スキップしてメイン コンテンツに移動

台湾が極秘のはずの空軍基地掩体壕をあえて公開した意味。台湾を巡る安全保障の話題が急増している。

 

 

 

主要空軍基地につながる精巧なトンネル網は、台湾が貴重な戦闘機を中国の攻撃から守るために作った

 

 

華民国空軍(ROCAF)として知られる台湾の空軍は、佳山空軍基地Chiashan Air Force Baseにつながる高度なまで要塞化された地下洞窟のような複合体で行われた武器積み込み作業の写真を公開した。公開自体が尋常でない。写真では、ハープーン対艦ミサイルで武装する最近アップグレードされたF-16Vバイパーなど、中華民国空軍で最も高性能な戦闘機を収容する地下トンネル網の内部が見られる。

 

ROCAFは今朝、フェイスブックに武器搭載訓練の写真を掲載し、毎年行われる軍事的な漢江演習Han Kuang Exerciseの2日目に関連するものと書いた。投稿を大まかに機械翻訳すると、中華民国空軍の第5戦術複合飛行隊所属とされる被写体が、時間内で弾薬を補充し離陸準備を行う能力を実証していることが分かる。ROCAFの公式投稿では、演習で使用された機種名は挙げられていないが、F-16バイパーであることは明らかだ。

 

 

ハープーン対艦弾に「AGM-84L」の文字がはっきりと見える中華民国空軍の兵器搭載演習の写真。Credit: ROCAF

 

 

戦闘機への搭載するAGM-84Lハープーン対艦ミサイルの写真が2枚あり、漢江戦闘準備演習2日目の実弾射撃訓練と一致する。また、F-16の翼端にはAIM-120C先進中距離空対空ミサイル(AMRAAM)が、翼の下にはAIM-9L/Mサイドワインダーが装着されているのが確認できる。茶色と黄色のストライプは実弾であることを示し、青色ストライプは不活性弾に使用される。

 

しかし、写真で最も注目すべきは、撮影場所だ。花蓮の佳山空軍基地 Chiashan Air Force Base付近の山肌には、中華民国空軍の戦闘機格納庫につながるトンネルがあり、要塞のような構造になっている。その構造の秘密性から、台湾軍は施設への立ち入りや内部での写真撮影を厳しく管理している。

 

なぜ台湾軍がこの写真を公開しても問題ないと判断したのかは定かではないが、中国からの攻撃に対抗するため中華民国空軍がどんな手段を取るのか、写真公開がメッセージとなる。台湾軍が直接公式に、場所を特定していないことも重要な点だ。しかし、防衛ジャーナリストで『Modern Taiwanese Air Power』の著者ロイ・チューRoy ChooはTwitterで、写真は佳山の地下格納庫で撮影されたと主張し、報道を後押ししている。

 

中華民国空軍の2名が武器搭載訓練で、佳山の地下格納庫でF-16にハープーン対艦ミサイルを搭載中。 Credit: ROCAF

 

チューは著書の中で、佳山は台湾東海岸に建設された二つの「聖域」の一つであり、もう一つは台東の志航航空基地 Chihhang Air Baseにある小規模な「獅山」Shizishan施設であると書いている。2つの基地は1980年代初頭に構想された「建安Project Jian'an号」プロジェクトで、技術者チームが1981年からヨーロッパを回り、後に地下施設の掘削に使われた「新オーストリアトンネル工法(NATM)」を研究し、「安全建造3号Build Safe3」として開発した。

 

1984年に着工し、8年がかりで完成させた佳山の総工費は約10億ドル。花蓮の花崗岩の山をくりぬいてつくられた佳山は、台湾の中央山脈に囲まれており、中国大陸からの空襲に耐えられる地下格納庫になると開発関係者は確信している。

 

佳山空軍基地 Credit: Google Earth

 

佳山空軍基地の北側洞窟入り口。 Credit: Google Earth

 

佳山空軍基地の南側洞窟の入り口。Credit: Google Earth

 

「基地を訪れた人々は、入り口に巨大な鋼鉄製ブラストドアがあり、衝撃に耐えられると語っている。「基地は北と南の複合施設で、それぞれ5本の水平トンネルと5本の垂直トンネルが十字に交差する構成になっている。誘導路のトンネルは3階建ての高さ」。

 

佳山空軍基地の地下格納庫でROCAF隊員が兵装搭載訓練をしていた。

 

中華民国空軍の乗組員が武器搭載訓練中に、佳山の地下格納庫でF-16Vにハープーン対艦ミサイルを搭載する。Credit: ROCAF

 

チューはさらに、同施設には最大200機の戦闘機、地下発電機、医療施設、C2インフラ、食糧と燃料数ヶ月分が収容できるとする報道について言及している。

 

また、佳山空軍基地は大陸からの攻撃を考慮して、意図的に島の太平洋側に建設されたことも特筆される。しかし、近年、中国人民解放軍は太平洋側からの攻撃能力を飛躍的に拡大させており、堅牢な施設であっても、その脆弱性が懸念される。

 

中国は陸・海・空からの強力な攻撃力を有し、その懸念から台湾が陸上防衛システムを拡充している。ファランクス速射砲などの兵器は、佳山空軍基地や太平洋側の佳山、台東空軍基地を、陸上攻撃型巡航ミサイル、ドローン群、対レーダーミサイルなどと中国側の各種攻撃に効果を発揮するはずだ。中国の戦術航空戦力も、空中給油の助けを借りれば東側からの攻撃も現実になっている。この点で中国の空母は、台湾にとって大きな問題だ。

 

 

 

台湾の台東航空基地の空撮画像。 Google Earth

 

最近公開された写真では、佳山空軍基地の地下トンネルを垣間見ることができるだけで、より小さな獅山空軍基地は写っていないが、中国との衝突の際には、いずれの施設も重要な役割を果たす。チューは著書で、中華民国空軍は大陸との緊張が高まった場合、機材をこの2つの堅固な基地に避難させると説明している。実際、敵侵攻を想定した演習が、中華民国空軍が公開した写真に見られるように、毎年行われている。

 

中華民国空軍は、過去にハープーン搭載のF-16で哨戒任務を行っており、ハープーンの出現は特に重要であることは、War Zone記事で指摘したとおりだ。台湾のLiberty Timesは、今回のミッションは、台湾が統治する東沙諸島の占領を模擬した中国演習に対応し実施されたと認めている。中国との衝突の際、台湾は揚陸強襲攻撃に対して可能な限り対応するだろう。沿岸部の地下格納庫へハープーン搭載のF-16を配備することも考えられる。チューによれば、現在、さらに強化されたジェット機の聖域が計画されている。中国兵器は急速に進化しており、要塞を貫通する能力を持つ巡航ミサイルや弾道ミサイルもあり、各施設が以前より脆弱になっている。

 

中華民国空軍要員が武器搭載訓練中で佳山基地の地下格納庫でF-16Vにハープーン対艦ミサイルを搭載する。 Credit: ROCAF

 

 

「2,000ポンド爆弾の直撃に耐える設計の防護シェルター36箇所が、2020年から7年間で1億5700万米ドルでCCK基地に建設されている」とチューは書いている。「2023年から新しいF-16C/Dを受け取ることが確認されている志航基地にも、新しい硬化航空機シェルターが建設される期待がある」。

 

中国と全面的な紛争が起こった場合、重要な航空資産を地下トンネルに収容する機会があれば、機材生存率が高まることは間違いない。言うまでもなく、中華民国空軍と台湾軍全体が、最悪の事態に備える努力を惜しんでいるとは見えない。■

 

Extremely Rare Photos Inside Taiwan's Underground Fighter Jet Caves

BYEMMA HELFRICHJUL 26, 2022 9:48 PM

THE WAR ZONE

 

Contact the author: Emma@thewarzone.com

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...