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中国②台湾武力侵攻の余裕はない(少なくとも今は)

 

 

 

  • 中国に台湾攻略の余裕はない

  • 現在の政治環境下で台湾を攻撃すれば、中国にとって困難かつコストがかかる結果となる

 

 

6月12日にシンガポールでのシャングリラ会議において、中国の魏鳳和国防相は、台湾が独立宣言した場合、中国は「最後まで戦う」と明言した。だが、中国に台湾を攻撃する覚悟があるのだろうか。現在進行中のロシア・ウクライナ戦争は、中国の判断にどのような影響を与えるだろうか。

 

筆者は、現時点では中国による台湾攻撃は困難だと見ている。まず、政治的な不確実性の中で戦争を始める難しさを考えてみよう。秋に開催される中国共産党の全国代表大会で、習近平主席は中国全土から集まる2287人の中国共産党代表から3期目就任の承認を受ける必要がある。承認は象徴的なプロセスに過ぎないが、秋を前に習近平の成果に墨をつけるのは避けたいだろう。従って、台湾への軍事力行使は最適な選択と言えない。

 

一方、習近平は現在進行中のCovid-19のパンデミックと格闘しなければならない。中国は人権侵害で激しい批判を受けながらも「ゼロコロナ政策」を堅持してきた。上海では3月下旬にCovid-19の患者数が増加し、2カ月以上にわたる封鎖が続いた。上海の封鎖は、ウイルスの拡散をある程度遅らせることに成功した。しかし、この政策には中央が予期していなかった副作用が2つあった。1つは、長引く封鎖への上海市民の不満である。これは、習近平の権威を脅かすものと受け止められる。もうひとつは、中国の経済パフォーマンスへの悪影響だ。上海は中国経済の大きな部分を占めるため、今回の封鎖で経済的な繁栄にマイナス影響が出た。習主席の最大の関心事は、台湾の統一より、Covid-19のパンデミックなど中国本土の問題を管理のはずだ。

 

もうひとつは、ウクライナ戦争が中国と台湾にもたらすリスクの認識だ。2月にロシアがウクライナを攻撃した際、中国は台湾事案の教訓と捉えた。具体的には、ウクライナと台湾を、ともに近隣の巨大国から独立しようとしている点で、比較した。米国が中台間に直接介入せずに様子を見ていたのに対し、北京はこの揺れ動く態度を利用して、ウクライナで「世界は米国の助けを期待してはいけない」という内容を台湾にメッセージとして発したのである。      

 

ロシアは簡単にウクライナを制圧できるとの期待は打ち砕かれた。ロシアの軍事作戦は今のところ失敗しているが、ウクライナの抵抗の意志は高まったままだ。一方、欧米世論は、ロシアを侵略者、ウクライナを被害者に仕立て上げるのに成功した。したがって、習近平が台湾を攻撃すれば、中国はロシアのような侵略者、台湾はウクライナのような被害者の烙印を押される可能性が高くなる。

 

台湾の軍事準備以上に注目すべきは、台湾国民の意志と覚悟だ。ロシア・ウクライナ戦争の勃発後、多くの台湾人は中国の考え方がロシアと同じになると予期し、脅威を前に、自国を守る意志を強め始めた。台湾人の多くは、中国が攻めてくれば台湾は統一されてしまう、それは台湾の独立戦争になると考える。つまり、中国が台湾を攻撃すれば、台北に独立宣言の口実を与えかねないと習主席が認識しているのは賢明なことだ。

 

第三は、台湾の自衛の決意だ。現時点の台湾は、中国を刺激せずに自立することに注力している。蔡英文政権は台湾海峡の反対側の懸念を払拭するため、独立のスローガンは唱ていない。一方、国防に不可欠な装備システムの取得には熱心だ。台湾は近年、防衛費を増加させ続けており、特に防衛システムに注力している。この点では米国も台湾を積極的に支援している。軍備増強のおかげで、台湾は中国の奇襲攻撃を生き延びるのが可能となり、北京は高負担の軍事行動に躊躇するはずだ。

 

中国が今後、武力行使に踏み切る際の想定外の要因とはなんだろうか?重要な要因は、2つとも習近平国家主席に関するものだ。中国共産党の指導者の中で、習近平は「統一は自分にしかできない」と考えているかもしれない。新しい国を作った毛沢東にも、改革のパイオニアである鄧小平にもできなかった。習近平が台湾統一に成功すれば、毛沢東をしのぐ存在になる。本人の野望は、外部からはなかなか伺い知れないが。

 

逆に習近平が弱体化すれば、台湾への武力攻撃の可能性が高まるかもしれない。つまり、習近平にとって国民の目をそらし、他の国内問題を緩和する手段となる。したがって、習近平政権への支持が弱まれば、習主席への内圧を緩和するため、台湾を武力奪取する動きも選択肢になり得る。

 

台湾の国内問題も考慮する必要がある。台湾の民主主義はまだ若く、選挙に勝とうとする政治家によるデマゴギーに弱い。民主主義国家では、経済が低迷すると、過激路線が国民支持を得やすいと言われる。第一次世界大戦後、ドイツ国民が耐え難い賠償金に苦しむ中でアドルフ・ヒトラーが政権を取ったように、台湾の政治指導者が経済悪化の解決策として独立推進に走る可能性がある。そうなると中国は軍事対応せざるを得なくなる。

 

台湾も内部問題を多く抱えている。まず、低賃金と高い住居費が結婚率に影響を与え、少子化を招いている。確かに今は台湾経済は、Covid-19パンデミックというストレスにもかかわらず、健全さを保っている。しかし、経済状況が悪化し、失業率やインフレ率が上昇すれば、国内問題がラクダの背を押す藁となるかもしれない。

 

台湾では11月に地方議会選挙があり、2年後に総統選挙がある。選挙に出る政治家が人気取りのため、独立について極端な立場をとったらどうなるか。台湾人は政治家の政治スローガンに反応し、中国からの独立を希望ある未来の青写真と受け止める可能性が高いだろう。■

 

Why China Can't Afford to Attack Taiwan | The National Interest

July 9, 2022  Topic: China-Taiwan War  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: China Invade TaiwanChina-TaiwanTaiwan IndependenceCOVID-19 PandemicXi Jinpin

by Joshua NamTae Park

 

Joshua NamTae Park is senior researcher at ISA(Institute for Asian Strategy, Seoul), ROK navy captain, retired, Ph.D. from U.S. Texas A&M University. He had various experiences at sea duties, worked for ROK MND and recently KIDA (Korea Institute for Defense Analyses). Currently, he is staying in Taipei, Taiwan as a visiting scholar. His primary research interests are Chinese security and military issues. Contact : pnt914@gmail.com / pnt914@naver.com.

Image: Reuters.


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