2019年2月19日火曜日

主張 核近代化に合わせ指揮統制通信の近代化更新も忘れてはならない

基本設計が1960年代の核兵器用の指揮統制通信能力が今も有効なのはそれだけ当時としてはずば抜けた水準の装備として重点投資されたきたためでしょう。その投資で今も一応は機能しているものの、今後を考えると不安だというのが今回の主張の論旨だと思います。核の傘の下に依然としてとどまる日本としても無視できない話です。要求水準の違いがありますが、日本の民生技術も何らかの貢献ができるのではないでしょうか。


Aviation Week & Space Technology

Opinion: The Challenge Of 21st Century Nuclear Command-and-Control 21世紀にふさわしい核兵器の指揮統制機能の確立が課題だ

Feb 14, 2019Bill LaPlante | Aviation Week & Space Technology


E-4Bは緊急時に移動式統制通信センターとなり大統領あるいはペンタゴン上層部による緊急戦争命令を下す場所となる。 Credit: U.S. Air Force


れなりの年齢の方なら1960年代を思い出してほしい。当時のテレビと言えば小型白黒画面で電話にはコードがつき回転ダイヤル方式だった。インターネットなどSF小説の世界の話だった。
その中で国家指導部向けの核戦争時指揮統制通信(NC3)装備は最高技術の結晶と見られていた。
冷戦終結で核兵器が二次的存在になると核を下支えしてきたNC3装備の地位はさらに縮小した。
NC3は極めて重要で、大統領は核危機の中でも自軍と連絡を維持できる。装備には警戒衛星、レーダー、通信衛星、航空を含む。NC3とは核三本柱のICBM、ミサイル原潜、核搭載爆撃機を結び戦時ミッションを実施させる要素だ。米国の核兵力では安全で信頼性の高い通信が国家最高指導部と核部隊の間に確立されていることが必須条件だ。
だがNC3はこれだけ重要な要素にもかかわらず、技術の進歩にペースをあわせていない。どうみても旧式化している。2017年時点でも8インチのフロッピーディスク(1970年代製)を使っていた。NC3が機能することは疑いないが三本柱近代化の中で1960年代技術で21世紀の核兵器運用をする事自体が問題だ。
1980年代から通常部隊が優先される状態で核兵器はNC3含み後回しにされ、予算面では人件費ばかりが増える状況だった。
米国の核抑止力が萎縮する中でロシアや中国は待ってくれなかった。両国とも核装備を意欲的に近代化し、米国の弱みにつけ込む策を狙ってきた。両国の戦力が進展する中で核抑止力の維持は一層困難になっている。
2018年度の国家防衛戦略委員会報告書によれば「米国は次の戦争では受容できない規模の死傷者や重要施設喪失を覚悟せねばならない。中国やロシアが相手の戦闘で勝利は容易でなく敗戦もありうる。米国の軍事力の実態から見て2方面以上で同時に戦う状況では敵戦力に圧倒される危険がある」という。
そこで米国は核運搬装備の抜本的近代化に取り組み、新世代爆撃機、潜水艦、ICBM、空中発射ミサイルの開発が始まっている。三本柱への投資は相当規模となり将来のNC3装備で各部隊をつなぐ。
ただし電子装備中心のNC3は米空軍のB-21爆撃機や海軍のコロンビア級後継潜水艦のような大型で目に見える案件に比べ政治的に魅力がなくセクシーでもない。だが指揮統制通信機能が確保されなければ爆撃機乗員や潜水艦乗組員は任務を達成できないのはあきらかだ。
ではどうするのか。米空軍大将ジョン・ハイテン戦略軍司令官がNC3を「最大の懸念材料」と呼び、NC3アーキテクチャアは「簡単に更改できない」と議会で述べたのはシステムがそれだけ堅牢で、弾力性あり、かつ旧式化しているためだろう。
近代化には政策、調達、運用部隊、情報機関の連携調整が必要だ。最初に総合的で統合されたNC3戦略の構築の必要がある。
戦略的に考えると次の4つの目標に向け同時に動くことが死活的に重要だ。


  • 弾力性あるNC3機能を維持し現在の脅威に対応できること
  • 21世紀の課題に答えられるべく近代化すること
  • 次世代のNC3アーキテクチャアへ備え作業すること
  • NC3が各同盟国提携国とも支障なく作動し米国の核の傘の有効性を維持すること


核抑止力は我が国防衛の基盤である。核保有国間で1945年以来一度も大規模戦闘が展開されていないのは偶然の結果ではない。とはいえ抑止力を有効に保つためには命令あれば正しく作動する核兵器が必要だ。NC3は抑止力維持の要素であるものの肝心のNC3が老朽化し、もろくなり、有事に正しく作動しない危険が増えている。このためジム・マティス前国防長官が「我が国の核抑止力運搬装備の近代化は核指揮統制機能も含め国防総省の最優先事項になっている」とまで述べたのだ。
上に述べた目標4つの作業は必須である。我が国の将来と安全がそこにかかっている。■

Bill LaPlante is a senior vice president and general manager of national security sector programs at Mitre, a not-for-profit systems engineering company. The views expressed are not necessarily those of Aviation Week.

2019年2月18日月曜日

次回トランプ金首脳会談に期待できない3つの理由


昨年のシンガポール会談で緊張緩和になったから米軍の存在は不要となった、自衛隊の活動は過剰だと主張する向きが日本国内にもありましたが、結局のところ非核化はなく、むしろ生産段階に入った現状を「平和を愛する」皆さんはどうとらえるのでしょうか。沖縄の住民投票のあとに第二回会談が行われるのは微妙なタイミングですが、次回会談はむしろ難易度が高く、北朝鮮以外の世界が望む方向に結論が出る可能性はなく、核を保有する北朝鮮(自国を核大国と持ち上げます)の存在を認めざるを得ないのか、それとも邪悪な勢力として排除するのか、一層強力な封鎖禁輸体制をしくのか、決断を迫られそうです。韓国にははやく不都合な事実に目を開いてもらいたいものです。国内のお花畑の勢力は放っておきましょう

Shocker: North Korea Is Building More Nuclear Weapons (3 Reasons To Look Past the Headlines) 北朝鮮が核兵器を増産しているのは驚くべきことなのか

We ought to take a step back from the ledge and put all these reports in context. Here are three things we should keep in mind as we peruse the avalanche of negativity that will make its way into the media in the week ahead. 見出しに踊らされずに本質を見るべきだ。あと数週間すれば雪崩のようにあらわれるはずの悪いニュースの理解には3つ覚えておくことがある。
February 15, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Skeptics  Tags: North KoreaNuclearMissileKim Jong UnWar


朝鮮の核・弾道ミサイル開発の報道が止まらない。
まず2018年11月にミドルベリー国際研究所(カリフォーニア州モンテレー)が中国国境に近いYeongjeo-dong 近くに新たな地下ミサイル基地の存在を探知した。2019年1月には国際戦略研究所(ワシントンDC)がSino-ri でミサイル施設を見つけ、北朝鮮にはまだ未発表のミサイル施設が20箇所あまりあるという。
今度は今週になり、スタンフォード大学の三名が北朝鮮の核兵器開発は米国との非核化の交渉が話題になっている半面で全く鈍化の兆候がないと述べている。北朝鮮は兵器級ウラニウム5キロから8キロ、兵器級濃縮プルトニウム150キロを昨年生産したようだと述べた。「また弾頭用の生産は今年に入っても継続中と見ている」と報告し、すべては米朝関係者の接触と平行しているという。
総合すると何が言えるのか。ドナルド・トランプ大統領は抗議の意味で外交プロセスを放棄すべきなのか。金正恩は「大いなる欺瞞」を働いているのか。
答えは否。深呼吸して一歩後退して報道すべてを俯瞰すべきだ。以下3つを心に刻み今後数週間後に現れるはずの悲惨な結果に備えるべきだ。

核生産を中止する理由が金にない
北朝鮮が依然としてウラニウム精製を続け、プルトニウム再処理をし、爆弾の小型化に取り組んでいるのはFoxニュース他が伝えているとおりだ。今更驚くべき内容ではない。いまだに驚くふりをするのはいかがなものか。
北朝鮮の核兵器開発継続は米朝外交の精神に逆行し外交の本道に違反していると誰も主張できない。金正恩は何も署名していないからだ。非核化を北が履行する工程表は存在しない。金の約束は外交プロセスを継続し、寧辺を国際視察団に公開することだけだった。これは米国が「相応する手順」を取る見返りという条件だった。弾頭開発で一方的に約束だけする政権などあろうはずがないのである。

金は発言のとおりに実行しているだけ
2018年の元旦に戻すと金は北の核開発は完成したと演説していた。だが重要なのは同時にこれは金による核開発陣への新しい指示だった。「核開発部門とロケット部門は核弾頭と弾道ミサイルを量産せよ」というのが真意だったのだ。
13ヶ月が経過し北朝鮮はこの通りに実行している。遠心分離機はフル稼働、ICBMの大気圏再突入研究は継続中。弾頭は続々完成している。使用済みプルトニウムは再処理され兵器級にされている。すべては金正恩は国家元首として指示を配下の国民に実施させる人物だと示している。

金が非核化に応じる可能性はない
金政権は核兵器を重要視し米国の提示内容如何にかかわらず核を放棄する可能性はない。これが米情報委員会の見解だ。2019年度版世界の脅威度評価報告で、同委員会は「北朝鮮情勢を評価すると核兵器全部を放棄しそうもなく、一部の非核化を交渉して米国や国際社会から代償を引き出す可能性はある」とした。
国家情報長官ダン・コーツは北朝鮮の武装解除を悲観視する。2017年4月のアスペン研究所における講演で長官は金がサダム・フセインやママル・アル・カダフィの教訓を心に刻み、「核戦力を保有すると国際社会がどう扱うか、核のカードがあれば抑止力になる」と理解しているとした。
米国の敵が核兵器を保有していないのであれば侵攻を受けたり空爆を米国が実施してくる。だが敵に核兵器があり十分使用する能力があれば、米政府も思いとどまりアンダーセン空軍基地で爆撃機が爆弾搭載することもない。
核兵器は金の安全保障の切り札なのだ。トランプが幸運に恵まれれば、年下の独裁者に対して今後の核兵器数に上限をかけICBMの展開を止めることができるかも知れない。だがこれ以上が実現すれば奇跡というべきだろう。■
Dan DePetris is a fellow at Defense Priorities as well as a columnist for the Washington Examiner and the American Conservative. You can follow him on Twitter at @DanDePetris.
Image: Reuters

2019年2月17日日曜日

北朝鮮外交交渉が失敗すればどうなるか----核兵器を温存したままの北朝鮮は受け入れられますか

米国にとってやはり朝鮮半島は遠い存在なのかなと思わされる論調ですね。核兵器を温存しても金正恩がその意義を感じなくなる日が来るなどと考えられません。南北朝鮮の統一は結構ですが、北が主導権を握り核兵器を保有したままの形では日本は大変です。制裁に抜け穴があるのであればもっと強化すべきですし、北の体制を静かに弱体化する方法のほうが現実的に思えるのですが皆さんはどう思いますか。文在寅を喜ばせる結果にならないといいのですが。

North Korea: What Happens if Diplomacy Fails? 北朝鮮への外交交渉が失敗したらどうなるか

The good news: We have options other than a "bloody nose."朗報は「血まみれ状態」以外の選択肢があること
February 16, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Skeptics  Tags: North KoreaSouth KoreaDenuclearizationFire And FuryDonald Trump

朝鮮との外交は一見正しい方向に向かっているように見える。
米側首席交渉官スティーブン・ビーガンは北朝鮮側に忌避されていない。ドナルド・トランプ大統領はツイッターであたかも平和が間もなく実現刷るかのように述べている。マイク・ポンペオ国務長官は米国が求めるのは北朝鮮の非核化のみならず朝鮮半島の平和・和解であるとまで公然と発言している。
確かに良好な兆候はあるが同時に想定どおりにうまくいかない可能性もあるのである。つまるところ北朝鮮とは米側の意向を徹底的に信用しない指導者の国である。そのため最良の結果を望みながらもトランプ政権には最悪の事態に備える準備が必要となる。このプランBは核交渉が行き詰まった場合にも必要だ。
では外交が失敗した場合の米国の選択肢には何があるのか。
戦争になるのか
米側はすべての選択肢がテーブルにあるといつものように口にしている。こうした発言には相手側に誤解の余地のない意味を伝える意義がある。つまり問題解決に容易な方法も厳しい手段も両方あるぞ、ということだ。
ただし北朝鮮相手の開戦の選択肢はテーブルの上におくこともできないくらいばかばかしい。北朝鮮攻撃に対して米国は自国民同盟国市民を防護する権利を有しているが、考えられる攻撃のシナリオはふたつだけだ。一番目は金正恩が韓国、日本、グアムにミサイル一斉発射を命じる場合だ。二番目は金が米国や同盟国の挑発に対応してくる場合だ。
北朝鮮との戦闘は考えたくもない。ソウルは北朝鮮砲兵隊により粉砕される。ピョンヤンはあたかも1945年のベルリンのようになる。北朝鮮難民数百万人が中国になだれ込む。日本では避難が始まる。数百万人が死亡するだろう。グローバル経済には大きな傷がつく。
封鎖と制裁に戻るのか
トランプ政権が制裁に戻る可能性があり、強硬な経済措置を実施し金正恩の金庫を一層締め付けて交渉に弱い立場で戻らざるを得なくさせるだろう。交渉が失敗すれば米議会は追加で第二次制裁措置法案を通過させると共にホワイトハウスに対し中国大手銀行が北朝鮮経済に関与していることから厳しい制裁を課すよう求めるはずだ。
我々としては米国が国際金融で毅然たる態度を取れると思いたいが北朝鮮にはこうした願望が空想にすぎないことをこれまで何度も思い知らされてきた。北朝鮮は制裁逃れの達人であり、実に独創的な方法で現金を海外で作り本国に送付してきた。船舶間の原油石炭の受け渡しを海上で行う瀬取り、ダミー企業、中間業者の活用、大使館を企業活動の場に変えてしまうこと以外に武器密輸や海外銀行のハッキングなどすべて国連安全保障理事会の想定の裏をかいくぐってきた。国連も北朝鮮制裁措置の効果を「不十分」と認めざるをえなくなっている。
そして中国の存在がある。国境間取引が黙認されており、中国は協力の意思を示さないと制裁の効果が不十分なままだ。金正恩は十分な量の資金をつくり政権を盤石のものにするだろう。
やさしく抹殺すべきか
米国の政策は関係正常化に非核化を直接つなげている。金正恩が核弾頭を放棄せず遠心分離機を破壊せず、プルトニウム施設を解体せず、ミサイル開発を中止しない場合、ピョンヤンは米国や同盟国と正常かつ有益な関係樹立は望めない構造だ。
ただしトランプは今までの大統領とは違う。突き詰めればトランプにとって核兵器の廃止など二次的で北朝鮮で偉業を達成した大統領として歴史書に名を残すほうが重要なのかもしれない。朝鮮戦争終結宣言、北との平和宣言署名、南北朝鮮の経済事業促進、連絡事務所開設、二国関係を終わりのない憎悪から解放することが考えられる。
金は核兵器を保有したままだろう。だが核兵器を使用しない限り、緊張は後戻りせず緩和し朝鮮半島はやっと正常な状態に入る。国際社会に加われば金融面の恩恵が実感できることはこれまでの経験からわかっているはずなので金が自国の防衛に核兵器は不要と実感する日が来るのではないか。■
Dan DePetris is a Fellow at Defense Priorities as well as a columnist for the Washington Examiner and the American Conservative. You can follow him on Twitter at @DanDePetris.

Image: Reuters

★F-15X導入は間違った選択なのか 専門家の知見に耳を傾けよう

Stealth Rules: One Expert Thinks the Air Force Should Avoid the F-15X ステルス第一で考えると米空軍はF-15X導入を避けるべきだとの専門家意見があらわれた

"Trying to adopt aircraft that belong in museums to warfare in the 21st century is a mistake."「博物館行きとすべき機材を21世紀の戦闘に投入するのは間違っている」
February 13, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15XStealthF-35F-22MilitaryTechnologyWorld


空軍はF-15新規製造機体に無駄な予算を使うべきではない、真に必要なのはステルス機だと空軍力整備で影響を有する人物が意見を述べている。
F-15では「国家防衛戦略の要となる強力な防空体制の中で生存は望めない」とデイヴィッド・デプチュラがForbes誌の2019年2月11日付け社説意見欄に投稿している。デプチュラはF-15パイロット出身で、現在はミッチェル航空宇宙研究所の所長だ。
米空軍は2020年度予算要求に200機ほどの新規生産F-15Xを盛り込んでいると伝えられる。空軍がボーイングから調達したF-15は2001年が最後だ。
F-15Xは原型が1972年初飛行の伝説のF-15の改良版で、2019年時点で空軍は457機を運用中でC型D型を制空任務に、E型を戦闘爆撃任務に投入している。
C型D型は1980年代から運用し、E型も1990年代の高機齢になっている。C型D型は州軍の防空任務で米本土を飛んでいるが、F-15Cの二個飛行隊が日本に駐留し太平洋での有事に備えている。
世界全体では901機が稼働中で、イスラエル、サウジアラビア、韓国、シンガポール、カタールがエンジンを強化し、センサー能力を拡充した改良型を運用中だ。
F-15Xは単価80百万ドルで単座のCXと複座のEXの二型式になると The War Zone のタイラー・ロゴウェイが述べている。
ペンタゴンの費用評価事業評価部門から空軍にF-15導入を求めてきたのは空軍がF-35を予定通り調達できていないためだ。
空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将はDefense Newsに対して非ステルスのF-15Xを調達してもF-35導入に影響はないと断言した。「相互補完する。それぞれが相手の機能をもり立てる」というのだ。
F-15X選定の前にペンタゴンにはF-15Cの機材更新で明確な構想はなかった。「F-15C部隊の更新が必要なのは同機のミッションと性能がなくなるのは耐えられないから」とゴールドフェインは述べている。
デプチュラは反対意見だ。「空軍の将来の戦力構造では国家安全保障戦略の課題に答えられる機材にしっかり投資することが必要だ」としている。
「具体的には中国、ロシアは大幅に軍事力を増強させており、米国の戦略優位性を脅かしている。国防総省には空軍に旧型機の新型版を買わせようとする動きがあり、費用対効果が優れているというが原設計が1960年代で生産開始が1970年代の機体だ。博物館で展示すべき機体を21世紀の戦闘に投入すること自体が誤りだ」
F-15はF-35より飛行速度、航続距離、兵装搭載量で優れる。大きな違いはステルスだ。だがステルス性能は米領空を守るF-15Cには必須ではない。
ロッキードCEOのマリリン・ヒューソンでさえデプチュラの意見を退けている。「仮にF-15発注の場合でもF-35の発注数が減ることはない。このことはペンタゴン上層部から直接聞いており、重要な点だと思う」
だがF-15Xを巡る論争は意外に深いものがあり、どの機種を選択しても米空軍は規模拡大を図れそうにない。
2018年9月に空軍長官ヘザー・ウィルソンが第一線飛行隊を312隊の現状から386隊に拡大する構想を発表した。米海軍も287隻を355隻に増やそうとしている。
空海それぞれで規模拡大すれば数千億ドルの費用が必要だが海軍が早くも拡大構想に及び腰になったのは予想通りというところだ。
同様にペンタゴン評価部門は2019年2月に空軍の空中給油機は十分な機数があると述べ、ウィルソンが給油機を三分の一増やし386飛行隊体制を実現したいとの意見と対照を見せた。
空軍がデプチュラの反対意見とは無関係にF-15Xを導入すれば旧型F-15と一対一で交換され国内の防空任務につき、海外のハイテク戦用のF-35調達は依然ゆっくりしたペースのままだろう。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels   War Fix , War Is Boring  and Machete Squad .

2019年2月16日土曜日

2019年の展望 中国経済はどこまで減速するか

中国では2月11日が実質的な新年のビジネス開始日でブタ年(日本のイノシシは中国ではブタ)になんとか景気をもり立てようという気分が強いようですが(先週は北京に行ってきました)、経済の実態は甘くありません。経済力が防衛力整備に大きな影響を与えますので、中国の動向に関心を寄せる向きは当然中国経済の実態にもご関心があるはずですので、久しぶりの経済記事ですがご勘弁ください。

China's Economic Slowdown Is Inevitable 中国経済の鈍化は不可避

Aggressive stimulus measures, including tax cuts and monetary easing, won't help.減税、金融緩和の刺激策も効果なし

貿易戦争とグローバル経済の不振で打撃を受けた中国が必死に経済減速を回避しようとしている。
2018年12月21日に中国首脳部は2019年の経済ロードマップを承認しさらに過激な経済刺激策として減税と金融緩和を盛り込んだ。
中国政府トップは楽観視していない。3日間に渡る経済会議の後で発表した声明文では「外部環境は複雑かつ過酷で経済は下方変動の圧力にさらされている」
政策決定部門が求めた「先手を打った財政政策」として1.3兆元(1,880億ドル)の減税が承認済みだ。また「緊縮すぎず緩和しすぎない」形の「慎重な」金融政策も必要とし、中央銀行との距離が微妙になっている。
債務拡大を抑える努力がやや振り出しに戻り、政策決定部門は地方政府債券の「実質増加」を容認しつつある。
トランプ政権が注目すべきは中国声明の中にある「適正に中米経済貿易摩擦に対応してきた」とする表現だろう。
「中米両国首脳がアルゼンチンで合意した両国経済貿易関係を前進するとの内容を実行する必要がある」とトランプ大統領と習近平主席が12月1日に合意した関税引き上げ実施の90日猶予に触れた表現がある。
ただし、政策決定部門の表現では「市場開放は緩和すべき」とあり在中海外企業の知的財産権については中国の「メイドインチャイナ2025」政策の放棄に触れずあくまでも中国は主要ハイテク産業分野で世界の主導的立場を目指す方向に変わりはない。
「勢いを失いつつある」
中国が明るい未来を思い描く一方で短期的状況は思わしくなくない。
公式の国内総生産GDPデータでは2期連続で成長が鈍化し、以前の6.7%が6.5%にと世界金融危機以来で最も低い伸びとなった。
「中国経済は勢いを失いつつある」とフレデリック・ニューマン(HSBCホールディングス)がブルームバーグ・ニュースに語っている。
「米国との貿易摩擦を理由にあげがちだが、減速の原因は主に国内でインフラ支出が縮小し、新車販売も一時の勢いがない」
最新経済統計を見れば中国の年間成長目標の6.5%はどうみても現実水準を上回るものとわかる。工業出荷高、設備投資、小売販売、輸出入、製造指数はすべて低下しており、消費者物価・製造者物価ともに低くなっている。
ひとつ明るい兆しは建設部門の動きで信用供与拡大に反応している。
中国の株式市場は2018年に急落し前年比22パーセントの低下になったが、中国元は6パーセントの値下がりだった。
Capital Economicsの2019年見通しはさらに厳しく共産党政権が経済運営の成功を権力基盤にしているため微妙だ。
「中国経済の減速は2019年は深刻化すると見ており、債券価格と元相場に注目しています。刺激策の底上げはあっても力強い再建につながりません」
Capital EconomicsのGDP予想は2017年の6.9パーセントが2018年は6.6パーセントに低下するとあるが、社内でははもっと厳しく現今の5.5%が2019年は4パーセントぎりぎりになる可能性も出ている。
中国エコノミストのジュリアン・エバンス-プリチャードは住宅部門が冷え込み、輸出は「関税引き上げ回避に成功しても」伸びにくい環境だと見る。
刺激策があってもCapital Economicsは成長鈍化は2019年中頃までは続くと見ており、株式市場と元相場はさらに弱含みだという。
長期的には中国独特の国家主導資本主義経済は2030年代に成長率が2パーセントぎりぎりに低下すると同社は見ている。習近平が市場原理に任せるよりも国家介入を強化する動きにでているのが原因だという。
その他の予測でも減速は一致している。国際通貨基金IMFは中国のGDP成長は2017年の6.9パーセントが2018年は6.2パーセント、2019年には6.2パーセントになると見ており、インドの7.4パーセント成長に及ばないとする。
IMFの最新報告では「関係省庁間の方針で摩擦があり、債務拡大を抑え市場原理に役割を認めイノベーション拡大と新規事業立ち上げを増やす動きと反対に債務拡大という維持不可能な政策で経済への国家関与を認め貿易投資も制約したいという動きが見られる」とある。
OECDは中国のGDP成長率を2019年に6.3パーセント、2020年には6パーセントとし、世界経済の弱体化を背景に上げる。
「グローバル経済には力強さが残るが最盛期は過ぎている」とOECDは最新の報告書で述べて予測を下方修正している。
中国の債務の対GDP比は2019年で275パーセントになる予想で2018年の261パーセントから増えると国際決済銀行は見ている。
ANZ Researchも中国経済の減速を予測し、2019年は6.3パーセントと2018年の6.6パーセントから低下するとし、財政赤字の拡大でデフレリスクが増えるとする。
中国経済の減速化には構造的問題があるとANZ Researchは指摘しており、「中国の労働力規模が引き続き縮小しており、この傾向の逆転は無理だろう」
米中貿易戦争がこれ以上エスカレートすると中国の輸出にも悪影響が出るとANZ Researchは中国製産品に課せられた関税5170億ドルにより中国のGDPは0.5パーセント低下すると予測した。
中国通信大手フワウェイの財務最高責任者の孟晚舟 Meng Wanzhouがカナダで逮捕され中国が早速反応を示しているが世界最大の経済規模を誇る二国間の緊張緩和はすぐには無理だろう。
トランプ政権の通商問題顧問ピーター・ナバロは日経の取材に90日の休戦期間内での問題解決は「困難」だとし中国が実行している強制的な技術移転、サイバースパイ活動、国家主導の投資等の障壁をめぐる問題で「中途半端な解決策」は受け入れがたいためだと述べた。
「こちらの技術を狙う中国は日本、米国、欧州の未来を盗むのと同じだ」
中国の観点ではブタ年の経済見通しが悪化する。本来ならブタ年は富をもたらすと言われている。国内外のトラブルのため並以上の幸運が中国に必要だ。■
Anthony Fensom is an Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries.

Image: Reuters.