2015年11月4日水曜日

★技術力で優越性を確保する第三の相殺戦略の具体策が2017年度予算で登場?

なるほど技術優位性を確保してもすぐに他国が追いついてくる状況なので短期間のリードを保ちつつ、つぎつぎに民間技術を応用したイノベーション効果を期待するというのが第三の相殺戦略の骨子のようですね。極秘開発案件もありなかなかその内容が見えてきませんが、再来年の予算から具体像が見えてくるはず、というのがワーク副長官の考え方のようです。米国の官庁でMoTを一番真剣に考えているのがペンタゴンなのかもしれませんね。

We’ll Unveil Third Offset Details In FY17 Budget, Except The Black Part: Bob Work

By Sydney J. Freedberg Jr. on November 03, 2015 at 2:43 PM

Robert Work
ロバート・ワーク国防副長官

WASHINGTON: 昨年の今ごろ、ペンタゴン上層部は公に第三相殺戦略を新しい考えとして吹聴していた。その後、相殺そのものがステルスモードに入り、閉じられたドアのうしろで構想に取り組むようになった。
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  1. 記者はボブ・ワーク副長官に昨日会見し、相殺戦略の現状はどうなっているのか尋ねてみた。ワークから構想の全体像が明らかになった。なんといっても構想はワークが考えだしたものであり、現在のアシュ・カーター長官のもとでも高い優先順位が付いていることに変わりはない。
  2. 「第三相殺の意義をそのままお伝えすることはできない」とワークはDefense Oneサミット会議の席上で記者に語った。「長官がこの場で間もなく話題にするはずで、2月の新年度予算にも盛り込む。技術と運用の両面で現在の優位性を維持する」
  3. ワークは詳しい内容を明かしたが、一部は秘匿情報のままだ。ステルス機は1970年代の第二番目の相殺で重要な存在だった。精密誘導兵器やコンピュータ化した指揮統制もその一部だったが、ワークはペンタゴンはステルスを話題にしたのは1989年以降だったという。
  4. ただし今回の秘中の秘は攻撃手段としてのサイバー、宇宙空間、電子戦になりそうだ。ワークはこのことを口にしていない。だが軍用ネットワークや民間の重要インフラストラクチャの防衛と並び、サイバー安全保障の三番目の重要要素は「サイバー防衛能力であり、こちら側への攻撃を抑止するもの」と述べた。サイバー空間での抑止力としてワークが言及した内容は不明確なままだ。宇宙空間でも極秘開発が進展しているのだろう。現政権は新規予算50億ドルで今後5年で宇宙空間での指揮統制技術開発を進める。
  5. ワークが口にしていない内容にレーザー兵器やレイルガンがある。ともに飛来するミサイル迎撃に使える可能性を秘め、無人機や有人機にも対応できるかもしれない。発射コストは現行ミサイル防衛システムの数分の一にすぎず、しかも玉切れの可能性がない。
  6. 軍はロボット工学の応用に大きく関心を示しており、自走式地上車両から機雷を対処するミニ潜航艇、さらに無人機まで応用が可能だろう。ロボットは生身の兵員を危険な状況で助けるだけでなく、第二次大戦後のアメリカではじめて数の上の優勢をもたらすかもしれない。
  7. 「相殺戦略」の語句そのものは1970年代に生み出されており、数の上で米軍がソ連にかなわない状態の中で数の劣勢を高い水準の性能や技術で「相殺」する構想だった。その後遡及してアイゼンハウアー時代の「ニュールック」に適用され、共産圏の数の優位性に対して通常兵力ではなく核兵器を侵略行為には躊躇なく投入すると警告した事例が応用例とされた。当時の米国の核兵器の貯蔵量はいかなる国を凌駕していた。だがソ連が核兵器で追いつくと、米国は通常誘導精密兵器での優位性を前面に立てた。これが第二の相殺戦略だ。これまでの相殺戦略と現在の構想には相当の違いがあるとワークは指摘しており、その違いとは特定の兵器にこだわることで誤りにつながるという点だ。
  8. 「第一、第二の相殺戦略では競争相手は一カ国だけだったが、今や心配すべき相手は四カ国ある」とワークは指摘する。ロシア、中国、イラン、北朝鮮だろう。「さらに国境を超えた地域内テロ活動も発生している」としイスラム国が念頭にあるが今後新しい流れに転移する可能性もある。
  9. 「ソ連とは一貫して長期間に渡る競争関係があった」とワークは続け、米国の軍産複合体に技術革新で優位性があったことを指摘した。ただし現在の軍用新技術は世界各地の民間企業が生み出している。
  10. そうなると数多くの敵国が技術革新の情報源にアクセスできることで、競争の内容が複雑化し、予測が立たず、冷戦時代よりも熾烈になる。「第一大戦と第二次大戦の間と同様で、無線通信の存在は皆が知っており、戦車の存在も誰もが知っており、飛行機についても同様だった」 ただし、ワークは「最初に実用化し、初期作戦状態に持って行った側が戦術でも有利になった」という。
  11. ここで「初期優位性」というのは他方が簡単に模倣できるからだ。日本の空母部隊が真珠湾を攻撃したがその後アメリカの空母部隊により粉砕されている(その背景には暗号解読もあったが)ミッドウェーまでは7ヶ月しか経っていない。ドイツはロシアの大部分を1941年に蹂躙したが、1944年までにロシアがドイツを電撃戦で撃破している。21世紀には新技術はすべての国が利用可能となり、このような逆転劇が当たり前になると、アメリカの独壇場だったステルス技術もうかうかしていられなくなる。
  12. 「競争は熾烈になっていきます。技術面での逆転は簡単に発生するでしょう」とワークは言う。「第三相殺では優位性を40年間も維持しようとは考えません。急速に追いついてくる相手が多いのです。そこで今考えているのは今後5年ないし10年程度の優位性を確保することであり、その優位性の実現のために作業を進めます」
  13. 問題になるのがペンタゴンが早い技術革新ではあてにならない点だ。そこでまず技術そのものではなく、軍が技術を導入する仕組みそのものを変えていく必要がある。
  14. これはワークも認めている点だ。カーター長官はシリコンバレーに調達事務所を開設し産軍複合体と情報産業の間の技術ギャップを埋めようとしている努力をワークは評価する。ペンタゴンは10百万ドルでパイロットプロジェクトとして情報各機関のベンチャーキャピタルIn-Q-Telとともに進めている。また調達・技術・補給活動を担当する副長官フランク・ケンドールも長期間R&D案を打ち出した。ワークによれば国防総省は「真剣にパラダイムを変えようとしており、今後競争状態が厳しくなる環境でも機敏に動けるようになるだろう」■


★FY16米国防予算>苦しいやりくりで犠牲になる事業が続出か



要は年末に連邦政府の予算がパンクし、政府機能が停止する事のないように議会と大統領で予算をさらに削りましょう、ということなのでしょうが、500億ドルというと一兆円を超え、あちこちで削りに削る構図は予算の辻褄合わせの観があり、大局的な国防のあるべき姿を誰も見ていない証拠ですね。この影響が数年間に渡りじわじわと出てくるのではないでしょうか。

Defense Bill Falls $5B To Meet Budget Deal

By Joe Gould, Lara Seligman and Jen Judson 4:15 p.m. EST November 3, 2015



WASHINGTON — 米議会は2016年度国防政策予算を50億ドル削減し、大統領との間で成立した予算合意内容に合致させる。このうち26億ドルは調達事業の「調整」用となることが判明した。

  1. 削減は各種事業にわたり数十億ドル相当の「痛み」が発生すると、下院軍事委員会委員長ウィリアム・「マック」・ソーンベリー議員(共、テキサス)が述べている。2016年度の国防権限法(NDAA)の総額は6,120億ドルが6,070億ドルになる。
  2. 予算節約は上下両院の協議で決まったとソーンベリー委員長は述べた。削減対象のリストが下院軍事委員会に非公開審議の席に提出されている。
  3. 国防関係の専門家筋には歳出決定関係者が協議し最終的な支出案を12月11日までに可決して政府機能の停止を避けるとの見方があるが、50億ドル分が本当に捻出できるかはっきりしない。
  4. 最大の節約効果が燃料費支出で発生しおよそ10億ドルが燃料価格低下により生まれる。これは16億ドルの「現状調整」の一部となり、その他契約関連の履行遅延分を含む。またおよそ110百万ドル分の燃料費節減効果はアフガニスタン治安維持軍用予算分で発生する。
  5. 議会両政党は特殊作戦部隊をイスラム国との戦闘用に北部シリアへ派遣するオバマ大統領案に批判的で、対テロ相互関係予算のうち250百万ドルを削減しており、シリア向け訓練装備供与事業では125百万ドルを削減している。後者はペンタゴンが事業中止を10月に発表済みだ。
  6. NDAAは当初の削減幅よりさらに453百万ドルを上乗せしており、国防総省全般に影響が出る。
  7. このうち海軍が削減の影響が一番少ない。海軍で最大の削減対象は400百万ドル増額を要求していたDDG-51駆逐艦建造が150百万ドル減額になることだ。NDAA原案では同事業には35億ドルを想定していた。
  8. 空軍では長距離打撃爆撃機事業で230百万ドル減額となるのが最大で、契約交付が遅れたことが理由だ。2016年度予算策定ではすでに同事業を460百万ドル削減することが先に決まっており、ここに上乗せされる。ペンタゴンはついに同事業の選定結果を先週公表し、ノースロップ・グラマンが契約企業に決まったが、LRS-B事業全体は1,000億ドル規模になる見込みだ。
  9. 議会はさらに20・5百万ドルを長距離スタンドオフ兵器開発事業で削減した。これはLRS-Bはじめ空軍の爆撃機全部に搭載されるべく開発中のもの。実現すれば現行の空中発射巡航ミサイルと交代し、核・非核両用で対応可能となる。
  10. NDAAによる削減では各軍の航空機整備事業に広範な影響が出る。MQ-9リーパーは80百万ドル、C-130改修は51百万ドル、H-1ヘリコプター改修は5百万ドル、F-15改修は10百万ドルそれぞれ減額されている。
  11. 陸軍では目立った削減は受けていなかったが、議会は陸軍即応体制関連予算を250百万ドル削り、かわりに192.6百万ドルを州軍即応体制予算に振り向けた。
  12. この予算カットは陸軍参謀総長マーク・マイリー大将が即応体制について言及した直後に決まった。大将は戦闘訓練を受けた兵員が陸軍の最大優先項目だと陸軍の規模縮小が進む中で発言していた。
  13. 「数も重要だが、もっと重要なのは能力であり即応体制だ」とマイリー大将は2日に公開フォーラムで発言していた。「質的な優位性を確保したい。量的な優位性ではない。両方あるのが望ましいのだが、実際の戦闘では質的優位性のほうが大きな効果を生む」.
  14. NDAA原案では州軍及び予備役の装備調達予算を増やしていたが、現在の法案では逆に170百万ドル削減する。それでも大統領原案よりも250百万ドル増えている。.
  15. 議会は通信ネットワーク関連予算をさらに削る構えだ。陸軍の分散型共通地上通信システムでは10百万ドル、携帯型戦術指揮命令通信装備では5百万ドル、中間ネットワーク車両通信では89万ドルをそれぞれ削減している。
  16. 陸軍のミサイル開発がNDAAの新規削減対象になった。議会筋はNDAA原案で増額していた予算を削減することとし、ペイトリオット高性能化(PAC)-3ミサイルの部分性能向上事業で100百万ドルを削減。NDAAが削減をさらに進めると共用空対地ミサイル事業でも契約交付の遅れを理由に8百万ドルが削減される。
  17. さらに50百万ドルが最終段階高高度地域防衛システム(THAAD)で削減される。THAAD迎撃体の生産は2015年度に予定より遅れている。ミッションコンピュータのメモリーカードで問題が発生したためで、予定より7ヶ月遅れる結果になったとミサイル防衛庁は発表している。ロッキード・マーティンは迎撃体で予定44セットのうち3セットしか納入できていない。■


2015年11月3日火曜日

★南シナ海の空軍基地は完成したのか。中国がJ-11戦闘機の運用を開始



               
                   

中国が建設していた南シナ海上の滑走路が完成し、軍用機の運用が始まったということですね。中国が米国の無害通航をまずそのまま実施させた背景には制空権を確保できるという自信が背景にあったのですね。今後どのように航空戦力を拡充し運用するのか注目されます。ただし着陸する機体の背景の地形植生を見ると本当に環礁上の滑走路なのか疑問になりますが。

「defense tech」の画像検索結果China Flies Armed Jets over Disputed Islands

                   
by Brendan McGarry on November 2, 2015

               
               
Caption: A J-11 fighter flies above the South China Sea on Oct. 30, 2015. An aviation division under the South China Sea Fleet of the Chinese PLA Navy carried out on Friday training on real air battle tactics. (Chinamil/Fan Huaijiang)
2015年10月31日南シナ海上空を飛行するJ-11は人民解放軍海軍南シナ海艦隊所属の機体。 (Chinamil/Fan Huaijiang)
中国が武装つき戦闘機複数を南シナ海上空で飛行させた。米海軍が問題の島嶼部分を駆逐艦を航行させたことへの対応だと複数筋が伝えている。


先週土曜日に中国軍部がウェブサイト上でJ-11戦闘機複数にミサイルを搭載し、南シナ海上の滑走路から訓練飛行を実施している写真を公表している。South China Morning PostのJun Maiによる記事ではこの滑走路はパラセル諸島のうちWoody島にあるもので、先週駆逐USSラッセンが航行したスビ環礁からは600キロほど離れているという。

瀋陽J-11双発戦闘機はソ連時代に設計されたスホーイSu-27を原型としている。30mm機関砲、ロケット弾、爆弾、対艦・対地ミサイルおよびPL-12ミサイルを搭載する。
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中国が保有するJ-10とJ-11は改修型F-15とほぼ同等の性能だと米議会調査報告書が昨年明かしている。今回の訓練飛行と称する飛行の様子を伝える写真は以下のとおり。

Caption: Two J-11 fighters fly above the South China Sea on Oct. 30, 2015. An aviation division under the South China Sea Fleet of the Chinese PLA Navy carried out on Friday training on real air battle tactics. (Chinamil/Fan Huaijiang)
J-11の2機が南シナ海上空を10月30日飛行している。人民解放軍海軍の南シナ海艦隊が訓練を実施した。 (Chinamil/Fan Huaijiang)
Caption: A J-11 fighter taxis on the runway after returning from a flight training on Oct. 30, 2015. An aviation division under the South China Sea Fleet of the Chinese PLA Navy carried out on Friday training on real air battle tactics. (Chinamil/Fan Huaijiang)
10月30日訓練飛行から帰るJ-11。実施したのは人民解放軍海軍の航空隊で戦術航空訓練を実際の状況で行った。 (Chinamil/Fan Huaijiang)

2015年11月1日日曜日

★ 南シナ海航行の自由作戦実施後に米中海軍トップは何を話し合ったのか




中国はかねてから自国領海内の無害通航の概念を認めておらず、国内法が支配するとの世界から受け入れられない主張をしています。また面子を重んじる発想ですから今回予想より早く米海軍が行動に入ったことは相当のショックだったはずです。まず中国には自身の独自のとんでも解釈ではなく、世界基準の考え方に切り替えてもらう必要がありますね。軍トップ間の意思疎通は重要だと思います。

U.S., Chinese Navy Leaders Discuss U.S. Freedom of Navigation, South China Sea Operations

By: Sam LaGrone
October 29, 2015 3:34 PM

Adm. John Richardson attends the 10th Regional Seapower Symposium (RSS) for the Navies of the Mediterranean and Black Sea Countries in Venice, Italy on Oct, 22 2015. US Navy Photo
2015年10月22日にベニス(イタリア)で開催された第10回地中海黒海諸国シーパワーシンポジウムで講演するジョン・リチャードソン大将。. US Navy Photo

米中の海軍トップが29日に南シナ海問題をテレビ会議で協議したと海軍関係者がUSNI Newsに伝えてきた。

  1. 会議は「専門家にふさわしく前向きなもの」と関係者は評しており、海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将と人民解放軍海軍(PLAN)司令官吴胜利Wu Shengli大将が「航行の自由作戦、両国海軍間の関係、懸案の寄港案件、上層部交流、対話継続の重要性」を話題にしたと海軍が発表。
  2. 米側によれば呉大将からは懸念と追加説明の求めが表明されたが、リチャードソン大将へ要求はなかったという。
  3. 26日に誘導ミサイル駆逐艦USSラッセン(DDG-82) が中国が南シナ海スビ環礁上に構築した施設から12カイリ以内を航行し、航行の自由作戦を実施したことで中国の軍部と外交部の神経をいらだたせた。
  4. また作戦では中国がフィリピン、ベトナムとそれぞれ領有権を巡り対立する地点の12カイリ以内も航行している。
 Commander in Chief of the People's Liberation Army (Navy) Adm. Wu Shengli on Spet. 18, 2014. US Navy Photo
人民解放軍海軍司令官吴胜利大将。2014年9月18日撮影。 US Navy Photo

  1. 海軍および国防総省は今回ホワイトハウスの指示で実施したラッセンの航行の詳細を公表していないとニューヨークタイムズが伝えているが、これは複数筋が認めている。航行の自由作戦について海軍は声明を発表している。
  2. 「米国による航行の自由作戦はグローバルな視点で海洋関連の諸問題を踏まえて実施している。作戦実施により海洋および上空利用の権利、自由、合法性が国際法の下で各国に保障されていることをあらためて示す。航行の自由作戦は陸上地点から生まれる主権に挑戦するものではない」「合衆国は南シナ海内の領有権をめぐる意見対立に対して特定の立場をとるものではない」
  3. 米国は対立する主張の一方に組しないとしつも、中国が主権の根拠だと主張する人工島は認めていない。
  4. 27日には中国外交部報道官が今回の作戦を激しく非難する声明を発表した。.「他国とくに域外のいかなる国が面倒事を起こさないよう望む」
  5. 呉とリチャードソンは8月に初めてのテレビ会議を行っており、年末に三回目を行う予定。■


2015年10月31日土曜日

空母ロナルド・レーガンにロシア爆撃機編隊が異常接近飛行したことの意義


先週はスプラトリー諸島へ米海軍が予想より早く艦艇を通行させた事件が大きく伝えられましたが、並行してロシアも大胆な行動で米海軍に挑んでいます。

まずDefense NewsはNavy Timesからの転載として以下伝えています。

Russian bombers buzz carrier Reagan amid exercise

By David Larter, Staff writer4:45 p.m. EDT October 29, 2015
USS Ronald Reagan to conduct exercise with Republic of Korea Navy(Photo: MC1 Abraham Essenmacher/Navy)
空母ロナルド・レーガンが4機のF/A-18を武装付きで27日緊急発艦させ、接近するロシア爆撃機2機に対応させていた。ロシア編隊は同艦上空を低空通過して米海軍を驚かせた
Tu-142ベア編隊は高度500フィートで空母から1マイル未満の地点へ侵入。レーガンは韓国との共同演習中だった。海軍によればホーネットを発艦させたのは海軍艦艇近くに接近する航空機対応として標準対応だという。ただ海軍関係者によれば今回の事態は危険をともなっていないという。
レーガンからはロシア機に交信を試みたが、返答はなかったと海軍報道官ウィリアム・マークス中佐が声明文を発表。今回のロシア機接近はまずStars and Stripesが報じていた。ベアは長距離飛行性能を生かして偵察任務に投入されているが、巡航身猿や対潜兵器の搭載も可能だ。
米海軍艦艇がロシア偵察機と接近遭遇することは冷戦時代は日常的に発生していたが、ソ連崩壊後に減り、2014年のクリミア併合以降再び増える傾向にある。ヨーロッパ、アジアの各国でロシア機による領空侵犯に対する懸念が深まっている。
急増中のロシア偵察機の飛行パターンからロシアが活動を増加させていると見る専門家は多い。
「ロシアはやる気があるところを示そうと長距離飛行させている」というのはブライアン・クラークだ。潜水艦勤務の経験があり、現在は戦略予算評価センター(ワシントンDC)でアナリストを務める。「わがほうはずっと同じことやっているから今回の事件は大きな意味がないように見えるもしれない。だがしばらく実施してこなかった国としては大きな動きといってよいでしょう」
「ロシアとしては再開は大きな成果です。長距離監視偵察飛行の実施能力を回復したわけで、さらに長距離攻撃能力も同様でしょう」
活発化を示すロシアの軍事活動へ米海軍は注意を喚起している。■
一方、米海軍協会は以下の配信をしています。

Pair of Russian Surveillance Planes Came Within A Mile of Carrier USS Ronald Reagan, Ship Scrambled Fighters

By: Sam LaGrone
October 29, 2015 1:43 PM


An undated picture of a Tupelov Tu-142 Bear F/J maritime surveillance aircraft. Two similar aircraft came within a mile of carrier USS Ronald Reagan (CVN-76).
ツポレフTu-142ベアF/J

二機のロシア偵察機が前方配備中のUSSロナルド・レーガン(CVN-76)から一カイリ以内まで接近したため、武装した戦闘機を同艦が緊急発進させたことが米海軍関係者からUSNI Newsに28日伝えられた。

場所は朝鮮半島沖でツボレフTu-142ベアF/J海洋監視偵察型二機が空母打撃群に接近したため、レーガンは待機中の戦闘機を4機発進させ、ベア編隊をエスコートした。ティム・ホーキンス少佐がUSNI Newsに伝えた。「今回の対応は『安全』なものでした。これまでも同様の例が発生しています」
USS Ronald Reagan (CVN-76) steams alongside the Republic of Korea (ROK) Navy destroyer Sejong the Great (DDG-991) on Oct. 28, 2015. US Navy Photo
USSロナルド・レーガン(CVN-76)が韓国海軍の世宗大王(DDG-991)と随航している。2015年10月28日。 US Navy Photo


ホーキンス少佐が言及しているのは2008年の事例でUSSニミッツ(CVN-68)が戦闘機を緊急発進しツボレフTu-95爆撃機に向かわせている。プーチン大統領が冷戦後しばらく実施していなかった長距離戦略爆撃機のパトロール飛行を再開させた直後のことだった。.

レーガンは韓国海軍と共同演習中だった。

ロシアはクリミア半島をウクライナから強引に併合してから大西洋・太平洋双方でパトロール飛行回数を増やしている。

NATO、日本、米北方軍(NORTHCOM)はそれぞれロシア機の飛行回数が一貫して増えていると認識している。

2014年4月にはロシア戦闘機2機編隊が米側基準では危険な上空飛行により誘導ミサイル駆逐艦USSドナルド・クック(DDG-75)上空すれすれを飛行している。

2014年6月には空軍所属のRC-135リヴェットジョイント監視偵察機がロシア戦闘機により北太平洋で迎撃されている。■


★韓国>混迷を極める国産次期戦闘機KF-X開発の行方



中国に傾きすぎて米国や日本から警戒される韓国が米国から戦闘機開発に必要な技術供与を米国から拒否されるのは言ってみれば自明の理ではないでしょうか。産業界、経済界には現在の韓国の立場がぜい弱で是正をもとめる「まともな」意見が多数ありますが、「国民感情」が政策決定の大きな要素である朴大統領にはまともな決断はもはや無理なのかもしれませんね。技術情報の秘匿性保護では日本も十分気を付けないといけませんが。

Skeptical Politicians Keep Embattled KF-X Alive

Oct 29, 2015Bradley Perrett | Aerospace Daily & Defense Report

SEOUL — 今週、韓国の国産戦闘機開発KF-X事業は政府及び議会の試練を乗り越えたが、前例のない物議を呼ぶ事業になった。2016年度の予算手当が確定しておらず、事業の今後が心配される。
  1. 有力政治家の中にはKF-Xに韓国航空宇宙工業(KAI)のT-50練習・軽攻撃機の流用を主張する向きがあるが、空軍は関心を示していない。
  2. KF-XはトルコのTF-X、インドの高性能中型戦闘航空機事業とならび戦闘機用エンジンや装備のメーカーには重要な新規事業だが、一番実現の可能性が高い。だがそのリードも危うくなっている。それは初期開発段階から先に進めないままになっているからだ。
  3. このままでは同事業は2016年度の執行が疑問視される。国会の国防委員会は10月29日に670億ウォンの予算を財務省提案通り認可する提言を採択しているのだが。
  4. 提言の前日に同委員会は国防調達事業庁(DAPA)に対しKF-Xで説得性のある総合的な報告ができない場合は予算配分はできなくなると警告していた。
  5. 同委員会が懐疑的になっているのは国会が支出案をそのまま承認しない可能性があるためだ。 鄭斗彦Chung Doo-Un委員長は会計監査院に対し事業内容の精査を求めている。また同委員会はDAPAに対し別個の報告書提出を求めており、米国が中核技術の提供を拒んできたことから国産開発が可能なのか議会へ説明を要求している。
  6. 米国の決定は軍事機密保護が理由だが、KF-Xが米国製兵器体系から切り離される恐れを読んでいる。韓国空軍は米国製装備との連携を望んでいる。同様の装備をヨーロッパやイスラエルから供給受ける可能性もあるが、米軍が統合運用を拒んでくるだろう。
  7. 米国が機微情報の供与を拒む事態は以前から想定されていたが、韓国の政治指導層や大衆には想定外だったようで、KF-X事業が一気に物議を醸すことになった。
  8. 鄭は代わりにF-50を採用すべきだという。F-50はT-50の戦闘機型だ。この考え方は産業界に受け入れやすいもので、リスクと実現性でユーロファイター・タイフーンに匹敵するサイズの双発戦闘機をいちからつくるよりも安易だとされる。2014年にKAIは単発型のKF-Xをロッキード・マーティンF-16とほぼ同じ大きさの機体として提示していた。
  9. 韓国空軍は空対地ミサイルを重装備できる大型機材を求める傾向があると業界筋は言う。
  10. 軍事委員会との会議を前にDAPAは朴槿惠大統領へ報告している。大統領権限で事業を中止することも可能だ。だが大統領はDAPAへ10月27日に「予定通りの事業期間で成果を達成するよう」指示している。ただし、事業期間が正確にどのくらいあるのかは不明瞭になっている。朴大統領は人気取り政策で有名だ。
  11. 「KF-X事業で大統領はまるで剣闘士の試合を眺めるローマ帝王のようになるのでは」と内部事情に詳しい韓国技術者は評する。「観衆が『殺すな』と叫べば、大統領は事業を温存する。だがもし事業が不評で物議を醸しだせば、観衆は『殺せ』とわめきだし、大統領は事業を終了させるのではないか」■


2015年10月29日木曜日

★★LRS-B>これがノースロップ・グラマンの勝因だ



一日経つと予想が大きく外れノースロップ・グラマンが受注決定業者になていました。以下その勝因の分析です。

LRS-B: Why Northrop Grumman Won Next U.S. Bomber

Oct 27, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ノースロップ・グラマンが長距離打撃爆撃機(LRS-B)の受注企業に決まり、年商で合わせて6倍の規模を有する競争相手チームを打ち負かす結果になった。
  1. 米空軍は10月27日に選定結果を発表し、ノースロップ・グラマンがボーイング/ロッキード・マーティンを破り新型爆撃機100機の生産を担当する。初期作戦能力の獲得は2020年代中頃が目標だ。ペンタゴンによると次は技術製造開発(EMD)段階で2010年価格で214億ドル設定でテスト機材(機数不詳)を生産する。
  2. これと別に190億ドルがリスク低減策に支出ずみで両陣営は初期設計を完了していた。2016年価格でのEMD経費見積もりは235億ドルとペンタゴンが発表。なお、2016年価格で換算するとB-2の開発には372億ドルかかっている。
  3. 空軍はノースロップ・グラマンの新型爆撃機(正式名称は未定)の調達単価は2010年価格で100機購入を前提で511百万ドルとしている。ペンタゴンも二種類の試算をおこない、550百万ドル(2010年価格)という目標水準を下回る見込みを確認した。この目標は2011年に当時のロバート・ゲイツ国防長官が承認した。
  4. ノースロップ・グラマンの受注契約では固定価格制かつ報奨金を最初の低率初期生産5ロット分に認めている。初期生産機材は総平均機体価格を上回るはずだがその価格は公表されていない。生産が順調に進めば、800億ドルの事業規模になる。LRS-Bの運用開始は2020年代中頃の予定だ。ただし正確な予定は初期作戦能力の設定水準に左右され、今後空軍のグローバル打撃軍団が詳細を決定する。
  5. 事業規模が大きいため、業界ではかねてから敗れた側が結果に不服を訴えるのではないかと見ていた。ボーイングには前例がある。2008年に給油機選定がノースロップ・EADS陣営に流れたことに抗議し、結果として同社が二回目の選定で採択されている。ボーイングとロッキード・マーティンは共同声明で両社が「本日の発表内容に落胆し、選定がどのように行われたのかぜひ知りたい」と表明している。空軍は選定で敗れた側には30日に説明するとしているが、不服申し立ては100日間可能だ。
  6. 一方、ノースロップ・グラマンの社長、会長兼CEOウェス・ブッシュは「空軍は正しい判断で我が国の安全保障を確保した」と表明した。「重大事業を執行する資源は確保済み」.
  7. ただ現時点でノースロップ・グラマン側に参加する企業名は秘匿されており、エンジン調達先も不明だが、空軍によれば重要構成部分の供給先はすべて確保済みだという。業界アナリスト陣によれば機体はB-2の小型版という姿になり、主翼胴体一体型で双発で空中給油なしで2,500カイリの飛行半径だというが、詳細は確認できていない。
  8. 選定手順の詳細は秘匿情報扱いのままだが、ノースロップ・グラマンの広帯域全面ステルス技術がB-2で実証されていること、またこれも極秘のRQ-180情報収集監視偵察(ISR)用無人機の実績が高評価された可能性が大だ。
  9. 選定の決め手はステルス性、航続距離での差であろう。LRS-Bではリスク低減、オープンアーキテクチャア、機動性の高い管理生産技術が求められている。
  10. LRS-B競合は以下の三点で独特であった。まず要求内容は取り消しされた次世代爆撃機(NGB)事業から継承している。当初の目標水準を引き下げる一方、作業工程を伸ばし、機体単価を中核性能内容(KPP)に設定した。
  11. 二番目に実証機に予算を回さずにペンタゴンは双方の事業者に初期設計の審査(PDR)を行わせている。これはおそらく2013年から2年間を費やしている。
  12. 三番目にLRS-Bの事業統括を空軍内の迅速戦力開発室(RCO)に任せたことがだ。空軍調達担当のウィリアム・ラプランテ次官は目を見張る性能を実現してきた実績があり、しかも単なる実験機ではなく本生産につながっている」とRCOを評価している。.
  13. 注目すべきはラプランテがRCO内にできたLRS-B事業担当部門はロッキードF-117ステルス機を35年前に開発したのと同様のチームになっていると発言している点だ。RCOの業績として公認ずみなのはボーイングX-37B宇宙機案件しかないが、2012年にRCOが公表した室次長の要件として「相当の経験を...低視認性技術、低視認性機体対抗技術および電子戦に有するもの」と想定していることからどんな技術を重視しているのかが伺われる。F-117と同様にLRS-Bは目標水準の実現のため成熟したサブシステムを新設計機体に搭載する構想であろう。
  14. ただしラプランテはさらにつづけており、RCOチームはペンタゴン、議会、会計検査院の監督を受け、内部にはレッドチーム、ブルーチームで考えられる脅威に対抗できるか検証したという。.
  15. LRS-Bの設定平均調達単価は550百万ドル(2010年価格、100機生産前提)でこれがKPPになった。
  16. LRS-Bで採用される中核技術は非公開だが成熟している。「風洞テストを受けているほか、試作型を作成し、実際に飛行しているものもあり中にはすでに実用化されているものがある」とラプランテは10月21日に語っている。
  17. ただし、ラプランテは遅延や費用超過が今後発生しないとは見ていない。「技術の統合には必ずリスクが有り、工程表には適度な余裕を入れ込んで一部の遅延をカバーする構造になっているが」
  18. LRS-Bは容易に性能改修ができる構造で、「現時点では想像さえできない将来の装備を搭載する場所と重量を設定している」(ラプランテ)は言う。オープン・アーキテクチャアで新型サブシステムを調達できることで「たえず性能を高く維持し、統合を期待できる」(ラプランテ) 低視認性を維持するコストとともに性能改修がライフサイクルコストの相当部分に想定されており、調達コストより相当大きくなるはずだ。
  19. もうひとつLRS-Bがこれまでの事業と異なるのは生産ペースだ。想定は「予算獲得可能な範囲でF-35のような急増想定はしていない」とラプランテは言う。「弾力的に設定している」とし、実現可能な年間予算配分を前提としている。「年間7機から8機というところか」(ラプランテ) この数は他の軍用機より相当少ないが、逆に生産ラインは2040年頃まで稼働することになる。爆撃機推進派にはLRS-Bの配備が始まり、アジア太平洋作戦が引き続き重要であれば、100機では足りないと見る向きがある。
  20. ノースロップ・グラマンはボーイング、ロッキード・マーティン、レイセオン陣営の合計年間売上1,600億ドルと比較すると6分の一未満の規模しかない。ボーイングとロッキード・マーティンは2007年時点でNGB事業で連携をしていた。LRS-Bで仕切りなおし再びチームを組み、レイセオンを加えた。ロッキード、ボーイングはそれぞれ米軍の主要機材をほぼ全数供給している。
  21. 一方で選定のルールも変更されている。ラプランテは10月21日の記者会見で価格試算を独立して行うことを重視している。これはペンタゴン内部にある費用試算事業効率評価(CAPE)部門の仕事で2009年のウェポンシステムズ超厚改革法により生まれた組織だ。「すべての事業に費用試算を独立部門が行い、その結果で予算を配分する」とラプランテは言う。また試算も一本ではない。事業推進室からCAPE試算担当者へ今回の事業内容を最初から説明している。.
  22. 開発コストとして現在引用されているのは独立部門による費用試算結果であり、受注企業あるいは事業推進部門による試算結果ではない。目標とするのは低価格入札をしにくくすることだ。
  23. ボーイング、ロッキード・マーティンは競合相手を価格で勝とうとしただけではなく、政府資金による実証機材(次世代長距離打撃機材実証機、NGLRS-D)製作をNGB時代の早期からはじめていた。ボーイングのファントムワークスが低視認性機体の開発を先導し、ロッキード・マーティンのスカンクワークスが機体を生産している。
  24. ステルスだけでなく、ファントムワークスは新生産技術の応用でも先陣を切っている。これはボーイングが全社的に導入を図るブラック・ダイヤモンド技術としてLRS-B選定でも有力な要素になると見られていた。
  25. ロッキード・マーティンは自社のステルス技術での知見を応用してきた。だがF-22では機体構造が窮屈なため性能改修が成約を受けて、変更が必要となると都度その他の技術に影響が出ないことを確認する必要があった。このためLRS-Bではオープン・アーキテクチャーの採用でこの再発を回避しようとした。.
  26. ノースロップ・グラマンもNGLRS-Dで採用された技術の一部を共有していた可能性があるが、最大の要素は同社がRQ-180で実用化した技術内容だろう。業界筋によれば同機は高度にステルス性を有した高高度飛行UAVとして機体設計が飛躍的な進歩を示しており、推進系でも空力的に洗練され、流体力学計算(CFD)や電磁気学計算(CEM)の進展による効果が大といわれる。.
  27. B-2はで高いステルス性を実現したが、機体設計ではステルスと空力特性の両立で困難を極めた。また機体中央部と主翼の設計は複雑で三次元風流、ショックのパターンから当時のコンピュータモデリングとテストの最先端結果を応用している。同機は燃料消費効率が優秀で給油なしで6,000カイリを飛行半径としているが、実はB-52と同様の効率しかない。
  28. これとは対照的に2000年に入ったばかりのノースロップ・グラマンの設計案は「グライダー並み」の飛行効率を有していたという。RQ-180はLRS-Bよりはるかに軽量のはずだが、翼巾はほぼ同じで設計段階でCFDおよびCEMが大幅導入されていることを伺わせる。また新型レーダー吸収剤や塗装も採用されている。このUAVから新規のステルス技術の知見が展開されるはずで、ノースロップ・グラマンはLRS-Bの運用コストの試算根拠としても使うはずだ。
  29. ロッキード・マーティンのRQ-170もRCOによる事業統括の成果だと広く信じられており、今回LRS-Bに参画した大手3社はすべてRCOとの接点があるが、なかでもRQ-180での知見が一番大きな意味があると見られる。
  30. B-2は高コストで知られるが、ノースロップ・グラマンによれば逆に同機の経験がプラスに働くという。同機の飛行時間あたりコストがその他大型機材で少数機を運用する際のコストと全く異なる構造で、通常機材であれば固定費用が中心で保守管理コストはゆっくりと上昇するという。現在運用中のB-2各機は各9年で丸まる一年間の保守管理施設入をする。また新素材の採用でB-2の探知特性は大幅に改善しているという。
  31. ノースロップ・グラマンはコストを抑えるため大胆な策に出てきた。プロジェクト・マジェランの社内コードでメルボーン(フロリダ州)に有人機の研究拠点を設置した。これまで研究拠点をロサンジェルス・パサデナ地区、セントルイス、フォート・ワースの三地点に分散してきた流れに逆行する。メルボーンでは新規建屋が完成しているが、さらに追加建設し、2019年までに1,500名規模の施設となる。■


2015年10月27日火曜日

★LRSB選定結果発表は日本時間28日午前か ボーイング=ロッキードチームの勝利?



ボーイング・ロッキードチームが有利だというのが専門家意見のようですが、どうなりますか。実は選考は終わっていて株価への配慮から株式取引時間が終了する現地時間火曜日の午後遅くに公表するのです。日本時間水曜日早朝以降ですか。注目ですね。

Ahead of Long Range Strike-Bomber Announcement, Aerospace Industry Looks for Clues

By Lara Seligman 7:59 p.m. EDT October 26, 2015
WASHINGTON — ペンタゴンからの米空軍次期戦略爆撃機選定結果の発表を翌日に迎え、航空宇宙産業は勝者を見極めようと懸命になっている。
  1. ペンタゴン首脳陣から長距離打撃爆撃機(LRS-B)の契約交付先の発表が近づいていると見られるが、これまでで最も厳重に秘匿された交付先発表になるのは間違いない。発表時期は火曜日の株式取引終了後となる。契約総額は550億ドルで、業界大手三社がしのぎを削っている。ノースロップ・グラマンはB-2ステルス爆撃機製造の実績があり、ボーイングとロッキード・マーティン共同事業体と競い合っている。
  2. 最後のハードルは先週金曜日に解決したと伝えられる。ペンタゴンの兵器調達を取り仕切るフランク・ケンドール副長官から省内上層部に決定内容を伝えているとブルームバーグが今週月曜日に伝えた。
  3. ペンタゴンは同機開発事業の秘密を厳重に守り、両陣営も口を閉ざして契約交付決定を待っているが、結果いかんにかかわらず、ペンタゴンの決定は航空宇宙産業の今後数十年間にわたる構図を決定するだろう。
  4. 専門家は各陣営の有利な側面を探りつつ、勝ち組の推理で2つに分かれている。Defense News が依頼したアナリスト陣は交付先の背景説明をしてくれた。専門家の中にはボーイング=ロッキード・マーティン組の勝利と見る向きがあり、多くの専門家が同チームが最初から財務及び技術の点で一歩先を行っていたと見ている。
  5. アナリストのひとりはノースロップの上層部で人事異動が発生したと指摘している。新COOに任命されたのはグロリア・フラック現本社副社長兼電子システム部門社長で、同社内の航空宇宙畑を率いるトム・ヴァイスを飛び越している。これはヴァイスが爆撃機契約を取れなかったためというのがアナリストの見解だ。
  6. ただしノースロップ社内の新体制は事業部4つを3つに再編したなど以前から布陣されている。
  7. 他の専門家にはペンタゴンはボーイング=ロッキードにすべてをかけていると見る向きがある。ボーイング=ロッキード陣営が契約を勝ち取る場合、ロッキードが空軍の戦闘機材の生産すべてを取り仕切ることになる。物議を醸し出す高価なF-35もそのひとつだ。ボーイングはKC-46給油機を生産している。逆にノースロップが勝てば、空軍の調達最優先事業3つが各社に均等にばらまかれる。
  8. ただし産業基盤全体を見る視点が最終決定にどこまで考慮されているか不明だ。
  9. 「国防産業の健全度を考慮するのは重要な要素だと思う」と戦略予算評価センターで上席研究員をつとめるマーク・ガンジンガーがDefense Newsに先月語っている。「ただし選考が産業基盤を元にしているとは思えない」
  10. 今回Defense Newsが委託した専門家全員の意見が一致するのは負けた側は不服を訴え、土壇場での契約取得を狙うだろうとする点だ。
  11. 米空軍は80ないし100機の長距離打撃爆撃機を調達しB-52とB-1の後継機とする考えで、2040年までに機材交替を狙う。新型機はB-2よりもステルス性が優れ、通常兵器・核兵器双方の運用が可能。任意で有人操縦型になる同機の初期作戦能力獲得は2020年代中頃で、核兵器運用証明はその2年後の予定だ。空軍は同機の航続距離など運用性能を公表していない。
  12. 目標単価の550百万ドルは2010年度のドル価値を元にしている。この単価が選定の重要基準であり、目標価格の達成に失敗した企業は選定外となる。この目標単価を実現すべく空軍は既存の成熟技術の導入を進め、あえて新技術の開発に向かわなかった。またオープン・アーキテクチャアの採用で機体性能をその時点での最新技術で容易に行えるように配慮した。
  13. 契約交付は二分割される。開発契約では実費プラス報奨金方式でまず5機を手率初期生産で組み立てる。これは固定価格に報奨金を加える形だ。最初の5ロットで21機を生産する。
  14. LRS-Bの開発は他に類のないほど完成度が高いとアーニー・バンチ中将(空軍調達担当次官補)は言う。すでに初期設計審査を完了しており、生産準備体制の確認も終わった。機体設計は「サブシステム段階にあり」と10月21日にペンタゴン内部での説明会で語っている。
  15. 「技術は高い水準で成熟しており、高いというのは他の開発案件より高いということだ」(バンチ) 要求性能水準が2011年以来変わっていないことがその鍵だ。「要求内容が変わっていないこと、成熟技術の採用を進めたことで単価目標の実現見通しがつき、事業の実施でも自信がついた」
  16. LRS-Bが現時点で他に例のない進展ぶりを示しているのは迅速戦力整備室 the Rapid Capabilities Office が事業を担当しているためだ。同室は空軍調達部門内部にあり秘密事業としてX-37B宇宙機などを取り扱ってきた。現時点でLRS-Bの執行部門が変更になる予定はないとバンチは言明したが、今後の事業の進展次第ではペンタゴンが事業推進体制を再考する可能性はある。
  17. 両陣営ともすでに部品を取り付けた試作機や縮小モデルを精算済みでテストが行われたと関係者が以前に話していた。空軍調達担当のウィリアム・ラプランテは選考の結果が出れば比較的早期に機体は飛行可能となると発言している。
  18. 「機体が実際に飛行開始するのはイツなのかよく聞かれる」とラブランテは発言していた。「初回テスト結果が良ければ、長い時間をテストに使う必要ないが、今はこれ以上話す気がない」■