2015年7月21日火曜日

☆★★川崎P-1の国際デビューと現地での反応をご紹介しましょう

ジブチでの運用をチェックするために派遣したP-1編隊はその前に米国経由で英国入りし、その後でジブチへ移動し、地球を一周して日本へ帰ってくることになりました。航空ショーでは知名度が低いこともあり、余計に関心を高めたようですが、航空ファン、業界人が多い原記事の読者には日本製の機体としてとくにエンジンに不安を覚える向きが多いようで今回わざと読者の投稿もご紹介することにしました。彼の地のファンの視点がわかりますね。

「aviation week」の画像検索結果

Kawasaki P-1 Flies At Air Tattoo

Jul 15, 2015 by Tony Osborne in Ares



RAFフェアフォード基地で日本から飛来した川崎重工業P-1を集まった航空ファンが見ている。


海上自衛隊(JMSDF)がロイヤル・インターナショナル・エアタトゥーへ派遣したもので、開催に先駆け展示飛行のリハーサルを行った。
All photos: Tony Osborne/Aviation Week


7月14日に飛来した二機は.厚木基地を7月10日に出発し、米国経由で、オセアナ海軍航空基地(ヴァージニア州)から大西洋をノンストップで横断し英国に到着した。
川崎重工による展示は簡素ながら十分に効果のあるもので、ローパスを数回したが、一回は兵倉庫扉を開放していた。機体はダグラスDC-8に似ており同機をすっきりさせたようで、魅力的な性能で滑走路長4-5,000フィートで離陸急上昇していた。飛行機動性が十分にあることが伺われた。
.
川崎P-1は同航空ショー15年の歴史上で一番興味をそそられる機体になった。世界が相互に依存度を高めている現代とはいえ、同機の開発状況はほとんど報道されておらずボーイングのP-8ポセイドンやBAeニムロッドとは対照的だ。ショーではP-1はP-8の横に駐機し、来場者が自由に両機を比較できる。

日本はP-1の輸出へ期待しており、英国では今年後半に海上パトロール機の要求性能が英戦略国防安全保障検討の一部として示される。今後、同機のもっと多くを紹介できるだろう。Aviation Week の記事を待たれたい。エアタトゥーは7月17日から19日に開催される。

この記事への読者の反応(ハンドルネーム等は削除しています)

  • P-1とP-8 の燃料満載での飛行時間比較を知りたい。4発機なのか。防御システムはどうなっているのか。同じミッションで飛行時間がどれだけ違うのかが関心。厚木基地には1973年勤務していた。

  • .P-1自体が商品競争力がないとしても武器輸出の経験を積むのは日本のためになる。

  • 興味深い機体だ。自分なら IHI P7-10エンジンをPW1215Gに換装し、MRJ70/90と共通化するところだ。設計が新しく、同じ機体サイズで燃料消費率が優れていれば飛行距離が伸びるが、各機の歴史を見ると機体重量は供用開始後に増える傾向がある。エンジンが「ユニーク」でなくなればもっと販売の可能性が出てくるだろう。また商用エンジンの基盤も利用可能となる。ハードポイントを使い、自衛手段を講じるべきだろう。そのため第一、第四エンジンの外側にも装着場所を追加したらよい。(編集者:その可能性はないようだ)

  • なぜ四発なのか

  • 冗長性をもたせているからでは。エンジン一基を失ってもミッションは継続できるだろうが、P-8では直ちに基地に戻る必要があるね。

  • 単に日本製エンジンが非力なためではないか

  • 日本ではまだ強力なエンジンは作れない。エンジンが二基増える利点は逆に燃料消費の増加で打ち消される。西側の新鋭ターボファンエンジンでは故障発生は驚くほど低くなっている。

  • 双発機には単発でも離陸できるよう出力には十分な余裕があるが、四発機だと一基作動しなくても3発で離陸できるようになっている。

  • 軍用仕様では年間利用が500時間未満ということもあり燃料消費率の重要性は低い。小型機で大口径のターボファンを主翼下に装着するとファンの直径の大きさが制約される。

  • 日本はロールスロイス、GEやPW製エンジン技術より30年遅れているので、日本製エンジン二発では十分な推力が確保できないのだ。

  • 日本の航空宇宙産業政策の上ではP-1は日本製エンジンを採用し、国内エンジンの開発促進が求められたので、三菱が4発を提供したのだ。

  • そうだろうか。C-2と主翼やシステムを共有しており、C-2ではGEエンジン双発になっているぞ。

  • P-1は川崎が同時に開発する二機種のうちエンジン性能については要求水準がひくいので、非力かつ未実証の日本製エンジン搭載となり、C-2には安全かつ実証済みGEエンジンを搭載したのだ。

  • このこともあり、P-1の運航費用はP-8より相当高くなっており、燃料消費率が高いこととパーツ類の単価が生産量の少ないことが理由だ。P-8はエンジン含む多くの部品を737から流用しているが、P-1はカスタムマシーンだといえる。

  • それは正しいのだが、本当の理由はTRDI/IHIが相当の年数と予算を投入してP7-10 エンジンを開発したことにある。P-1は純国産機との触れ込みで国産エンジンを採用した。ミッション実施には四発が必要なのだ。

  • 海上自衛隊がP-3と同様に外側エンジン二基を停止し、燃料消費を節約するミッションプロファイルを持っているのか。P-3でこの策を実施していたものだ。

  • それだと停止した二基のエンジンが抗力となる

  • RAFのニムロッドはこれを実施していた。また航続距離が伸びるし、いざというときは加速性能を確保できる。

  • 主翼下に大口径ターボファンを装着し、双発にするのは滑走路を削る効果に終わる。

  • そうだろうか。ボーイングやエアバスの設計を見てほしい。現在の主役は双発機で、かつ各機の主翼は低い配置になっているが、ターボファンエンジンが主翼下についているぞ。

  • 海上哨戒機が高度3万フィートを巡航することはない。はるか下を飛行し、エンジン出力を失えばただちに緊急事態になる。ミッションの実施上4発あるほうがすぐれている。それだけシステムが複雑化するだろうが、P-1は最初から哨戒機として作られているのだ。

  • P-8なら単発で十分飛行できる。

  • 哨戒機はずっと前からあるが、専用機はあっただろうか。ニムロッドはちがう。オライオンもちがう。両機とも旅客機が原型だ。P-8も同様である。

  • P-8Aはこれまでの海上哨戒機より高い高度で運用する想定で、目標を探知し、武器を発射できる。

  • そもそもエンジン出力は上昇性能の要求から決まるものだ。767やA300 で単発で離陸するのを見たことがあるぞ。

  • 上の書き込みは事実と反対だ。双発機で高度2万フィート未満はエンジン一基でも最高性能が引き出せる。高度が低いほど性能は高い。燃料消費の問題ではない。

  • なかなかきれいな機体だ。ほしくなる。

  • 2013年5月13日のP-1第5号機のテストフライトでIHI F7-1- 10エンジン4基がすべて停止している。ソフトウェアに欠陥があった。乗員は再始動に成功し、無事着陸させている。

  • 海上自衛隊はニムロッドやP-8Aの採用は見送ったが、両機とも短距離陸性能がないためと説明していた。

  • いいや、P-1開発開始はP-8を米国が開始する以前のことで、海自はP-7採用を認めなかったのだ。P-3のアップグレード版だったためで、自前の機体を求めたのだ。

  • 日本はP-1で楽しい時間をすごしているようだが、ボーイングP-8ポセイドンの採用を真剣に考えるべきときがきた。

  • ポセイドンは非常に高価な期待だ。日本は国産ASW技術が豊富にあり、機体アレイレーダーまで国産化している。

  • いい機体だ。西側競合メーカーをくぎ付けにするはずだ。

  • P-8との比較で興味深い機体だ。二機が並んで展示されるのは偶然ではない。英国がニムロッド後継機種を求める中でP-8とP-1が最右翼候補だからだ。

  • RAFがP-8を真剣に希望しているのは相互作戦運用が理由だ。英政府がP-1を採用するとしたら国内雇用が理由だろう。英国の国防装備調達ではおなじみの理由だ。

  • 英国防省の希望はP-8で、変更になったとの兆候はない。ボーイングの成約は確実だ。

  • 川崎と自衛隊はP-1のエンジンをもっと新型に換装しないと輸出できないのではないか。

  • 各自愛国心からの技術的な議論はやめよう。「アメリカ製はいつも優秀」というが、航空機大好きな人なら見栄えのいい機体だと認めるはずで、DC-8をすっきりさせた、というのはうまい表現だと思う。

  • 海上哨戒機が救難捜索機にも転用される事実をだれも指摘していない。高度3万フィートから船舶を探し出したり、救難ボードを投下することはできない。まして夜間や悪天候ならなおさらだ。両機とも潜望鏡を探知する能力があると見ている。船員の救助は低い高度で低速で行うべきで、失速速度と主翼荷重が大きな要素となる。北大西洋の荒天で高度300フィートで任務を両機がこなせるのだろうか。

  • そうだね。ターボプロップが低高度やロイタリングに向いている。C-130だと大きすぎる。P-1,P-3,P-8の各機はちょうどいい大きさだ。双発ターボプロップが理想的なのは海上長距離飛行での信頼性が理由だ。できれば三発ターボプロップがよい。中央線上に配置したエンジンは一定の高度に達すればフェザリングさせればよい。

  • P-1がフライバイライト技術を導入した初の量産機なのだろうか。

2015年7月20日月曜日

★中国への備え、離島防衛>陸上自衛隊が米陸軍の先行事例になる

防衛を中心に整備をしてきた陸上自衛隊が米陸軍のモデルになる、という指摘ですが、米陸軍が皮肉にも日本(あるいは台湾?)から装備を供与受けることになるかもしれないという予測です。攻撃にまわってなんぼという米戦略で防衛だけに専念することは難しく、かつドクトリンの変更が必要になるのでしょうね
「breaking defense」の画像検索結果

Japan Blazes Trail For US Army: Coastal Defense Vs. China

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 15, 2015 at 2:58 PM

WASHINGTON: 脅威度を上げてきた中国を抑止し敗退させるためには海軍・空軍だけで十分とはいえない。陸上自衛隊の現状は煮え切らない態度の米陸軍に参考になりそうだ。
  1. 「陸自は待ちの姿勢になっていませんね」とアンドリュー・クレピネヴィッチAndrew Krepinevich(戦略予算評価センター理事長)がアジア歴訪の直後に記者に語ってくれた。「日本は『第一列島線』の北方部分の防衛への関与を望んでいます。琉球諸島で施設拡充を進め、中国の侵攻を食い止めようというのは非常にすばらしいことです」
  2. 陸上自衛隊はクレピネヴィッチがForeign Affairs 2月号に寄稿した「列島防衛」構想と同じ方向を向いている。
Andrew KrepinevichAndrew Krepinevich
  1. クレピネヴィッチは「中国人民解放軍の防衛体制の中に海軍艦船を送り込むのではなく、米国及び同盟国は地上兵力を第一列島線上に配備し、移動式ミサイル発射装置に対艦巡航ミサイルを装備することで対応が可能だ」と著述している。対空ミサイルやミサイル防衛体制の整備も同時に可能だ。クレピネヴィッチ構想では海軍艦艇と空軍長距離爆撃機は移動予備兵力で陸上防衛線の背後に配置し、被攻撃地点の補強にあたり、中国軍の突破を防ぐ。艦隊は中国の支配部分から遠い地点にとどまる。
  2. クレピネヴィッチはさらに「西太平洋では我が方に大きな利点がある。これまでは兵力投射をしてきたが、今回は同盟各国の防衛にあたる。進出してくるのは中国の側だ」と語る。
  3. つまり敵国への侵攻や敵軍の壊滅は想定しない。逆に相手側に侵攻させる。米艦船や航空機を中国本土のミサイル射程内に送り込めば、損失は甚大なものにる。
  4. これは米軍にとって気持ちのよい話ではない。冷戦以後、防御一辺倒に回った事例はなく、ソ連軍事力が崩壊すると米軍は兵力投射に中心を移し、航空母艦、戦闘攻撃機、迅速展開部隊を重視してきた。敵国の領土に侵攻し、目標破壊につとめる、というのが現在の標準だ。米陸軍はアフガニスタン後の現実では急速展開能力を重視し、島嶼防衛は二の次だとしている。
  5. だが島嶼防衛は日本の自衛隊には違和感がない。硫黄島の激戦が証明している。また専守防衛が日本の防衛政策で大きな柱である。
  6. クレピネヴィッチはForeign Affairs論文で琉球諸島への対艦ミサイル配備構想に着目している。実際に日本を訪問し、実態が先行しているのを目の当たりにした。「西部方面隊の司令部へ招待されたのですが、地上兵力を中心に取り上げてた私の論文に司令官は大変興奮していましたね」
  7. 防空ミサイルとミサイル防衛装備が琉球諸島に配備され、中国の侵攻に備える。また沿岸に対艦ミサイルが配備される。さらに機雷敷設の訓練もしている。米海兵隊の協力を得て、揚陸作戦連隊の創設を目指し、島嶼の確保能力を確立する。
  8. ただしクレピネヴィッチは揚陸部隊を予備機動部隊とすることに懐疑的で、「接近阻止領域拒否(A2/AD)環境で精密攻撃ミサイルがある中で兵力を展開するのは困難。展開するのは我が方も敵も支配していない地帯だろう」としている。
  9. 一番頼りになる援軍は長距離ミサイルとクレプネヴィッチは言う。西太平洋地区の地理条件から、防衛地点の島が敵の飽和攻撃を受けても、残りの島々が同じ防衛線上にあれば長距離兵器を発射して防衛できる。
  10. ではミサイルはどこまで届くのか。「INF(中距離核兵器)条約の制約があり300マイル、つまり500キロが限度でしょう」とクレプネヴィッチは語る。「300マイルあれば相当の効果があげられ、地上兵力の投入は不要になります」
  11. 長距離ミサイルがあっても日本は単独で長距離にひろがる脅威対象地区すべての防衛は不可能だ。「日本側が分担を考えていることがわかりました。第一列島線の北部は日本が一義的に担当し、米側は南部を担当します」 日本、韓国、台湾の北方部分各国が北方の守りを固めて、南方にあるフィリピンなど各国はそれほど豊かでなく米軍の援助がないと防衛しきれない。
  12. ただし米陸軍にはここで想定される装備すべてが導入されておらず、とくに対艦ミサイルがない。だが日本から購入できるし、日本以外の同盟国が供給することも可能だ。もし、米陸軍が導入を決意すれば。
  13. だが米陸軍はそこまで踏み込んでいない。「予算削減で最大の犠牲を求められていることもあり、陸軍は大きなプレッシャーに直面しています」とクレプネヴィッチは言う。米陸軍は西太平洋以外に中東やヨーロッパでも義務がある。上下両院の軍事委員会から陸軍に対して沿岸配備の対艦ミサイル導入を求めてきたが、「国防総省の上層部は陸軍が第一列島線防衛に寄与できるか把握しきれていません」
  14. 「陸軍の価値観を揺るがす話題になり、列島部分の防衛は旅団単位の戦闘部隊では不可能です」とクレプネヴィッチは言う。日本は普通科地上部隊を縮小させ装備資源を新設の沿岸防衛部隊に振り向けようとしている。予算が限られる前提で米陸軍も同じ選択に迫られよう。米陸軍は予算削減の影響を直接受ける最中であり、新規の予算を確保することは困難だ。■


2015年7月18日土曜日

★F-35模擬空中戦報道>関連背景事情を理解しましょう



F-16との模擬空中戦で精細を欠いたF-35Aのニュースが当ブログでも話題になりましたが、根はもっと深いのです。ただし、とりあえず今回の記事でこの話題は一旦終了とさせてください。F-35が決して万能の機体ではないこと、F-35だけに依存することで防衛予算が消費されることがどれだけ危険かをご理解いただければ幸いです。

Behind That F-35 Air Combat Report

Jul 6, 2015 by Bill Sweetman in Ares

ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機(JSF)のテストパイロットによる報告書がリークされたが、以前にも同様事例があった。2008年の事例ではRAND研究所がF-35をスホイSu-35その他機体と比較した資料がリークされていた。
「米空軍による解析を引用しつつ、チャールス・デイビス中将’ Maj. Gen. Charles Davis 当時JSF推進責任者)はF-35は少なくとも空対空戦でスホイ含む各国の最新鋭戦闘機よりも少なくとも400%優秀だ。
「ロッキード・マーティンによればF-35の3型式でそれぞれ動力性能はいかなる第四世代戦闘機を凌駕しているという。比較の対象は遷音速加速性能で空対空装備のユーロファイター・タイフーンに対し、また高迎え角での戦闘能力でボーイングのスーパーホーネットにそれぞれ優越しているというもの。「F-35は空対空戦の各性能ですべて既存機を上回ている』とロッキード・マーティン社テストパイロット、ビル・フリンが語っている」
以上もあり今回はF-35がエネルギー機動性でブロック40のF-16に劣るとの報道が話題になったのだろう。F-16がタイフーンと飛行速度で同等だと思う人はいないはずだし、スーパーホーネットの高迎え角性能でも同等だとは思わない。あるいはSu-35がこの両者を実現していることも承知のはずだ。F-35推進派の反応も注視に値する。
まず出てきたのはロッキード・マーティンが資金を援助するレキシントン研究所のダン・グア Dan Goure による「F-35がドッグファイトをこなせないって? いいではないか」との記事だ。グアは航空戦闘の機体制御をすべてドッグファイトと関連付けているが、搭載銃による撃墜事例全数を調べた戦略予算評価センターのジョン・ステリィオン John Stillion による報告書を引用してセンサー、ネットワーク、武装の組み合わせが空中機動性を無意味にしたと断言している。「結論としてF-35はそんなに悪い機体ではない」とグアはまとめ、「一方で既存第四世代機はどんどん陳腐化している」とした。
英空軍の要求水準ではF-35Bに航空戦ミッションすべてを行わせ空母航空隊に編入する。F-35Bの空虚重量はF-35Aより3,200ポンドも重いので機動性で不利だ。ロッキード・マーティン重役で RAFでトーネードを操縦していたアンドリュー・リンステッドAndrew Linstead がデイリー・テレグラフ紙にF-35の状況認識能力を評価し、空中戦も変化していると語っている。「慣れ親しんだ方法論にしがみつく人は感情的なつながりさえ覚えるものだが、違う角度から考える必要がある。戦場の状況は二者択一の選択を求めてくる。敵を避けるか、必ず勝てる状況で対決するかだ」
グア、リンステッド、フリンの三人は論争の反対側にいるように写る。30年ほど前に戦闘機主流派がステルス至上主義者と論争したのは高性能戦術戦闘機(ATF)構想の要求性能が対象だった。当時、ステルスは潜水艦戦と同じだと主張する向きがあった。「最後に浮上して甲板の銃で戦う」のと同じだというのだ。AMRAAMミサイルが当時開発中であり、戦場ではたえず初回の 有視界外 beyond-visual-range (BVR) のミサイル交戦を生き残る機体が必ずあり、近接有視界射程within visual range (WVR)に入れば、ステルスに意味はないと主張した。
従来の主流派が勝利した。F-22ラプターは高度の機動性を備えた大型で多様な戦闘性能を実現すべく巨大な尾翼を備え、AIM-9ミサイルを機体前方ならどの方向にも発射できる機能を実現したが、代償に機内スペースを相当割いている。
これに対しJSF推進派は機動性を重視しないが立案者はBVRで勝利をおさめることは可能と主張した。それはステル性と状況認識能力によるものであり、WVRでは360度標的捕捉能力と分散型開口システムDistributed Aperture System (DAS) で対空ミサイルを発射できると見ていた。
ここで語られていないのは実は同機は両方とも実施できないことだ。F-22や成都J-20やスホイT-50のような機体側部兵装庫がなく、AAMをレイルから発射できない。F-35 ではAIM-9 を外部搭載するとステルス性はなくなるとロッキード・マーティンは認めている。
これは偶然ではなく、事業の実施で実現したことでもない。F-35は「空対地攻撃に7割、空対空戦に3割」という構想で始まった機体だ。これは共用高性能攻撃機技術 Joint Advanced Strike Technology (JAST)と呼ばれていた1995年時点に責任者ジョージ・ミューリナー George Muellner,が使っていたことばだ。F-117ナイトホークは第一次湾岸戦争のヒーローになったが、3つの制約があった。自機で目標を補足できず、移動目標は攻撃できず、状況認識能力も昼間の生存に必要な装甲もなかった。そこでJASTはすべての任務をこなした上で外部兵装搭載ポイントもつけ、防衛網を破壊したあとの第二陣攻撃に投入されるF-16の役割も果たそうとしたのだった。
1995年当時の空軍は F-22を442機調達しいかなる敵戦闘機にも対応させる構想で、短距離離陸垂直着陸機にはAAM搭載用の機体側部装備は大きさと重量の問題からそぐわないと判断された。Stovlには機体重量と主翼の大きさ、さらに機体全長で制約があった。
ATF正統派がまちがっていたらどうなるか。グアとリンステッドがこの点を指摘しているようだ。またWVR戦闘を避けることができるか。グアがスティリオン報告書を引用したことに2つの皮肉な効果がある。まず、スティリオンは前出のRAND報告の共同執筆者であり、二番目にスティリオンによるCSBA研究成果によれば将来の空中戦に勝ち残るためにはF-35もF-22も不要であり、高度ステルス無人航空機からAAMを発射すべきだという。無人機の制御は長距離打撃爆撃機のような機体から行えば良いとする。高性能な戦闘機はどうしても短距離しか飛行できず、それ自体は強力としても給油機は脆弱なままだ。(中国のJ-20が給油機等支援機材を直接狙う機体と考えるのは筆者だけではない)
この航空戦の捉え方の裏付けに航空戦の実績を広く研究したスティルトンの成果がある。機銃から短距離AAR、さらにBVR用AAMへの変遷がある。しかし、ここでちょっと待てとの疑義が出し、。これとは違う流れを見る向きもあろう。MBDAメテオ事業の関係者はBVR戦闘には今以上の機体操縦を高速度で行う必要があると見ている。歴史は確かに何かを教えてくれるが、それで全てが決まるわけではない。
注目すべきは空対空戦ではこの30年間でバランスが欠けていることだ。 米国および同盟国側が装備面で大きく有利な形で交戦してきた。西側にはスホイ高性能戦闘機との交戦経験はないし、ロシア製新型戦闘機と対戦しているが、ほとんどが初期型のMiG-29で、短距離しか飛べず、ソ連時代の地上管制による指示を受けて飛行していた。訓練と経験では西側が大きく有利だった。また空中早期警戒機の支援も西側にあり、その他情報収集機や電子妨害機の支援もあった。
交戦事例からBVRが生まれたのは驚くに値しないが、WVR交戦に持ち込むのは危険だとの認識が敵側にも生まれている。だが、このような均衡を欠いた状態がいつまでも続くはずがない。ダン・グアはF-35の機動性欠如を問題視していないようだが、本人は戦闘に参加しないのだ。■


2015年7月17日金曜日

日本向MV-22第一陣5機の売却決まる


まず第一期分ですね。オスプレイを他国に先駆けて導入するあたりが日本がいかに米国と近しいかの現れなのでしょうね。それとも各国とも導入したいが、ヘリコプターがあり、国防予算縮小のあおりで躊躇しているのか。どちらにせよオスプレイの真価が理解されれば導入は進むと見ているのですがいかがでしょう。

Japan Finalizes Purchase of 5 MV-22s in First International Osprey Sale

July 14, 2015 6:10 PM

U.S. Marines inspect an MV-22 Osprey tilt-rotor aircraft after landing on the Japan Maritime Self-Defense Force helicopter destroyer JS Hyuga (DDH 181) during amphibious exercise Dawn Blitz 2014. US Navy photo.
米海兵隊のMV-22オスプレイが海上自衛隊のヘリコプター護衛艦JSひゅうが (DDH-181)に着艦している。揚陸演習ドーン・ブリッツ2014で撮影  US Navy photo.


日本はMV-22を17機導入する計画だたが、まず5機の調達を決定した。日本がオスプレで最初の海外顧客になった。

米海軍は総額332.5百万ドルでベル・ボーイングに複数年度契約を交付し、同型機の製造、引き渡しに加え、サポート、訓練、装備も行わせることとしたと14日にベルヘリコプターとボーイングが共同発表した。

「V-22ティルトローター機は陸上自衛隊の能力を大幅に引き上げ、災害救助に理想的な機材です」(プレスリリースより)

米国防安全保障協力庁(DSCA)からは総額30億ドルで17機を販売すると議会に5月に通告していた。


「日本は防衛任務の支援強化策として輸送手段の更改に向かっている」とDSCAは述べており、「今回提案のV-22B ブロックC型は陸上自衛隊の災害対策人道救難ミッション以外に揚陸作戦の支援へも活用が期待される。今回の売却で同盟国日本から負担分担ならびに米軍との相互運用性の向上が期待される。日本は同型機の編入を容易に実現するだろう」

現時点でMV-22を運用するのは米海兵隊のみだが、米空軍は特殊作戦軍団が独自仕様のCV-22を運用し、米海軍も名称未決定の海軍仕様44機の導入を決定している。日本向販売は初の国際売却事例となる。■

2015年7月16日木曜日

ロシア>軍用機墜落相次ぐ、今度はTu-95爆撃機が中国国境付近で墜落



このところロシアで軍用機事故が連続発生しているのは興味深い現象です。プーチン大統領がめざす大国としてのロシアと、これまでの経緯から整備状況、訓練にお金をかけてこなかった空軍の現実のギャップが大きいのではと推察します。

Tu-95 Bear Bomber Crashes Near Russia’s Border With China

July 14, 2015 9:47 AM

A Russian Tupolev Tu-95 Bear 'H' off the coast of Scotland in 2014. UK Royal Air Force Photo
ロシアのツボレフ Tu-95ベア H型、スコットランド沿岸で2014年、英空軍撮影

ロシア空軍の戦略爆撃機が中国国境線に近いハバロフスク近郊で墜落したと14日ロシア国防省が現地報道を通じ発表した。

  1. 事故機はツボレフTu-95MSベア爆撃機で訓練中にロシア東方軍区司令部から50マイル地点に墜落したとTASS通信が配信。「7月14日現地時間午前9時50分、Tu-95MS機が定期的訓練飛行途中にハバロフスクから約80キロ地点で墜落した。乗員は機外脱出した」
  2. 「機長が緊急事態を宣言し乗員にパラシュート脱出を命じた。捜索救難隊が乗員を捜索中」
  3. またTASS通信によれば捜索救難活動にアントノフAn-12、ミルMi-8ヘリコプター2機が動員されている。
  4. この事故を受けロシア空軍は同型機の飛行を中止している。事故機ではエンジンで問題が発生したとの報道がある。■

2015年7月15日水曜日

★米新軍事戦略が想定する考えたくない危険な可能性



ロシア、さらに中国との交戦を想定すると戦闘は長期化する、との予測でとりあえず新板の国家軍事戦略はできたが、中身はまだ未整備だというのが今回の指摘です。細部はともペンタゴンが現実の世界に対処する考え方をまとめはじめたということでしょうか。

New Military Strategy Shows A Dangerous World – But Not How To Deal With It

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 10, 2015 at 12:15 PM

WASHINGTON: ペンタゴンは世界の変化を痛いほど認識しているが、対応方法の答えが見えていない。
新国家軍事戦略National Military Strategyから見えてくるのはこんな頼りない結論だ。そもそも官僚の作文には高い期待はできないものだが、今回の新戦略構想ではこれまで存在しなかった脅威をどうとらえているのかのヒントが含まれている点が救いだ。ただし、対策は普通の域を脱していない。.
「良い点は全体の状況把握は正確で、戦略環境を正しく捉えていること。では軍としてどう対応すべきかという点になると、やはり以前通りの直線的な解釈に終始している」というのが陸軍大学校准教授ネイサン・フライアNathan Freierの評だ。
戦略案を発表したデンプシー統合参謀本部議長は複雑な安全保障環境から「軍歴40年の中で最も予測が難しい」と評している。テロリストのみならずロシアや中国といった大国との開戦のリスクが「拡大中」である状況が同時並行しており、その中間に「ハイブリッド脅威対象」としてゲリラ勢力が国家並みの装備を展開しているという認識だ。ロシアによるウクライナ併合は現地勢力を活用しつつ、特殊部隊も展開した点でハイブリッド型の例で軍事大国がゲリラ戦術を活用している点に注意が必要だ。イスラム国が支配地域を確保し維持しているのもハイブリッド型で非正規部隊が限定的ながら国家のように振舞っている例だ。
ただし新戦略ではすべての脅威対象を同じ軸に配置している。非国家勢力による戦闘が発生する確率は高いが、危険度は低い。一方で大国との戦闘は可能性は低いが発生すれば極めて危険だ。このように考えるのは単純化しすぎだろう。
Conflict spectrum from the 2015 National Military Strategy
2015年版国家軍事戦略構想より 紛争の分類
ロシアのような大国は通常型軍備を使わずに大きな損害を与えることが可能だ。天然ガス価格の操作、ハッカーの活用も武器になる。逆に非国家勢力のイスラム国が世界規模のテロ破壊活動を展開することは可能で。これまでの指揮命令系統を使用せずにソーシャルメディアを使って実施できる。
「10年20年までは指導層がないままの抵抗活動が最新の形態だった」とフライアは語る。「ところが指導層が存在しない抵抗活動が現実のものとなっている。バラバラの個人が遠隔地の思想に従い行動している」 テロリスト組織と直接の接触がない戦闘員が実質的に動員されているという。
次の大戦が発生したら?
指導層がなくても自主的に組織されたテロリスト集団はローエンドの悪夢だが、大国との戦闘はハイエンドの悪夢と言えよう。デンプシー議長はアメリカの技術優位性が失われつつあるとを警告する。この危機意識はこの数年間でペンタゴンの優先事項で最上位になっている。またデンプシーは戦争が「長期化」する可能性を指摘している。
だが21世紀に大規模戦闘が長期化するだろうか。大国間では戦争のない状態が長く続き、軍事技術は急速に進歩しているので、結果の想像が難しい。デンプシーは明言を避けるが、米国のスマート兵器が使い果たされ在庫が空になる可能性は高い。
第一次大戦では両陣営は戦前に備蓄した兵器を開戦後10週間までは使っていたとジョン・スティリオン John Stillion (戦略予算研究センター)は指摘する。「弾薬不足と火力による甚大な損失で戦闘はむしろ長期化した」という。第二次大戦では日米海軍は真珠湾攻撃後12ヶ月でそれぞれ相手陣営の空母を標的とした結果、「両国が空母部隊を再編する19ヶ月にわたり大規模な空母対決は発生しなかった」(スティリオン)
米国の南北戦争を見てもわかるとスティリオンは続ける。初期のブルランの戦いで両陣営は長期戦体制に入った。「歴史が証明しているのは大国同士の戦争は長期化する傾向があるのは、相手に一方的に損害を与えられないためであり、開戦直後に敵を圧倒的に制圧できないことも理由だ」
もし大国間の戦争が今勃発するとアフガニスタンとは様相が異なっても、第二次大戦とも全く違う形になるだろうと、CSBA研究員ブライアン・クラーク Bryan Clark:がコメントした。「現在の産業基盤では最新の高性能装備や兵器を急には増産できない」ので初期の交戦で損耗した装備の補充はできない。
だが大規模かつ長期にわたる軍事衝突は未経験の課題を残すだろう。
「この戦略の欠陥は戦略として機能していないことです」とクラークは更に続けた。「文書の上では資源に限りがあると認めているが、それを前提に米軍部隊がどう対処するのかは触れていないですね。たとえば、『敵の全滅』は不可能かもしれないし、限られた資源で目的をどう貫徹するのか、これまでのやり方は通用しません」
「結局、文書は意向を示すことに終始しており、実施可能な戦略になっていません。本当の戦略なら立案上、開発上あるいは予算認可の各段階で国防総省の限られた資源をどこに使うべきかを決定するのに役立つものであるべきです」とクラークはコメントした。■


2015年7月12日日曜日

★★F-35>ドッグファイト結果からパイロットの役割を考えよう



さすがに元空軍士官だけに問題の本質をパイロットの観点から整理しなおしています。このままではF-35が空軍の成り立ちを根本から変えるのは必至ですね 結局はパイロットの腕にかかってくるのですね。当面今回のドッグファイト試験の余波はつづきそうですね

What the F-35 vs F-16 Dogfight Really Means: Think Pilots

By DAN WARD on July 08, 2015 at 4:01 AM
  1. 共用打撃戦闘機にドッグファイターとして欠陥ありとの報道が出るや、JSF推進派の反応は迅速かつ予想通りだった。多くがF-35はそのまま容認できるとし、中にはもともと空対空戦の想定はないのだから問題無いと言う向きまであらわれた。ただこの見解は長くは持ちそうもない。そもそもなぜ米空軍がこの段階になってF-16との模擬空中戦を実施したのか。おそらく空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が2013年12月に説明しているように、「F-35はF-22を補完して空中優越性の確立のため実戦投入する」からだろう。言い換えれば米空軍にはF-35がドッグファイターとして必要なのだ。
  2. この他にも擁護派の説明では今回の想定は単なるテストで、リークされた報告書は実態をよく理解していない者が抜粋したものだとする。だから機体の価値を本件だけで判断すべきでないという。JSFの開発契約が1996年に成立してからはじめて今回基本戦闘機操縦テストに投入されたわけだが、(量産型機は2020年までこのテストに使われない)、だれも急いで結論を出そうとしていない。ただ軍用機のテストでそれなりの経験と一家言を持つ筆者として、一回のテストでも十分に意味のある性能データを得ることが可能だと断言できる。F-35支持派も逆にドッグファイトに勝利していたら同じ事を言っていただろう。
  3. ただ筆者はこれとは違う擁護派の発言に注目している。FighterSweep http://fightersweep.com/2548/f-35-v-f-16-article-garbage/ で発表された記事では今回の報道を「ゴミ」だと一蹴している。C.W.レモイン C. W. Lemoine が指摘するのはF-35がドッグファイトに負けた真の理由は技術的な欠陥などではなく、パイロットの技量不足だというのだ。レモイン自身はF-16とF/A-18の操縦経験があり、こう言っている。
  4. 「100時間ほどのF-35操縦経験しかないパイロットが1,500時間超のヴァイパーパイロットに対決したのだ。千時間超のF-16パイロットが複座D型で完成したばかりの単座ジェットに勝った例を見ている。コックピットでは経験の長さがものをいうのだ
  5. 「完成された戦術に長けたパイロットの手でF-35が同等の経験を有する対抗側にウェポンズスクールの模擬演習に臨んだらどうなるだろうか」
  6. 挑発的な言葉遣いと飛行時間の件はおいても、このレモインは重要な点を提示している。戦闘結果で決定的なのは「コックピットの中で何時間すごしたのか」だ。レモインの主張はF-35パイロットが経験を積むまで結論を保留すべきだとするが、技能不足そのものは重要なデータポイントだと思う。この点こそF-35が決定的に弱い点であり、今後相当長くそのままであろう。
  7. 効果的な戦術を開発し、うまく活用できるパイロットの養成には相当の飛行時間の蓄積が必要だ。しかし、F-35のパイロット陣には大きな障壁がある。パイロットは必要な経験が積めず、効果的な戦術の実証、開発もできないままである。想定される戦闘ミッション全般でも同様で、ドッグファイトも例外ではない。
  8. 機体価格が上昇の一途で、開発が恒常的に遅れいている実態からペンタゴンの調達機数が削減されるのは必至で受領も予定より遅れる。十分な数の機体がそろわなければパイロット養成もままならない。とくにF-35では飛行時間あたり費用が高いことが一番の問題だ。このため操縦時間が制約を受け、訓練時間が増やせない。更に予算環境が厳しいのが昨今だ。これらをあわせると実機の操縦体験を多く確保することは困難となり、レモインがいみじくも言うように飛行時間が短いパイロットが長く飛んでいる敵に勝てるはずがないのだ。
  9. ここに機体の複雑さが加わる。これは筆者の専門分野だが、複雑な機体はそれだけ学ぶのが難しくなり、テストも難しく、点検保守も難しくなる。F-35は疑いもなく史上最高に複雑な機体だ。たとえば、コンピュータコードは830万行あり、F-22の4倍以上だ。複雑性をすべて制御管理するため費用は高くなり、開発が遅くなり、テストでは飛行時間を確保できない
  10. 純粋に技術的な観点からは複雑性は信頼性を犠牲にすることになる。たとえば故障現象の種類が増えるとともに、故障箇所も増える。このためあちこちが不良を引き起こし、問題をひとつひとつ解明し対策を講ずるのに長時間が必要だ。保守点検が遅れれば機体がその間利用できなくなる。結論として複雑になる分だけ操縦時間が確保できなくなる。
  11. 故ジョン・ボイド大佐の不朽の発言にあるように、機械は戦闘を行わない。操縦者が行うのだ。ここに今回の事例の本質がある。F-16はドッグファイトでF-35に買ったわけではない。F-16を操縦した経験豊かなパイロットがF-35に乗る経験の浅いパイロットを負かしたのだ。この結果が将来に再発しないようにする唯一の方法は経験を積んだF-35パイロットを多数養成し、新戦術をマスターすることだが、現在のままではこれはとても困難だ。
  12. ということでF-35に近接空中戦の実施を期待できるのかという問題は忘れよう。また今回のテスト報告書が重要な意味を含んでいるのかという問題でも同様だ。JSFが優秀な機体になるとしたら、ドッグファイト他で真のプロフェッショナルな人材が必要なのだ。つまり「戦術開発に長けた」人材だ。つまりパイロットはコックピットで経験を重ねるべきであり、巨額の経費を考えると、遅延が重なっていることもあり、機体のとんでもない複雑さも考慮すると、F-35に経験豊かなパイロットを確保することは当面期待できない。■


2015年7月11日土曜日

★LRS-B>選定決定は秋ごろに延期、次期JSTARS機も選定に向かう



LRS-Bの契約選定が遅れるのは結果の重大性を考えると米空軍が相当に逡巡していることの証拠です。LRS-Bは既存技術を多用したかなり「常識的」な機体になりそうですが、受注に失敗した企業にとっては辛い結果になると言われてきましたが、実態はそうでもなさそうですね。注目したいのは下にさり気なく挿入されたJSTARSの次期機体の話題です。技術の進歩でかなりダウンサイズした期待になりそうですね。

Air Force: Next-gen bomber award could slip into fall

By Brian Everstine, Staff writer3:01 p.m. EDT July 9, 2015

米空軍は新型長距離打撃爆撃機(LRS-B)の契約交付を先送りし、三ヶ月程度遅らせると発表した。
  1. 空軍次官(調達)ビル・ラプランテBill LaPlanteによれば公表時期は「でき次第」だとし、拙速より正しい結果を重視するという。導入機材は50年間の供用の予定で、発表時期を急ぐ必要はないとの考えだ。
  2. ラプランテは「正しい結果を得るべく、正しい時期に正しい方法で始めるのが肝要だ」と戦略国際研究センター(ワシントンDC)で7月9日に語った。
  3. ラプランテ発言の前に空軍長官デボラ・リー・ジェイムズがロイター通信に契約交付は9月になりそうだと伝えている。
  4. 契約獲得をめぐり争う二社は結果如何で大きな影響を受けそうだ。B-2で実績があるノースロップ・グラマンロッキード・マーティンボーイング共同事業体だ。
  5. B-52後継機として空軍は80機ないし100機の導入を希望し、導入開始を2020年、機体単価を500百万ドル、事業規模は総額800億ドルと見込んでいる。
  6. この事業は議会の批判の的となっており、下院による2016年度国防予算認可法案では460百万ドル減額されたが、実際の開発研究予算は非公開あるいは「闇の」予算に盛り込まれている。
  7. 空軍は新型爆撃機について口を閉ざしており、ステルス性以外に核・非核運用、任意で有人操縦とする、とだけわかっている。
  8. また空軍は共用監視目標捕捉攻撃レーダーシステム(JSTARS)の次期機種に関し第一選定で三社程度に絞り込む意向だ。空軍は最終的に一社に契約交付し、実機の生産を開始させるとラプランテは説明した。
  9. 米空軍は現在JSTARS18機を運用しており、各機は長距離レーダーで地上車両の探知、捕捉ができる。機体は旧式になったボーイング707-300で、ボーイングはすでに同機の生産を終了して久しく、代替機を探すのは困難かつ高価格になっている。
  10. ロッキード・マーティン、レイセオンボンバルディアは共同で長距離ボンバルディアビジネスジェットを基にした案を提案している。ノースロップ・グラマンはガルフストリームL-3の各社と組んでガルフストリームG550の改修案を発表済み。ボーイングは737で参入を図る。■


2015年7月10日金曜日

★オーストラリア>F-35B導入を断念




Australia Abandons Proposal To Order F-35B

Jul 8, 2015 Bradley Perrett | Aerospace Daily & Defense Report

オーストラリアは大型強襲艦2隻へ短距離離陸垂直着陸型(Stovl)のロッキード・マーティンF-35Bライトニングの導入を断念したと同国国防筋が明かしている。まもなく発表の国防白書の準備中に決定された。
  1. Stovl戦闘機導入は昨年にトニー・アボット首相が決めたことだが、実施すると強襲揚陸艦の大幅改修が必要とわかり、導入を断念することになったという。
  2. またオーストラリア軍内部でF-35B導入に反対の意見が広がっていたと同上国防筋はAviation Weekに語っている。
  3. また艦載航空兵力を投入する作戦想定はオーストラリアに少ないと指摘するのはオーストラリア戦略政策研究所のベン・シュリア Ben Schreer 研究員だ。シュリアの主張は同機を運用した場合の効果よりもっと重要な支出項目があるというものだ。
  4. オーストラリア空軍はF-35Aが100機は必要としており、F-35B発注の場合これが削減される可能性があった。ただオーストラリアの確定発注はF-35Aを72機。シュリアはF-35B飛行隊を2個(各18ないし24機装備)整備する案があると指摘していた。強襲揚陸艦2隻の改修費用は50億オーストラリアドル(44億ドル)以上と見られていた。
  5. 二隻のうちHMASキャンベラは就役ずみで、二番艦アデレイドが公試中だ。両艦はLHD型でドック式で全通型飛行甲板を有するが、大型陸軍用ヘリコプターの運用を想定している。■


2015年7月8日水曜日

★国産哨戒機P-1が英国で国際デビューへ



US-2の輸出話がなかなか見えてこない中で、P-1が英国に飛び、次期哨戒機として売込みを図ることになった、という報道です。これでC-2が軌道に乗っていれば、三羽烏となるところなのですが。P-1は今後が期待できそうです。

Kawasaki P-1 To Make International Debut In U.K.

Jul 7, 2015Tony Osborne | Aerospace Daily & Defense Report

Kawasaki Heavy Industries

日本は新型対潜哨戒機川崎P-1を2機英国に送り、英国に売込みを図る
  1. 海上自衛隊所属の2機がロイヤル・インターナショナル・エアタトゥーに7月17日から19日まで出展され待望の国際デビューをする。地上展示のほか、飛行展示をRAFフェアフォード基地(グロスタシャー州)で行う。
  2. 日本は四発の同機を海外に売りこむ一環として英国の新型海洋哨戒機仕様に十分答えられると示したいところだ。英国は今年末に発表予定の国防戦略計画で新型哨戒機の必要をうたうと見られる。
  3. 日本の国産軍用機が海外のエアショーに展示されるのは1997年以来はじめてのことで大きな意義がある。また、海外売込みを目指して海外での展示イベントに機体を持ち込むのは今回が初めてだ。
  4. 日本は軍用装備輸出規制を2014年に緩和している。.
  5. 1月の報道で日本は昨年のファーンボロ航空ショーでP-1の出展を検討していたと判明している。日英両国は防衛協力を模索する中で日本の新型シーカーヘッド技術を英国のMBDAメテオ空対空ミサイルへ応用することなどで協議が続いている。
  6. 川崎P-1はロッキード・マーティンP-3オライオンにかわる機体だ。2013年から運用が始まっている。2021年にかけ20機が納入される。
  7. もうひとつ日本が輸出を狙うのが新明和US-2水陸両用長距離パトロール機だ。
  8. 航空自衛隊が過去のエアタトゥーに出展しており、ボーイングKC-767空中給油機が2012年、2014年と続けて飛来している。
  9. ただし英国関係者の注目を集めるのはP-1だけではない。ボーイングは英海軍向けP-8ポセイドン哨戒機およびチャレンジャー(ビジネスジェットを原型にした海洋監視専用機の試作型を出展する。■