スキップしてメイン コンテンツに移動

C-130を水陸両用機に改装するMACコンセプトのその後。US-2も注目を集めている様子だが、無理のあるコンセプトにしか見えない。

 MC-130J Amphibious Capability, or “MAC”


COVID-19パンデミック以来初めてリアルで開催された米国特殊作戦部隊産業会議2022(SOFIC 2022)で、USSOCOMプログラムエグゼクティブオフィス固定翼(PEO FW)は、INDO-PACOM地域における機動性と柔軟性および生存性を高めるため、特殊作戦司令部が求める水陸両用C-130J水上機の進捗について洞察を提供してくれた。

 SOFIC 2022は5月16日から19日までフロリダ州タンパで開催され、空軍ポートフォリオ部門ディレクター、ケネス・クーブラー大佐Colonel Kenneth Kuebler(USAF)を筆頭に、講演者が発表した。 Naval News読者は、USSOCOMが追求する水陸両用C-130水上機の詳細について、 ここを参照できる。



SOFIC 2022 MAC


USSOCOM’s SOFIC 2022スライドでは新技術の一環として水陸両用仕様のMC-130(MAC)が紹介された SOFIC 2022 slide.


USSOCOMの技術部長リチャード・ロドリゲスRich Rodriguezは、SOFIC2022において、水陸両用MC-130(MAC)実証の進捗と目標について、新たな詳細を提示した。

「水陸両用MC-130の実証実験に関し、USSOCOMは市場調査を実施中で、既存のSOF要件に対応する水陸両用機の可能性を検討しています。また、現在AFSOCは、C-130機体にフロート・アセンブリを搭載する実験を行っています。 デジタル技術を活用し、リスクを軽減しながら変更を加える。また、水力試験やサブスケールでの空力試験も行っている」。

 クーブラー大佐は、USSOCOMが近代化のため以下の分野を検討中と述べた。自動化-乗組員の作業負荷を軽減し、オペレータを安全性や戦闘上重要な領域などの重要な項目に集中させることを目的として、オペレータが複数の項目を制御する能力。生存性-許容環境(対テロ)から競合環境(同業国)において生き残るための「より大きなスタンドオフ」の防御システムを追加する。  

 大佐は、レゴのブロックに例えて、「USSOCOMは、現場指揮官のミッションで必要となる各ペイロードで簡単かつ迅速に搭載できる、真のマルチモード・モジュラー・システム」を実現すると述べている。 

 こうしたのSOCOM近代化分野がMC-130水陸両用実証にどう影響するかは不明だが、ロドリゲスによるSOFIC2022コメントは、USSOCOMが水陸両用軍事貨物輸送の必要性に適合する水上機候補(DARPA「リバティリフター」、日本の新明和US-2)を模索しているのを示唆している。一方、米空軍特殊作戦司令部(AFSOC)は、既存C-130にポンツーンフロートを追加しても、ロッキード・マーティンが数年前から提案している水上機への大規模な改造はしないことしている。



「古い」コンセプトでは機体形状が飛行艇になっており、エンジンが主翼上に搭載されている。読者提供


MAC


SOFIC 2022でAFSOC構想のMC-130が浮きに乗る姿が公開されたが、目標は水陸両用仕様のMC-130Jの実現だ。 USAF image.



また、 MC-130J 機体をポンツーンに乗せたままどうやって貨物を積み下ろしするのかも不明だ。後部貨物ランプが非常に高いため、後部ランプの急角度が RHIB、ジェットスキー、水陸両用車、戦闘ゴム襲撃船(CLRC)などの水上バイクやボートの展開を妨げる可能性がある。米陸軍の精鋭部隊タスクフォース160のMH-47は、しばしば水中に入り、後部貨物ランプを展開して、CRRCの迅速な脱出・潜入を可能にしており、CRRCは文字通りMH-47の浸水した機内へ乗り込んでいる。しかし、水陸両用のMC-130Jはポンツーンに乗っているので、C-130の胴体とランプを水面近くまで下げるバラストがない場合や、MC-130J機内に浸水が許されない場合は、「ウェットダックCRRC抽出」は実行できない可能性がある。


MH-47 CRRC


米陸軍TF-160が運用するMH-47Eは水面に接触し、ゴム舟艇を浸水を許した機内から迅速展開する。水陸両用仕様のMC-130Jで同じ運用を想定しているかは不明。US Army photo.


ポンツーンにつながる梯子や階段が描かれていることから、AFSOCはポンツーンの高さを認識しているようだが、ポンツーンをバラストで沈めることができるかどうかは不明である。また、MC-130Jの前方監視赤外線(FLIR)のタレットボールは機首下にある(ポンツーンがバラストで沈められると、ボールは水没するが、その場合、FLIRボールは防水なのか、繊細な電子機器は波の激しさに耐えられるのか)。 さらに、新明和US-2のような水上機用腹部設計がなく、機体が水面近くあるいは水中にある場合、海水噴霧、波、波を考慮すれば、MC-130Jのナビゲーション、機首レーダー、アンテナ、センサー、繊細な電子機器に有害な影響を与える可能性がある。


MAC


格納式踏み台がポンツーンに続いている。ポンツーンが水没して、MC-130の腹部が水面上にあるのかどうかは、この図では不明 USAF image.



ティム・ホーキンス米海軍中佐Commander Tim Hawkins(元USSOCOM報道官)は、2021年5月、Naval Newsに以下的確に伝えていた。

 「MC-130J Amphibious Capability(「MAC」)は、我々が探求しているコンセプトです。MACコンセプトは、航空機を改造し、水陸両用に離着陸できる能力を持たせることです。これは物理的にも工学的にも難しい課題であるため、SOCOMは現在、最善の能力開発への道を決定すべく、デジタル設計に加え、実現可能性と運用に関する研究で産業界と協力しています」。■



MC-130J Amphibious Capability, or “MAC”

USSOCOM Update on MC-130J Amphibious Capability or 'MAC' - Naval News

Peter Ong  17 Jul 2022

Posted by : Peter Ong

Peter Ong is a Freelance Writer with United States and International Federation of Journalists (IFJ) media credentials and lives in California. Peter has a Bachelor's Degree in Technical Writing/Graphic Design and a Master's Degree in Business. He writes articles for defense, maritime and emergency vehicle publications.


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...