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ズムワルト級駆逐艦はどこまでステルス性能があるのか

 


The Zumwalt-class destroyer Lyndon B. Johnson.

 

ズムワルト級駆逐艦リンドン・B・ジョンソン Photo courtesy of General Dynamics Bath Iron Works


 

外観にセンサーや武器、アンテナなどの構造物がほとんど見えず、ステルス航空機の製造技術に通じるものがある

 

 

ーダーから逃れ、敵地に静かに潜入し、発見されにくい位置から長距離精密攻撃を行う。「ステルス」攻撃型水上護衛艦が現代の海上戦をどのように変えることができるのか、全貌が明らかになりつつある。

 

トマホークミサイル、甲板搭載砲、センサー、アンテナ、発熱する船内電力で武装した巨大な駆逐艦が本当にステルスといえるだろうか。背の高い垂直マスト、船体に取り付けられたセンサー、突き出たアンテナが低視認性艦船となるはずがない。ここが世界初のステルス艦の建造の技術的出発点となった。

 

USSズムウォルト

ステルス性は、ズムウォルト級駆逐艦の特徴のひとつに過ぎず、同艦はレーザー兵器、人工知能、拡張ネットワーキング、先進ソナー、電気駆動など、新世代の戦闘に向けた変革の始まりを象徴する艦艇として認識されている。

 

レーザー兵器、人工知能、ネットワーク、先進的なソナー、電気駆動などだ。重武装を搭載した同艦の技術は、高度なコンピューター、電力、将来の兵器統合の可能性、そしておそらく最も重要なステルスとして見られる。そもそも敵のレーダーから見えにくい大型駆逐艦を開発することは可能なのか?

 

 

一般的にステルスというと、戦闘機や爆撃機などのイメージが強い。しかし、ズムウォルト型駆逐艦には、「ステルス性」技術の応用が見られる。

 

数年前、ズムウォルト開発の初期段階において、レーダーテストで同艦が小さな漁船に見えたという報道が、Naval Sea Systems Commandの引用を中心になされた。ステルスの仕組みから見ると、この結果はまさに意図されたとおりなのかもしれない。

 

ズムウォルトのような大型駆逐艦が、敵レーダーやソナーに対して「ノー」リターン信号を発することはまずないだろうが、レーダー上では実際の姿とまったく異なるレンダリングを生み出し、敵を混乱させる設計のようだ。これは、空軍の戦闘機やステルス爆撃機が、敵レーダーから空中で「鳥」や「虫」のように見えるよう設計されているのと、コンセプトで完全に一致する。

 

ズムウォルトの外形を見ると、ステルス特性の基本を考察できる。まず第一に、その他水上艦と比較すると、形状はまったく異なる。エッジが少なく、突出した構造物や多様な輪郭がなく、直線的でありながらわずかに角度のついた平らな線状面に、上甲板に継ぎ目なく取り付けられた平らな側面がある。正面外観は、外向きレーダー・システムを支えるシャープで絡み合う複数のスチール・パネルや構造物の代わりに、必要な形状を実現する丸みを帯びたエッジを見せている。消波用タンブルホーム艦体は、既存艦より幅が狭く、敵ソナーに探知されにくい。

 

鋭角でとがったエッジや垂直に伸びたデザインなど、異なる形状の外部構造物で、レーダーを跳ね返す領域が多くなる。つまり、レーダーが物体のレンダリングを行う電磁波の反射が少ないと、観測性が低くなる。電磁波は光速で伝わり、その時間は既知であるため、十分な数の電波が返れば、コンピュータのアルゴリズムで敵の形状、大きさ、距離を割り出せる。音響信号は、電気の代わりに音を使うだけで、同じ概念的な枠組みで動作する。そのため、ズムウォルトではレーダーやソナーによる探知を回避できる艦船の建造を目指した。

 

USS Zumwalt

USS Zumwalt

U.S. Navy

 

例えば、現在の駆逐艦の多くは、甲板上に複数のセンサーや兵器システム、角張った階段が目に見えるように配置されているが、ズムウォルトにはそのようなものは見当たらない。また、ズムウォルトの搭載兵器には、丸みを帯びた円錐形構造になっているものもある。エッジや形状が少なければ、電磁波が正確に伝わる可能性は低くなる。

 また、アンテナの使用も重要だ。例えば、DDG51には複数のアンテナ、センサー、マストなど、輪郭がはっきりして細く垂直な構造物がある。ズムウォルトにはそれがない。さらに、ズムウォルトの電気駆動推進システムは、武器に必要な電力を生み出すのに役立つだけでなく、より静かで、頭上の敵センサーや潜水艦にも小さなサインを与える。興味深いことに、ズムウォルトとステルス戦闘機の間には、他にも「概念的」な類似点がある。

 

同艦の外観を見ると、センサーや武器、アンテナなどの構造物がほとんど見当たらない。これは、ステルス航空機に用いられる工学的手法と一致している。ステルス機のセンサーやアンテナの多くは、機体表面に埋め込まれたり、織り込まれたる設計となっている。また、機体各部をつなぐ「継ぎ目」や「ボルト」もない。このようなコンセプトから考えると、ズムウォルトのセンサー、レーダー、ソナー、その他の中核テクノロジーの多くが、意図的に船体や外装に織り込まれたり、埋め込まれていても、全く不思議ではない。

 

U.S. Air Force B-2 Spirit

U.S. Air Force B-2 Spirit

Northrop Grumman

 

 

空軍のステルス機であるB-2は、エンジンが内部に埋め込まれているため熱影響が少ないだけでなく、敵のレーダーに認識されやすい硬い末端や急角度、垂直構造がなく、丸みを帯びた形状で理にかなっている。さらにステルス機は特別に設計されたレーダー吸収材を使用していることが知られている。ズムウォルトの正確な材料に関する多くの詳細がないとはいえ、レーダー波を吸収する外装で作られているとすれば、説明がつく。

 

海軍関係者はまた、同艦の成長性、すなわちレーザーなど新兵器のための豊富な電力と「サージ」容量を収容する技術的能力についても、語っている。同艦の統合電力システム、電気推進、コンピューティングシステム、78メガワット発電機はすべて、レーザー兵器の迅速な導入に向けた条件を実現している。レーザーは、新しい攻撃の利点をもたらすだけでなく、完全に無音であるため、ステルス設計で非常に重要となる。レーザーは、ミサイルとまったく異なり、検知されにくい。

 

このように、表面的にはステルス駆逐艦の概念は矛盾しているように見えますが、ズムウォルトのエンジニアは、艦を見えなくすることは意図していないものの、敵のセンサーを混乱させ、敵に発見されにくい状態で戦争を行うために、数多くのステルス技術を使用したようだ。

 

How Stealthy are the Navy's Zumwalt-class Destroyers? - Warrior Maven: Center for Military Modernization



 

Kris Osborn is the President of Warrior Maven - Center for Military Modernization and the Defense Editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


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