ナンシー・ペロシ下院議長。
ジョー・バイデン米大統領と習近平国家主席は本日、バイデンの就任後5回目の電話会談を行った。ホワイトハウス発表によると、ペロシ下院議長の台湾訪問が報じられた問題で、バイデンは習に対し、「米国の方針は変わっていない」とだけ述べたという。これに対して習近平は、「火遊びをする者は火で滅びる」と、直接的かつ露骨に言い放ち、「米国がこのことを明確に認識することを望む」と述べ、中国は米国を抑止する最善の策として「最悪のシナリオに備えること、特に軍事的な準備をすること」と北京の発言内容は付け加えている。
ナンシー・ペロシ下院議長は、国防総省の「良くない」という忠告に従い訪台を中止するのか、それとも習近平の脅しを無視し台湾を訪問し、台湾海峡での軍事衝突の火種になる可能性があるのか、8月に世界が注目している。これ以上の賭けはない。
米国と中国がペロシ訪台をめぐり対立する可能性がある中、ワシントンの有力者の多くは、この問題を、軍事力行使というお決まりの手段で解決しようと考えている。国際関係における主導的な手段として強制力に過度に依存することで、過去20年間、米国の国益が損なわれてきた。
特に、西側諸国の多くが経済的に混乱している今、ウクライナとロシアの戦争が国境を越えてNATO領域にまで飛び火する恐れがある今、米国はすでに緊張状態にある中国との関係が軍事衝突の可能性に発展するのを見る余裕はない。しかし、米国と北京のタカ派は、そのようなリスクの限界を超えようとしているように見える。ペロシ議長の台北訪問は、ここ数カ月における米国と同盟国の指導者たちによる最新の火種となったが、それだけではない。
ここ数カ月、米国の元高官たちが相次いで台湾を訪問している。マイク・マレン元統合参謀本部議長、メーガン・オサリバン元国防副顧問兼国防次官、ミシェル・フロノイは2月にバイデンの要請で訪台した。3月にはマイク・ポンペオ元国務長官が、今月初めにはマイク・エスパー元国防長官が訪問した。木曜日には、日本の国会議員が訪問し、うち2人の元防衛大臣が台湾総統と地域安全保障について会談した。
中国は以前から、このようなハイレベル訪問は台湾の独立を求める「分離主義」的な要素を助長するものだと主張しており、ペロシが台北を訪問するという報道に対して、異常なまで強い憤りをもって反応している。中国外交部の汪文斌報道官は、ペロシが訪問を実行した場合、「中国は強力な対抗措置を取る、本気である」と述べた。中国国防部報道官の譚克飛大佐は、「(ペロシが台湾を訪問した場合)中国軍は決して黙っておらず、外部干渉を阻止するため強力な措置を取る 」と不吉な警告を発している。
しかし、おそらく最も強いのは、中国共産党の半公式機関紙である環球時報の編集者を長く務める胡西錦で、「ペロシ訪台への大陸の対応は前例のない衝撃的な軍事対応を伴うだろう」とツイートしている。間違いなく、米国は他国が我々の行動を好むか好まないかに基づいて外交政策を立てるべきでない。
しかし、米国は、米国にとって好ましい結果をもたらす可能性が最も高い政策、すなわち米国の国家安全保障と経済的機会を強化する政策に基づいて行動しなければならないのである。だが、わが国に対する軍事行動につながりかねない感情的な問題で、いたずらに中国を突くことは賢明ではなく、避けなければならない。残念ながら、今回の事態の展開により、ペロシと米国は共に厳しい状況に追い込まれており、巧みに知恵を使って乗り切らなければならない状況である。
北京からの要求があまりにも強固で公然のものであるため、ペロシは簡単に外遊から手を引けなくなっている。すでにペロシは、ポンペオとトム・コットンという2人の著名な共和党議員から大きな支持を得ており、両者ともペロシ訪台を強く公然と勧めている。もしペロシが中国のいじめに「屈した」と見なされれば、右派から非難を浴びることはほぼ間違いない。しかし、もし訪問を強行すれば、米国と台湾は、中国が脅迫を実行に移し、何らかの軍事行動を起こすリスクに直面することになる。もっと小さなことで戦争が始まった例は多い。
最近の衛星写真では、台湾まで7分の龍田空軍基地で中国空軍の活動が活発化していることが示されている。駐機場にはフランカー戦闘機、ロシア製Su-27、中国のJ-11やJ-16が詰め込まれている。
一方、アメリカは空母群を南シナ海に派遣し、独自の軍事的な動きを始めたと報じられている。国防当局者がAP通信に語ったところによると、ペロシが台湾に向かった場合、国防総省は「戦闘機、船舶、監視資産、その他の軍事システムを、議長の台湾への飛行に保護の輪を提供するため使う可能性がある」とも述べている。台湾海峡と周辺の不安定な状況のため、政権とペロシができる最も賢明なことは、旅行を中止することである。
ペロシの訪台がもたらすアメリカの安全保障に対するリスクは、アメリカにとっての潜在的な利益と全く見合っていない。先に指摘したように、最近、ワシントンと台北間には公式・半公式の接触が少なくなく、そこに下院議長を加わっても、米国に何ら追加的な利益はもたらされない。
しかし、議長の訪問のため、好戦的な中国が台湾海峡の安全保障の現状を変えかねない軽率な行動を取ることで、アメリカと台湾の両方の利益が危険にさらされる可能性がある。そのリスクにそれだけの価値がない。■
THE EMBASSY
Is A China Crisis Now Inevitable?
https://www.19fortyfive.com/2022/07/is-a-china-crisis-now-inevitable/
Now a 1945 Contributing Editor, Daniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Follow him @DanielLDavis
In this article:China, featured, Joe Biden, Nancy Pelosi, Taiwan
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。