっているかもしれない。悪名高い「隠れ借金」と北京の経済生産高報告の虚偽誇張のため、この割合はさらに高くなっている可能性がある。

負債の規模と無関係に、中国の上級指導者は解決できない問題に直面している。とりわけ大手不動産開発業者の債務不履行、住宅所有者がローン支払いを拒否するいわゆる「住宅ローンボイコット」、銀行の取り付け騒ぎから明らかである。

このゲームが永遠に続くわけではないことが共産党にはわかっており、以前から知っていた。2007年、温家宝首相は、経済の「四大不況」について、自ら語った。当時の成長は、「不安定、不均衡、非協調、持続不可能」であったという。

何が起こっているのか?

温首相の後継者李克強Li Keqiangは3月、2022年の成長率目標を「5.5%前後」と発表したが、上級幹部は現在、この数字は単なる「指針」であり「厳しい目標」ではないと閣僚や省レベル関係者に伝えている。

北京の公式数値は、期待値の引き下げが現実の認識であることを示唆している。国家統計局発表によると、今年の第1四半期は4.8%、第2四半期は0.4%の成長率だった。

多くのアナリストは、今後数年間は成長率が緩やかに低下すると考えている。しかし、その評価は間違っているようだ。北京大学光華管理学院のマイケル・ペティスMichael Pettisは9月3日のツイートで、「持続可能な成長率に戻るだけでなく、これまで記録した持続不可能な成長の多くも逆転するだろう」と予測している。

カーネギー国際平和財団上級研究員でもあるペティスは、中国経済が長期にわたる収縮期に入ることを丁寧に示唆したのだ。同国の膨大な債務超過を考えれば、減速は危機を意味する。

昨年秋の長江集団Evergrande Groupの破綻は、重要な不動産部門でその他のデフォルトを事実上誘発したが、国全体に何が起こるかを予告している。

北京は現在、景気後退を回避しようとしており、アナリストは北京が国内総生産を創出するため様々な方策を採っていることを心強く思っている。先月末の国務院会議で李首相は、1兆元(1450億ドル)以上の資金を含む19項目の計画を発表した後、中央政府の景気刺激策は2020年対策よりも「より強力」であると述べた。また、そのプログラムを 「合理的」かつ「適切 」とした。

Chinese Yuan

Chinese Yuan (Image: Creative Commons).

Bloombergが報じたように、首相発表は経済学者から懐疑的に迎えられた。しかし、経済学者でなくとも不安はある。非生産的な投資に多額の資金を費やせば、長く危機を回避できないことは明らかである。

結局、スティーブンソン=ヤンが言うように、中国の客車は火に包まれているのだ。史上最大の経済危機を回避できる見込みは、もはやない。■

China’s Economy Is Headed For One Of The Largest Meltdowns Ever

ByGordon Chang

https://www.19fortyfive.com/2022/09/chinas-economy-is-headed-for-one-of-the-largest-meltdowns-ever/


2022年9月5日月曜日

エナジー安全保障の観点から宇宙配備の太陽光発電システムに再び注目。中国の野望をここでも食い止められるか

 

欧州宇宙機関は、宇宙太陽光発電のフィージビリティスタディを11月に開始したいとする (ESA Image Credit, Andreas Treuer)


60年代の太陽光発電構想が、国防総省やNASAなど米国内だけでなく、北京を含む世界各地で再注目されている



工衛星を使い宇宙空間で太陽放射を集め、それを地球に転送しエナジーに利用するアイデアは、1968年に初めて提案され、1970年代半ばから後半にかけての「エナジー危機」で米国政府の関心を引いた。

 NASAやエナジー省による技術開発構想が、技術的・資金的な問題で頓挫し、40年後に国防総省がそのバトンを引き継ぐ。 今は亡き国家安全保障宇宙局による2007年報告書では、宇宙を利用した太陽光発電は「米国とパートナーの安全保障、能力、行動の自由を著しく向上させる戦略的機会」としていた。

 しかし、結局のところ、当時の国防総省指導部は、この問題を「自分の問題ではない」とし、報告書はペンタゴンの奥深くの棚にしまわれていた。

 しかし、運用上効果的なシステム技術的な挑戦開発は続いており、また、それを支えるアーキテクチャの高い投資コストに関する疑問も残ったままだ。

 例えば、欧州宇宙機関(ESA)は8月中旬、SOLARISと呼ばれるフィージビリティ・スタディ・プログラムを立ち上げるべく11月の理事会で資金提供を求めると発表した。ESAは8月16日にYouTubeで、この取り組みは、気候危機を緩和するのに役立つ将来のクリーンなエナジー源を求める欧州の動きの一環と説明している。 

 成功すれば、SOLARISは2025年からフル予算の開発プログラムになる。

 オランダにあるESAの欧州宇宙技術研究センター関係者がBreaking Defenseに語ったところによると、ESAはSOLARISの予算案を発表しておらず、ESA関係者は加盟国代表と関心の度合いを探っているという。

 「既存のエナジーソリューションに依存した場合、2050年までにネットゼロの目標達成で大きな課題を抱える国からの関心を期待している」と、同関係者は電子メールで述べた。

 実地経験を持つ欧米関係者によると、今のところヨーロッパ軍部はこのコンセプトに関心を示していない。代わりに、大陸の焦点は気候や将来のエナジー自立に当てられている。後者の問題は現在、ドイツのようにロシア天然ガスに大きく依存するヨーロッパを悩ませている。現在進行中の戦争で、モスクワはウクライナ支援国への輸出を減らし続けている。

 しかし、EUには未加盟だがESAには参加しているイギリスでは、イギリス宇宙局、国防省の双方が構想を支持している。

 英国宇宙局は8月26日、最大600万ポンド(約6億9000万ドル)相当のプロジェクトの計画の「宇宙太陽光発電イノベーションコンペティション」の7月のガイダンス文書を更新した。そして7月14日にロンドンで開催された Global Air and Space Chiefs' Conference で、国防省初の宇宙作戦部長は、同コンセプトの将来性について雄弁に語った。

 特に Harv Smyth 航空副司令官は、中国が太陽光発電を利用する運用可能な衛星を配備する予定を当初の 2030 年予定より 2 年前倒ししていると指摘し、宇宙太陽光発電構想の支持者が表明している、北京がこれからのエナジー市場を支配する意図を有しているとの懸念に同調した。

 The Aerospace Corporationが発表した2020年レポートによると、中国は太陽光発電衛星の開発において「グローバルリーダー」をめざし、その利用を「化石燃料や外国産石油依存から転換するための戦略的必須事項」と見なしている。

 日本、ロシア、インドも開発を進めているが、北京ほど野心的ではないと、同誌は指摘する。

 米国ではここ数年、政府の関心を再び高めたのは軍であった。結局のところ、米軍は安価なエナジー源を見つけることに大きな財政的な利害関係がある。DoDは米国で最大の単一エナジー消費者であり、世界最大の組織的石油消費者であると、ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所の2019年研究が明らかにした。2001年から2018年にかけ、軍は「米国政府の全エナジー消費の77~80%を一貫して消費してきた」と同研究は述べている。

 しかし、今のところ、米国における宇宙配備型太陽光発電の取り組みは、小規模で、科学的な研究と実証の領域、つまり運用能力の開発への道に立ちふさがる技術的障害を解決することを目的としたものに留まっている。

 例えば、マイクロ波やレーザーを使い、太陽放射から変換された高周波エナジーを衛星に転送できる。5月28日付けのSpace Newsによると、NASAは宇宙を利用した太陽光発電を地上の場合と比較し、打ち上げコストの低下などの技術的進歩に照らして潜在的なコストを検討する予定だという。

 一方、空軍研究本部AFRLは、一連の基礎技術を開発する野心的な宇宙太陽光発電増設実証研究(SSPIDR)構想の下で、次のテストに向け準備を進めている。

 ノースロップグラマンは、SSPIDRでAFRLと提携し、自社研究資金として約1500万ドルをこのプロジェクトに投入している。同社はまた、このイニシアチブの目玉ミッションである、2025年に打ち上げ予定の「Arachne」実験衛星のため、2018年にAFLRから1億ドルをわずかに上回る金額を受け取っている。

 今月末に予定さの同テストでは、地上で電磁エナジーを使用可能な電気に変換するために必要な整流アンテナ(rectennas)に焦点を当てると、AFRLの広報担当者は述べている。

 AFRLとノースロップグラマンは、最初に「2022年5月初旬にRFからレクテナの無線電力ビーミングを成功させた」それは「SSPIDRが完全に機能する宇宙ベースの飛行実験に向けて進行する際に完了した作業を検証する重要なステップだった」と、プロジェクトに従事するノースロップグラマン研究フェロー、ポール・マシューズは述べています。

 「より完全なデモンストレーションは9月下旬に行われ、RFビームを制御し、エナジーを遠隔地のレクテナ数カ所に送る能力を証明します」と彼は電子メールで付け加えました。

 もうひとつのSSPIDRサブ実験は、SPIRRAL(Space Power Infrared Regulation and Analysis of Lifetime)と呼ばれ、2023年夏の打ち上げに向け進行中だ。

 SPIRRALは、「国際宇宙ステーションに搭載される可変放射率材料VEM」をテストすると、AFRL広報担当者は述べている。この材料は、衛星システムを襲う太陽放射の強烈な熱を管理するため必要だ。■


The next energy frontier: A race for solar power from space? - Breaking Defense


By   THERESA HITCHENS

on September 02, 2022 at 10:14 AM


カタールでの2022ワールドカップ(11月21日開幕)に備え、タイフーン戦闘機隊はじめハイテク警備体制が着々と準備されている

 

メイン会場となるルサリスタジアム June 20, 2022 in Doha, Qatar. (Photo by David Ramos/Getty Images)




国際支援とハイテクで、ワールドカップ大会で不測の事態発生を防止する



2022年FIFAワールドカップが数カ月後に迫り、カタールはユーロファイター・タイフーン第1陣を受領した。

 半島西部のドゥハン・タミム空軍基地の盛大な式典で、F-15QA、NH-90戦術輸送ヘリコプターとその海軍仕様機、ラファール戦闘機も披露された。

 タイフーンは、イギリスと共同運営のタイフーン合同飛行隊(通称12飛行隊)の一部となる。この飛行隊は、11月21日から12月18日までの間、ワールドカップで航空警備を担当する。

 「カタール首長国連邦空軍(QEAF)との共同飛行隊であるタイフーンが、大会期間中に空域をパトロールすることをうれしく思います」と、ベン・ウォレス英国国防相は5月に述べている。

 同機はテロ対策任務として、カタールが敷設しようとしている警備体制で最新の投入装備となる。


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中東アナリストのアンドレア・クリーグAndrea Kriegは、カタールは不安定な地域とも友好関係を保っていると述べている。「このため、国家主体や代理勢力がワールドカップを悪用することは考えにくい」とし、テロ攻撃など非対称的な脅威にも、カタールは十分な態勢を整えていると述べている(英国は、そうした脅威を「排除できない」と認めているが......)。

 カタールは国際パートナーと協力し、空、海、地上のセキュリティを強化するためハイテク機能を獲得している。以下紹介する。



空の警備体制

2020年6月に合同飛行隊として編成されて以来、12飛行隊はカタールで定期的に演習を行っており、今回のワールドカップ派遣は事前計画されたものと重なると英国国防省は発表している。

 タイフーン自体は、2017年12月にカタールとBAEシステムズが、同機24機とホークMk167高等訓練機9機を総額80億ドルで調達する契約を結んだ成果である。

 イタリアのレオナルドは、QEAFユーロファイター・タイフーンの機体とエイビオニクスの両方で寄与している。タイフーンには、ECRS Mk0レーダーと、Praetorian DASS(作戦環境を監視し、積極的に対応し、対空および対地の脅威から保護することを目的とする)とPIRATE IRST(Passive InfraRed Airborne Track Equipment - 赤外線捜索・追跡)が搭載されているが、いずれもレオナルドが主導している。

 カタール領空は、Kronosレーダーと関連する指揮統制センターのネットワークで構成するレオナルドの低空監視・防衛システムで守られる。レオナルドは、ハマド国際空港の航空管制用電子機器と気象観測機器すべてを担当し、ワールドカップに参加する選手や観衆の到着を確実なものにする。

 また、同国は2018年8月契約で、レオナルドからNH90ヘリコプターの納入を受けた。機体には、フランスのタレスがENRレーダー、エイビオニクス、EW CATS(電子戦、ヘリコプター用小型空中脅威調査機)、無線機、伝送データリンクを供給している。

 レオナルドは、海軍用と戦術用のNH90ヘリコプター28機のうち6機を納入しており、プログラムは順調に進んでいる。カタール空軍に加わるこれらのヘリコプターは、イタリアの陸海軍の支援のもと、飛行士と技術者が広範な訓練を受け、運用を開始している。

 King's College Londonの主任講師であり、ロンドンを拠点に中東地域に特化した戦略リスクコンサルティング会社MENA analyticaのCEOであるクリーグは、NATOもQEAFを支援する予定と述べ、「カタールは世界でも有数の領土を持つ空軍を持っており、その空域への深刻な脅威に対抗、抑止できる体制が整っています」と評する。


海上警備体制

半島が大部分を占め、陸上国境は南のサウジアラビア王国のみというカタールにとって、海からの脅威の接近を防ぐことは、領空の確保と同様に重要だ。そのため、カタールは近年、レーダーや監視機能を備えた高性能船舶の調達契約を多数結んでいる。

 安全保障への投資の一環として、カタール海軍は2016年に締結した約50億ドル契約で、イタリアの造船会社フィンカンティエリが建造したアル・ズバラ級コルベット4隻、上陸プラットフォームドック、海上巡視船2隻を発注している。4隻目のコルベットは、今年4月下旬にムッジャーノ(ラ・スペツィア)造船所で進水した。

 新造船はレオナルドの戦闘・監視システム、特にレオナルド3D AESA Grand Kronos海軍レーダー、IFF(Identification Friend or Foe)識別装置とトランスポンダー、IRST監視・追跡スイートからなるコマンド管理システムを搭載している。

 今年初め、Dimdex 2022展示会で、カタール海軍は、海軍オペレーションセンター(NOC)を開発するため、レオナルドと新契約を締結した。同センターは、海軍がカタールの領海、排他的経済水域および接続水域を監視し、管理することを保証する。レーダーや海上の追跡をリアルタイムで制御する同センターには、電子戦システムが含まれる予定だが、ワールドカップに間に合う形で稼働できるかは、今のところ不明だ。


地上の警備体制

大会期間中は、航空機や船舶による警備が行われるが、警備専門家が特に懸念するのは、テロや暴走した群衆といった非対称的な脅威の標的になる大会そのものだ。

 「他のスポーツイベントと同様、ワールドカップ期間中の最大のリスクは、群衆の統制だ」とクリーグは言う。「ドーハのような一つの都市に大勢が集まると、群衆の動員、暴動、喧嘩などのリスクが生じる。かなり狭い範囲に多数の人々が突然移動することで、集団パニックが発生する可能性がある。

 「カタールの法執行機関は、世界各地のパートナーとともに、このようなイベントのため訓練を受けており、群衆統制に関しても十分な備えをしています」。

 クリーグは、同大会にイスラエル人、サウジアラビア人、イラン人など、ライバル国、敵対国の国民が集まるため、事件が起こる危険性が高くなると指摘する。

 そのため、カタールが採用すると予想される最重要技術として、情報収集、監視、諜報システムなどがある。

 クリーグは、カタールが「視聴覚センサー、ドローン、CCTVを完備した広範な統合監視ネットワークを開発し、国家安全保障センターに送り込んでいる」と述べた。同センターでは、潜在リスクが評価され、脅威が顕在化する前に対処できる可能性があります」。タレスの空中・海上システムは、地上でも統合されている、とクリーグは述べている。

 スタジアムのすぐ近くでは、カタールはユタ州に本拠を置くフォーテムテクノロジーズFortem Technologiesとドローン対策で協力していると、同社が7月に発表している。

 同社CEOのティモシー・ビーンはBreaking Defenseに対し、スカイドームとして知られる同社システムは、「低コラテラルダメージが必要な場合にキネティックディフェクションで世界最高」と語っている。このシステムに含まれるDroneHunterは、名前が示すように、文字通り上空で他のUAVを狩り、ネットを発射して脅威を繋ぎ止め、指定場所に移動させることで排除する。

 ビーンは、スタジアムや試合の安全を確保するために配備されるシステムの数についての質問には答えず、カタールでのシステムのテストや、同国の既存レーダーやデータ共有ネットワークとの相互運用性についての詳細も説明しなかった。かわりに「カタールは素晴らしい体験を保証するためにあらゆる手段を尽くしている」と述べ、「来場者の安全と安心のため慎重に計画している」とも語った。

 クリーグは、航空・海上警備の準備と同様に、ドローン防衛でも、不正な民間ドローンは別として、それほど大きな動きはないだろうと考えている。

 よりエキゾチックで、しかし潜在的にはるかに致命的な脅威に対し、NATOは6月に「化学、生物、放射線、核(CBRN)物質による脅威への訓練」を含む支援を提供すると発表し、スロバキアとNATOの合同CBRN防衛センター(チェコ)から提供される。

 このほか、ルーマニアがVIP護衛や簡易爆弾対策などの訓練を提供する。

 さらにパキスタンが治安強化のためカタールに兵力を提供する可能性があると報じられた。

 以上から、2022年大会では、国家、代理勢力、テロ集団、あるいは単なる乱暴な群衆からの脅威は比較的少ないとクリーグは見ている。■


From fighter jets to counter-UAV tech, Qatar prepares World Cup security - Breaking Defense

By   AGNES HELOU

on September 02, 2022 at 2:25 PM


2022年9月4日日曜日

テンペストの開発はどこまで進んでいるのか。展望と日本、イタリアの関与度合いは。

  

Leonardo illustration

 

4年前のファーンボロー航空ショーで発表されたテンペスト戦闘機計画は、ヨーロッパに旋風を巻き起こした。同プログラムは新たな実証機と国際パートナーシップ確保に照準を合わせ、関係者は将来の戦闘につながる機体の実現を期待している。

 

 

英国防省は、今年の航空ショーで、テンペスト未来戦闘航空システム(FCAS)による次世代飛行実証機を2027年に飛行させると発表した。また、防衛関連企業は、最終製品に向けどの技術を構築し、試験を行っているのか、詳細を明らかにした。

 

同プログラムでは、有人型または無人で運用でき、スウァームとして知られる小型無人機多数を制御可能な第6世代戦闘機を想定している。国防省によると、実証機は「ステルス対応機能」の統合など、最終的な戦闘機に搭載される新技術のテストを目的とする。

 

超音速実証機は、技術テストに加えて、2035年までに次世代ジェット機を運用開始するため開発者が使用するスキル、ツール、プロセス、テクニックを紹介し、テストする。

 

新しい実証機に加え、英政府は日本との新たなパートナーシップを航空ショーでアピールした。三菱重工業が主導する日本のF-X戦闘機プログラムは、テンペスト戦闘機とともに、プログラム最適化につながる情報を共有し、学んでいく。

 

国防省のリチャード・バーソンRichard Berthon未来戦闘機担当部長は、英軍が日本と協力条約を結び120年経つと述べた。

 

日本の協力範囲は未定だが作業関係は軌道に乗っているという。

 

「エンジニアリング面では、軍と連携がうまくいっていると思います。私たちは、価値観や機会を共有し、ミッションを共有しているという実感があり、とてもエキサイティングだ」(バーソン)。

 

ベン・ウォレス英国防相は、日本やヨーロッパのパートナー、イタリアとの「最先端」の技術協力は、世界における英国の同盟関係の際立った利点であると、声明で述べた。

 

フォーキャスト・インターナショナルのヨーロッパ、アジア、オーストラリア、環太平洋地域担当上級アナリスト、ダン・ダーリング Dan Darlingは、日本がF-Xステルス戦闘機を発表したのとほぼ同じ時期にイギリスはテンペスト開発を開始したので、協力は「自然のパートナーシップ」のように思える、と言う。

 

「日本との提携で技術革新を共有することは非常に理にかなっています」。

 

英国が大規模戦闘機計画を実施するのは、大きな後ろ盾がなければ難しい、と彼は付け加えた。イギリスはF-35戦闘機の第一級国際パートナーで、第五世代機を開発せず第六世代機を作るのは困難だ。

 

このパートナーシップは、宇宙などの防衛分野での協力の出発点となり得ると、彼は付け加えた。両国には「非常に野心的な」宇宙開発プログラムがあり、これを活用できる、という。

 

「常に大局的な視点が必要だ。航空機だけではないのです」。

 

一方、テンペスト開発におけるこの4年間は驚くべきものだったと、レオナルドUKの主要航空プログラムのコリン・ウィルスColin Willsは言う。元戦闘機パイロットであるウィルスは、BAEシステムズロールスロイスMBDAミサイルシステムなどが国防省と密接な協力を求めたプログラムに最初にサインしたとき、「少し懐疑的」だったと言う。

 

「昔は、逆でした。国防省は、産業界に対して、『これが我々の望むものだ、さあ、作ってみろ』と言うのです」と、彼は航空ショーで述べている。

 

しかし、今回の新しい没入型アプローチはうまくいっていると言う。

 

「当社は『チーム・テンペスト』として、コンセプト立案と運用分析のレベル、それ以上のレベルでの重要なメンバーとして、本当によく働いています」。

 

ウィルスは、チームの協力の1つにデジタル技術の活用があるという。例えば、英国北部にあるBAEシステムズが主導する実証実験では、合成モデリングとモデルベースシステムエンジニアリングを使用している。

 

ウィルスは、デジタル・システムによって、エンジニアやプロジェクト・リーダーが戦闘機プロトタイプを以前より速く設計できるようになったと述べている。

 

「各地の安全なビデオ会議を通じコミュニケーションできるため、一緒に行うことができる」「このため、アイデアを急に変更する必要が生まれても、すぐに実行できる」。

 

レオナルドU.K.は実証機に取り組む一方で、飛行テストベッド機材に向けた技術にも熱心に取り組んでいると、ウィルスは述べた。

 

レオナルドがテンペストプログラム用に開発中のステルス対応機能の1つが、多機能無線周波数システム、センサースイートレーダーだ。同社の主な作業は、統合センシングと非キネティック効果を飛行テストベッド機のボーイング757 Excaliburに接続することだ。

 

「従来の標準レーダーより高性能です。しかし、詳細については、話すことができません」。

 

センサーは機首に設置される可能性が高いが、機体の他の部分に追加される可能性もある。最終的な位置は、イタリアや日本との共同分析を含め、このコンセプトの解析が進行中のため未定だ。

 

「最終決定は、今後数年のうちに、国やコンソーシアムとして何を望むか、どの程度の大きさにするか、どのような形状にするかなど、段階を経て行われます。搭載センサーの種類やサイズも検討します」(ウィルス)。

 

多機能無線システムに加え、レオナルドは電子戦攻撃、支援、保護機能を提供する。赤外線脅威への防御も搭載する。

 

ロシアはウクライナ侵攻後の軍事作戦で、電子戦を多用している。

 

センサーはすべて、現在F-35を含む第5世代のステルス戦闘機で動作する、とウィルスは指摘する。レオナルドの新しいセンサー群が次世代にジャンプするのは、センサー処理システムであると彼は言う。

 

ウィルスは、これを「デジタルバックボーンを持つ多機能処理システムコンピュータ」と表現した。その目的は、センサーが送るすべての情報を取捨選択し、パイロットの負担を軽減することと説明した。

 

すべてのセンサーデータが同じ精度になるとは限らない。例えば、敵ジャマーによる偽情報を検知・遮断し、最も正確な画像を提示することができる。これは、敵が狙うセンサーを自動的にオフにして実現する。

 

「今のところ、すべて人間の脳が行っており、戦争の霧の中ではかなり厄介なことなんです」(ウィルス)。

 

レオナルドがテンペストにオープンシステムアーキテクチャを採用したことは、開発プロセスと第6世代機への移行で極めて重要だ

 

「アルゴリズムの改良が必要な場合、オープンシステムアーキテクチャの採用で、より容易に行うことができるようになる」。

 

能力の最終設計は、紛争環境での戦闘に備えることに帰着する、とウィルスは述べている。

 

「潜在的な敵能力を知る必要があります。そして、作戦分析、ウォーゲーム、合成環境試験を通じて、『この能力を持つシステムがあった場合、どのように対処するのか』という分析を行います」。

 

イタリアのレオナルド本社がこのプロジェクトにどのように関わるかは、まだ完全には決まっていないという。「レオナルド・イタリアが関わらないわけではない......が、現在進行形です」とウィルスは言った。

 

レオナルドがセンサーを扱う一方で、MBDAミサイルシステムズ英国支社は、独自の武器効果管理システムを提供している。

 

MBDAの戦闘機プログラムのチーフエンジニアであるアンガス・ペンライスAngus Penriceは、有人型・無人機のチーム編成の拡大や、現代の戦闘空間における無人飛行体の多用により、戦闘空間は複雑になっていると述べている。

 

MBDAの管理システムは、機械学習と人工知能を利用し、複雑な環境を平易にするという。MLとAIベースのソフトウェアは、レオナルド製センサーの助けを借りて、脅威を特定し、どの武器を採用するのが最適かをパイロットに伝えることができる、とペンライスは航空ショー会場で述べた。

 

同プログラムはまだ計画・設計段階であるため、武器管理システムに関連するハードウェアのオプションについて「具体的に説明するのは時期尚早」と述べた。

 

ロールス・ロイスは、飛行実証機の一部となる「オルフェアーズ」と呼ばれる新エンジンを発表した。ロールス・ロイス・ノースアメリカのCEOであるトム・ベルTom Bellは、防衛部門におけるグリーンテクノロジーの将来についてのパネルディスカッションで、同エンジンのプロトタイプを宣伝しました。ガスタービンエンジンの同プロトタイプは、18ヶ月で組み立てられ、評価されたという。

 

国防省は、テンペスト関連企業が開発中の能力以外にも、次世代の航空生存能力を開発している「チーム・ペローニャ」Team Pelloniaという別の技術協力による能力の追加も検討している。

 

空軍副司令官リンカーン・テイラー少将Air Vice-Marshal Lincoln Taylorは、「高度脅威から機体を守るその能力は、次世代戦闘機計画含む各種航空プラットフォームに通じる」と述べている。

 

同ログラムでは、スパイラル方式で、レオナルド(英国)、タレス(フランス)、ケムリング(英国)の技術を、早ければ2023年に機体へ統合すると、少将は述べている。■

 

U.K. Fighter Program Edges Closer to Runway

9/2/2022

By Meredith Roaten