Su-35 over Ukraine. Image Credit: TASS/Russian state media.
ロシアによるウクライナ侵攻から5カ月になるが、空の戦闘から得られる教訓とは?
SEADは難易度が高い
アナリストにとって、戦争開始数週間で最も驚くべき展開となったのは、ロシア空軍がウクライナ全域で航空優勢を確立できず、自由に活動できなかったことだ。
イラク、アフガニスタン、リビアでのアメリカやNATOの戦争で、西側航空機が敵機の上空や敵の防御ミサイルを素早く掃射した経験から想定されていた。
ウクライナ上空でのロシア軍機はウクライナの防衛システムを識別し、破壊するのに苦労している。ウクライナのSAMシステムへのロシアの攻撃は、空からではなく、陸上で成功したものが多い。
また、ジャスティン・ブロンが指摘しているように、露・ウクライナ戦争で明らかになったSEADの問題は、西側諸国にとって将来の困難を予見させるものかもしれない。
現時点では、敵のSAMネットワークに対抗できる自信があるのは米国だけだ。実際、現代の防空網を効果的に使えば、最近の紛争では米国でも許容できない程度の航空部隊の消耗が生まれるようである。
制空権の確立は難しい
現在でもロシアはウクライナで制空権を確立できていない。ベトナムのように政治的なものではなく、ウクライナの奥地にある飛行場や中継地などを攻撃することに何の抵抗もないのにロシアは問題に直面している。
しかも、安全かつ効果的に攻撃する手段がない。ウクライナの戦闘機は、防御的なミサイル網の中や自国基地の近くで、ロシアに数的優位があっても、ロシアに対して自分たちで対処できている。
ウクライナのパイロットは不利な状況で戦闘を避けることができ(実際避けている)、ロシアは長距離攻撃で交戦を求めている。つまり、数的優位がないにもかかわらず、ウクライナ空軍は飛行を続け、ウクライナの陸と海の目標を支援する作戦に携わることができるのだ。
人的資本と産業資本
航空兵力の増強は簡単にいかない。ロシアもウクライナも、航空兵力のストックとフローに苦労している。ウクライナ側では、新型機や旧型機の新機種でパイロットや整備士を養成する必要があるため、キーウに既製の空軍機材を供給する構想は急速に崩れ去った。
また、スペアパーツや整備施設の不足から、ウクライナの保有する航空機を使い続けることは困難であったが、東欧から航空機の輸入が開始され、この問題は少し緩和されている。現在の航空機は、1960年代のジェット機と比較しても、複雑さが十分に際立っており、有能なパイロットが操縦できるまでのリードタイムは、従来の数ヶ月が数年に延びている。このため、ウクライナに新型機を納入する戦略には、制度的にも産業的にも相当の努力が必要となる。
これは、ロシアの戦略にも影響を及ぼしている。既存の航空機材を相当数保有しているにもかかわらず、ロシアは消耗の激しい攻撃に航空機を投入する余裕がない。ロシアの産業界は航空機を代替できず、ロシアの訓練インフラはパイロットを代替できない。ロシアはこの戦争で既存機材を消耗したくなく、この決定が航空戦力の使用範囲を限定している。
無人機の貢献
ウクライナの無人偵察機は、紛争初期の無謀なロシアの攻勢を鈍らせ、最終的には崩壊させるのに貢献した。安価で、消耗品扱いのこれらの各機は、絶望的な時に重要な役割を果たした。戦争が進むにつれ、無人機の主な貢献はTB2による派手な攻撃より、歩兵や砲兵隊が運用する多様なUAVファミリーによる短距離偵察になったようだ。
しかし、ここでも反撃がある。ロシアは電子対策を飛躍的に向上させており、ウクライナのUAV制御を混乱させ、破壊を容易にしている。ドンバス地方にロシア軍が密集しているため、対空兵器各種を投入でき、各高度の無人機に対処している。全体として、今回の戦闘で無人機はこれまで偵察機や軽攻撃機が果たした役割と非常によく似ているが、より大型で高速の固定翼機の貢献を完全に置き換えるまでにはなっていない。
結語
ウクライナでの空戦は、我々が通常使うどのような意味で決定的な結果が生まれていない。ロシアもウクライナも決定的な勝利を主張できない。前者が後者を撃破したわけではなく、後者が前者から領空を隔離したわけでもない。同時に、航空戦力の失敗を論じるのは誤りだ。航空戦力の任務(長距離攻撃から近接航空支援、偵察、輸送まで)の成功は、戦争全体とまではいかなくとも、局地的な勝利(キーウ攻勢の頓挫、ドンバスでのロシアの攻勢の成功)に欠かせないものだった。
今後数カ月、ウクライナが西側戦力を活用して航空優勢(あるいは少なくとも同等)を勝ち取れるかどうかが、戦争の行方に劇的な影響を与えそうだ。■
The Air War over Ukraine: Why Can't Russia or Ukraine Claim Victory? - 19FortyFive
WRITTEN BYRobert Farley
Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph.D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.
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