2014年6月10日火曜日

ボーイング防衛部門トップに聞く 差別化を目指すボーイング


Face to Face With Boeing's Defense, Space & Security Head

aviationweek.com May 28, 2014 | Aviation Week & Space Technology

クリス・チャドウィックはボーイング国防宇宙保安 Boeing Defense, Space & Security (BDS)の社長兼CEOだ。彼の眼には国防宇宙市場の予算環境が悪化する中で多くの同業他社が旧態依然に写る。そこで同社の戦略は他社から一歩抜け出し、本人がいうところの「本当の差別化」をすることなのだという。Aviation Week編集者に本人が語った。
Chris Chadwick
President/CEO of Boeing Defense, Space & Security (BDS)
Age: 53
Education: B.S., Iowa State University; M.B.A., Maryville University
Career: On Dec. 31, 2013, the same day his former boss Dennis Muilenburg was promoted to COO of the Boeing Co., Chadwick was named to head BDS. Prior to this, he had been president of Boeing Military Aircraft.

AW&ST: 他社の一歩先に行くために研究開発投資を増やすのか。群れから抜け出るためにはボーイングはもっと多くの資金を投入するのか。
チャドウィック: 当社はかねてより国防関連を重視し、ここ数年は投資規模が他社より大きくなっている。この市場では強制予算削減があるが、世界的なバランス再編のニーズがあり、いまこそ先に進むべき時だと判断している。新規案件が少なくなっており、足元を固めるべきで、今後もこの姿勢を守る。
差別化というが、具体的にどうするのか。たとえば、海軍の無人空母運用監視偵察攻撃機 (Uclass) の受注をめざしているが。.
Uclassについては多くは語れない。これまでは部門別に自分たちだけのことを考える傾向になりがちだったが、ジム・マクナーニーの提唱するOne Boeingでチームでよい結果が得られるようになってきた。つまり社内文化の障壁がなくなって、社内の透明度が上がってきたことで技術開発、製造技術開発、投資活動の効果がUclassやT-X練習機開発に出てきた。よく知られるコスト曲線の影響を受けない考え方に切り替わっている。
コスト曲線を断ち切るにはいろいろ方法があり、ひとつは設計開発の考え方だ。成長の方向性を組み込んで正しいコストで進める正しい能力のことだ。製造現場では新技術の応用だ。供給メーカーの側ではコスト曲線の先を行き一日目から切れ目なしに共同作業することだ。
KC-46A開発も半ば過ぎたが、ボーイングが相当の資金を投入して開発を進めているのは公然の秘密。ボーイングにとって同機開発を続ける意義は何か。また空軍、会計検査院(GAO)、ボーイングそれぞれ異なる見積もりを出しているが、どう折り合いをつけるのか。
当社は2017年に18機を引き渡す約束を履行する。変更はない。コストのくいちがいでは当社は顧客と話しており、顧客としてコストを独自に検討するのは当然だ。工程一日目からコスト、日程を共に守っている。これが当社の姿勢だ。初飛行も第3四半期予定で、ボーイングとしての見積もりには変更がない。
同機では海外販売も視野に入れているのか。ファーンボロ航空ショーなどを利用して?
検査院の最新報告を見ても給油機開発の現状に好意的な評価が出ているし、国際販売の見通しも有望だ。そこで海外営業に焦点を当てている。そのためにも中心となる顧客に対して開発が順調であると示す必要がある。One Boeingが給油機ではうまく働いている。P-8でも効率よく進められた。ファーンボロ―で大々的に売り出すかどうかは言えないが、国際市場には焦点を当てているのは事実。何と言っても市場規模が大きいから。

空軍のT-X訓練機案件ではボーイング案は他社とどうちがっているのか、他社が完全新型機ではなく既存機種を利用する中でどう対応するつもりなのか。
T-X次世代空軍向け練習機では絶対的な差を見せられると固く信じている。提携先のサーブは他社と設計開発の考え方が違っている。そこで当社と考えをぶつけあって、低予算でも多くが求めらえる環境で優れた解決策をみつけることができた。
当社の設計案は米空軍の要求内容を忠実に実現し、ニーズにこたえるものだが、他社はちがう。他社製品は他国空軍向けの内容だ。多少改修し、フライトテストからはじめるつもりだ。ただ性能はそれではたりないので拡張したり、一部性能は割愛すればコストに影響が出る。コストの点では当社案が優位だ。
競争相手が存在しない時代は終わった米国に契約から配備まで20年もかかる案件を手掛ける余裕があるだろうか。.
我々業界にあるものは素早く動く方法を見つけねばならない。スムーズかつ効率よく安価に次世代技術を設計に取り入れる方法をどうやって見つけるか。しかも今現在ではなく、5年後10年後の技術を今どうやって確保するか。iPhoneやアンドロイド携帯を見れば、アップグレードを素早く行うことがカギだとわかる。これは言うのは簡単だが、当社の関心事は技術陣にある。長い目で見て当社の差別化はここにある。
社長職で引き継いだ国防関連事業にはミサイル防衛も入っている。ボーイングは地上配備中間コース防衛システムGround-based Midcourse Defense system (GMD)の費用を下げたが、要求性能水準は引き上げられている。同システムでは2008年以降は目標捕捉成功の実績がないまま、どうやって同ミサイル開発を立て直すのか。
GMDに関しては顧客と一緒になって順調に作業を続けており、今後のテストを準備中だ。GMDについて話ができる範囲が狭いが、一度後戻りしてシステムを見直し、リスクとチャンスを把握して次回テストを成功させる。
ボーイングにとって戦闘機開発を続ける意義を見出すためには何が必要になるか。ペンタゴンには独占企業の出現を食い止める意識はあまりないようだ。米政府は戦闘機メーカー二社体制維持を意識的に進める必要があると思うか。
国防総省高官とは具体的に国際市場でF-15およびF-18を公正に販売する課題を相談したことがある。同省も公正な競争の必要性を認めてくれた。F-15は2018年までの販売が確実で、まだ潜在的な需要があるとみている。F-18は現時点では2016年までだが、軍、国防長官、議会で今後のF-18調達予算の話が進んでおり、当社は楽観視している。
それ以外に戦闘機畑で培った技術をUclassや長距離攻撃機、さらにある程度までT-Xに応用できるので感情が高ぶっているところ。各機はまもなく現れる。当社の目標はF-15とF-18の威力を可能な限り維持することと、これから出る次世代機各種案件で出来るだけ多く受注に成功することだ。各案件はうまく統合されていくと思う。
イノベーション効果について口にしていたが、反対に機体販売は最近下降気味ではないか。T-X受注が不調に終われば、国防総省向け機体メーカーとしての将来に疑問がつくのではないか。その場合、企業活動をシステム統合に振り向けるのか。
同じ質問は5年前にも出ている。企業収入の観点からは減少傾向は終わっている。34年前からは二けたのパーセントの増加になっている。そこで長距離攻撃機とT-Xの受注に重点を移している。両案件で当社が有利になっていると強気にみている。
ボーイングは無人機分野では高性能機種で大きな売り上げを実現していないが、これがUclassにどんな影響を与えるか。
ノースロップ・グラマンが一歩先にあり、ロッキード・マーティンが堅調といいたいのだろう。ボーイングにも機会があった。無人機市場はこの数年で大きく様変わりしている。無人機は大きい市場だが、万能ではないし、実績も多くない。さらに今後20年から40年先を見通すと、無人機が国内外の軍用機で主流にならないと見るのは困難だ。そこで当社はひとつずつ先に進めていく方針だ。■


2014年6月9日月曜日

海軍向けF-35Cも開発は順調とはいうものの 


初期作戦能力獲得を急ぐ海兵隊、それに次ぐ空軍と一歩離れて米海軍はゆっくりとF-35Cの実戦化をめざしているようです。ただし、海軍の作戦構想ではF-35をセンサー機材として運用するとみられ、実はJSFに対する期待が低いのかもしれませんね。

Navy Joint Strike Fighter Set for October Tests at Sea

USNI NEWS IBy: Dave Majumdar
Published: June 3, 2014 10:56 AM
Updated: June 3, 2014 10:56 AM
An F-35C Lightning II aircraft makes an arrested landing during a test flight at Naval Air Station Patuxent River, Md. on May 7, 2014. US Navy Photo
An F-35C Lightning II aircraft makes an arrested landing during a test flight at Naval Air Station Patuxent River, Md. on May 7, 2014. US Navy Photo

ロッキード・マーテインF-35C空母運用型のJSF開発は着実に進展しており、今年10月のUSSニミッツ(CVN-68)艦上での公試は予定通り実施の見込みだと同社は説明している。

ロッキードによれば公試はDT-1と呼ばれ、10月12日から11月3日までの予定だという。ただしその前にまだ解決すべき課題が多く残っている。

最大の課題は着陸装置および機体の構造強度で、各種の条件で空母着艦を想定したフライトテストが行われている。

テストはパタクセントリバー海軍航空基地(メリーランド州)に設置したカタパルトと着艦装置を使って行われているが、海上の空母とまったく同じ条件ではない。

直近では5月29日にC型が毎秒21.4フィートと言う最大降下率で安全に着艦できる能力を実証している。

そこでDT-1でのポイントは発艦、着艦の実用上の手順を確立することにある。DT-1が成功すれば、艦上でもっと難易度の高い課題を試すことになる。その際にはF-35Bが行った海上公試(USSワスプ LHD-1)が参考になるだろう。

着艦、発艦以外にC型の性能限界を徐々に引き上げる努力が続いている。C型にブロック2Bソフトウェアが導入されると、マッハ1.2,7.5G、高度40千フィート、迎角50度の飛行が可能となる他、基本兵装としてAIM-120AMRAAM、共用直接攻撃弾やレーザー誘導爆弾の搭載が許される。

海軍の予定では初期作戦能力獲得を2018年8月としており、ブロック3F搭載を前提としている。その際には兵装を完全搭載し、データリンクとセンサーを統合したうえで、設計性能を完全に実現させる。つまり、上昇限度50千フィート、700ノット、マッハ1.6、迎角50度、7.5Gである。■



2014年6月5日木曜日

一足先に実戦化を目指す海兵隊向けF-35Bの近況は....大丈夫なのかこんな機体で


海兵隊向けB型がまず実戦化の見込みですが、すでに引き渡し済み機体にも構造上の弱点がみつかっているようですし、ソフトウェアはこれから延々と改定作業がつづき、30年とも40年とも言われる就役期間中にとんでもない費用がかかるのでしょう。かつてのような消耗品のような機体ではないとしたら、だからこそしっかりした機体になってほしいものですが、どうも話がいつ聞いてもおかしいですね。こうなると早く第六世代戦闘機の時代が来るのか、無人機の時代になることを期待する方が納税者としては幸せなのでは。


Marine Joint Strike Fighter on Track to Meet 2015 Goal

USNI News By: Dave Majumdar
Published: June 2, 2014 8:51 AM
Updated: June 2, 2014 8:51 AM
F-35B Lightning II aircraft lands aboard USS Wasp (LHD-1) in August 2013. US Navy Photo
F-35B Lightning II aircraft lands aboard USS Wasp (LHD-1) in August 2013.
US Navy Photo

米海兵隊向けF-35B短距離離陸垂直着陸型 (STOVL)開発 は順調に進展しており、初期作戦能力(IOC)獲得目標の2015年7月は達成可能とメーカー関係者が語っている。
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USNI Newsに対しロッキード社幹部から「ブロック2Bソフトウェアの最終テスト版に取り組んでいる」との発言が5月30日にあった。「テストは今年11月ないし12月に完了する見込み」という。海兵隊の目標はブロック2Bで初期作戦能力の獲得を2015年7月に宣言することで、ブロック2Bはデータ融合能力としてテータリンクと制限付き兵装運用能力をレイセオンAIM-120高性能中距離空対空ミサイル(AMRAAM)、500ポンドGBU-12レーザー誘導爆弾、1000ポンドGBU-32共用直接攻撃弾薬で実現する。

同社幹部からF-35Bテスト機がAIM-120を試射し、同時に二機の無人機と交戦に成功したとも発言があった。これは5月27日にカリフォーニア州ポイントマグー演習場でのこと。またブロック2Bで同機の運用性能の限界が押し上げられる。現時点で訓練用F-35Bはブロック2Aを搭載し、速度450ノット、マッハ0.9、迎角18度、4.5Gに制限されている。

これがブロック2Bで550ノット、マッハ1.2、50度、5.5Gに緩和される。ただしそれでも設計上の最高速度630ノット、マッハ1.6、7Gはまだ許されない。また高度も40,000ft に限定されるが、ブロック3F で50,000ft まで可能となる。

ブロック2Bテストのあとに実働機材でソフトウェアを利用可能とし、ソフトウェア開発の進捗状況から目標のIOC日程の実現は可能だという。

だがソフトウェア以外にも落とし穴になりそうな要素がある。JSF室主任クリス・ボグダン中将Lt. Gen. Chris Bogdanと海兵隊航空部隊司令官ロバート・シュミドル中将Lt. Gen. Robert Schmidle の二人が3月に議会で既存F-35B各機をIOCまで運用上で必要な改修をする方が課題としては大きいと証言している。ハードウェア上の改修は「グループ1改修」と呼称しているとロッキードは説明。57点の個別改修点があるという。

ただしグループ1には機体耐久性の強化用の構造改修は含まれていない。この問題は最近になり急浮上している。

改修が終わると各機に完全新設計のバルクヘッドが装着される。就航ずみの各機は飛行時間がある程度経過すれば全部改修する必要があり、改修作業の完了に数年間かかるみこみだとロッキードは言う。

初期作戦能力の宣言には最低でも10機の運用可能な機体と訓練済みパイロット、メンテナンス要員が必要であるが、予定の期日までにまだ答えの出ていない課題も残っている。「ブロック2Bリリース時点でどんな実用テストが必要になるかは政府部内でまだ結論が出ていない」と同社は説明する。

F-35Bの作戦能力の是非を最終的に決めるのは海兵隊で、運用テストの内容については合同開発室Joint Program Office (JPO)に照会しているが、回答はまだない。
An F-35B Lightning II aircraft takes off from the amphibious assault ship USS Wasp (LHD-1). US Navy Photo
An F-35B Lightning II aircraft takes off from the amphibious assault ship USS Wasp (LHD-1). US Navy Photo

さらにブロック3iおよび3Fソフトウェアの作業が進行中だ。このうち3iは米空軍F-35Aで飛行テストが始まっている。3Iは新型プロセッサで作動するようにブロック2Bを再作成したものだ。基本的に3iでの追加機能はない。

米空軍はブロック3iでF-35Aの作戦能力獲得を2016年4月に宣言する予定だ。並行して納入済み機体のプロセッサーは新型に交換される。そこで米海軍は孤高の存在となり、F-35Cの運用能力宣言は2018年8月以降となる。■

オホーツク海上空でも米ロ衝突寸前になっていたーーー米ロ間の緊張が高まる

Pentagon: Russian Flanker Had Near Miss With U.S. Air Force Jet

USNI News By: Carlo Muñoz
Published: June 4, 2014 3:09 PM
Updated: June 4, 2014 3:13 PM
US Air Force RC-135. US Air Force Photo
US Air Force RC-135. US Air Force Photob


米軍偵察機がロシア戦闘機との空中衝突をかろうじて回避していたと判明した。北太平洋上空で発生したこの事件は冷戦を想起させ米ロ間で緊張が高まっていることがわかる。

事件は4月末にロシア沿岸から60マイル地点で米空軍のRC-135情報収集監視偵察機が通常の飛行をしていた際に発生したと国防総省の関係者が今週になり明らかにした。

米軍機はオホーツク海上空の国際空域でロシアのSu-27戦闘機一機と遭遇し、RC-135は回避行動で空中衝突を回避した。二機の距離は100フィートまで最接近したという。

ペンタゴンは今回の事件をロシアによる米軍への妨害と受け止め、ロシア政府に詳細情報を請求中だという。

今回のニアミスは米ロ政府間でクリミア・東ウクライナをめぐり緊張が高まるさなかに発生し、米ロ間の部隊で望ましくない接近が発生した事例として二件目。黒海では同じ4月にSu-24フェンサー一機がUSSドナルド・クック(DDG-75)上空を低空通過飛行している。

Russian Su-27 Flanker
Russian Su-27 Flanker


ロシア機は同艦上空を12回通過飛行しており、駆逐艦の通信を無視した。米駆逐艦の1,000ヤード以内で高度500フィートまで降下したという。

今回の発表はホワイトハスが欧州における米軍プレゼンスを大幅に高める発表をしたのと軌を一にしている。

6月3日にオバマ大統領は10億ドル規模の米軍人員装備への追加支出を発表し、ヨーロッパ同盟国向けの安全保障状況を強化することとした。

その内容では米軍と同盟軍間の共同演習の強化も含まれ、米軍武器弾薬の貯蔵量も増やす。事前配備で米軍、同盟国軍の即応体制を上げるのが目的で、緊張状態が武力紛争にエスカレートするのに備える。

発表時にロシアを名指ししなかったが、新欧州安全保障案は米国がウクライナ危機の解決に軍事オプションに向かっている証と受け止められよう。

6月4日にオバマ大統領はウクライナの新大統領ペトロ・ポロシェンコPetro Poroshenko,と会い、ウクライナ支援を公の場で示した。また米外交筋・軍事関係者がウクライナ新政権と面談し、流動的なウクライナ安全保障状況を評価している。■


2014年6月4日水曜日

ベトナム他東南アジアの海上警備力整備に協力する日本


Japan to Provide Vietnam Patrol Boats Next Year

USNI News By: Scott Cheney-Peters
Published: June 2, 2014 8:42 AM
Updated: June 2, 2014 8:42 AM
Japanese Prime Minister Shinzo Abe
Japanese Prime Minister Shinzo Abe

ベトナム国防副大臣グエン・チ・ヴィンNguyen Chi Vinhがロイター通信に来年早々にも日本からの巡視艇引き渡しを期待していると語った。これはシンガポールで開催されたシャングリラ対話の会場でのこと。

日越双方から日程予定が話題になったのはこれが初めて。同じ会場で阿部総理はベトナム向け供与で前向きに処理する、とだけ発言していた。

日越両国は尖閣諸島、パラセル諸島で中国と対立する中で今回の援助案件が出てきた。

ベトナムには自国排他的経済水域の防護に必要な装備が不足しており、中国による海上石油開発の進展を食い止めることができなかった。結果、放水、衝突され、漁船一隻が沈没するに至った。

ベトナム向け巡視艇供与は2013年末から日本が検討してきた。ベトナムは昨年4月に10隻の巡視艇供与を希望しており、安倍首相は12月に両国間協議が進行中と認めた。供与の隻数、仕様あるいは
借款による製造となるのかは不明だ。

安倍首相は国会においてベトナムへの中古艦船の供与ではなく、より性能の高い沿岸警備用装備を想定していると答弁している。その席上ではベトナムへ新造船の供与は発言していないが、3月には現地調査チームを派遣し、望ましい供与の形を探るとしていた。

一方ベトナムでは海上警察部門を海軍から沿岸警備隊に移管しており、日本の政府開発援助の基準に合わせ艦船を受領できるようにしている。日本は政府開発援助の軍事利用を禁じている。

日本から東南アジア諸国に巡視艇を「寄贈」する話もあり、2007年にはインドネシア向けに三隻を新造しており、昨年はフィリピンに全長100メートル艇を10隻引き渡すことで合意している。この引き渡しは2015年に始まる。フィリピン向け巡視艇は借款184百万ドルで建造される。

ベトナムに対しては米国からも援助があり、ジョン・ケリー国務長官から総額18百万ドルの海洋警備体制強化策として高速巡視艇5隻の導入が確保されているほか、米海軍、沿岸警備隊によるベトナムとの共同訓練が2010年から増えている。

4月の日米首脳会談時の共同声明では両国は「東南アジア沿海諸国向け海洋安全保障など各種能力整備への協力を通じ、法執行体制を整備し、密輸や武器流通を摘発するとともに海洋資源保護を目指す」としていた。


今回の動きは海上地域安定性をめざし、海上交通路の防衛を通じ犯罪撲滅とともに各国の中国を念頭に置いた抑止力整備も同時に狙ったものと受け止められ、協力関係は将来はさらに地域内協調に進むだろう。


2014年5月29日木曜日

USSジョージ・ワシントンの延命を下院が求める


空軍に続き、海軍でも支出規模が大きい原子力空母の退役か存続かが議会で争点になっているようです。ジョージ・ワシントンは前方配備で横須賀にいますので日本にとっても他人事ではありません。一方で米経済が堅調なこともあり財政事情もこれから好転していくと思われますので、国防装備の縮小傾向はいまが底なのかもしれません。それだけに海軍基地、造船業を地元に持つ議員は海軍力縮小に絶対抵抗の姿勢です。

House Preserves George Washington Carrier Refueling Plan

By: Carlo Muñoz
Published: May 22, 2014 2:31 PM
Updated: May 22, 2014 3:50 PM
USS George Washington (CVN-73) on Nov. 24, 2013.
USS George Washington (CVN-73) on Nov. 24, 2013.

米下院はUSSジョージ・ワシントンUSS George Washington (CVN-73) を保持すべく、同艦の核燃料交換及び大規模修理refueling and complex overhaul (RCOH)の予算を2015年度国防予算法案に盛り込んだ。
  1. 下院は海軍及び国防総省がジョージ・ワシントンの燃料交換・大規模修理に支出を禁ずる法案を検討していた。

  1. しかし2015年度国防支出法案の修正として下院民主党からジャレッド・ポリス議員(コロラド)およびアール・ブルメナウア議員(オレゴン) Reps. Jared Polis (Colo.)and Earl Blumenauer (Ore.)から483.6百万ドルを燃料交換・改修予算として確保し、一括予算削減の対象から外す提案が出た。

  1. 2015年国防支出案は下院で賛成325反対98で可決ずみ。

  1. 両議員がこのタイミングで修正法案を提出したのはメモリアルデーで審議が継続できなくなるのを恐れてのこと。だが、審議未了としても両議員は本年後半に再度議案を提出し、国防予算の最終決定に反映させたいという。

  1. 一方で上院からは今週末に独自の2015年度案が発表になるとみられるが、上院における議決は今秋まで行われない。.

  1. RCOHの工期は3年で費用は30億ドル。その他乗員、航空隊の維持も含めると70億ドルになる。

  1. 今年2月にチャック・ヘイゲル国防長官はジョージ・ワシントンの燃料交換あるいは退役の決定は2016年度予算まで先送りすると発表し、退役となれば空母10隻体制となる。ヘイゲル長官は同艦を維持するためには議会が2011年予算管理法が定めた強制削減の上限を撤廃する必要があると指摘していた。

  1. にもかかわらず海軍上層部と下院内で支援する議員たち、とくにランディ・フォーブス(共和、ヴァージニア)Rep. Randy Forbes (R-Va.)およびロブ・ウィットマン(共和、ヴァージニア)Rep. Rob Wittman (R-Va.)が猛反発し、ペンタゴンは空母11隻体制の護持が法律で定められていると主張。

  1. 「今年の国防予算案では海軍が空母11隻を維持できることになっており、将来の空母航空戦力に対する重要な投資を求めているのであり、来年は巡洋艦部隊の近代化を開始し、ヴァージニア級原潜の調達も継続するとあります」とフォーブス議員はUSNI Newsに語っている。「同法案が可決したことで海軍は今後にかけて21世紀の国防に対応する準備が整います」

  1. 空母11隻体制の支持者にとってジョージ・ワシントンの除籍はアジア太平洋地区で米軍のプレセンスを大幅に増加させようというオバマ政権とペンタゴンの思惑に悪影響と主張する。

  1. RCOH予算の確保とともに下院では同時にタイコンデロガ級巡洋艦(CG-47)計11隻とドック型揚陸艦三隻のモスボール化を承認した。フォーブス議員はHASC原案の阻止を狙い巡洋艦22隻とLSD12隻の温存を図ったが失敗した。■


2014年5月28日水曜日

F-35Bの垂直着陸は実用に耐えるのか ファーンボロ航空ショーで実演は予定されず


Opinion: F-35B Vertical Landings In Doubt For U.K.

Air show plans highlight F-35B runway issues
aviationweek.com May 26, 2014
Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
Credit: Lockheed Martin

ファーンボロ航空ショーの来場者がAV-8ハリアーと同様の垂直着陸(VL)をF-35B共用打撃戦闘機が実演するのを期待すれば裏切られることになるかもしれない。
  1. 米海兵隊のマシュー・グレイビー准将 Brig. Gen. Matthew Glavy によると英国でF-35のVL実演予定はないという。滑走路を排熱から守るマットのテストが完了していないためだという。一見単純そうに聞こえるが、これにより二つの厄介な問題が浮上する。ひとつは同機開発の真相であり、VLの実用度である。

  1. 海軍施設技術本部Naval Facilities Engineering Command (Navfac) は2009年12月にJSF関連建設に仕様を公開している。エンジン排気は高温かつ高エネルギーのため、初回VLによりコンクリートが粉砕する確率が50%あるという。粉砕が発生するのはコンクリート内部の水分が沸騰し、表面を削り落とすためだ。

  1. これに対しロッキード・マーティンは否定的だ。仕様書は最悪の場合を想定しているばかりか、失効しており、2010年1月のテストでは「F-35BとAV-8Bの排気温に大きな差はなく、作戦運用上配慮すべき点はない」としている。

  1. Navfacはロッキード・マーティンを無視し、高温耐久性コンクリートのVL施設を4か所に建設した。パタクセント海軍航空テスト施設(メリーランド州)ではF-35BがVLをAM-2アルミニウムマット上で行っており、下のコンクリートを熱風から保護している。2010年1月のテストで仕様が変更にならなかった理由は何か。そのテスト実施方法は。海軍はこの質問をロッキード・マーティンに送っているが、いまだに回答はない。

  1. ロッキード・マーティンが根拠のない理由で非難の声を上げるのはこれが唯一の例ではない。ランド研究所Rand Corp. から昨年にJSFは三軍が独自に戦闘機を調達するよりも多額の費用になると報告があった際には、「無効データ」を使ったとランド研究所をロッキード・マーティンが非難したものの、報告書中にない数字への非難と判明している。

  1. 2011年度個別調達報告書でF-35Aの飛行一回当たりコストがF-16より40%も高いと指摘した際には、同社はペンタゴンの会計部門が数字を誤って解釈したと主張。報告書はその後二回刊行されているが、数字はほとんど変わっていない。

  1. もっと深刻なのはF-35B選定には二つの理由があrることだ。LHA/LHDクラスの揚陸艦艇に着艦できること、および即席の前進運用拠点forward operating location (FOL)から運用できることだ。後者は3,000-ft. 相当の滑走路を意味する。FOLがなければ上陸部隊が期待できるのはLHA一隻あたり6機の戦闘機に限定される。しかし滑走路も一回しか使えないのであれば意味がない。

  1. Navfacが「標準飛行場用コンクリート」と称するのは軍仕様で砂利とポートランドセメントを混ぜたもの。滑走路の多くはアスファルトとコンクリートで作ってあり、ビチューメン(瀝青)をつなぎとしているが、過熱すると軟化しさらに溶解する物質だ。

  1. そこで海兵隊はAM-2着陸パッドを使う。しかしAM-2だとF-35Bを迅速に展開することができない。空軍の検討によると「敷設に時間がかかり、修理が困難、空輸が困難な性質がる」としている。縦横100フィートのVLパッドの重量は30トン超で部材点数は400ほど、それぞれ二名がかりで組み立てていく。

  1. 回転しながら、あるいはゆっくりと垂直着陸すれば熱負荷を分散できる。しかし、コンクリート、アスファルト、AM-2をアスファルト上に配置したもののいずれでもテスト実績はない。では複数機が近接して着陸するとどうなるのか。熱で飛散したアスファルトがステルス性のある機体表面に粘着しないか。

  1. JSFの研究開発費用で最低でも210億ドルがF-35B向けであり、同型は機体単価で最高額となっている。設計変更でF-35Bの重量、抗力、機体単価はいずれもF-35Aや-Cよりも増えている。本当に同機が約束の運用性能を実現できるかをぜひ見せてもらいたいものである。■

2014年5月25日日曜日

イージスは陸上へ 初の陸上イージス実弾発射テストが実施されました


米海軍協会が伝えるイージスが陸上運用にも転用されるというお話です。海軍が陸上での運用はあたるとすると海軍の活動範囲は広がりますね。航空関係の拡充など海軍の存在が大きくなっていますね。一方、陸軍は陸上イージス施設の防護に当たるという立場に変わるのでは。

U.S. Conducts First Aegis Ashore Live Missile Test

USNI News By: Sam LaGrone
May 21, 2014 1:34 PM
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
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米海軍とミサイル防衛庁が陸上イージス  Aegis Ashore テスト施設(ハワイ州カウアイ島)で初の発射テストを実施したとロッキード・マーティンからUSNIに明らかにされた、
  1. テストは5月20日でレイセオン製SM-3Bミサイルで模擬目標を迎撃した。海軍のベイスライン9イージスミサイル性能改修では初の実弾発射テストになった。

  1. 今回のテストはルーマニアで初のイージス陸上施設を建設する数ヶ月前というタイミングで行った。

  1. テスト二回目は2015年5月予定。次回は弾道ミサイル目標を使用する。

  1. 陸上イージス開発は4年前に始まっている。2009年に米国はミサイル防衛システムの構成を恒久的地上配備から誘導ミサイル艦船のシステムを流用して地上イージスシステム(移動式)に変更した。
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  1. 欧州のBMD対策を段階的適応アプローチ European Phased Adaptive Approach (EPAA)で実施するべく海軍はアーレー・バーク級誘導ミサイル駆逐艦4隻をスペイン・ロタへ派遣し、地中海で定期的パトロールを実施しており、これと平行して陸上イージス開発を急いできた。

  1. 陸上イージスでは艦と同じSPY-1DレーダーとMk-41垂直発射システムでSM-3ミサイルを使用する。ロッキードによる最新のベイスライン9イージスソフトウェア、ハードウェア構成を使う。アーレー・バーク級駆逐艦では弾道ミサイルに加え航空機も迎撃できるが、陸上イージスでは同様の対応は想定していない。

  1. ロッキード・マーティンはニュージャージーの同社施設内にあった陸上イージスを解体しており、ルーマニアに搬入する。

  1. 陸上イージスは海軍兵員11名と民間支援スタッフが運用する。■



2014年5月24日土曜日

露骨な中国の勢力拡大は東南アジア軍拡を刺激する


相手の実力を見て対応を変える中国はフィリピンを甘く見ているようですが、フィリピンとても黙っているわけではありません。着々と対策をとっているようです。中国の自己中心的な発想は世界を相手に回すことになり、大誤算になっている可能性もありますね。その他ベトナム、マレーシア、インドネシアとアセアンの主要メンバーがこぞって中国対策で軍拡に向かいつつあるようです。自分だけが正しく、資源も全部自分のものと考える思考がどうもよく理解できませんね。結局は中国がこのまま変わらないと破滅に向かうしかないのでは。

Tensions in South China Sea Growing

By: Armando J. Heredia
Published: May 22, 2014 9:45 AM
Updated: May 22, 2014 9:46 AM
The site of alleged reclamation. Philippines Government Photo
中国が飛行場建設を目論む埋め立て現場 フィリピン政府公表写真

フィリピン軍の偵察写真で中国がマビニ環礁 Mabini (Johnson South ) Reefで施設拡充工事を実施しているのが確認された。同環礁は問題となっているスプラトリー諸島 Spratlys 内にあり飛行施設の設置も可能な大きさがあり、その他の前哨地点への物資補給や中国がねらう防空圏設定にも活用される可能性がある。

環礁が島に変わると、国連海洋法U.N. Convention on Law of the Sea (UNCLOS) による国際法廷提訴でのフィリピン主張の根拠が崩れてしまう。中国は逆に200カイリの排他的経済水域 Exclusive Economic Zone (EEZ) を埋め立てにより出現する島の周囲に設定するだろう。フィリピンの主張は環礁や岩は島の要件を満たさず、その存在は国際的に受け入れられるEEZを構成しないというもの。

すでに政治だけでなく、一般大衆や商業活動にも影響が現れている。フィリピン国家警察は中国漁民11名をウミガメ密漁の容疑で逮捕しているが、中国はこれに対し乗員の即刻釈放を求め、逮捕は両国関係を「危険なほど緊張させる」ものと非難している。

昨年4月には中国の別の密漁船がツバタハ環礁 Tubbataha Reefで座礁しており、ここは掃海艇USSガーディアンが挫傷したのと同じ地点だ。この密漁船はフィリピン国旗を掲げ目立たないようにしていた。フィリピン国軍Armed Forces of the Philippines (AFP) 筋によると国旗を偽った中国民間船が情報収集任務でフィリピンの海上石油掘削施設周辺に出没しているという。

いかにも現代的に騒ぎはサイバー空間にまで広がっており、フィリピンにあるアノニマスの支部が報復措置として中国政府のウェブサイト多数を書き換えている。

AFPは中国のサイバー攻撃能力に配慮し保安強化をしており、携帯電話の利用禁止、印字メモの配布などを行い、特に西フィリピン海で警戒を強めている。にもかかわらずアユンギン浅瀬 Ayungin Shoals への物資補給は通信が傍受されて妨害を受けていると言われる。

そこでAFPの即応体制強化が勢いづいてきた。参謀総長エマヌエル・バウティスタ中将Chief of Staff Lt. Gen. Emmanuel Bautistaからこの足袋締結された米比防衛協定に基づき米軍が事前集積すべき地点が発表された。そのひとつ、サンアントニオ海軍教育訓練センター San Antonio Naval Education and Training Center (NETC) は問題となっているスカーボロー浅瀬 Scarborough Shoalsから119カイリほどの地点で、米海軍はここで中国フリゲート艦2隻を発見している。
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バウティスタ中将からは加えて重要なオイスターベイ海軍基地 Oyster Bay naval baseの名前もあがっており、ここはスプラトリー諸島に直接向き合う地点だ。また米比合同訓練バリカタンが実施されたマグサイサイ陸軍基地Fort Magsaysayもリスト上位に上がっている。最終決定はまだできておらず、合衆国は別の地点を希望するかもしれない。すべての施設で再利用可能にするには相当の作業が必要だ。協定では合衆国が必要な資金を提供することになっている。

AFPの装備近代化は更に続く。対潜ヘリコプター2機と長距離哨戒機2機の調達公告が発表された。また米沿岸警備隊で退役予定のハミルトン級カッターの追加導入もありそうだ。誘導ミサイルフリゲート2隻の調達先も決まりそうだ。また重要なパラワン島では沿海監視哨4箇所による沿岸監視体制の整備が検討されている。オイスターベイ基地はパラワン島にある。■

黒海に米巡洋艦派遣、NATO艦船はこれで二隻目に

ウクライナ大統領選挙が日曜日に迫る中、米海軍は巡洋艦を黒海に派遣しています。

U.S. Sends Guided Missile Cruiser to Black Sea, 2 NATO Ships in Region

By: Sam LaGrone
Published: May 23, 2014 8:38 AM
Updated: May 23, 2014 8:38 AM
USS Vella Gulf (CG-72) transits the Atlantic Ocean on March 19, 2014. US Navy Photo
USS Vella Gulf (CG-72) transits the Atlantic Ocean on March 19, 2014. US Navy Photo


米海軍はタイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USS ヴェラガルフ USS Vella Gulf (CG-72) (9,800トン)が23日に黒海に入り、「地域内の安定と治安の維持に寄与させる」と発表した。

同艦が作戦行動に入ると、黒海のNATO艦船は二隻となる。フランスは先週から情報収集艦デュプイデロメDupuy de Lôme (A759)(3,600トン) を派遣している。

二隻はロシアがクリミア半島を実効支配したことを受けて開始された、地域内同盟諸国支援の西側プレゼンスの一環となる。合衆国は2月の冬季オリンピック競技支援を皮切りに黒海でプレセンスを断続的に維持している。

直近ではフリゲート艦USSテイラーUSS Taylor (FFG-50)およびUSSドナルド・クックUSS Donald Cook (DDG-75)が派遣されていたが、後者は黒海入り直後にロシア戦闘機から挑発を受けている。テイラーは5月中旬に黒海を退出し東地中海のNATO海上部隊に合流した。
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黒海に自国領土を持たない諸国の艦船は1936年のいわゆるモントルー協定により、21日以内に黒海から退去を求められる。■

2014年5月21日水曜日

上院からもA-10退役に反対する対案が出てきました


Senators develop plan to keep A-10s flying for one year

Air Force Times,May. 20, 2014 - 02:20PM   |  

The Air Force has proposed cutting its fleet of A-10 attack aircraft in fiscal 2015 in order to save money.
The Air Force has proposed cutting its fleet of A-10 attack aircraft in fiscal 2015 in order to save money. (Wikimedia Commons)


WASHINGTON — 上院軍事委員会がA-10攻撃機運用を一年間延長する案を作成した。
委員長カール・レヴィン上院議員(民ミシガン州) Sen. Carl Levin, D-Mich., が報道陣に説明し、同機を退役させ経費を節減する空軍案を阻止するべく同委員会は数億ドル規模の財源を掘り出したという。
A-10の運命は今週の委員会本会議でに決まり、同委員会による2015年予算案が完成するはこび。レヴィン委員長によると案は改正案として委員長に提出され、その後の非公開審議の基礎となるという。
また委員長によると財源確保のため軍の海外緊急出動予算には手を付けていないという。
各議員とスタッフによれば400百万ドル相当の財源がないと2015年にA-10を退役させる空軍案を阻止できないという。
レヴィン委員長によると提案する財源は国防総省管轄の予算のうち「複数財源」のあるものから流用するという。この動きによりレヴィン議員はオバマ大統領と対立することになる。
ホワイトハウスは19日の声明で下院軍事委員会の予算案に拒否権を行使すると脅しをかけている。ホワイトハウスはA-10退役を阻もうとする表現に反対の意思を表明している。「A-10退役で2019年度までに42億ドルの節減効果が生まれます」とホワイトハウスは主張。「軍は近接航空支援も行える多用途機を利用可能とします」
下院軍事委員会が認可したA-10条項では同機の退役は会計監査院院長による認証が出て、空軍が使用中の近接航空支援任務(CAS)用機種すべてを比較検討すること含む内部研究が終わって初めて可能と定義している。
会計検査院院長にはCAS任務実施の機種別費用の検討も求められており、他機種でもCAS任務が十分こなせるかを判断させることも盛り込まれている。
もしこのA-10対処案が上院で承認されれば、共和党の国防族ともいうべきケリー・アヨッテKelly Ayotte (ニューハンプシャー州)、ジョン・マケインJohn McCain (アリゾナ州)、リンゼー・グラハムLindsey Graham (サウスカロライナ州)各上院議員にとっては勝利と言える。■


2014年5月17日土曜日

UCLASS最終仕様要求の提示が7月に迫る



NAVAIR: Final UCLASS Request for Proposal Due in July

USNI News By: Sam LaGrone
May 14, 2014 11:06 AM
An artist's concept of the Lockheed Martin's bid for the Unmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike (UCLASS). Lockheed Martin Image
ロッキード・マーティン提案のUCLASS想像図 Lockheed Martin Image

海軍航空システムズ司令部Naval Air Systems Command (NAVAIR) は議会からの圧力に抗して無人艦載空中監視攻撃機(UCLASS)の提案要求(RFP)を7月に発表する予定。

  1. マット・ウィンター少将Rear Adm. Mat Winter(NAVAIRで無人攻撃機開発担当)からRFP最終版はRFP暫定版に参加した4社、ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズ、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの各社に発出されると発表があった。

  1. 下院軍事委員会(HASC)が2015年度国防予算認可法で同機開発を一時停止し、計画見直しを求めている中でNAVAIRはこの動きに出た。

  1. 法案では海軍が同機に想定している基本性能はペンタゴンの目指す目標としては不十分だと明言している。UCLASSはわが軍が自由に運用できない領域で軍事力投射能力の維持を求めた2012年度国防戦略指針に準拠していない、というのが下院の主張だ。

  1. UCLASSの位置づけは最初のステルス・重武装・侵攻機材だったものが制空権確保された空域での情報収集・監視・偵察(ISR)機として二次的に軽攻撃能力を持つものに変更されており、その過程ではペンタゴン内部で激しい論争が数年間発生している。

  1. NAVAIRはRFP原案を上記四社に4月に送付しており、ウィンター少将によればUCLASSの目標は「戦術的に意味のある距離で」24時間毎日周回パトロール飛行2系統を制空権で問題のない空域で実施することとなっていた。■
コメント UCLASSにオールマイティを期待していた政治筋と現実を直視している海軍の見解の相違が明白になっているようですね。ただし、このまま機体が開発配備される2020年代の海軍航空部隊の構成はいまからどう変わっているのか。その段階で発展性の少ない機材を配備しても意味があるのか考えておいた方がいいのでは。EA-18が切り開く安全経路にF/A-18が攻撃飛行を仕掛ける間、F-35BとUCLASSは安全空域にいていいのでしょうか。難しい問題ですね。

2014年5月16日金曜日

ステルス機の優位性はどんどん失われつつある 



Can China’s New Destroyer Find U.S. Stealth Fighters?

USNI News
By: Dave Majumdar
Published: May 14, 2014 10:45 AM
Updated: May 14, 2014 11:33 AM
The first of the People's Army Liberation Navy Type 052D Luyang III destroyer. PLAN Photo
人民解放軍海軍のタイプ052D旅洋III級駆逐艦の一号艦 PLAN Photo


中国の新型駆逐艦タイプ052旅洋-III Luyang 級はロッキード・マーティンF-35ライトニングIIステルス戦闘機を探知できるのか。 

同艦が搭載する新型レーダーに関する英国、中国、ロシア各報道では可能としているが、その根拠ははっきりしていない。このうち、ロシア地政学問題研究所のコンスタンティン・シブコフ Konstantin Sivkov, director of the Russian Academy for Geopolitical Issues が同駆逐艦のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)方式のレーダーはF-35を350キロメートル先から探知、追尾し、兵器を誘導できるとしている。
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タイプ052Dが搭載するタイプ346AESAレーダーとタイプ518LバンドレーダーはCPMIEC HQ-9B艦対空ミサイル防衛システムと一体運用される。HQ-9Bの有効射程は200キロメートルといわれる。

シブコフの説明には疑わしいところもあるが、すべてが誤りではないようだ。タイプ346レーダーがイージス艦が搭載するSバンドのロッキードSPY-1レーダーと同等の性能である可能性はある。
An image from Chinese media of a H9 missile test shot in 2012.
中国国内報道でH9ミサイルの初発射が報道された(2012年)

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戦術機サイズのステルス航空機は高周波帯のC,XあるいはKuバンドへの対応を最適化している。ただし周波数の波長が一定限度を超えると共鳴効果が発生して、機体のシグネチャが大きく変化することがある。

たとえば尾翼が波長の8倍を下回ると共鳴現象が発生する。小型ステルス機ではレーダー吸収剤の塗布の厚さに限界があることもあり、特定の周波数帯に最大効果を発生するように最適化してある。

ただし、ステルス機は低周波数レーダー(SやLバンド)に対してレーダー断面積が変化していくので、ステルス機の探知追尾にはいろいろな要素が利用できる。

ただし航空機とレーダー発信源の距離により効果は変動し、共鳴効果の場合も多方向に反射される航空機からの返しの強度にも依存する。
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共鳴現象が発生したとしてもF-35のようなステルス機を追尾するだけの十分な強度をもった返しは発生しないかもしれない。

そのほかにもLバンドとSバンド大部分ではレーダー解像度セルが大きすぎて兵器を有効に追尾させられないと主張する向きもある。

そうだとしても、SPY-1レーダーおよび今後登場するレイセオンの対空・対ミサイル防衛レーダー(AMDR)もともにSバンドでも高周波数帯で作動する設計で、兵器を誘導することが十分可能だ。もし中国のシステムが同等の性能だとすれば、(実際その兆候は見つかっている)HQ-9Bミサイル誘導が十分可能となる。

また業界筋によれば解像度セルを小さくする方法があるという。大きなセルはUHFやVHF含む低周波数レーダーで発生するもの。その鍵はネットワークだ。複数の低周波数レーダーを高速データネットワークで結べば、解像度セルを調整し、ミサイルを正確に誘導できるという。

現時点では合衆国の敵となりうる国が同様の性能を実用化しているかは不明で、可能性はわずかとみられる。ただし、ロシアあるいは中国がネットワーク接続によるシステムを開発してないとは考えにくい。両国ともにその実現に向けて努力を積み重ねている可能性はある。■