Air National Guard photo by Staff Sgt. Derek Davis
新装備を求めてきたウクライナ空軍が米国製戦闘機の訓練を開始しそうだ。
米下院が2023年国防権限法修正案を可決した。中で最も注目すべきは、ウクライナ軍パイロットに米国製戦闘機の訓練を開始する資金提供を求めている点だ。修正案は、ウクライナ政府が、ロシア侵攻を撃退するためF-16など新型航空機を求める声を繰り返し上げてきたことへの対応となる。
これまで、米政府はウクライナに戦闘機を提供することには消極的で、他のNATO同盟国からソ連時代の戦闘機を譲渡する計画も、武器や交換部品を除けば実現に至っていない。
2011年7月、ウクライナ・ミゴロド空軍基地で行われたセーフスカイ2011演習で、ウクライナのMiG-29とSu-27の前を米空軍F-16Cがタキシングした。U.S. AIR FORCE
しかし、修正案が成立すれば、ウクライナ空軍パイロットが米戦闘機で訓練を始める道が開かれる。そしてそれは、ウクライナがアメリカ製戦闘機を受領する前提条件となる。The War Zoneも過去に、ウクライナ向け訓練プログラムを早く立ち上げるよう主張してきた。航空機の確保に時間がかかることを考慮すれば、将来的な納入に先立ち、訓練のパイプラインを構築することは、明らかに理にかなうことになる。
修正案は、ウクライナのパイロットと地上要員が米国製航空機に習熟する訓練に1億ドルを認めるもので、イリノイ州選出共和党下院議員で自身も元空軍パイロットのアダム・キンジンガー Adam Kinzingerが提案した。昨夜7月14日に可決された2023年国防権限法の下院版の一部になった。
今日のツイートで、キンジンガーはこう言っている。「昨夜、下院は私の超党派のウクライナ戦闘機パイロット法を可決し、ウクライナ人戦闘機パイロットの米国国内での訓練を認める。上院にこの重要法案を大統領の机に届けるよう強く求める。スラバ・ウクライニ!」
キンジンガーは、イリノイ州の民主党下院議員で元空軍将校クリッシー・ホーラハンChrissy Houlahan議員とと、先月に同法案を提出し、ウクライナ人材が「F-15、F-16、その他の航空プラットフォームでの訓練を始められるようにする一方、政権は該当装備の送付の検討を続ける」とした。
訓練場所は示されていないが、アメリカはすでに、さまざまな外国のF-15やF-16オペレーターと、米空軍基地各地に常駐する「スクールハウス」と二国間の訓練パートナーシップを確立している。また、NATO加盟国のF-16部隊に、ウクライナ軍パイロットを組み込む選択肢も考えられるが、十分な能力と教官が該当部隊にあることが条件となる。
フロリダ州キーウェスト海軍航空基地で訓練中のオランダ空軍分遣隊長ヨースト・ライスターバーグ中佐。U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. George Keck
ホーラハン、キンジンガー両議員は共同声明で述べている。「ただし、ロシアがウクライナ主権に対し悪質な工作を続ける場合、ウクライナ軍が該当航空機材で訓練をうけ、使いこなすことが重要であることと両名は同意している。米国および同盟国が該当装備を配備するかにかかわらず、このプログラムはウクライナ軍を強化し、長期的な安定と安全を確保するものである」。
両議員はまた、ロシアがウクライナ空軍とウクライナの地上防空戦の厳しい反撃に直面し、航空優勢を確保できていないことを示唆した。「米国は、ウクライナが航空領域の状況を変え、ウクライナ軍が決定的な優位に立つのを助けることができる」と付け加えた。
米国製戦闘機をウクライナの手に渡すというキャンペーンの最新展開は、"ジュース "と "ムーンフィッシュ "のコールサインのウクライナ空軍パイロット二名がワシントンDCを訪問したわずか数日後のこととなった。パイロットの一名はThe War Zoneに進行中の航空戦についてインタビューに応じており、こちらで読める。
議事堂と国防総省で、ウクライナのMiG-29フルクラムのパイロット2名は、冷戦時代の装備で、はるかに近代的なロシア戦闘機を相手に飛行する際に直面した実際の課題を説明した。両名はまた、米政府にF-16と関連訓練の提供を要請した。
一方、ウクライナのMiG-29パイロット、コールサイン「ノマド」は、彼らの出撃は基本的に「自殺任務」であるとAir Force Magazineに語っている。彼は、ウクライナ機とロシア機の有利な性能として、「80マイル以上」の射程を持つ高度なアクティブレーダー可視距離外ミサイルをあげており、この点はウクライナ軍パイロットが過去に指摘している、と付け加えた。
今のところミシシッピ州のコロンバス空軍基地で空軍のリーダーシッププログラムで、訓練中の唯一のウクライナ空軍パイロットがノマドである。訓練は2月のロシアのウクライナ侵攻前に始まっていたが、本人はF-16の操縦訓練を受ける最初の幹部候補なれるかもしれないと希望している。
米国製ジェット機の訓練に参加するその他候補者は、シラバスに沿い十分な英語力があると判断される「パイロット少なくとも30人」のグループから選ばれる可能性が高い。これは、Air Force Magazine取材に応じたウクライナ空軍司令部の首席報道官、ユーリ・イグナート大佐Col. Yuri Ignatの意見だ。
イグナート大佐は、パイロットが新しい戦闘機に乗り換えるには6カ月ほどかかるが、その大部分は戦術と新しい武器の使用に関連するものと解説している。また、12機のF-16の2個飛行隊と予備機があれば、ロシア航空宇宙軍に十分対抗できるとも語っている。
これは、過去に設定された計画に比べれば、それほど野心的ではないスケジュールだ。以前、パイロットが2〜3週間以内にF-15やF-16を操作できるように訓練可能とウクライナ軍が述べていた。一方、「ジュース」はThe War Zoneに対し、彼と彼の同僚は F-16の操縦を「数日」で習得できると語った。その後、戦術や武器の訓練は 「数週間 」で済むという。
これまでに調べたように、米空軍は通常、完全に訓練され経験豊富な空軍戦闘機パイロットを、他機種からF-16操縦に移行させるコースに6週間以上割り当てている。通常のBコース学生は、F-16訓練に少なくとも37週間かかる。通常、外国の空軍をF-16に移行させるには、何年とは言わないまでも、何ヶ月もかかるし、自国内で戦争が進行中の場合は想定していない。
ウクライナは、ロシア軍機への防衛だけでなく、敵防空を抑える役割(SEAD)でも新戦闘機を運用したいとの意向を示している。これは、ロシアの地上防空網の制圧を適切に実行するためには追加の装備と訓練を必要とし、複雑な任務となる。訪米したウクライナのMiG-29パイロット2名がF-16のSEAD能力を求めた。
敵防空網の制圧・破壊を専門に行う第77遠征戦闘機隊のF-16CMファイティングファルコン。 U.S. Air Force
最近では、ウクライナはF-16よりもF-15やF/A-18ホーネットを好むのではないか、という未確認情報も出ている。これはヴァイパーのような単発機の安全性を懸念したもので、双発機の方が荒っぽい現場作戦に適しており、戦闘ダメージも吸収しやすいと判断されているようだ。
今回の法整備で、ウクライナは防空・攻撃用の戦闘機と、必要な訓練を受ける道が開く。7月8日時点で、国防総省高官は「ウクライナが今、戦闘で毎日効果的に使っている以外の機材について訓練の計画は今のところない」と述べていた。
その現実を変えようとする努力で、ホーラハンとキンジンガー両議員が先頭に立っている。両名は、MiG-29パイロット「ジュース」・「ムーンフィッシュ」の米国訪問中に会見した。また、ウクライナ軍パイロットは、ペンタゴンのロシア、ウクライナ、ユーラシア政策担当主席ディレクター、ナサニエル・アドラーNathaniel Adlerや統合参謀本部とも議論したと伝えられている。
ウクライナ空軍はこれまで、MiG-29やSu-27と同型の戦闘機の後継機を確保しようとしてきたが、失敗に終わっている。一方で、ロシア空軍との戦いで均衡を保つため、より高性能な米国製戦闘機を求めるキャンペーンを繰り返してきた。さらに、戦争が継続し、紛争の性質が変化するにつれて、ウクライナ東部でかなりの面積をロシアが占拠され、二分される可能性が高くなってきた。このようなシナリオでは、ウクライナ領土を取り戻そうとする軍を支援するために、最新鋭戦闘機が貴重な存在になるだろう。
米下院の2023年国防権限法案は、こうした目的を実現する起爆剤になり得る。しかし、まず上院が同法案を可決し、両院の妥協案がバイデン大統領に提出され、署名される必要がある。このプロセスに数ヶ月を要する。同修正案の進展を引き続き注視していく。■
Plan To Train Ukrainian Pilots On U.S. Jets Passed By House Of Representatives
BYTHOMAS NEWDICKJUL 15, 2022 5:42 PM
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