スキップしてメイン コンテンツに移動

米空軍が空中発射レーザーポッドの実機試験をまもなく開始か。LANCEを扱うAFRLの動向に注目。

 F-16_SHIELD_LASER_POD

LOCKHEED MARTIN


米空軍はポッド型防御用レーザー兵器を取得しており、初の空中テストを始める。

 

 

空軍は、航空機に搭載可能なポッド型高エナジー・レーザー兵器を受領した。このニュースは、ロッキード・マーチンが開発したもので、テスト作業のために空軍に引き渡されたと今日、発表が出た。この取り組みは、敵のミサイルやその他のターゲットと交戦できるレーザー武装した戦闘機の実現という、大きな枠組みの中で行われている。

 

ロッキード・マーチンが、今年2月に空軍に高エナジーレーザー兵器「LANCE」を納入していたことが、本日付のBreaking Defenseで確認された。LANCEとは、"Laser Advancements for Next-generation Compact Environments"「次世代のコンパクト環境のためのレーザー」の略だ。空、宇宙、サイバースペース領域における新技術の開発・統合を担う空軍研究本部(AFRL)に納入された。

 

ロッキードのタイラー・グリフィンTyler Griffinは、以前記者団に対し、LANCEは「ロッキード・マーチンでこれまで製造した同出力クラスで、最も小さく、最も軽い、高エナジー・レーザー」であると述べている。

 

グリフィンによるとLANCEは、ロッキードが陸軍向けに製造した指向性エナジー兵器の「6分の1の大きさ」とある。このレーザーは、Robust Electric Laser Initiativeプログラムの一部で、60キロワット級出力だった。LANCEの出力は不明だが、100キロワット以下と言われている。

 

 

ロッキードは、指向性エナジー兵器で武装した未来の移動戦術車コンセプト含む地上ベースのレーザーでの経験をLANCEに活かしている。Lockheed Martin

 

LANCEでは小型軽量化に加え、電源出力要件を下げており、戦闘機用レーザー、特にポッド搭載可能なレーザーにとって重要な要素だ。

 

防衛任務に成功すれば、LANCEは、次に地上や敵機から発射された対空ミサイルを狙う場合より遠距離で敵機やドローンを攻撃するなど、より攻撃的なレーザー兵器の開発に進展する可能性がある。

 

LANCEは2017年11月交付の契約に基づき開発されたもので、空軍の幅広い防衛高エナジーレーザー実証機(SHiELD)プログラムの一部だ。

 

SHiELDは、ロッキード・マーチン、ボーイングノースロップ・グラマンの共同事業である。ロッキード・マーチンがLANCEレーザー兵器の実機を提供し、ボーイングがポッド製造、ノースロップ・グラマンがレーザーをターゲットに照射維持するビーム制御システムを担当する。

 

 

2021年3月、テネシー州アーノルド空軍基地の4フィート遷音速風洞で、指向性エナジーシステムのタレットを見るエンジニア。U.S. Air Force/Jill Pickett

 

AFRLで指向性エナジー部門のディレクター代理をつとめるケント・ウッドKent Woodは、Breaking Defenseに対して、各種SHiELDサブシステムは 「これまでに納入された中で最もコンパクトで高性能のレーザー兵器技術の結晶」 と述べている。

 

また、ウッドの声明では、AFRLによるテスト作業は初期段階とあり、「任務実用性分析とウォーゲーム研究」が進行中とある。「今後のテストやデモンストレーションの具体的なターゲットは、研究の結果で決定される」と述べた。

 

一方、ロッキードのグリフィンは、プログラムの次の段階では、LANCEを熱システムと統合し、加熱と冷却を管理すると説明。

 

LANCEが飛行試験、さらに空中発射試験に進み、どの機体に搭載されるかは現段階では不明だ。しかし、グリフィンは、「各種潜在的なアプリケーションとプラットフォームをデモンストレーションとテスト用に検討中」と述べている。

 

ロッキード・マーチンのコンセプトアートでは、F-16戦闘機に搭載されたポッドが描かれていた。また、SHiELDは当初、高リスク環境における戦闘機の能動的防御の可能性の証明に中心をおくが、関係者は、大型機材や戦闘支援機にも同じ技術を適応させる可能性があると話している。

 

ボーイングは2019年、試作前のポッド型ただし内部サブシステムなしを空軍のF-15戦闘機に搭載して飛行させた。一方、地上テストでは、デモンストレーション・レーザー兵器システム(DLWS)と呼ばれるレーザーが、2019年にニューメキシコ州のホワイト・サンズ・ミサイル発射場上空で空中発射ミサイル複数の撃墜に成功している。

 

完全なSHiELDシステムの最初のテストプラットフォームに関する決定は、飛行実証予算が確保された後に行われると思われる。LANCEとSHiELDがどのように実際のプログラムに発展し得るかについて正式な移行計画もまだない。

 

現状では、作業スケジュールも不明で、AFRLはBreaking Defenseに対して、空中試験がいつ行われる可能性があるかは未決定と伝えている。

 

2017年後半、AFRLは2021年までに戦術戦闘機でレーザーをテストすると述べていた。その後、2020年にロッキード・マーティンは、2025年までに戦術戦闘機でレーザーの1つを飛ばす予定だと述べた。空軍は昨年、ポッド型レーザー兵器の飛行試験開始予定を2年早め2023年にすると発表したが、技術面で問題にぶつかっている。この遅れは、技術的な困難とCOVID-19パンデミック関連での作業の遅れの両方が原因とされる。

 

昨年2月、AFRLはSHiELD用のボーイング製ポッドの納品が間近で、LANCEを含む残りのコンポーネントを2021年7月までに入手したい旨を発表していた。過去にAFRLは、敵の超音速ミサイルを撃墜する指向性エナジーレーザーの技術的課題を「途方もない」と表現していたが、今回の遅延の理由は明らかではない。

 

一方、空軍のパイロットは仮想現実の戦場環境で、ポッド搭載の空中レーザー兵器を使う模擬任務の飛行を行っている。このウォーゲームは、兵器システム開発に使用可能な仮想テスト環境を開発する空軍の幅広い取り組みの一部だ。

 

SHiELDは、ポッド型レーザー防衛システムの可能性を示すのが目的で、最終的には赤外線フレアやチャフなどの消耗品対策や電子戦システムの補助となり得るコンセプトを示唆している。

 

しかし、レーザー防衛システムには欠点もある。大気の状態に影響を受け、指向性エナジービームの範囲と威力に悪影響を及ぼす可能性がある。また、レーザーは一度に1つの目標にしか照射できないため、既存のデコイなどの対抗策に取って代わるのではなく、むしろ補完する存在になるだろう。レーザー兵器が将来の戦場に何をもたらすかについて詳しい調査がある。

 

しかし、最終的に成熟した高エナジーレーザー兵器は、ミサイルからの機体防御以外の、各種役割に使用される可能性がある。目視距離で敵機に交戦したり、巡航ミサイルを叩き落したり、あるいは地上の目標物を攻撃するなど、攻撃兵器になる可能性もある。

 

基礎技術の問題がどこまで解決されているかは不明だが、今年初めにLANCEが納入されていたことが、戦闘機用レーザー兵器の実現に向けた大きな一歩であることは明らかだ。■

 

First Laser Weapon For A Fighter Delivered To The Air Force

BYTHOMAS NEWDICKJUL 11, 2022 3:15 PM

THE WAR ZONE

 



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...