2024年5月24日金曜日

トランプの第1期対中戦略は成功だった....第2期はどうなるのか。バイデン政権は何をしていたのか。

 




この地域と世界で中国の地政学的地位は、トランプによって開始されたワシントンの対抗戦略に苦しめられた


統領の外交政策上のレガシーは、現時点の批評によって定義されるのではなく、その当時の主要な大戦略的課題をどれだけ理解し、対処したかによって定義される。例えば、ハリー・トルーマンは、中国を共産主義者に「奪われた」ことや、北朝鮮の韓国侵攻を抑止できなかったことで、大きな批判を浴びた。しかし、全体としては、第一次冷戦を通じて米国の外交政策の指針となったソ連封じ込めの大戦略を受け入れたことで、先見の明のある政治家として評価されている。

 同様に、ドナルド・トランプはその外交政策の多くでの批判にもかかわらず、外交政策上の決定的な遺産は、新冷戦中に中国の軍事的・経済的拡張主義に対抗する大戦略を開始した。トランプは、現代の主要な外交問題を正しく理解していたのだ。

 バイデンはトランプの中国戦略の多くを引き継いでいるが、その全般的なトーンを間違えている。北京の膨張主義的野心に対抗する明確な政策を打ち出すのではなく、バイデン政権は競争政策と協力政策を混ぜ合わせようとした。これが誤りで、2024年の選挙結果にかかわらず、米国はトランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)と国家防衛戦略(NDS)が示した原則に立ち返る必要がある。重要なのは、NSSが冷戦後のアメリカの政策で、ロバート・ゼーリック前国務副長官の言葉を借りれば、中国を潜在的なパートナーとして、また「国際システムの責任ある利害関係者」として扱うことを否定したことだ。これは、共産主義中国をその正体である「不倶戴天の敵対者」として認識するための重要な一歩であった。

 どちらの文書も、中国の台頭を、大国間競争の新時代における米国にとって最重要な地政学的課題と正しく診断している。アジアでは、トランプNSSは「中国はインド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、自国に有利なように地域を再編成しようとしている」と主張した。

 NDSの中国に関する表現はさらに強いトーンだ:中国は、軍事的近代化、影響力行使、略奪的経済活動を活用し、インド太平洋地域を自国に有利な形に再編成するよう周辺国に強要している。経済的、軍事的に台頭を続ける中国が、長期戦略によって力を主張する中、短期的にはインド太平洋地域の覇権を、将来的には世界的な優位を獲得し米国に置き換わることを目指し、軍事的近代化プログラムを追求し続けるだろう。

 言い換えれば、アメリカ国民と世界中の自由を愛する人々のために自由と平和と繁栄を保証する、アメリカ主導の国際システムに対する唯一かつ最も重要な脅威が中国なのである。アメリカの大戦略は、経済的、技術的、外交的、軍事的な力の各領域にわたり、北京の拡張主義的野心に対抗することに焦点を当てるべきである。

 この現実主義的な転換は、具体的な政策決定での変化を伴った。第一期トランプ政権はその4年間で、アジアとそれ以遠における中国の外交政策に対する深刻な懸念を反映した一連の措置を実施していた。

 国際貿易に関して、ワシントンは中国の悪質な慣行に目をつぶる戦略を放棄した。また、中国共産党の「メイド・イン・チャイナ2025」戦略計画に対抗するため政策を採用した。中国の戦略計画では、中国のハイテク企業に補助金を支給し、中国やその他の地域でアメリカや欧米の企業を駆逐することを目的としている。

 もうひとつの重要な動きは、米海軍とそのパートナーが南シナ海で実施している航行の自由作戦を継続するとともに、大規模な海上多国間演習リムパックへ中国海軍を招待しないことで、スプラトリー諸島で陸地の埋め立てと人工島の軍事化を続けている中国海軍を懲らしめたことだ。

 トランプ政権はまた、国防総省の関心を台湾シナリオに集中させ、地域の主要国(インド、日本、オーストラリア)だけでなく、ベトナムやフィリピンのような小規模だが意欲的な地域パートナーにも働きかけ、中国に向けた反覇権連合の外交舞台を整えた。

 このような政策と強硬な大戦略は、北京に対するワシントンの地政学的目標を推進することに成功したのだろうか。直接的な因果関係を立証するのは難しいが、この地域や世界における中国の地政学的な地位は、トランプ大統領が始めた対抗戦略に苦しめられたのは事実だ。

 トランプ大統領への批判勢力には、前大統領の政策が復活すれば中国が恩恵を受けると主張する者もいるが、習主席はむしろトランプ大統領の2期目を恐れている。ウォール・ストリート・ジャーナルが最近報じたように、中共指導部は、米中経済の切り離しをさらに進めるための新たな経済対策や、トランプ大統領による地政学的クーデターの可能性を懸念している。

 楽観的な戦略家や一部の政策立案者は、中国の経済力はすでに「ピーク」に達しており、したがってトランプの強硬な対抗戦略はもはや必要ないと考えているかもしれない。しかし、ジョージタウン大学のエヴァン・メデイロス教授が示したように、これは危険な妄想である。中国株式市場の最近の回復は、北京の継続的な経済力を示す1つのデータに過ぎない。また、中国の電気自動車産業の最近の成功は、西側の指導者が過小評価してはいけない技術的洗練の度合いを示している。中国の経済的・技術的な強さと、習近平国家主席が示すますます好戦的なレトリックを併せ考えると、ワシントンは強力な対抗的大戦略に立ち戻る必要がある。■


Dan Negrea is the Senior Director of the Atlantic Council’s Freedom and Prosperity Center. He served in leadership positions in the U.S. Department of State between 2018 and 2021. He is the co-author of  We Win They Lose: Republican Foreign Policy and the New Cold War.

Image: Muhammad Aamir Sumsum / Shutterstock.com


Donald Trump’s First-Term China Strategy Was A Success

by Dan Negrea Ionut Popescu 


May 21, 2024  Topic: Security  Region: Asia  Tags: Donald TrumpChinaJoe BidenGreat Power CompetitionNational Security StrategyXi Jinping


2024年5月23日木曜日

初公開されたB-21レイダーの飛行中の姿からわかる同機の特徴; 同機の飛行テストは順調に進んでいるようだ

 


デジタル化の恩恵でB-21の開発は順調に進んでいるようです。同機は爆撃機として区分するより第六世代戦闘航空機として、これまでの機体種別を超えた存在にすべきと思いますが、いかがでしょうか。もちろんそのためには同機を母体に相当の改装が必要ですが。さらに、100機以上が必要とされながら、予算化が全然進んでいない(表面的には)事情も心配です。The War Zoneが伝えている内容をお伝えします。


B-21 raider first air-to-air image

Photo courtesy of Jonathan Case, Northrop Grumman




B-21レイダーの飛行中の姿を米空軍が初公開した


防総省は、新型B-21レイダーの航空写真を初公開した。また、我々が目にした最初の公式な側面写真でもある。この写真は、エドワーズ空軍基地でのレイダーの飛行テストを撮影した3枚の新しい画像の一部。

 この飛行中の画像は、同機の前縁を構成する深い棚のような広がりを見せており、機首に沿って最も顕著である。これは、前身のB-2に見られるくちばしのような機首やチンラインよりもはるかに顕著で、同機の重要な特徴である。


A B-21 Raider conducts flight testing, which includes ground testing, taxiing, and flying operations, at Edwards Air Force Base, California. The B-21 will interoperate with our allies and partners to deliver on our enduring commitment to provide flexible strike options for coalition operations that defend us against common threats. (Photo courtesy of Jonathan Case, Northrop Grumman)

カリフォーニア州エドワーズ空軍基地で、地上試験、タキシング、飛行運用を含む飛行試験を行うB-21レイダー。B-21は同盟国やパートナーと相互運用し、共通の脅威から我々を守る連合作戦に柔軟な攻撃オプションを提供するという我々の永続的なコミットメントを実現する。(写真提供:ジョナサン・ケース、ノースロップ・グラマン)



また、コックピットサイドの窓のデザインは、シグネチャーコントロールのために特別に調整された小さな台形ビューポートを備えている。空中給油用に最適化されたようで、視界がやや制限される前方ウィンドスクリーンも公開された。コックピット上部の射出座席開口部と給油口が目立つ。機体の背面には、F-22やF-35と同様の給油シンボルが描かれている。


その下には、B-2に共通する特徴である、コマンドの紋章が見える。また、胴体中上部に沿って小さなひし形のような開口部が見られるが、これは高度なまで安全な指向性データリンクシステムの一部である可能性がある。胴体下部には、ステルス運用のため格納されるアンテナが見られ、前方胴体下部から斜めに伸びる一時的に装着された航空データプローブは、地上よりも空中でさらに奇妙に見える。

 後方には、AF 0001のシリアルナンバーと、淡い色の外皮が見える。ロールアウトに先立ち、我々はB-21が日中と夜間の両方の運用に最適化されるため、明るい色調を採用すると推測していた。さらに、ダイヤモンドのような開口部や、エンジンナセルの「こぶ」と中央のドーム型胴体部分の間にある、前方の縁が鋸歯状になった大きなパネルが見える。ここで明らかなのは、B-21のインテークが全翼機デザインとうまく調和していることだ。横からの画像ではほとんど認識できないほどで、おそらく最も興味をそそる非常に低い位置にある観察可能な特徴を反映している。


A B-21 Raider conducts flight testing, which includes ground testing, taxiing, and flying operations, at Edwards Air Force Base, California. The B-21 will interoperate with our allies and partners to deliver on our enduring commitment to provide flexible strike options for coalition operations that defend us against common threats. (Photo courtesy of Jonathan Case, Northrop Grumman)


最後に、戦闘作戦のためにB-21の皮膚と同一平面に位置する拡張フォーメーションライトと、機体下半分後方から発せられる一時的な後続飛行試験コーンのワイヤーの取り付けポイントを見ることができる。B-21の排気口は、非常に繊細で観察しにくい特徴であるが、この画像ではまったく見えない。


全体として、この横からの画像は、B-21のデザインがいかにスムーズで流れるようなものであるかを教えてくれる。前身のB-2と多くの共通点を持ちながら、ステルス技術で明らかに大きな飛躍を遂げている。


エドワーズから離陸するB-21の画像は、これまでのところ、B-21の最初の公式な下からのアングルビューを与えてくれる。ここでは、B-2の2つの車輪を特徴とする単軸着陸装置を見ることができる。これは、レイダーの総重量の低さと、B-2より小さい全体サイズを強調する重要な要素だ。しかし、機体の補助インテーク・ドアが開いていることを示す初の公式画像であることに注目すべきだ。


A B-21 Raider conducts flight tests, which includes ground testing, taxiing, and flying operations, at Edwards Air Force Base, California, where it continues to make progress toward becoming the backbone of the U.S. Air Force bomber fleet. The B-21 will possess the range, access, and payload to penetrate the most highly-contested threat environments and hold any target around the globe at risk. The B-21 program is on track to deliver aircraft in the mid-2020s to Ellsworth Air Force Base, South Dakota, which will be the first B-21 main operating base and location for the B-21 formal training unit. (Photo courtesy of David Henry, Northrop Grumman)

B-21レイダーは、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地で、地上試験、タキシング、飛行運用を含む飛行試験を行っている。B-21は、最も厳しい脅威環境に侵入し、世界中のあらゆる標的を攻撃できる航続距離、アクセス、積載量を持つことになる。B-21プログラムは、最初のB-21主要運用基地であり、正式訓練部隊の場所となるサウスダコタ州エルスワース空軍基地に、2020年代半ばに航空機を納入する予定である。(写真提供:デイヴィッド・ヘンリー、ノースロップ・グラマン)


これらのスイングアップドアは、高出力設定、急角度の迎角、低速が標準となるターミナル運用中に、ジェット機のエンジン(種類と数に関してはまだ不明)がより多くの空気を吸い上げることを可能にする。B-21の深く埋まった吸気口は、このような飛行体制では明らかに限界がある。B-2も補助吸気口を持っていたが、このデルタ型のスイングアウト・デザインとは異なり、ナセルの上部に開く葉っぱのようなデザインだった。B-21のインテークはここでも見られない。また、レイダーの奇妙なウィンドスクリーンのショットもあり、視野の狭さはここでさらに明らかになった。


この画像は、B-21が正式に発表される前に公開されたコンセプトアートを彷彿とさせる。


(アメリカ空軍のレンダリング)


最後に、新しい真正面からの画像である。この見慣れたアングルから見ることができる多くの啓示はないが、B-21が将来の基地に誕生する専用シェルターでどのように見えるかのアイデアを得ることができる。B-21の寸法はまだわからないが、この画像からすると、オープンエアのシェルター内に余裕で収まる。過去に我々は、翼幅が155フィートと仮定したが、正確なサイズの判断が難しい。また、エドワーズにあるB-21のための既存の施設を利用して、テストセンター全体が建設されたことも注目に値する。


The B-21 Raider program is on track and continues flight testing at Northrop Grumman’s manufacturing facility on Edwards Air Force Base, California. The B-21 will have an open architecture to integrate new technologies and respond to future threats across the spectrum of operations. The B-21 Long Range Strike Family of Systems will greatly enhance mission effectiveness and Joint interoperability in advanced threat environments, strengthening U.S. deterrence and strategic advantage. (Photo courtesy of Jonathan Case, Northrop Grumman)

B-21レイダー・プログラムは順調に進んでおり、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地にあるノースロップ・グラマンの製造施設で飛行試験が続けられている。B-21は、新技術を統合し、作戦のスペクトル全体にわたって将来の脅威に対応するためのオープン・アーキテクチャを持つ。B-21 Long Range Strike Family of Systemsは、高度な脅威環境におけるミッションの有効性と統合運用性を大幅に強化し、米国の抑止力と戦略的優位性を強化する。(写真提供:ジョナサン・ケース、ノースロップ・グラマン)


新しい画像に添付されたプレスリリースには、同機の開発進捗に関する最近の引用が強調されている:


2024年5月8日、上院軍事委員会での証言の中で、アンドリュー・ハンター空軍次官補(取得・技術・兵站担当)は、B-21の飛行試験がタイムラインを満たし、順調に進んでいることを強調した。  

「飛行試験プログラムは順調に進んでいる。同機のユニークな特性を学ぶのに役立っているが、非常に効果的な方法で、飛行試験プログラムが行うように設計されている」。


ハンターは、同機がさらにデジタル化された最初の航空機であり、プログラムが要件を満たすことに貢献していると説明した。


目標は、10年後半にサウスダコタのエルスワース空軍基地にある同型の最初の運用部隊にB-21を納入することで、レイダーは速やかにB-1B、そして最終的にはB-2Aに取って代わる。レイダーは現在100機が計画されており、その数がさらに増える可能性はあるが明確ではない。


アメリカ空軍がB-21の飛行テストのこの早い段階で、その進捗状況を公表することを選んだという事実は、わずか6ヶ月前に初めて空を飛んだということであり、プログラムの勢いを示す良い兆候である。本誌は何度もその状況を問い合わせてきたが、初飛行以来、詳細は乏しい。


B-21の初号機は、これまでの主要な戦闘機の設計の中で最も生産性が高いと言われており、初飛行からわずか数カ月で生産が開始されたが、野心的な実戦配備の目標を達成するには困難な道のりが待ち受けている。この先に何が待ち受けているかにかかわらず、世界で最も複雑な戦闘航空機が実際にテストされている様子を空から見ることができる。■


First Aerial View Of B-21 Raider Offers New Insights | The War Zone

With flight testing now deeply underway, the U.S. Air Force is giving us our first look from high up in the sky at the B-21 Raider.

BYTYLER ROGOWAY|PUBLISHED MAY 22, 2024 3:56 PM EDT

AIRNEWS & FEATURES




ドローン群に対抗できる高出力マイクロ波兵器IFPC-HPMの実地テストが中東で始まる。

安価なロケット、ドローンに高価なミサイルで対抗するのでは早晩経済的に行き詰まります。そのため、運用コストが桁違いに安い指向性エナジーやレーザー技術を応用した対抗手段の開発が急ピッチで進んでおり、手始めに脅威が日常となっている中東で活動する米中央軍にテスト用装備が送付されることになりました。Breaking Defense記事からのご紹介です。横須賀や東京都心で非合法なドローン空撮を許している日本でも物理的な防御策を真剣に検討すべき時期に来ています。

IFPC-HPM [2]

IFPC-HPM prototype. photo provided by Epirus

米中央軍がドローン群対策で高出力マイクロ波をテストする


米陸軍は、開発仕様のC-UASシステムを中東に派遣する


ンディ・ジョージ参謀総長Gen. Randy Georgeによると、ドローンの群れを阻止する設計の高出力マイクロ波のプロトタイプ4基を受け取った米陸軍は、性能の確認のため中東に送る準備をしている。

 今日、上院歳出小委員会で証言したジョージ参謀総長は、米中央軍に送られたストライカー搭載レーザーのように、陸軍の高出力マイクロ波試作機が "直ちに "中東に向かうと議員に語った。

 陸軍報道官デイブ・バトラー大佐は、必要な承認がすべて整えば、間接火器防護能力-高出力マイクロ波(IFPC-HPM)プロトタイプ4基はすべて中央司令部内の管轄地に向かうことを確認した。

「狙いは、兵士、開発者、テスターが実際の環境で隣り合わせに座り、より良いものにするため調整することです」(バトラー)。

 ドローンやその他の空中からの脅威の急増は、それらに対抗するための新しいシステム、特に1ショットあたりの殺傷コストが低いシステムを迅速に開発し、実戦投入する軍事競争を促進した。高エナジー・レーザーや高出力マイクロ波などの指向性エナジー・システムは、長年の開発を経て、陸軍の取り組みが実用化されつつあることに希望を与えている。ジョージはこの瞬間を利用して、兵士たちに実際の脅威や粉塵のような現実の状でテストさせようとしており、CENTCOMがその最初の目的地となる。

 例えば2月、ジェームズ・ミンガス副参謀総長は、ストライカーに搭載された50キロワット・レーザーのプロトタイプ4台がすでに現地に送られたと初めて明らかにした。最初の現場フィードバックでは、そのレーザークラスと車両に関連するサイズ、重量、パワーの問題を報告している。

 「私たちが発見しているのは、各種出力レベルでの指向性エナジーに関する課題がどこにあるかということです」と、陸軍の調達責任者ダグ・ブッシュは先週、上院軍務空陸小委員会で語った。「その[50キロワット]出力レベルは、熱放散、電子機器の量、戦術的な環境での車両の摩耗や破損のような固定サイトと比較して、常に移動しなければならない車両に組み込むことが困難であることが判明した」。


 指向性エナジー機動短距離防空(DE M-SHORAD)構想の命運がかかっている一方で、ブッシュは、20キロワット級のシステムは「いくつかの」固定サイトセットアップで「成功している」と述べた。(4月下旬、Military.comは、同軍が20キロワットのPalletized High Energy Laser(P-HEL)も海外に送ったと最初に報じた)。

 そして今、Epirus社が製造した4台のIFPC-HPMプロトタイプを兵士が手にする時が来た。つい先週、同社は4基がすべて軍に納入され、兵士が新装備訓練を終了したと発表した。また、単体のドローンと "複雑化する飛行パターンを利用した"群れの両方に対する技術開発テストも完了した。■



CENTCOM bound: Army soldiers slated to test high-powered microwaves against drone swarms - Breaking Defense


By   ASHLEY ROQUE

on May 21, 2024 at 4:37 PM


2024年5月22日水曜日

主張 ウクライナの勝利のため、バイデン政権はエスカレーションを恐れず、もっと多くを現地に供与すべきである

 

ウクライナで勝利する方法:エスカレーションなど心配せず、どんどん攻撃せよ

バイデン政権は慎重すぎる。それを変える時間はまだ残っている

シアがここ数週間、戦況を好転させているが、ウクライナの大義の行方は絶望的とは言い難い。米国と同盟国は、キーウに必要な訓練と技術的な優位性を与えることができるが、バイデン政権は、ロシアがウクライナに対し核兵器を使用したり、米軍に対して行動を起こしたりすることを恐れて、必要な米軍の関与を提供していない。そのような懸念は大げさだ。そのようなエスカレーションはロシアにとって危険で望ましくない。バイデン政権は軍事活動の強度を高め、それによってウクライナの勝利を可能にすべきだ。

政権の警戒心は開戦当初から見え見えだった。米国の「地上軍」は駐留させないという政権の方針により、米軍の駐留は大使館に所属する数名の要員に限られている。ウクライナに提供された米軍の兵器の範囲は、2022年4月に牽引砲、2022年6月にHIMARS車輪型ロケットシステム、2022年12月にペイトリオット防空ミサイル、2023年1月に地上戦闘車、2023年7月にクラスター弾、4月に陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)の地上発射が発表されるなど、徐々だが拡大している。

ロシアはこの支援を思いとどまらせるためにNATOに脅しをかけてきたが、いずれも実現していない。実際、ロシアがそのような脅しに乗るつもりはほとんどないと考える十分な理由がある。米国との大規模な戦争は、ロシアに多大なリスクをもたらすだろう。米国やNATOの目標に対する限定的な攻撃さえ避ける一方で、ロシアがウクライナに対して侵略を繰り返していることは、NATOの防衛上の約束の重大さを理解していることを示唆している。

同様に、ウクライナに核兵器を使用することは、米政府高官が警告する「壊滅的な結果」を含め、ロシアに重大な犠牲を強いることになる。ロシアの核兵器使用はまた、制裁を緩和する上で重要な中国やインドとの関係を危険にさらし、ウクライナやポーランド、あるいは他のロシアの敵対国が核兵器を増強しようとする動機付けとなるだろう。

いくつかの分野で米国の政策を転換すれば、ロシアがエスカレートするリスクを最小限に抑えつつ、ウクライナの軍事状況を改善できる。第一に、米国は、米国が提供する弾薬はウクライナ国内でのみ使用するという主張を撤回し、ロシア領土への攻撃を控えるようウクライナに迫るのをやめる。ウクライナが純粋に民間人を標的にした攻撃で毎日犠牲者を出していることを考えれば、ロシアのインフラに対する報復は公平なゲーム以上のものであり、ロシアの兵站能力を低下させることでウクライナの勝算を高めることができる。ウクライナはロシアの報復の矢面に立たされるが、キーウにはそのリスクを負う覚悟がある。

第二に、米国はウクライナにおける米軍のプレゼンスを目に見える形で拡大することができる。欧米のアドバイザーがウクライナに駐在し、ウクライナ軍の現状と必要性を理解し、必要な質的優位を提供する必要がある。米軍のアドバイザーや教官の増加は、いかなる戦闘的役割とも区別できる。仮にロシアの攻撃で米軍兵士が死亡するような悲劇的な事態が発生しても、バイデン政権はその対応をコントロールする大きな自由度を持つことになる。

第三に、米国は、ロシアによる米国の宇宙プロバイダーに対するサイバー攻撃やNATO同盟国に対する妨害行為に対抗するため、宇宙空間とサイバー空間における作戦の拡大を視野に入れるべきである。宇宙空間における戦略的安定性に関するランド研究所の最近の報告書では、妨害のような可逆的な行動は、敵対国にシグナルを送ることができ、紛争の範囲を拡大することなく、懲罰の追加的脅威を提供することができるため、米国にとって有用な選択肢になると論じている。例えば、ロシアも宇宙通信を利用していることを考えれば、このような行動は一時的な作戦上の利益にもなる。ロシアはこれに対し、サイバー攻撃やその他の活動をエスカレートさせる可能性があるが、悪用していることが露呈し、将来そのような攻撃を使用する機会を失うリスクがある。

同盟国は伝統的に米国に指導力を求めるため、米国が追加的な行動を取れば、他の同盟国が支援を強化するきっかけになる可能性もある。米国がエイブラムス戦車を提供するまで、ドイツはレオパルド戦車を供与しなかった。おそらく、米国のさらなる支援によって、ドイツは独自の長距離巡航ミサイル、タウルスを提供するようになるだろう。米国の狭い視野から見れば、米国の関与の拡大は、新しい能力をテストし、数的に優勢な敵に直面しているパートナーを助ける経験を得る機会である。このような経験は、中国の侵略に抵抗する台湾を支援する上でも非常に重要である。

確かに、ロシアとの直接的な軍事衝突を避けることは最も重要な関心事である。米軍がロシアとの戦闘に巻き込まれるような滑りやすい坂道を避けるため、注意を払わなければならない。上記で提案した措置は、米軍の戦闘参加を求めるものではなく、米国のウクライナ政策を段階的に強化するための手段である。

ロシアは、人員と物資の不均衡な損失を永久に維持することはできない。米国の支援に対する制約を撤廃することで、ウクライナはロシア軍を消耗させ、数で勝るロシア軍に打ち勝つことができる。米国とその同盟国は、ロシアがNATOに対して必要な自制を行っていることを利用し、ウクライナがロシアを打ち負かすのを助けるためにもっと努力すべきである。バイデン政権が戦争初期に慎重だったのは理解できる。今は、米国の役割をはるかに強化する余地がある。■

アンドリュー・レーディンは、非営利の超党派研究機関であるランド研究所の上級政治学者。最近発表されたランド研究所報告書「宇宙における戦略的安定性」の共同執筆者: 米国のコンセプトとアプローチの評価" の共同執筆者。

How to win in Ukraine: pour it on, and don’t worry about escalation - Defense One

BY ANDREW RADIN

SENIOR POLITICAL SCIENTIST, RAND

MAY 22, 2024 06:02 AM ET





ドローン群に有効な防御機能となるか、米中央軍が高出力マイクロ波を現地でテストする

 

安価なロケット、ドローンに高価なミサイルで対抗するのでは早晩経済的に行き詰まります。そのため、運用コストが桁違いに安い指向性エナジーやレーザー技術を応用した対抗手段の開発が急ピッチで進んでおり、手始めに脅威が日常となっている中東で活動する米中央軍にテスト用装備が送付されることになりました。Breaking Defense記事からのご紹介です。横須賀や東京都心で非合法なドローン空撮を許している日本でもいよいよ物理的な防御策を真剣に検討すべき時期に来ています。

IFPC-HPM [2]

IFPC-HPM prototype. photo provided by Epirus

米陸軍は、開発仕様のC-UASシステムを中東に派遣し、効果を測定する


ンディ・ジョージ参謀総長Gen. Randy Georgeによると、ドローンの群れを阻止する設計の高出力マイクロ波のプロトタイプ4基を受け取った米陸軍は、性能の確認のため中東に送る準備をしている。

 今日、上院歳出小委員会で証言したジョージ参謀総長は、米中央軍に送られたストライカー搭載レーザーのように、陸軍の高出力マイクロ波試作機が "直ちに "中東に向かうと議員に語った。

 陸軍報道官デイブ・バトラー大佐は、必要な承認がすべて整えば、間接火器防護能力-高出力マイクロ波(IFPC-HPM)プロトタイプ4基はすべて中央司令部内の管轄地に向かうことを確認した。

「狙いは、兵士、開発者、テスターが実際の環境で隣り合わせに座り、より良いものにするため調整することです」(バトラー)。

 ドローンやその他の空中からの脅威の急増は、それらに対抗するための新しいシステム、特に1ショットあたりの殺傷コストが低いシステムを迅速に開発し、実戦投入する軍事競争を促進した。高エナジー・レーザーや高出力マイクロ波などの指向性エナジー・システムは、長年の開発を経て、陸軍の取り組みが実用化されつつあることに希望を与えている。ジョージはこの瞬間を利用して、兵士たちに実際の脅威や粉塵のような現実の状でテストさせようとしており、CENTCOMがその最初の目的地となる。

 例えば2月、ジェームズ・ミンガス副参謀総長は、ストライカーに搭載された50キロワット・レーザーのプロトタイプ4台がすでに現地に送られたと初めて明らかにした。最初の現場フィードバックでは、そのレーザークラスと車両に関連するサイズ、重量、パワーの問題を報告している。

 「私たちが発見しているのは、各種出力レベルでの指向性エナジーに関する課題がどこにあるかということです」と、陸軍の調達責任者ダグ・ブッシュは先週、上院軍務空陸小委員会で語った。「その[50キロワット]出力レベルは、熱放散、電子機器の量、戦術的な環境での車両の摩耗や破損のような固定サイトと比較して、常に移動しなければならない車両に組み込むことが困難であることが判明した」。

 指向性エナジー機動短距離防空(DE M-SHORAD)構想の命運がかかっている一方で、ブッシュは、20キロワット級のシステムは「いくつかの」固定サイトセットアップで「成功している」と述べた。(4月下旬、Military.comは、同軍が20キロワットのPalletized High Energy Laser(P-HEL)も海外に送ったと最初に報じた)。

 そして今、Epirus社が製造した4台のIFPC-HPMプロトタイプを兵士が手にする時が来た。つい先週、同社は4基がすべて軍に納入され、兵士が新装備訓練を終了したと発表した。また、単体のドローンと "複雑化する飛行パターンを利用した"群れの両方に対する技術開発テストも完了した。■



CENTCOM bound: Army soldiers slated to test high-powered microwaves against drone swarms - Breaking Defense


By   ASHLEY ROQUE

on May 21, 2024 at 4:37 PM


米議会調査局による一帯一路報告書の抜粋。米国議員はこんな資料を利用している。我が国では未だに政治資金の取り扱いでルールを議論するだけで精一杯。

 

毎回同じセリフで恐縮ですが、米国の連邦議会議員にはこのような上質な情報を整理したレポートを目にしているのですが、我が方の「選良」の皆さんは何を根拠に判断しているのでしょうか。週刊誌ですか?

USNI Newsが定期的に議会調査局レポートの抜粋を紹介しています。

中国の「一帯一路」構想に関する議会報告書

以下は、2024 年 5 月 16 日に米国議会調査局が発表したイン・フォーカス・レポート「中国の「一帯一路」構想」の 経済問題」よりの抜粋。

報告書より

中華人民共和国(PRCまたは中国)は2013年、野心的で多面的な対外経済政策構想「一帯一路」を打ち出し、中国の世界的な経済的範囲と影響力を拡大した。2015年、中国のは英語名をBelt and Road Initiative:BRI)に変更したが、これはおそらく、中国を中心とし、ハブ&スポーク方式で世界的な結びつきをコントロールしながら発展させるというこの構想の焦点から目をそらすためだろう。中国共産党(CPC)は2017年にこの構想を憲章に盛り込み、2022年の第20回党大会でこの取り組みの意義を再確認した。参加国政府の中には、インフラの格差を埋めるこのイニシアチブを高く評価しているところもあるという。他の政府や議会の一部は、一帯一路プロジェクトが中国の地政学的・経済的目標を推進する一方で、米国の影響力と利益を損なうと評価している。

範囲と目的

一帯一路は、中国が中心となって管理する世界的なインフラ、輸送、貿易、生産ネットワークを発展させることが目的だ。当初はアジア、ヨーロッパ、アフリカに焦点が当てられていたが、その範囲は世界規模となり、米国を含む100カ国以上に及んでいる。陸上の「シルクロード経済ベルト」、「21世紀海上シルクロード」、中国の情報通信技術(ICT)サプライチェーン、光ケーブル・衛星ネットワーク、「健康シルクロード」を推進する「デジタル・シルクロード」などが含まれる。この取り組みでは、政策協調、貿易・投資の円滑化、紛争解決、観光、学生・人材交流、中国の第14次5カ年計画(2021-2025年)における優先課題(健康、研究、基準設定など)が重視されている。

エネルギー、ICT、製造(工業団地や貿易ゾーン)、輸送(鉄道、道路、港湾、空港)における一帯一路プロジェクトは、中国の生産サプライチェーン、技術インフラ、輸送ネットワークを垂直統合することを目的としている。この取り組みには、中国のデジタル・プラットフォームと通貨の利用を拡大する技術と金融の統合が含まれる。中国企業の海外進出を拡大し、中国の商品とサービスの新市場を創出し、農業、エネルギー、戦略物資の海外供給源へのアクセスを確保することを目指している。プロジェクトはまた、中国の内陸部を開発し、海外で中国労働者を雇用し、過剰な産業能力をオフロードすることを目的としている。

2023年に開催された一帯一路フォーラムで、最高指導者習近平は「質の高い開発」、複合一貫輸送とグリーンインフラ、試験的なデジタル貿易ゾーン、科学技術協力、汚職に対処するための「コンプライアンス評価システム」、エネルギー、税制、金融、シンクタンク、メディア、文化面での協力などを重点分野として強調した。2021年、習近平は国連総会で、一帯一路を「小規模でスマートな」開発プロジェクトで補完する世界開発イニシアティブ(GDI)を発表した。現在までのところ、GDIプロジェクトは食糧と医療が中心となっている。

中国の投資と資金調達

中国のオンショア資金調達と特別目的投資手段の活用は、オフショア活動を追跡する能力を複雑にしている。一帯一路は包括的なイニシアティブで、プロジェクトは一帯一路と密接に関連している場合もあれば、緩やかに関連している場合もある。その結果、多くのグループが中国のクロスボーダー融資、投資、海外プロジェクト全般を追跡している。

ボストン大学のグローバル開発政策センターによれば、2008年から2021年までの中国の海外開発金融は推定4980億ドルで、この間の世界銀行融資の6010億ドルに匹敵する。国連がまとめた公式国別データによれば、中国の対外直接投資(FDI)累計は、2001年の347億ドル(世界全体の0.5%)から2022年には2.9兆ドル(世界全体の7%)に増加した一方、米国は2022年の対外直接投資ストックの20%にあたる8.0兆ドル(2001年の32%から減少)を占める。

中国の対外FDIフローは2016年にピークを迎えたが、農業、エネルギー、鉱物、金融、インフラ、テクノロジー、海運の分野ではクロスボーダー契約は安定している。中国の経済減速と債務再編要請(エクアドル、スリランカ、ザンビアなど)に伴い、中国プロジェクトの全体的な金額と規模は減少している。2016年の中国輸出入銀行(CHEXIM)と中国開発銀行(CDB)の平均コミットメントは、1プロジェクトあたり5億8,000万ドルであったが、2021年には4億6,100万ドルとなっている。中国は既存プロジェクトの実施において変曲点を迎えており、パンデミック後の活動の遅れに直面している可能性がある。2009年と同様、中国国内の景気減速は、主要分野における中国の海外進出を促進する可能性がある。

資料のダウンロードは こちらから。

Report to Congress on China's 'One Belt, One Road' Initiative - USNI News

U.S. NAVAL INSTITUTE STAFF

MAY 21, 2024 9:54 AM


2024年5月21日火曜日

台湾ADZへの侵入回数が3倍増、PLAは台湾侵攻への準備に入ったのか。それより気になる中国版統合全領域作戦構想の行方。

 

台湾のADIZに侵入する飛行回数だけでなく、PLAが背後で何を進めているかを考察する必要があり、米軍が会得した統合作戦体制をPLAが模倣している可能性に注意を呼びかける論文をWarrior Mavenが紹介しています。

中国の台湾領空侵犯が3倍増... 奇襲 "攻撃 "の準備か?

国軍は2020年9月から台湾の防空識別圏(ADIZ)を侵犯する回数を大幅に増やし、2021年から2023年にかけ3倍以上増えた。

2021年の972機から2022年には3,119機に急増した違反飛行の大幅な増加は、戦争訓練や侵略の準備、新技術の潜在的なテストや関連する作戦概念、そしてもちろん台湾や米国の水上・海中資産の広範な監視など、いくつかの思考軸で解釈できる。

中国と台湾

「台湾の防空識別圏におけるPLAの飛行活動」と呼ばれる興味深い、まだ出版されていない研究論文は、一段と強化された中国の攻撃的な行動に情報を与え、重要な概念的・戦略的パラメーターを定義している。

防空識別圏の侵犯は、中国が台湾とその国際的パートナーに軍事的圧力をかけ、紛争の閾値の下に置く包括的な目標で、複数の目的で行われている。こうした侵犯の拡大については、ケネス・アレン、ジェラルド・ブラウン、トーマス・シャタックの3名が書いたエッセイで、訓練、作戦、政治という3つの異なる要因についてすでに簡単に触れている。(2023年6月にRoutledge Taylor and Francis GroupからJournal of Strategic Studiesに掲載された)。(ケネス・アレンは元北京駐在空軍武官で現在は独立コンサルタント)

この研究では、ADIZ違反の頻度や回数と、米国や同盟国の大規模な訓練や、米国やその他の親台湾関係者の共同訪問など、政治的に敏感な動きと一致することが、よく知られた相乗効果や重なり合いであることを当然明らかにしている。

「PLAが自らの能力に自信を深めるにつれて、ADIZへの侵入はPLAがさまざまな作戦目的を達成することも可能にしている。これらの作戦目標とは、軍事的目的を達成することを主目的とした航空機の派遣を指す。これまでのところ、これらは主に情報収集、外国海軍の追跡、台湾の軍隊の消耗と反応時間のテストなどの任務で構成されている」と、「台湾防空識別圏におけるPLAの活動」は述べている。

しかし、この調査では、大規模編隊が一貫して存在しないこと、ADIZ違反の出撃にJ-20が含まれていないこと、中国の哨戒機、戦闘機、水上艦艇の間でマルチ・ドメイン・ネットワーク化が試みられていることなど、国防総省に大いに関連する、あまり知られていない重大な発見も指摘されている。著者たちは、数年前までさかのぼり、航空機の種類とミッションの回数を特定するために、すべての出撃の詳細なリストを作成した。彼らの重要な発見のひとつは、簡単に言えば、ADIZを侵犯した出撃にJ-20が含まれていないことだった。

確かに中国の新聞は、J-20の成熟度、デモンストレーション、WS-10国産エンジンなどの技術について書いている。しかし、いくつかの訓練任務を除けば、J-20は間近で見られる可能性のある地域の近くであまり飛行していない。これは研究者の一人であるケン・アレンの考えで、おそらくJ-20は台湾の防空識別圏内では飛行せず、台湾の偵察機や戦闘機に至近距離で目視されるのを防いでいるのだという。

また、J-20は東シナ海や南シナ海にほとんど出撃していない。J-20は、中国本土から台湾までの100マイルを明らかに飛行できるものの、陸上発進のステルス・プラットフォームであるため、あまりステルスではない大型タンカーと運用しなければ、飛行距離は限られるかもしれない。

J-20の不在は、任務範囲にも関係するかもしれない。J-20は、必ずしもF-22のような航空至上主義の任務のために作られているわけではなく、代わりに細長い胴体で大型化されている。このことは、空対空戦闘でどの程度まで機動し、優勢に立つことができるのかという疑問を投げかけ、中国がこの機体により限定的な役割を意図している可能性を示唆している。この点については未知の部分が多く、航続距離、センサーの精度、搭載コンピューターの処理速度など、判断が難しい要素に左右される可能性が高い。

中国軍の飛行の頻度と構成を追跡したところ、研究者たちは、J-16がASW機と水上艦艇の両方に標的識別データを送信する「ネットワーキング」の努力をしているのも確認した。

「いくつかの出撃は、習近平の共同作戦と戦闘準備に焦点を当てた、より現実的な訓練を達成するためのイニシアチブを支援するために、PLAの訓練に向けられているように見える。ASW機が敵の艦艇を識別し、その情報をJ-16やJH-7のような攻撃機に伝えるという、海上攻撃訓練に似た侵入もある」と論文にある。「2021年には、Y-8 ASW機が攻撃機と一緒に飛行した例が41回あった。J-16は将来、J-16H型としてPLANに採用される可能性が高いが、現在のJ-16はすべてPLAAFに配属されているため、この海上攻撃訓練はPLA全体の共同作業となっている」。"

中国の軍事姿勢の激化が台湾に意味するもの

中国は台湾に対してますます攻撃的になっている。

もちろん、アメリカは何年も前から、太平洋水域のマルチドメイン・タスクフォースで、地上、地上、航空ユニットが同期して、あるいは統合して、データ駆動型の共同戦備を運用する訓練を行っている。米軍の兵器スペックを「盗む」という中国の努力はかなりよく知られており、多くの議会や国防総省の報告書に掲載されている。しかし、あまり知られていないかもしれないが、中国は明らかに、国防総省の急成長している統合全領域指揮統制(JADC2)の努力を模倣しようとしているようだ。

このことは、PLAが安全なマルチ・ドメイン・ターゲット共有をどの程度実現できるのかなど、重大かつ潜在的にまだ確定していない疑問を提起している。ここ数年、米軍は無人機、ヘリコプター、固定翼機などの航空プラットフォームが、ハード化されたトランスポートレイヤー技術、相互運用性を確保するための高度な技術インターフェース、AIを活用したデータ処理などを用いて、地上と水上の両資産にリアルタイムで標的特定情報を送信できることを示すことで、突破口を開きつつある。

JADC2は、陸軍のProject Convergence、海軍のProject Overmatch、空軍のAdvanced Battle Management Systemの取り組みを統合したものだ。これらそれぞれの取り組みは、大型兵器プラットフォームや無人システム、さまざまな指揮統制地点といった戦場の「ノード」群をネットワーク化する技術と新しい運用コンセプトを実証している。

中国の訓練には、対潜哨戒機、艦船、戦闘機を「ネットワーク化」する取り組みが具体的に含まれているという研究者の発見を考えると、確かに中国が注目していることはあり得る。

「訓練面では、PLAはこれらの飛行を利用して能力を向上させ、より有能な統合軍事力となる。その結果、PLAは自国の沿岸海域でより積極的な姿勢をとり、より積極的な政治的意思表示を行い、この地域で幅広い軍事作戦を実施し、将来の戦闘作戦に備えることができる」とアレン、ブラウン、シャタックは書いている。

つまり、中国の新聞は定期的に、多領域にわたるPLA軍とPLA海軍の合同訓練について記述し、台湾侵攻の際に想定されるような、空と水面を指向した水陸両用攻撃訓練を何度か行っているのだ。

日本の2022年版防衛白書と米国防総省の中国年次報告書も、調査結果によって証明されたように、中国が戦力をよりよくネットワーク化するための明確な努力を行っていることを具体的に挙げている。日本の防衛論文は、「インテリジェント化」あるいはネットワーク化された戦争と呼ばれるものの脅威を特に指摘している。

しかし、本当の問題は、マルチサービス・ジョイント・ネットワーキングの領域で米国の進歩を模倣しようとする中国の目に見える努力についてというよりも、セキュリティとトランスポート層の統合のレベルについてである。具体的には、米軍サービスはセキュアなトランスポート層の相互運用性を可能にする技術で突破口を開いている。例えば、EO/IRビデオデータフィード、特定のRF駆動データリンク、異なる周波数によって、共通のIPプロトコル、適応可能な技術標準、多くの場合AI対応ゲートウェイシステムを使用して、他の互換性のないトランスポートレイヤー技術間で情報を共有することができる。

技術的に言えば、これは難題であり、米軍が達成するまでには長年の研究、実験、革新が必要であった。しかし現在では、AI対応システム、ゲートウェイ、インターフェイス、画期的なネットワーキング技術により、米軍は画期的な共同ネットワーキング能力を急速に発揮している。これにより、作戦効率、センサーからシューターまでの時間、作戦攻撃の可能性、そして新しい高速戦術が大幅に改善され、現在では統合兵器の新しいコンセプトに影響を与えている。

研究者たちによって提起された疑問は、この中国のネットワーキングがどの程度効果的なのかということだ。J-16は本当に暗号化されたRF信号を送信し、水上艦船とASW潜水艦偵察プラットフォームとの間で安全なデータリンク伝送をリアルタイムで実現できるのだろうか?中国のAIによるコンピューティングと分析技術は、米国の進歩にどの程度匹敵するのだろうか?その差は、回答が難しいこれらの質問に対する答えに大きく左右されると思われる。統合された中国軍は、米国の進歩に対抗できる形で、センサーから射撃までの時間をどれだけ短縮できるのか。必要な安全保障を確立し、即座に探知可能なシグネチャーを発しないようにできるのか。艦載レーダーや火器管制からのデータを、J-16からの空中監視情報と統合したり、あるいはレーダーの水平線や利用可能なシグネチャーの開口部を越えて敵艦を捜索する潜水艦偵察機に送ることができるだろうか?

米国はこの種の技術でブレイクスルーしている。調査で見つかった潜在的な兆候のひとつは、中国によるADIZの違反は、成功した「メッシュ」ネットワーキングによって可能になった、より広い作戦範囲にまたがる多数のノードが関与していることはほとんどない、ということだ。研究者らは、34機のJ-16が複数の飛行隊を含む出撃でADIZを侵犯した事例を1度だけ発見したが、PLA空軍の編隊は通常非常に小規模で、戦闘地域全体でマルチノード、クロスドメイン・ネットワーキングを実現できていない可能性を示している。

「戦闘機は通常、飛行中隊の一部として2隻または4隻の編隊で飛行していた。PLAの飛行中隊にはそれぞれ5機が配備されており、そのうち1機は毎日整備を受けている。戦闘機の出撃の大部分は、おそらく同じ部隊の航空機で構成され、飛行中隊に従って編成された。しかし、34機のJ-16で2021年10月4日に行われた侵攻は、複数の戦闘機部隊が関与していただろう」と述べている。論文はまた、機体とパイロットごとの出撃回数についても論じている。重要なのは、各J-16が複座であることだ。アレンとガラフォラは本文の一部として、出撃回数の増加は、どのような戦争シナリオにも「大量に」対応するために必要なパイロットのより広範な訓練とは完全には一致しないと説明している。

「2021年の台湾のADIZへのPLAの出撃回数は印象的に見えるが、パイロット一人当たりの出撃回数はそうでもない(表6参照)。各機体が同じ回数の出撃をしていると仮定すると、ADIZの範囲内にあるJ-16の各機は、年にわずか4回しか出撃していないことになる。216人のJ-16パイロット(90機、1機あたり2席、1席あたり1.2人のパイロットを想定)がそれぞれ同じ回数の出撃を行うと仮定すると、2021年のパイロット1人あたりの出撃回数はおよそ3.3回に相当する......一部のパイロットに多くの出撃回数が与えられると、他のパイロットの訓練に支障をきたすことになる」と本文は説明している。(アレンとガラフォラ『PLA空軍の70年』第6章0節)。

J-20の実際の空戦能力、センサー、武器、さらにPLAのマルチドメイン・ネットワーキング能力の真偽など、いくつかの "判断が難しい"変数に左右される可能性が高い。しかし、はっきりしているのは、PLAが米国の技術的・戦術的進歩を模倣、追随、あるいは超えようとする努力に深く没頭しているということだ。

また、中国は、米国と競争する能力に関しては、数と第5世代が不足している。Global Firepowerによれば、アメリカ空軍は中国より1万機多く航空機を保有している。同サイトによれば、アメリカは13,300機を保有しているのに対し、中国は3,284機である。しかし、米中間の戦闘機の差はかなり少ない。中国の1,199機に対し、アメリカは1,914機を保有しており、これは中国が戦闘機を重視していることを示している。同時に、あまり認識されていないかもしれないが、極めて重大な点は、中国が空母運用型の第5世代航空機を保有していないことである。 

議論されているように、J-20は陸上発進であり、脆弱なタンカー機の巨大なリスクを負うことなく、地理的制約を受けず海上で作戦を行うことが潜在的に課題となっている。この挑戦の一環として、中国はタンカー機材を4機しか運用していないとされており、米国の568機と比べて大きな格差がある。さらに、米海軍がMQ-25スティングレイ空母艦載型給油機を保有し、海上戦力投射能力と航続距離を大幅に拡大していることも、このダイナミックな動きに拍車をかけている。ただ、中国が米国のプラットフォームや技術をコピーしていることはよく知られており、文書化されている。

中国空軍は、J-31という形で初の空母発射型第5世代航空機を整備しているが、その進捗状況や、インパクトある機数の運用開始時期については明らかになっていない。アメリカのアメリカ級揚陸艦は少なくとも13機のF-35Bを運用でき、空母運用型のF-35Cはもっと多くが到着していることを考えると、アメリカと比較して、中国は海上で第5世代機不足の状態で運用されていることになる。作戦能力という点では、米海軍は、十分に前方に配置されていれば、それなりに速く制空権を獲得できる可能性が高いということだ。

米海軍の海上航空優勢にとって、おそらく同様に重要なのは、米国の同盟国である。日本は数十億ドルという巨額の第5世代F-35を購入したばかりであり、シンガポールとオーストラリアもF-35を運用している。 オーストラリアはかなり離れているが、日本の南部は、F-35がどこから発進するかにもよるが、台湾から500マイルから1000マイルも離れている。 このため、日本の第5世代戦闘機は、台湾にとって重要な太平洋の重要地域で活動できる範囲内にある。

中国が台湾を攻撃する場合、弾道ミサイル、宇宙空間、水陸両用作戦、海軍作戦を伴う可能性が高いのは、国防総省の中国報告書が言うところの「既成事実化」、つまり米国が対応する前に台湾を占領し「併合」する中国の努力を念頭に置いているからである。このような作戦が時間内に達成されれば、スピードと奇襲性を駆使して米国の第5世代の大規模な航空優勢を緩和し、おそらく米国とその同盟国が前方に配置されにくくなったタイミングで台湾を迅速に侵略しようとするだろう。 

ここでの戦略は、中国を台湾から「脱出」させようとする米国と同盟国の試みに関連するコストを大幅に引き上げ、「失敗」を作り出すことである。最後に、衛星や空中、海上からの監視によって、中国の水陸両用部隊が「集結」しているのを確認できる可能性が高く、国防総省が太平洋における前方プレゼンスを維持することにかなり警戒していることを考えると、これは中国にとってかなり困難なことだろう。これらの要素はすべて、中国のADIZ違反と大きく関係する可能性がある。なぜなら、中国空軍の航空機数が増えれば、中国が台湾を空から攻撃する際に「ジャンプスタート」ができるからだ。中国が数年でADIZ違反を3倍に増やした理由の非常に大きな部分がこれかもしれない。■

China Triples Taiwanese Airspace violations .. Is it Prep for a Surprise "Attack?" - Warrior Maven: Center for Military Modernization

By Kris Osborn, President, Center for Military Modernization