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日本の参加を折込み、英テンペストの新しい開発構想がファーンボロで発表された。ただし、5年で実証機を初飛行させるという大日程はいささか冒険的すぎないか。

 Let’s Look At The UK’s Plan To Fly A Tempest Fighter Demonstrator In Just Five Years

BAE SYSTEMS

 

日本の参加が視野に入り、テンペスト戦闘機の新しい見通しが明らかになった。

 

 

ギリスの次世代航空戦闘計画について、「今後5年以内に実証機を飛行させる」との直近の発表で、詳細がさらに明らかになった。また、同計画を主導するBAEシステムズは、テンペストの新モデルを発表し、米ステルス戦闘機F-22ラプター似の有人戦闘機となり、機体尾部はF-22のライバルだったノースロップYF-23を彷彿とさせる。

 ロンドン郊外で開催中のファーンボロ国際航空ショーが、BAEにとってテンペストの新コンセプトモデルを発表する機会となり、これまでのアートワークや動画、さらには2018年に同航空ショーで初公開された実寸大モックアップと比較し、印象的になった。

 従来のコンセプトと比較して、最新モデルのテンペストは、全体的なステルス構成と中大型のサイズを維持したままだ。しかし、翼の平面形状に大幅変更が加えられており、「ランバダ」翼は矢印のような後縁を持つ刈り上げデルタに交換された。インテークや前部胴体の全体形状は、ペリカン状の機首が特徴的だった初期型に比べ、F-22との共通点が多くなっているように見える。

 尾翼は、YF-23同様にラダーベーターを採用しているが、大型化され、主翼後縁のすぐ後ろに取り付けられている。エンジンノズルは、胴体後部にうまく隠されているようで、エンジンノズルの間にあった突起状の「刺」がなくなった。

 多くの点で、最新型はインドのAMCAやトルコのTF-Xなど、その他次世代戦闘機の概念構想と一致している。現段階でこのモデルを深読みできないが、今回アップデートされたことが興味深い。この変更は、先行デモ機と関係があるのかもしれないが、実際にどの程度、最終的なテンペストの外観に反映されるのかも不明だ。米空軍の次世代航空支配(NGAD)プログラムのデモ機が飛行しているが、同機もどの程度、後続の有人戦闘機の構成を反映しているかは不明だ。

 イギリスの軍事航空宇宙を長年観察してきたジョン・レイクJon LakeはBAEシステムズの「デモ機は伝統的な意味でのプロトタイプではなく、設計が進化し続ける可能性がある」と書いている。これは、多くの開発、設計、テストで、合成モデリングとモデルベースシステムエンジニアリングを用い、仮想世界で迅速かつ効率的に実施できるためだ。つまり、プロジェクトの伝統的な「金属バッシング」と「飛行試験」の段階を、より短い時間に短縮できる。これはかなり重要な設計上の決定を、従来のプログラムよりも後回しにできることを意味する」という。

 とはいえ、実際に実証機を作るのは、プログラム全体にとっても、イギリスの航空宇宙産業にも意味がある。計画通りなら、英国で新型戦闘機のデモ機が飛行するのは1986年初飛行したブリティッシュ・エアロスペース社のEAP以来となる。EAPは、イギリス空軍(RAF)でテンペストが後継機となるユーロファイター・タイフーンの実現に貢献した。

 

 

英国エアロスペース社のEAP技術実証機。 BAE Systems

 

BAE SystemsのCEOチャールズ・ウッドバムCharles Woodburnは、「信頼にたる戦闘航空能力を提供する責任を認識しています」と声明で述べている。「英空軍と同盟国が敵の先を行くことができるように、新技術を統合し、将来の空軍力の革新を加速させるため、英国の強い意欲と技術を持つサプライチェーンと提携しています。実証機は、経験豊富なエンジニアにも若いエンジニアにも、国家防衛と安全保障で本当に重要な取り組みに貢献するチャンスを与える、一世一代のエキサイティングな機会です」。

 一方、英国のベン・ウォレス国防相は、「デモ機の設計と開発は重要マイルストーンで、我が国のエンジニア、プログラマー、ソフトウェア開発者の成功と才能を示すものとなる」と付け加えた。同プログラムは、「英国内の多くの優秀な人材に機会を提供する」と述べている。

 興味深いことに、ウォレス大臣は、「英国は、イタリア・日本とともに、コンバット・エア・ジャーニーに共同で取り組んでいる」と言及している。「最先端技術に関する日本・イタリアとの協力は、同盟関係のメリットを示しています」。これらの国の一方または両方が、広義のテンペスト計画と同様に、実証機にも関与しているかは、明らかではないが、特に日本は、F-X次世代戦闘機の製造を支援するためBAE Systemsと提携すると広く期待されているため注目に値する。

 

 

将来の日本のF-X戦闘機のコンセプトアート。JASDF/Paipateroma-Wikimedia Commons

 

 

これまでのところ、日本はF-XをテンペストFCASへ正式に統合していない。しかし、関係者は、現在の「共同コンセプト分析」が、今年後半に完全なパートナーシップの最終決定につながる見込みを確認している。英国と日本は、戦闘機用試作エンジンを共同開発し、先進的な空対空ミサイル技術を共有する計画を発表しており、今回センサー開発がリストに加わった。次世代戦闘機の開発と調達のため約400億ドルを確保している日本が正式にテンペスに参加すれば、プログラムにとって大きな一歩となり、非常に高額な開発プロセスとなる可能性のあるテンペスが安定する効果が期待できる。

 一方、ウォレスは、過去にテンペスト計画に関与したスウェーデンに触れていない。スウェーデンが自国のJAS 39E/Fグリペンの開発で忙しいことと相まって、テンペスト戦闘機へのコミットメントが低いことを示唆しているのか。しかし、スウェーデンはまだFCAS(Future Combat Air System)に関わっている可能性があり、イギリス国防省高官が最近それをほのめかしていた。

 英国のFCASは、欧州の同名プログラムと混同されないように、有人第6世代戦闘機「テンペスト」を中心に据えている。しかし、米空軍や海軍のNGADと同様に、「忠実なるウィングマン」タイプの無人機や新世代の空中発射武器やセンサーなど、その他補完技術も含む。

 

 

BAEが最近発表したグラフィックには、タイフーン、F-35、E-7ウェッジテール、「忠実なウィングマン」タイプの無人機と共に、ネットワークチームの一員として働くテンペスト戦闘機が描かれている。BAE Systems

 

テンペスト有人戦闘機が、英国のFCAS事業全体にとって絶対重要であることは、BAE発表の実証機に関するプレスリリースの文言でも明らかだ。この機体が「英国の将来の戦闘航空システムを実現するために必要な技術と設計原理を証明する上で重要な役割を果たす」と述べている。実際、同じリリースでは「英国の将来の戦闘航空システムであるテンペスト」にも言及しており、有人戦闘機と包括的な「システム・オブ・システム」の境界がますますあいまいになってきていることを示唆している。

 BAE声明では、「実証機は、コアプラットフォームで使用する重要な技術、方法、ツールを実証する」とある。「テンペスト開発に関わる幅広い活動として、実証機プログラムは、野心的なこのプログラムを実現するのに必要な次世代スキルや専門知識の保持、さらなる開発、刺激にも役立つ」。

 

「テンペスト」に搭載予定の新技術には、新しい推進システム、センサーと対抗手段、コックピット・インターフェース、通信ネットワーク、ペイロード、自動化サポートなどがある。これらをどどう実現するかについて、BAEは現在、合成モデリングやモデルベース・システムエンジニアリングなど「新しいデジタルエンジニアリング技術」に取り組んでいるという。2035年までの初期運用能力による就役目標までの時間を短縮することが目的だ。

 

 

BAE Systems

 

BAEは先日、英国ランカシャーにある新しい「インダストリー4.0工場」で、「代表的な軍用高速ジェット機の機体」を製作したと確認している。機体構造の65%以上がロボット技術で作られている。

 

 

ハイテクで高度に自動化された新生産ラインで作られたBAEの「軍用高速ジェット機の代表的な機体」。テンペストの前部胴体や、新型デモンストレーターのプロファイルをイメージできる BAE Systems

 

ハイテクで高度に自動化された新生産ラインで作られたBAE社の「軍用高速ジェット機の代表的な機体」だ。テンペストの前部胴体や、新型デモンストレーターのプロファイルをイメージさせることができる。BAEシステムズ

 

同様のアプローチは、ボーイングサーブがアメリカ空軍の最新ジェット練習機「T-7Aレッドホーク」で採用している。また、空軍のeSeriesイニシアチブでは、新しい航空機、衛星、兵器システムなどの開発において「デジタルエンジニアリングがもたらす可能性を受け入れるよう企業を鼓舞する」目的で、(短期的に)信奉されていた。

 同時にBAEは、最先端の設計・エンジニアリング手法により、就航後の航空機をアップグレードする可能性を説いている。これが実現すれば、例えばタイフーンでは、必要なアップグレードが第1線に届くまでに何年もかかっているが、それと一線を画すものになる。

 次世代戦闘機計画も野心的だが、英国はタイフーン後継機に対して非常に高い目標を掲げている。イタリアや日本、さらに他国との提携による経済的、産業的な後押しがなければ、このプログラムが成功するとは考えにくく、これらのパートナーのいずれかを失えば、プログラムは麻痺しかねない。今週、レオナルドU.K.の主要航空プログラム担当ディレクターであるアンドリュー・ハワードAndrew Howardは、テンペスト計画は「一国だけで...実現するのは無理だ」と警告している。

 

同時に、テンペストとFCASプログラムは、BAEシステムズをはじめとする英国の戦闘機製造基盤を維持するために重要度を強めており、その成功は英国の産業部門にとって誇りになる。

 テンペストの「英国の長期的な防衛と安全保障における重要な役割」については、2035年頃にタイフーンの後継機が必要であることはよく知られているが、英国での運用が確立され戦闘実績のあるF-35B統合打撃戦闘機がこの仕事をこなし、より安価にできる可能性があると主張できるだろう。

 さらにF-35Bは、テンペストにはない英国海軍の空母運用が可能であり、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)の特性から、厳しい条件の滑走路や前方作戦拠点からの分散した運用に適している。

 

英国は、当初購入予定だった138機のF-35Bの全数導入を非常にためらっている。イギリス政府は、F-35B購入を減らして、テンペストやアスチュート級原子力潜水艦の後継艦、RAF宇宙司令部含むその他主要プロジェクトの予算にしようと考えているようだ。

 そして、将来の無人機とFCASの中での位置づけの問題がある。英国空軍の無人化計画「LANCA(Lightweight Affordable Novel Combat Aircraft)プログラム」では、BAEのいう「複雑かつ急速に進化する戦場」の要求に応えるために、どのような無人機が必要になるか検討中だ。この考え方の一環として、有人機と半自動的に協働可能な忠実なるウイングマン型無人機を試験するはずだったプロジェクト・モスキートが中止されたばかりだ。

 一方、BAEは先週、新しいタイプの無人航空機のコンセプト2種を発表した。1つは、単独でもネットワーク化され同時大量投入可能な比較的小型無人機、もう1つは大型で、近年他社が提唱中の無人戦闘機のコンセプトに沿ったものだ。イギリスが無人機をどのように利用するか、どの任務で無人機を構成するか、どの程度の自律性を持たせるかなど、非常に多くを検討中である事実を示していると言えよう。

 

 

BAE Systemsが発表した「アジャイル&アフォーダブル」な2つの新しい無人機コンセプト。 BAE Systems

 

 

英国のアプローチはロッキード・マーチンと平行しているようだ。最近、同社のスカンクワークス先端プロジェクト部門は、無人戦闘機(UCAV)のような設計とともに、拡張可能な群れ成分を含む多層分散型有人・無人チーミングのビジョンについて概説していた。

 無人機の大群と無人戦闘機の最適な組み合わせや、従来の有人戦闘機の任務をどこまで担えるのかなど、英国の研究結果が「テンペスト」の行く末に影響を与えることは間違いない。

 テンペストが約束する能力は、少なくとも紙の上では説得力があるが、実際に機体が使用できるようになると、そうでもないように思われるかもしれない。というのも、このスケジュールは非常に野心的だからだ。今後5年以内に実証機が飛行開始すれば、初飛行から量産型テンペストの初期運用まで、8年しかないことになる。タイフーンでは、実証機の初飛行から就航まで17年を要したのと比較すれば、差は歴然としている。

 設計とエンジニアリングの進歩がこのギャップを埋める役割を果たすだろうが、経済の現実と、非仮想領域での予測不可能な試験作業の性質が相まり、過去の戦闘機プログラム同様にハードルが生まれる可能性が高い。

 さらに、このプログラムが成功するためには、大きな経済的利益が生まれ、資金をF-35Bの追加や無人システムへの投資、その他限られた資金を争う大型防衛計画に使うより良いと、説明を求められそうだ。■

 

 

Let’s Look At The UK’s Plan To Fly A Tempest Fighter Demonstrator In Just Five Years

BYTHOMAS NEWDICKJUL 20, 2022 6:37 PM

THE WAR ZONE

 

 


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