中国では2月11日が実質的な新年のビジネス開始日でブタ年(日本のイノシシは中国ではブタ)になんとか景気をもり立てようという気分が強いようですが(先週は北京に行ってきました)、経済の実態は甘くありません。経済力が防衛力整備に大きな影響を与えますので、中国の動向に関心を寄せる向きは当然中国経済の実態にもご関心があるはずですので、久しぶりの経済記事ですがご勘弁ください。
China's Economic Slowdown Is Inevitable 中国経済の鈍化は不可避
Aggressive stimulus measures, including tax cuts and monetary easing, won't help.減税、金融緩和の刺激策も効果なし
December 29, 2018 Topic: Economics Region: Asia Tags: ChinaEconomic GrowthFiscal PolicyFree TradeU.S.-China Relations
貿易戦争とグローバル経済の不振で打撃を受けた中国が必死に経済減速を回避しようとしている。
2018年12月21日に中国首脳部は2019年の経済ロードマップを承認しさらに過激な経済刺激策として減税と金融緩和を盛り込んだ。
中国政府トップは楽観視していない。3日間に渡る経済会議の後で発表した声明文では「外部環境は複雑かつ過酷で経済は下方変動の圧力にさらされている」
政策決定部門が求めた「先手を打った財政政策」として1.3兆元(1,880億ドル)の減税が承認済みだ。また「緊縮すぎず緩和しすぎない」形の「慎重な」金融政策も必要とし、中央銀行との距離が微妙になっている。
債務拡大を抑える努力がやや振り出しに戻り、政策決定部門は地方政府債券の「実質増加」を容認しつつある。
トランプ政権が注目すべきは中国声明の中にある「適正に中米経済貿易摩擦に対応してきた」とする表現だろう。
「中米両国首脳がアルゼンチンで合意した両国経済貿易関係を前進するとの内容を実行する必要がある」とトランプ大統領と習近平主席が12月1日に合意した関税引き上げ実施の90日猶予に触れた表現がある。
ただし、政策決定部門の表現では「市場開放は緩和すべき」とあり在中海外企業の知的財産権については中国の「メイドインチャイナ2025」政策の放棄に触れずあくまでも中国は主要ハイテク産業分野で世界の主導的立場を目指す方向に変わりはない。
「勢いを失いつつある」
中国が明るい未来を思い描く一方で短期的状況は思わしくなくない。
公式の国内総生産GDPデータでは2期連続で成長が鈍化し、以前の6.7%が6.5%にと世界金融危機以来で最も低い伸びとなった。
「中国経済は勢いを失いつつある」とフレデリック・ニューマン(HSBCホールディングス)がブルームバーグ・ニュースに語っている。
「米国との貿易摩擦を理由にあげがちだが、減速の原因は主に国内でインフラ支出が縮小し、新車販売も一時の勢いがない」
最新経済統計を見れば中国の年間成長目標の6.5%はどうみても現実水準を上回るものとわかる。工業出荷高、設備投資、小売販売、輸出入、製造指数はすべて低下しており、消費者物価・製造者物価ともに低くなっている。
ひとつ明るい兆しは建設部門の動きで信用供与拡大に反応している。
中国の株式市場は2018年に急落し前年比22パーセントの低下になったが、中国元は6パーセントの値下がりだった。
Capital Economicsの2019年見通しはさらに厳しく共産党政権が経済運営の成功を権力基盤にしているため微妙だ。
「中国経済の減速は2019年は深刻化すると見ており、債券価格と元相場に注目しています。刺激策の底上げはあっても力強い再建につながりません」
Capital EconomicsのGDP予想は2017年の6.9パーセントが2018年は6.6パーセントに低下するとあるが、社内でははもっと厳しく現今の5.5%が2019年は4パーセントぎりぎりになる可能性も出ている。
中国エコノミストのジュリアン・エバンス-プリチャードは住宅部門が冷え込み、輸出は「関税引き上げ回避に成功しても」伸びにくい環境だと見る。
刺激策があってもCapital Economicsは成長鈍化は2019年中頃までは続くと見ており、株式市場と元相場はさらに弱含みだという。
長期的には中国独特の国家主導資本主義経済は2030年代に成長率が2パーセントぎりぎりに低下すると同社は見ている。習近平が市場原理に任せるよりも国家介入を強化する動きにでているのが原因だという。
その他の予測でも減速は一致している。国際通貨基金IMFは中国のGDP成長は2017年の6.9パーセントが2018年は6.2パーセント、2019年には6.2パーセントになると見ており、インドの7.4パーセント成長に及ばないとする。
IMFの最新報告では「関係省庁間の方針で摩擦があり、債務拡大を抑え市場原理に役割を認めイノベーション拡大と新規事業立ち上げを増やす動きと反対に債務拡大という維持不可能な政策で経済への国家関与を認め貿易投資も制約したいという動きが見られる」とある。
OECDは中国のGDP成長率を2019年に6.3パーセント、2020年には6パーセントとし、世界経済の弱体化を背景に上げる。
「グローバル経済には力強さが残るが最盛期は過ぎている」とOECDは最新の報告書で述べて予測を下方修正している。
中国の債務の対GDP比は2019年で275パーセントになる予想で2018年の261パーセントから増えると国際決済銀行は見ている。
ANZ Researchも中国経済の減速を予測し、2019年は6.3パーセントと2018年の6.6パーセントから低下するとし、財政赤字の拡大でデフレリスクが増えるとする。
中国経済の減速化には構造的問題があるとANZ Researchは指摘しており、「中国の労働力規模が引き続き縮小しており、この傾向の逆転は無理だろう」
米中貿易戦争がこれ以上エスカレートすると中国の輸出にも悪影響が出るとANZ Researchは中国製産品に課せられた関税5170億ドルにより中国のGDPは0.5パーセント低下すると予測した。
中国通信大手フワウェイの財務最高責任者の孟晚舟 Meng Wanzhouがカナダで逮捕され中国が早速反応を示しているが世界最大の経済規模を誇る二国間の緊張緩和はすぐには無理だろう。
トランプ政権の通商問題顧問ピーター・ナバロは日経の取材に90日の休戦期間内での問題解決は「困難」だとし中国が実行している強制的な技術移転、サイバースパイ活動、国家主導の投資等の障壁をめぐる問題で「中途半端な解決策」は受け入れがたいためだと述べた。
「こちらの技術を狙う中国は日本、米国、欧州の未来を盗むのと同じだ」
中国の観点ではブタ年の経済見通しが悪化する。本来ならブタ年は富をもたらすと言われている。国内外のトラブルのため並以上の幸運が中国に必要だ。■
Anthony Fensom is an Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries.
Image: Reuters.
中国は、米中経済戦争が無くても経済成長が減速すると、一般的に推測されていた。
返信削除過剰な債務・固定資産投資、過剰な生産設備、多くの国有ゾンビ企業、生産性の低下等々、経済のマイナス要素に思い切った手を打ち、経済構造の転換をしなければ当然の帰結と言える。
共産党支配下にある既得権益層を基盤とし、独裁化を強める習に思い切った経済改革の決断はできなかったのだろう。それどころか国有企業の優遇や固定資産投資のカンフル剤の乱用等、正反対の政策を行い、また、未だ脆弱な先端産業の成長に逃げ道を見出そうとしている。
この中国の経済状況は、米国に付け込む隙を与えた。中国は大不況の淵に立っており、米国はその背を押そうとしている。落ちたくなければ、許しを乞うしかない状況に陥ることになる。これは習にとって我慢できないことかもしれない。
米国は、軍事以外の全ての分野で中国を追い詰めようとしている。中国はこの閉塞状況をあらゆる手を使って打開しようと試みるだろう。不測の事態に注意すべき時期に来ているかもしれない。