PLAAF/YouTube Screencap
中国待望の次世代ステルス爆撃機が飛行準備中であることを示す証拠が増えてきた。
中国国営メディアは、米ステルス爆撃機に対抗すると期待されている次世代爆撃機、H-20の初飛行が間近であることを強く示唆している。共産党系の環球時報に昨日掲載された記事では、中国飛行試験施設(CFTE)の関係者が、現地を訪れた政府関係者に、新型航空機の飛行試験の準備中と語ったという。発言は、CFTEの責任者葛和平のものとされ、公式訪問は 「テストに関わる人員を動員するための集会」と説明されている。
また、中国のニュースサイト「Guancha」の記事には、CFTEのWeChatインスタントメッセージアカウントに最近掲載されたニュースが引用されている。この記事でも、中国共産党高官が試験場を訪れたと紹介されているが、「ある機種の開発」と、その重要性を示唆する部分が目立つ。記事は意図的に曖昧にしているが、謎の新型機が「戦略的、歴史的意義」を持つという記述から、H-20を示唆すしている。
いずれの記事にも、言及がある航空機についての詳細は書かれていないが、これまでH-20は 「戦略的プロジェクト 」として言及されてきた。
2021年初頭に公開されたPLAAFの隊員勧誘ビデオに見られる、H-20とされる全翼機の公式レンダリング画像。 YouTube capture
H-20に関し憶測が飛び交う中、新型機の飛行試験が間近に迫っているというCFTEから出たニュースに関連付ける人が多いのは、不思議ではない。さらに、この機種についての説明は、H-20について判明しているわずかな情報と一致する。結局のところ、中国にとって最も野心的な軍用機プロジェクトであり、初の完全国産長距離爆撃機であり、重要拠点やインフラを攻撃する新しい手段を提供することによりアジア太平洋地域の戦略バランスを変えかねないプラットフォームである。
中国が新型軍用機の初飛行に関し情報を公表するのは極めて異例だが、H-20は一般に、異なる扱いを受けてきたことをここで強調しておきたい。
昨年10月、マイクロブログサイト「微博」に、「特殊型」航空機のモックアップを引き渡したとの画像が投稿されたが、当時メディアで取り上げられることはなかった。写真には西安航空工業公司(XAC)のCEOとチーフデザイナーがモックアップ(未公開)に見入いる様子が写っていた。西安航空工業公司は、603航空機設計研究所とH-20開発を担当した主契約企業だとが確認されている。モックアップ、あるいは「アイアンバード」と呼ばれる実物大システム試験機(非飛行タイプ)の引き渡しは、プログラム開発で意味があり、モックアップが完成したとする2021年7月の未確認報告に続くものなのだろう。
さらに驚くべきことに、この計画の極秘性を考えると、2021年1月、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の隊員採用ビデオに、H-20で初の公式レンダリングが含まれている。シートで覆われた機体が、アメリカ空軍のB-2スピリットやB-21レイダーに似ていることを示していたが、ビデオの描写が実際の設計を正確に反映していない可能性も十分にある。
このティーザー広告の前には、XACを傘下に入れる国営中国航空工業集団(AVIC)による別の動画があった。2018年に公開され、「The Next...」と英語で書かれたシートの下に、CGの全翼機翼が映っていた。当時、B-21のスニークプレビューを提供した有名なノースロップ・グラマンのスーパーボール広告に酷似していることで話題になった。
シートに覆われたH-20の2018年のAVICのティーザー動画からの静止画。AVIC
ノースロップ・グラマン
こうした公式動画はいずれも、H-20を名指ししたり、同機の役割の詳細を明らかにしていない。しかし、レーダー断面積のテストモデルなどを総合すると、次期爆撃機は全翼機形状であり、B-2とほぼ同じ大きさとの見方が有力だ。しかし、中国の爆撃機ではのユニークな特徴を取り入れるとの噂もあり、折りたたみ式垂直尾翼を持つのではないかという憶測もある。
しかし、全体として、H-20についてはほとんど知られていない。
H-20の研究開発は、2000年代初頭にXACの603航空機設計研究所で始まり、亜音速飛行翼と超音速デルタ翼の両方が研究され、スケールモデル数点が作られたと考えられる。2011年頃には、亜音速の飛行翼で4基のエンジンを搭載する案に落ち着いたようだ。
機能的な全翼機爆撃機を作るという点では、XACはGJ-11 Sharp Sword戦闘機で得た経験や、その他小型無人機から恩恵を受けているとの指摘がある。確かに、GJ-11の背面エンジンインテークをはじめ、飛行制御システムやレーダー探知機の誤動作防止技術など、シャープソードの設計から重要なデータを得たと思われる。
軍事パレードに登場したステルス機「GJ-11 Sharp Sword」(2019年10月1日)。The Yomiuri Shimbun via AP
同様に、少なくとも2型式のステルス有人戦闘機(J-20とFC-31)が現在飛行しており、中国には低視認性技術の実用性を理解する機会が十分にあるため、H-20は、敵空域に侵入し生き残る重要な役割を果たす期待が寄せられている。米情報機関は、中国が実際に2種類の新型低視認性爆撃機の生産に着手したと評価している。戦略爆撃機H-20を補完する中型/中距離戦闘機(おそらく双発エンジンを備えた双発機)が予想されている。
一方、アナリストは、H-20はコンフォーマル・アンテナを使用したアクティブ電子スキャン・アレイ(AESA)レーダーを搭載し、回転式ランチャーに内蔵する亜音速巡航ミサイルを主武装に予想している。
H-20は、現在PLAAFの長距離爆撃機を構成しているXAC H-6の後期型から大きな進歩をもたらすはずだ。H-6の設計は1950年代初頭のソビエトTu-16バジャーに遡るが、最近では最新の巡航ミサイル、空中発射弾道ミサイル、極超音速兵器の可能性を搭載に加えた。H-20は、核抑止力を含む長距離戦略プラットフォームとして、はるかに大きな能力を提供する。最終的には、アメリカ空軍のB-21/B-52のような形で、H-20がH-6と一緒に使用されると容易に想像できる。
ロシアでのアビアダート軍事演習に参加したPLAAFのH-6Kミサイル搭載機。Ministry of Defense of the Russian Federation
2013年初頭、H-20の本格開発にゴーサインが出たと報じられると、その後、H-20のさらなる進展を示唆する非公式な情報開示が次々と現れた。3Dデジタルプロトタイプの完成、レーダー探知を減らすため蛇行させたエンジン吸排気ダクト、「アイアンバード」地上試験装置の製作、飛行制御システムのテストなどだ。また、前述のレーダー断面積用のテストモデルも目撃されている。
H-20が2023年に初飛行するとの憶測があったが、今回のCFTEの発言を爆撃機の初飛行に結びつける報道に信憑性が強まっているようだ。また、H-20の初飛行の可能性が、B-21の初飛行と密接に結びついていることも注目される。これは、北京が自国能力を確保するためだけでなく、急速に発展している自国の軍事航空宇宙産業を誇示するために、米国の新型機プログラムの進展に合わせようとしているのかもしれない。
「戦略的、歴史的意義」といわれる中国の航空機プロジェクトは別にもあり、民生用機材も含まれる可能性があるが、H-20が最有力候補だろう。
全体として、H-20の存在は公然の秘密となっており、同機に言及する中国の公式情報源は、増える一方だ。このことを考えると、H-20計画の次の進展はそう遠くないうちに現れるだろう。■
First Flight For China's H-20 Stealth Bomber Could Be Imminent: Report
BYTHOMAS NEWDICKJUL 8, 2022 1:15 PM
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