スキップしてメイン コンテンツに移動

2019年の展望 中国経済はどこまで減速するか

中国では2月11日が実質的な新年のビジネス開始日でブタ年(日本のイノシシは中国ではブタ)になんとか景気をもり立てようという気分が強いようですが(先週は北京に行ってきました)、経済の実態は甘くありません。経済力が防衛力整備に大きな影響を与えますので、中国の動向に関心を寄せる向きは当然中国経済の実態にもご関心があるはずですので、久しぶりの経済記事ですがご勘弁ください。

China's Economic Slowdown Is Inevitable 中国経済の鈍化は不可避

Aggressive stimulus measures, including tax cuts and monetary easing, won't help.減税、金融緩和の刺激策も効果なし

貿易戦争とグローバル経済の不振で打撃を受けた中国が必死に経済減速を回避しようとしている。
2018年12月21日に中国首脳部は2019年の経済ロードマップを承認しさらに過激な経済刺激策として減税と金融緩和を盛り込んだ。
中国政府トップは楽観視していない。3日間に渡る経済会議の後で発表した声明文では「外部環境は複雑かつ過酷で経済は下方変動の圧力にさらされている」
政策決定部門が求めた「先手を打った財政政策」として1.3兆元(1,880億ドル)の減税が承認済みだ。また「緊縮すぎず緩和しすぎない」形の「慎重な」金融政策も必要とし、中央銀行との距離が微妙になっている。
債務拡大を抑える努力がやや振り出しに戻り、政策決定部門は地方政府債券の「実質増加」を容認しつつある。
トランプ政権が注目すべきは中国声明の中にある「適正に中米経済貿易摩擦に対応してきた」とする表現だろう。
「中米両国首脳がアルゼンチンで合意した両国経済貿易関係を前進するとの内容を実行する必要がある」とトランプ大統領と習近平主席が12月1日に合意した関税引き上げ実施の90日猶予に触れた表現がある。
ただし、政策決定部門の表現では「市場開放は緩和すべき」とあり在中海外企業の知的財産権については中国の「メイドインチャイナ2025」政策の放棄に触れずあくまでも中国は主要ハイテク産業分野で世界の主導的立場を目指す方向に変わりはない。
「勢いを失いつつある」
中国が明るい未来を思い描く一方で短期的状況は思わしくなくない。
公式の国内総生産GDPデータでは2期連続で成長が鈍化し、以前の6.7%が6.5%にと世界金融危機以来で最も低い伸びとなった。
「中国経済は勢いを失いつつある」とフレデリック・ニューマン(HSBCホールディングス)がブルームバーグ・ニュースに語っている。
「米国との貿易摩擦を理由にあげがちだが、減速の原因は主に国内でインフラ支出が縮小し、新車販売も一時の勢いがない」
最新経済統計を見れば中国の年間成長目標の6.5%はどうみても現実水準を上回るものとわかる。工業出荷高、設備投資、小売販売、輸出入、製造指数はすべて低下しており、消費者物価・製造者物価ともに低くなっている。
ひとつ明るい兆しは建設部門の動きで信用供与拡大に反応している。
中国の株式市場は2018年に急落し前年比22パーセントの低下になったが、中国元は6パーセントの値下がりだった。
Capital Economicsの2019年見通しはさらに厳しく共産党政権が経済運営の成功を権力基盤にしているため微妙だ。
「中国経済の減速は2019年は深刻化すると見ており、債券価格と元相場に注目しています。刺激策の底上げはあっても力強い再建につながりません」
Capital EconomicsのGDP予想は2017年の6.9パーセントが2018年は6.6パーセントに低下するとあるが、社内でははもっと厳しく現今の5.5%が2019年は4パーセントぎりぎりになる可能性も出ている。
中国エコノミストのジュリアン・エバンス-プリチャードは住宅部門が冷え込み、輸出は「関税引き上げ回避に成功しても」伸びにくい環境だと見る。
刺激策があってもCapital Economicsは成長鈍化は2019年中頃までは続くと見ており、株式市場と元相場はさらに弱含みだという。
長期的には中国独特の国家主導資本主義経済は2030年代に成長率が2パーセントぎりぎりに低下すると同社は見ている。習近平が市場原理に任せるよりも国家介入を強化する動きにでているのが原因だという。
その他の予測でも減速は一致している。国際通貨基金IMFは中国のGDP成長は2017年の6.9パーセントが2018年は6.2パーセント、2019年には6.2パーセントになると見ており、インドの7.4パーセント成長に及ばないとする。
IMFの最新報告では「関係省庁間の方針で摩擦があり、債務拡大を抑え市場原理に役割を認めイノベーション拡大と新規事業立ち上げを増やす動きと反対に債務拡大という維持不可能な政策で経済への国家関与を認め貿易投資も制約したいという動きが見られる」とある。
OECDは中国のGDP成長率を2019年に6.3パーセント、2020年には6パーセントとし、世界経済の弱体化を背景に上げる。
「グローバル経済には力強さが残るが最盛期は過ぎている」とOECDは最新の報告書で述べて予測を下方修正している。
中国の債務の対GDP比は2019年で275パーセントになる予想で2018年の261パーセントから増えると国際決済銀行は見ている。
ANZ Researchも中国経済の減速を予測し、2019年は6.3パーセントと2018年の6.6パーセントから低下するとし、財政赤字の拡大でデフレリスクが増えるとする。
中国経済の減速化には構造的問題があるとANZ Researchは指摘しており、「中国の労働力規模が引き続き縮小しており、この傾向の逆転は無理だろう」
米中貿易戦争がこれ以上エスカレートすると中国の輸出にも悪影響が出るとANZ Researchは中国製産品に課せられた関税5170億ドルにより中国のGDPは0.5パーセント低下すると予測した。
中国通信大手フワウェイの財務最高責任者の孟晚舟 Meng Wanzhouがカナダで逮捕され中国が早速反応を示しているが世界最大の経済規模を誇る二国間の緊張緩和はすぐには無理だろう。
トランプ政権の通商問題顧問ピーター・ナバロは日経の取材に90日の休戦期間内での問題解決は「困難」だとし中国が実行している強制的な技術移転、サイバースパイ活動、国家主導の投資等の障壁をめぐる問題で「中途半端な解決策」は受け入れがたいためだと述べた。
「こちらの技術を狙う中国は日本、米国、欧州の未来を盗むのと同じだ」
中国の観点ではブタ年の経済見通しが悪化する。本来ならブタ年は富をもたらすと言われている。国内外のトラブルのため並以上の幸運が中国に必要だ。■
Anthony Fensom is an Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries.

Image: Reuters.

コメント

  1. ぼたんのちから2019年2月17日 9:07

    中国は、米中経済戦争が無くても経済成長が減速すると、一般的に推測されていた。
    過剰な債務・固定資産投資、過剰な生産設備、多くの国有ゾンビ企業、生産性の低下等々、経済のマイナス要素に思い切った手を打ち、経済構造の転換をしなければ当然の帰結と言える。
    共産党支配下にある既得権益層を基盤とし、独裁化を強める習に思い切った経済改革の決断はできなかったのだろう。それどころか国有企業の優遇や固定資産投資のカンフル剤の乱用等、正反対の政策を行い、また、未だ脆弱な先端産業の成長に逃げ道を見出そうとしている。
    この中国の経済状況は、米国に付け込む隙を与えた。中国は大不況の淵に立っており、米国はその背を押そうとしている。落ちたくなければ、許しを乞うしかない状況に陥ることになる。これは習にとって我慢できないことかもしれない。
    米国は、軍事以外の全ての分野で中国を追い詰めようとしている。中国はこの閉塞状況をあらゆる手を使って打開しようと試みるだろう。不測の事態に注意すべき時期に来ているかもしれない。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...